◆ことばの話2860「エキスポランドの発音」

5月5日、ゴールデンウィークの真っ只中に、大阪・吹田市のエキスポランドのジェットコースター「風神雷神II」の車軸が金属疲労で折れて脱線、死者1人が出るという痛ましい事故が起きました。
このニュースを聞いていて、引っかかる点があったのです。それは「エキスポランド」の発音です。うち(読売テレビ)の女性アナウンサーがニュースを読むのを聞いていて、なんとなく、
「もっちゃりとした感じ」
がしていたのです。噛んだりトチッたりはしていないのですが、スッキリ感がないのは、どうしてだろうか?と思っていたのですが、先日そのなぞが解けました。「もっちゃり感」があった女性アナウンサーは、
「『エキスポランド』を全部『有声音』で読んでいた」
からでした。
私が読むときは「エキスポランド」の「キス」は「無声音」で読みます。「無声音」というのは「母音」を無声化させて子音だけの音を聞かせる音のことです。のどに手を当ててしゃべると、のどの声帯が震えるのが手に伝わりますよね。でも、内緒話をするときのようにヒソヒソ声で話してみると、手に振動は伝わってきません。このヒソヒソ話のように声帯を振動させないのが「無声音」です。これを使うと、スッキリ聞こえますが、関西弁にはあまり無声音はありません。母音を大切にするのが関西弁の特徴ですから。
アナウンス部で、ほかのアナウンサーに聞いたところ、OアナとOアナ(ともに男性)は、「キス」ともに「無声化」でした。またお昼のニュースを読んでいたNHKの登坂アナウンサーも(5月9日)も「キス」は無声化していました。
しかし、うちのアナウンス部のYアナ、Kアナ、Yアナ(ともに女性)は「キス」ともに「有声音」でした。入社3年目のMアナ(男性)と入社2年目のKアナ(女性)は「キ」だけ有声音でした。
最初の「エ」をしっかり言わないと「キス」が有声音になってしまうようです。
それと「エキ」を、「駅」をイメージして読むと、「エキスポランド」すべてが有声音になってしまいます。あくまで英語の、
EXPOLAND
をイメージして読んだ方が、スッキリと「エキスポランド」と読める気がしますが、いかがでしょうか?
2007/5/21


◆ことばの話2859「エステ店とエステサロン」

2007年4月28日に起きた神戸市中央区のエステティックサロンの女性経営者が殺害された事件。読売テレビでは第一報で、
「エステサロン」
と表現しました。報道のSデスクが、
「警察の記者は『エステ店』と書いてきたんですが、響きが良くないでしょ」
「エステサロン」にしたとのこと。でも本当は、
「エステティックサロン」
じゃないのかな?これだと字数が多くなりすぎるか。『大辞林』を引くとやはり見出しは、
「エステティックサロン」
でしたが、その説明の中に、
「エステサロン」
も載っていたことと、そもそも「エステティックサロン」も「和製英語」であると書いてあったので、「それなら『エステサロン』でもいいか」ということになりました。
これの続報を載せた4月29日の各紙朝刊の記事を見ると、この表現がバラバラでした。
(本文) (見出し)
(読売)エステサロン エステ
(産経)エステサロン エステ店
(毎日)エステサロン エステ
(朝日)エステ店 エステ店
(日経)エステ店 エステ店

「平成ことば事情364エステ店」でも書きましたが、あの時書いた「エステ店」は、性的サービスを行う男性を顧客にした風俗店でしたが、今回の「エステ店」は、女性客が美容のために訪れる店でした。新聞は男性用の風俗の「エステ店」と女性の美容用の「エステ店」の区別は、どうつけているのでしょうか?朝日新聞の知り合いに聞いてみたところ、
「特に意図して使い分けているようには見受けられない。相談を受けたこともないと思う。警察発表(当事者の言い分)が反映しているのではないか?」
とのことでした。
2007/4/29


◆ことばの話2858「欽ドン」

「ハードディスクからのダビングをするんですけど、もし、わからなかったら教えてくださいね。」
入社2年目のTアナウンサーが、アルバイトのFさんに頼んでいました。心優しいFさんはもちろん引き受けていたのですが、ここでもし、
「いや!」
と言うとどうなるか、という意地の悪い話を私がしました。つまり、こういった依頼や、相手が受け入れない返事をすることがまったく期待されない場合に、拒否の返事をすると言うことは、ものすごく意外性があることで、そこに笑いが生まれる、という話です。具体的に言うと、昔「欽ドン」で紹介された視聴者の投稿ハガキで、「母と子の会話」というのがありました。こういうものでした。
子「かあちゃん、おやすみなさーい」
母「だめ!!」
これ、聞いた当時、私は笑い転げました。「かあちゃん」の返事は、うしろからいきなりドツかれたぐらい意外な答だったからです。その話をTアナにしたのですが、「欽ドン」と聞いて、ちょっとピンとこない顔をしていたので、
「昔、萩本欽一さんがやってた番組で『欽ちゃんのドーんとやってみよう』という番組があってさ、通称は略して『欽ドン』だったんだけど・・・」
と説明をすると、
「『欽ドン』は聞いた事がありますけど、その程度で、『欽ちゃんのドーンとやってみよう』というのは初めて聞きました。」
という答えが。テレビ局に入ってくる人間が、いくら他局の番組とは言え、歴史に残るバラエティ番組の名前を知らないのですから、「ああ、時代が変わったのだなあ」と感じざるを得ません。もっとも、『欽ドン』は彼女の生まれる前に放送されていたのでしょうから、見たことがない、知らなくてもしょうがないのかなあ・・・文字通り歴史上の番組でしょうねえ。
2007/5/9


◆ことばの話2857「愛夫度」

5月14日朝の『ズームイン!!SUPER』の番組内の番組PRで、この日放送予定の「芸恋リアル」について放送していました。そのナレーションで、
「堀ちえみの『アイオットド』チェック」
と言っているのを耳にして驚きました。
「なんだ?アイオットドって?」
すぐにそれは、漢字で書くと
「愛夫度」
であることはわかりましたが、「アイオットド」、つまり「愛夫」と書いて「アイオット」と読むのは初めて耳にしました。そんな言葉、あるのか?「オットセイを愛するトド」のようなものか?「万年筆」にもよく似た響きのものがあったな・・・それは「パイロット」。全然違う!
確かに「愛妻」「愛妻家」という言葉はありますし、「愛妻」の程度を示す「愛妻度」という言葉も(辞書に載っているかどうかは別にして)意味は判ります。
昔ありましたよね。「鬼警部・愛妻度」って・・・・あれは「アイアンサイド」か。「アン」がひとつ多かった。
冗談はさておき、この「愛夫度」という言葉は、ある意味、男女平等が進んできたことから生まれた新しい言葉だと思います。10年ぐらい前から職場での女性の進出が目覚しくなったからか、「紅一点」の逆の状態「女性の中に男性が一人」という状態が常態化したような中で、その状態をどう呼ぶのか?「白一点」なのか「黒一点」なのか?という問題が出て、「紅一点の語源から言えば正しくは『緑一点』になる」なんて話がありましたが(平成ことば事情372「黒一点」参照)、それが家庭にまで出てきたのがこの「愛夫度」ではないかと。
ただ、「愛妻」を「アイサイ」と音読みしたのに対して、「愛夫」を音読みすると「アイフ」または「アイブ」となって、「アイフド」と言われてもなんのことだかわからないしましてや「アイブド」だと「愛撫」の度合いを示すかのようで、ちょっと差しさわりがある(本来、別にそれでも意味は同じかもしれないんだけど・・・)ということで、「夫」を訓読みして、「アイオットド」なる言葉と読み方が出てきたのでしょうね。変なコトバ!
Google検索(5月14日)では、
「愛夫度」=587件
でしたが、これだと読み方はわかりませんがね。検索画面のトップに出てきたのは「芸恋リアル」でした。というか、最初の画面に出てきたもの10件は、全部「芸恋リアル」のものでした。ということは、この番組が(読売テレビ制作ですが)作った言葉なのかな?
ま、今晩の番組を見て皆さん、確認してくださいね。(番組宣伝か!)
2007/5/14


◆ことばの話2856「甘党の反対は?」

「甘党」と言えば「甘い食べ物が好きな人」のことですが、
「辛党」
と言うと、「辛い食べ物が好きな人」のことかと思ったら、さにあらず、
「酒好きの人」
を指しますよね。それがなぜか?というのはさておき、問題は、
「辛い食べ物好きの人のことは、何と言うのか?」
ということです。意外とこれ、難問では?・・・・ま、
「辛いもの好(ず)き」
と言えば、それでおしまいなんですけど、それでもなぜ、
「甘党⇔辛党」
対称的な意味になっていないのか?というのが、相変わらず問題です
「甘党は甘口のお酒好きで辛党は辛口のお酒が好き」
というわけでもありませんしね。不思議だなあ。
2007/5/14
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