◆ことばの話2835「ビニールハウス」

2月15日、突風でビニールハウスが吹き飛ばされるという出来事がありました。そのニュースをNHKのラジオでは、
「農業用ハウス」
という表現を使っていました。それを聞いてふと思ったのは、
「あれ?それって普通は『ビニールハウス』って言うんじゃないか?」
と感じた時に、
「あ、そうか!素材が昔はビニールだったけど、最近はビニールじゃなくてポリエステルになっているのか?ビニール袋がポリ袋に変わったように?」
と思ったのですが、新聞各社と読売テレビでは、
「ビニールハウス」
としていました。
ということは「ビニールハウス」でいいのかな?
そのものの「素材」に注目して名称とするのか、「用途」に注目して名称とするのか、どちらもあると思いますが、「用途」に注目した方が、より長く使われる名称になる気がしました。
2007/3/2


◆ことばの話2834「梅信」

奥野信太郎の『早春花信』を読んでいたら、
「各地の梅信を聞く」
という表現が出てきました。
「梅信」
という言葉は初めて知りました。普通はもっとかみくだいた感じの
「梅のたより」
なんて言いますけれども・・・。
「桜信」
という言葉はあるのかしら?
Google検索(3月28日)では、
「梅信」= 1230件
「桜信」= 162件
しかし「桜信」は、「桜信一」さんとか「桜真女」とかが引っかかっているようで、本当に「桜信」という言葉があるかどうかはよくわかりません。
そうこうしているうちに、桜、満開になっちゃいましたね。
皆さん、お花見は行かれましたか?
2007/4/9


◆ことばの話2833「入学式は開かれる?行われる?」

4月6日のお昼のNHKニュースを見ていたら、大阪のスタジオからのニュースで、
「京都大学で入学式が開かれました」
と女性アナウンサーが読んでいましたが、ちょっと引っかかりました。「入学式」は「開かれる」のでしょうか?「行われる」のではないか?と思ったのです。
Googleで検索してみました。(4月8日)
「入学式が開かれた」= 1890
「入学式が行われた」= 14900
「入学式が開かれる」= 990
「入学式が行われる」= 11900
やはり「行われた」の方が7倍ほど多く、「行われる」は「開かれる」の10倍以上使われていますね。「行われる」も「開かれる」も、似たような使い方がされるのに、なぜ「卒業式」には「行われる」が使われるのでしょうか?「開かれる」は合わないのでしょうか?
他のイベントの名前を、
「○○○が開かれる・行われる」
の○○○の中に入れてみましょう。
  (行われる) (開かれる)
「卒業式」= ×
「得度式」= ×
「表彰式」= ×
「結婚式」= ×
「講演会」=
「茶話会」=
「懇談会」=
「懇親会」=
ついでに「会議」は「行われる」「開かれる」両方OKですね。
漢語でいうと、「会」が付くイベントには「開会」と言えて「会を開く」、つまり「開かれる」が使えますが、「式」は「挙式」で「式」が「挙げる(行われる)」なので、「開かれる」が合わないのかな?でも「開式」という言葉もあるので、「式を開く」「式が開かれる」もありえますねえ・・・。
「式」は参加者(メンバー)が比較的閉じられている(限定されている)のに対して、「会」は開かれているというようなイメージがありますが、それと関連があるのでしょうか?
いずれにせよ、「入学式」は「行われる」の方が、落ち着きがあるように思えます。
2007/4/8


◆ことばの話2832「よされよされ」

2005年の大晦日、もう新しい年を迎えようかという午後11時29分に、NHKの紅白歌合戦を見ていて「おや?」と気づいて送ったメモが残っています。
「よされよされって何?」
これはその時、北島三郎が歌っていた『風雪ながれ旅』という曲の中の歌詞に、
「よされよされと雪が降る」
というのあったのですが、この「よされよされ」の意味が、わからなかったのです。そのときは「擬態語かな」と思ったのですが、辞書を引いても載っていなかったように思います。
ところが!昨日読んでいた『金魚の国の物語』(柚香、新風舎、2007)という熊本県天草地方を舞台にした物語の中に、ちょっと関係があるのではないか?という言葉が出てきました。それは、
「『マタ、ヨサリナ』と言うと『また、夜に会いましょう』という、別れるときの言葉です。このヨサリというのが夜のこと。漢字では”夜さり”と書きます。日本語の古語です。ちなみに”さり”の元になった”さる”は”去る”ではありません。それだと”夜が去る”で明け方という意味になってしまいます。夜さりの”さる”はその反対で”近づく”という意味です。」(228ページ)
という部分。「よさり」は「夜」のことのようですね、日本語の古語が残った形の天草方言・・・あれ?「よさり」上方落語でも耳にしたことがある気がしてきたぞ。『大阪ことば事典』(牧村史陽)を引くと・・・載っていました、「よさり」!
「ヨサリ(夜去り)」夜。「去る」は近づくの意である。夕さり(夕方)などの語もある。
として『源氏物語』『竹取物語』からの用例が載っていました。
『風雪ながれ旅』を調べてみると、作詞は星野哲郎さんでした。歌詞は、1番の最初に、
「破れ単衣に 三味線抱けば よされよされと 雪が降る」
とありました。この場合の「よされよされ」は、最初に思ったとおり「擬態語」なのかもしれませんが、そこに「夜」が近づくというイメージも重ね合わせているのかもしれませんね。
この曲の舞台は、「風雪」なので北の方、「ながれ旅」なので移動しているようです。歌詞に、地名が織り込まれています。それによると舞台は青森(津軽・八戸・大湊)から北海道(小樽・函館・苫小牧・留萌・滝川・稚内)のようです。熊本は関係ないのですが、柳田國男の『方言集圏論』によると、古語は京都から同心円状に広がって残っているということですから、熊本と青森は、京都からの距離が近いのかもしれませんね。(青森の方が遠いとは思いますが)
2007/4/8
(追記)
5年たって、2012年の紅白歌合戦
でも、北島三郎さんが『風雪ながれ旅』を歌っていて、また「よされよされ」がひっかかりました。
2013/1/15


◆ことばの話2831「マリン度」

4月3日、ズームイン!!SUPERで奥浜レイラちゃんが、
「大人マリン」
という特集のリポートをしていました。その中で彼女は、
「(こういう服の組み合わせにすれば)マリン度もアップします。」
と言ったのですが、この、
「マリン度」
というのは聞き慣れない言葉でした。Googleで検索してみたら(4月6日)、
「マリン度」=103件
でした。ま、ほとんど使われていませんが、もしかしたらファッション雑誌などで、ちょっとだけ使われているのかもしれません。「レイラちゃんの造語」ではないようです。
この発言に対しては、西尾アナウンサーが、
「より、マリンスタイルになりますね」
とフォローしていたのを聞いて、
「あ、やっぱり、さすがアナウンサーだな」
と思いました。ちなみに、「大人マリン」も検索すると、
「大人マリン」=1万2500件!
結構使われているんだ!!オドロキ。ついでに・・・
「子供マリン」=173件
これは「子供マリン大会「子供マリンシューズ」のような使われ方でした。
2007/4/6
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