◆ことばの話2830「洋菓子のアクセント」

3月23日、不二家が70日ぶりに洋菓子の販売を再開しました。不二家の社長が、店舗の前に集まった報道カメラの前に登場して、いきなり、
「おまたせしました」
と言いかけて、噛みました・・・・よっぽど緊張してたんでしょうね。出鼻をくじかれたような気がちょっとしました。ここは絶対に噛んじゃいけないところなのに・・・。
それはさておき、これを伝えたテレビ朝日のお昼のニュースで、丸川珠代アナウンサーが「洋菓子」「平板アクセント」で、
「ようがし(LHHH)」
と読んでいました。まるで、「洋ナシ(LHHH)」のような感じです。
なんか、おかしいよな、と思っていたらそのあとのNHKのお昼のニュース、大阪のスタジオからのニュースでも近藤アナウンサーが、やはり「平板アクセント」で、
「ようがし(LHHH)」
と読んでいてビックリしました。そのNHKさんが編纂している『NHK日本語発音アクセント辞典』を引いて見ると、「洋菓子」は「中高アクセント」の、
「ようがし(LHHL)」
しか載っていません。そうだよな、やっぱり「中高」が正しいよな。だって、「和菓子」「中高アクセント」で、
「わがし(LHL)」
でしょ。さすがにこれを「平板アクセント」
「わがし(LHH)」
と言う人は、あんまりいないでしょうね。「菓子(HL)」に「和」「洋」が付いたときの複合語のアクセントとしては、やはり「菓子(HL)」のアクセントを残すのが正統でしょう。
でも「中高アクセント」で「ようがし(LHHL)」と言うと、
「洋画紙」
に聞こえそうですが、そんな言葉は、アクセント辞典にはそもそも載っていません。(『日本国語大辞典』には「陽画紙」という言葉は載っていましたが。)逆に「平板アクセント」だと、
「用貸し(LHHHH)」
みたいにも思えます。もちろん、そんな言葉はアクセント辞典には載っていませんが。「代貸」は「平板」ですね。
午後2時過ぎに放送した読売テレビ系列の『ザ・ワイド』の女性リポーター「平板アクセント」でした。

2007/3/23


◆ことばの話2829「FC東京」

3月18日、夜10時台のNHKのスポーツニュースでJリーグの結果を見ていたら、ナレーションを読んでいる男性アナウンサーが、「FC東京」の「FC」を、「エフ・シー」ではなく、
「エフ・スィー」
と読んでいるのに気づきました。
スポーツニュースだし、原音を使っ方がカッコいいので、別に悪くはないと思うのですが、でも結構「スィー」という音は耳につきました。「F」の「フ」を、唇を噛んで発音しているようには聞こえなかったので、余計にそう思ったのでしょうか?
以前、うちのWアナウンサーが「ICカード」の「IC」について、
「私は『アイ・シー』とは読めません。『アイ・スィー』と読んでもいいでしょうか?」
と聞いてきたことがありましたが、その時は、
「『スィー』と読むと、文章の中で耳についてしまうので、どうしてもと言うのなら『シー』と『スィー』の中間の音で読んで!」
と指示したことがありましたが、今回はスポーツニュースなので「スィー」でも許容範囲なのでしょうかね。
試合後のインタビューで、負けたFC東京の福西選手の言葉、
「勝ちたかったんですが・・・次に向けたいです。」
という中の、
「次に向けたい」
も、なんだか気になりました。
2007/3/18


◆ことばの話2828「電波を発信」

広報宣伝部のI君から内線電話です。
「道浦さん、50年史関係の原稿を書いているんですが、『昭和33年に電波を発信』という部分なんですが、『電波』は『発信』でいいんですかね?」 「うーん、そう言われると、ちょうと違和感があるねえ・・・調べて折り返し電話するわ」
ということで調べて見ると、やはりちょっと違うのではないかということになりました。
「調べてみたけど『電波』の場合は『発信』よりも『送信』の方がいいみたい。でもそれだと物理的・技術的に電波を送信しているという感じで、たとえば『試験電波を送信』のような感じだね。テレビ局が開局して、そうそう開始という意味で使うのにはちょっとそぐわない感じがするね。技術系の人が言う場合には構わないのだけど。『発信』は『情報の発信』のように、何か中身のあるもの、すなわちコンテンツを送ることを指すので、その場合に『電波』という技術的な言葉は、あわない気がするね。どうしても『発信』を使いたいのであれば、開局と言うものを、コンテンツ・番組の放送が開始されたという意味で広義にとらえて、『番組の発信を開始』にする方がいいかな。でもシンプルに『放送を開始』がいいんじゃないかな。技術的視点からは『電波の送信を開始』かな」
と答えておきましたが、果たして原稿は、どうなっていますかね?

2007/3/23


◆ことばの話2827「老化現象の言い換え」

先日、眼科に行ったときのこと。
診察室内で順番を待っていると、前の患者さんに対する先生の声が、漏れ聞こえてきます。
「まあ、特に急いで心配することはありませんが、ある程度年を取ってくるとこういった症状が出てきますねえ。40代前半でというと少し早い感じですが、まあ、『加齢現象』なので誰でも出てくることですし、そのうち気にならなくなるとは思いますが、最初は、やはり、うっとうしい感じがしますけどねえ。」
どうやら「飛蚊(ひぶん)症」か何かの話のようです。飛蚊症は、私も随分前からなっていますから、ハハアと思ったのですが、それよりも先生の言葉の中の、
「加齢現象」
という言葉が耳に止まりました。これは分かりやすく言うと、
「老化現象」
ですよね。でも「老化」という言葉の響きがあまりいい感じがしないので、同じことを、
「加齢」
という言葉で置き換えているのですね。「加齢」と聞くと、例の、
「加齢臭」
という言葉を思い出しますが、あれも、もっとズバリ言えば、
「老化臭」
「年寄り臭さ」
「ジジ(ババ)臭さ」
と言うことですが、これだったら、「加齢臭」の方がまだ、かぐわしい感じがします。「カレー」の香りも、ちょっとイメージできますし。
「加齢現象」の場合は、言葉の持つイメージで、患者さんへのショックを和らげるという効果があるようですね。


2007/3/22


◆ことばの話2826「ウインナーソーセージーか?ウィンナソーセージか?」

『ニューススクランブル』のディレクターから内線電話で質問です。
「道浦さん、ウインナーソーセージの表記に関してなんですけど、ウインナーの『イ』は、大きいんでしょうか?それとも小さいんでしょうか?」
「うーんどうだろ?改めて言われるとなぁ・・どっちだっけ?調べてみるわ」
「あ、それからもう一つあるんですが、ウインナーソーセージのウインナーの『ナ』のあとは、伸ばすんでしょうか?伸ばさないんでしょうか?」
「!?それも、調べて電話します!」
ということで調べて見ました。「ソーセージ」に関しては、手元にあった辞書類の表記は以下の通りです。
<ソーセージ>
(ウインナ)『新聞用語集1996』『新潮現代』『新明解』『岩波』『三省堂』『日本語新』『共同通信記者ハンドブック2002』『朝日新聞の用語の手引き2005
(ウインナー)『新聞用語集2007年版』『明鏡国語辞典』(日本ハムHP)
(ウィンナ)『広辞苑』『日本国語大辞典』
(ウィンナー)*************
ということで、一番多い表記は、
「ウインナソーセージ」
つまり「イ」が大きく、「ナ」のあとは「伸ばさない」ものが一番多かったです。ただ、注目すべきは、「ウインナー」と「イ」が大きく「ナ」の後を伸ばす形です。これは『明鏡国語辞典』2月に出たばかりの『新聞用語集2007』(それと日本ハムのHP)ですが、1996年に出た『新聞用語集』では「ナ」の後を伸ばさないで「ウインナ」だったのに、今回の改訂で「ウインナー」と伸ばすことになっているのです。これはどうしてなんでしょうか?
また、1996年の『新聞用語集』には「ウインナソーセージ」しか載っていませんでしたが、『新聞用語集2007』には「ソーセージ」以外に、
「ウインナコーヒー」「ウインナワルツ」
の2語が新たに載っています。しかしこの2つの言葉は「ウインナー」ではなく「ウインナ」なんですねえ。伸ばしていないのです。このあたりについて、『新聞用語集2007』編集の中心だったSさんに伺ったところ、
「農水省の規格で『ウインナーソーセージ』となっているため、例外的に音引き(−)を入れることになった」
とのことでした。
ちなみに、たしかに「ウインナ(―)ソーセージ」に比べて「ウインナコーヒー」はまだ定着していないのか、載せている辞書は少なかったです。
<コーヒー>
(ウインナ)『新潮現代』『三省堂』『日本語新』
(ウインナー)『NHK日本語発音アクセント辞典』『明鏡』
(ウィンナ)『広辞苑』『日本国語大辞典』
(ウィンナー)*************
といった具合でした。
ソーセージに注目していたら、3月2日、『ズームイン!!SUPERT』の中のニュースで、グリコ栄養食品のソーセージに何か異物が入っていたと。その際の表記は、
「ウインナー」
でした。商品名ですが。グリコ栄養食品のホームページには2月28日付で、「お詫びとお知らせ」として、
「弊社で製造、販売しておりますウインナー類の一部におきまして、プラスチック片の混入のおそれがあることが判明いたしました。那須工場(製造工場記号TN)の下記商品につきまして安全に万全を期すため、自主回収させていただくことといたしました」
とありました。
どうやら、現場では「ウインナーソーセージ」が定着しているみたいですね。


2007/3/18
(追記)

伊藤ハムの「アルトバイエルン」という商品の広告が、大阪駅の環状線ホームの柱に出ていました。そこには、
「ウインナーの逸品」
と記されていました。やはり「イ」は大きく、「ナ」のあとは「−」伸ばしていました。
2007/5/3
(追記2)

島村菜津『バール、コーヒー、イタリア人〜グローバル化もなんのその』(光文社新書)を読んでいたら、P81に、
「ウィンナー・コーヒー」
と出てきました。これまで調べた辞書などでは、出てこなかった表記です。
2007/6/11