◆ことばの話2810「埋伏歯」

電車を待つ間、何気なく目にした駅の広告看板。歯医者さんのものでした。活字中毒の私は、それを読んでいたのでした。その中に、
「『埋伏歯』の抜歯」
という文字がありました。これ、なんと読むの?「抜歯」は「ばっし」でしょうが、「埋伏歯」は「まいふくし」?聞いたことがないなあ。でも想像はつきます。いわゆる、
「親知らず」
のことですよね?2月13日のGoogle検索(日本語のページ)では、
「埋伏歯」=2万1300件
ありました。やっぱり「親知らず」のように歯茎の中に埋まっていて伏せている状態の歯のことのようですね。「埋没歯」とも言うみたい。正式には「埋伏歯」だそうですが。念のため検索するとこちらは、
「埋没歯」=413件
でした。
「日本臨床口腔外科医会」のサイトには、http://www.jacoms.gr.jp/index.html、
「歯は時期が来ると決まった場所に生えてきますが、その時期を過ぎてもあごの骨の中や歯ぐきの下に埋まったままのことがあります。このような状態の歯を埋伏歯と言います。」
とありました。ということは「親知らず」=「埋伏歯」ではなくて、「親知らず」は「埋伏歯」の中の一つということのようですね。さらに読み進むと、
「埋伏歯は、歯全体があごの骨の中にうまっている完全埋伏歯と、歯の頭(歯冠)の一部が口の中に出ている半埋伏歯とに分かれます。」
「埋伏歯」には2種類あるんだ。そして「埋伏歯」となる原因については、
「歯が生えるスペースが不足していることが一番の原因です。現代の子供たちは柔らかく調理された物ばかりを食べているので、あごがあまり発達しません。言い換えれば、現代人はあごが小さくなってきているのです。あごが小さいと、後になって生えてくる永久歯ほど生えるスペースが不足しがちになります。だから、上あごの糸切り歯(犬歯)や一番最後に生える親知らず(第三大臼歯、智歯)に埋伏歯が多く見られるのです。」
とありました。ふーん、やっぱり。最近の若い人の顎は細くなってきてると思ってたんです、アナウンサー試験の受験者なんか見てても。また、下あごが出てる人も多いですよね。柔らかいものばかり食べてるとそうなるのか。そうすると、当然「発音」にも影響が出てきて、これまでのしゃべることができた「音」を出せないアナウンサーも出てきてるというわけですね。これは大いに問題だなあ・・・・。
2007/2/13


◆ことばの話2809「カンパン」

宮崎沖で転覆したマグロ漁船に乗っていた3人は、救命いかだで3日漂い救助されました。テレビ東京のカメラマンもいたそうですが、本当によく頑張りましたね。その無事救助のニュースの中にあった、
「カンパン6個を3人で分け合って」
というスーパーを見て、ふと、新人のKアナに、
「おい、カンパンって、漢字とカタカナで書いてみ!」
と聞くと、案の定、
「缶に入ったパン、缶パンですか?」
という答え。あーほーかー!
「乾パン」
ぐらい知っておけよなあ。「いざ!」という時に大変なことになりますよ。あ、でももしかしたら「缶パン」だと思っている人も世の中には、いるのでは?と思い検索しました。(Google、2月13日検索)すると、
「缶パン」=751件
「乾パン」=21万8000件
やっぱりあった!と思ってよく見てみると、どうやら「缶パン」は、「乾パン」とは違うようなのです。その説明を読むと、
「缶パンは『パンの缶詰』。缶詰の中のパンは、1年〜2年もの間、保存が可能な上、いつでも焼き立てのような風味が味わえる」
というものなんだそうです。へえ、そんなものがあるんだ!他のサイトでも、
「パンの缶詰は特殊な特許製法でつくりあげた、長期保存可能なソフトパンです。
食べてみてその柔らかさ、美味しさにびっくりします。」
とありました。これは一度食べて見なくっちゃ!さっそくネットで「缶パン」を注文しました。また、届いたらご報告しますね。
それにしてもKアナの「缶パン」も間違いではなかった・・・かな?「あーほーかー」は取り消しますごめんなさい。でもマグロ漁船の人たちが食べていたのは「乾パン」ですから。(救助された乗組員の方は「カロリーメートの大きいようなヤツ」と話してらっしゃいましたが。)
2007/2/13
(追記)
届きました!やわらかい「缶パン」!写真をご覧ください。大きいな、どうも。

缶パン

まだ食べていません。なんだかもったいない気がして・・・。


2007/2/21


◆ことばの話2808「ミラ・ジョヴォヴィッチ」

2月7日の読売新聞に、
「目指せ!ミラ・ジョボビッチ」
という見出しが。映画「ジャンヌダルク」などの主演女優、
「ミラ・ジョボビッチ」
が展開するアメリカの婦人服ブランドの独占輸入権を、伊藤忠商事が獲得したと発表したという記事が出ていました。
それを見て私は「おや?」と思いました。この女優さん、映画『バイオ・ハザード』などで人気の出てきた人で、私は、レンタルビデオ屋サンでそのポスターを見たことがあったのですが、なぜそれが記憶に残っているかと言うと、その名前の表示が、
「ミラ・ジョヴォヴィッチ」
名前の中に2回も「ヴ」(=ウ濁)が使われていたからなんです。ところが、この記事の見出しでも本文でも表記は、
「ジョボビッチ」
「ボ」「ビ」が使われていて、「ヴォ」「ヴィ」が出てきません。
さらに記事を読むと、なんとそのアメリカのブランドの名前は、
「ジョヴォヴィッチ ホーク」
という名前だと出ているではありませんか!こちらは「ウ濁(=ヴ)」なのです。
これで分りました。読売新聞としては、人名や一般名詞には「ウ濁(=ヴ)」は使わない方針なのだが、特定商品名としてのブランド名には、そちら側の要望を受け入れて「ヴ」を使わざるを得ない、というような事情が垣間見えます。
なかなか表記ひとつとってもむずかしいものですよネエ・・・。
ちなみにGoogle検索では(2月14日)、
「ミラ・ジョヴォヴィッチ」= 1590件
「ミラジョヴォヴィッチ」= 511件
「ミラ・ジョボビッチ」= 2万2700件
「ミラジョボビッチ」= 2万2700件
「ミラ・ジョヴォビッチ」= 106件
「ミラジョヴォビッチ」= 978件
「ミラ・ジョボヴィッチ」= 2060件
「ミラ・ジョボヴィッチ」= 2060件
でした。読売新聞と同じく「ヴ」を使わない「ジョボビッチ」が一番多いようですね。本人の名前の英語のつづりは、
Milla  Jovovich
です。1975年生まれ、ウクライナのキエフ出身。なお同じような問題を取り上げた、平成ことば事情590「ボルヴィック」、同じく1411「ジヴコヴィッチ」もお読みください。
2007/2/14


◆ことばの話2807「軍用兎」

『撃ちてし止まむ〜太平洋戦争と皇国の技術者たち』(難波功士、講談社選書メチエ、1998)という本を読んでいたら、
「少国民 みんなで飼はう 軍用兎」
と書かれたポスターの写真が載っていました。
「軍用兎」?
爆弾抱えて敵陣に?それと食料用?これは初めて聞く言葉です。隣の席のHアナに、
「『軍用兎』って知ってる?」
と聞くと、
「ははあ、それは初めて聞きましたが、確かに家畜の供出はあったと思いますよ、金属の供出のように」
と、私より年下で、もちろん「戦後生まれのくせ」に、そんなことを言います。
Googleで検索したら、
「軍用兎」=27件
しかありませんでした。その記事を読むと、
*『愛国婦人会』
『通信面にある解説には、「写真は副業に兎を飼って軍事援護事業の資金を作る会員」とありました。日中戦争が始まると、軍用兎毛皮の需要が急増したそうです。日本各地で兎が飼育されていたと資料にはありました。公営の養兎場があったのだそうです。ですから、個人でも積極的に兎を飼育することが奨励されたのでしょう。』
http://www.eonet.ne.jp/~otora/page121.html
というような記事がありました。だとすると「軍用兎」は「毛皮用」だったのか。そう言えば「ヌートリア」もたしか毛皮用だったと聴いたことがありますね。そのほか、

*戦時下の農村生活 配給制度を主として(上村 重雄)
『国は、軍需資材の確保と、併せて国民の戦時意識の昂揚強化をねらって、昭和十六年八月に金属回収令を公布して、全国的に供出運動を展開しました。指輪など貴金属の装身具は勿論のこと、古銭から使用中の火鉢、鉄びん、やかん、アルミニウムの弁当箱まで供出しました。このような家庭用品ばかりでなく、公園など公共施設の柵、ベンチから、神社やお寺の神仏具までがその対象とされ、梵鐘、鳥居、銅像もすべて撤去することになりました。金属の他、綿や、ふとんから、毛布など毛織物、皮革、毛皮も進んで供出しました。また、各家庭で半ば愛玩用として飼っていた家兎を、軍用兎として繁殖することが奨励されて、軍の防寒衣料として本町からも、毎年何干匹も納入しました。しまいには、犬や(軍用犬だけでなく)猫も供出の呼びかけに応じて出征させました。
http://hp.town.kamifurano.hokkaido.jp/hp/saguru/0512uemura.htm
おお!犬や猫まで・・・・。さらに、

*『国民学校「行学一体」による皇国民の錬成』
都市の国民学校では軍用兎の増産に励み、空地に甘藷(かんしょ)を植えた。農村の国民学校でも食糧増産の戦士であった。金属回収や松脂(まつやに)採集も児童の任務とされた。こうして、同20年3月の『決戦措置要項』により、国民学校初等科を除いて学校の授業は停止された。』
http://www.e-obs.com/heo/heodata/n273.htm

*『岡山県畜産史』第2編 第5章 その他の家畜家禽第4節 家兎 2昭和年代における養兎
昭和6年(1931)に満州事変が勃発すると、軍用兎毛皮の需要が急増した。翌年には、従来有色兎毛皮(ベルジアンが多い)だけであったのを、白色(日本白色種)、雑色のものも軍納されるようになった。
http://okayama.lin.go.jp/history/2-5-4-2.htm
ということです。
戦争は、動物たちにも出征を強いたのですね・・・知りませんでした。
2007/2/12
(追記)

2009年8月11日の毎日新聞に、
「軍用兎飼育『少国民の務め』」
という大きな見出しが。「子供は見ていた〜戦争と動物2」という特集です。そして、
「飼はう 殖やさう 軍用兎」
という見出しの昭和20年1月26日付の「少国民新聞」(現・「毎日奨学生新聞」)の記事の写真が載っていました。そこに「兎」の作文が掲載された「釧路郡共栄校初5年 残間サキ」さんは、現在は78歳で北海道でご健在。木村葉子記者(42歳)がインタビューを試みています。それによると、育てていた兎が軍隊に買われていったことを聞いた当時のサキさん、作文の最後に、
「『ああうれしい。』と叫びました」
と(新聞には)記されていたのですが、現在サキさんに話を聞くと、その一文は、
「書いた覚えがありません」
そうです。記事によると、日清・日露戦争以降、国は「軍用兎」としてのウサギの飼育を推奨し、昭和20年(1945)度には1000万匹の飼育を目指して全ての家庭でウサギを数匹ずつ飼うよう呼びかけたのだそうです。
2009/8/13


◆ことばの話2806「強い雪が降るでしょう」

天気予報の原稿を見ていると、
「強い雪が降るでしょう」
という一文が出てきました。
「強い雨」「強い風」というものはありますが、
「強い雪」
という表現はないのではないか?そう思って、
「激しい雪」
にしてみましたが、これもそぐわない。結局、
「激しく雪が降った」
にしました。最近、原稿の中の文章を「名詞形」にする傾向がどうも強くなっているような気がして違和感があります。噛み砕いて「話し言葉にする努力」をもっとした方がいいのではないでしょうか。
そう思います。
2007/2/12