◆ことばの話2800「ずさんな衛生管理が行われていた」

不二家で消費期限切れの牛乳が使われていた事件を伝えていた読売テレビ『ニュース・スクランブル』の中で、
「ずさんな衛生管理が行われていた」
と読んでいましたが、これが気になりました。隣の席のHアナウンサーとともに
「ん?『ずさんな衛生管理が行われていた』??」
と声を上げてしまいました。
わざと「ずさんな衛生管理を行っていた」というニュアンスを強調して表わすのなら、まあこれでもよいかと思いますが、普通は、
「衛生管理がずさんだった」
「きちんとした衛生管理が行われていなかった」
ではないかと・・・。思うに、
「ずさんな衛生管理」=「きちんと衛生管理が行われていない」
で、これが混用されて、
「ずさんな衛生管理が行われていた」
になったのではないでしょうか?
「ずさんな衛生管理が指摘されている不二家の問題で」
とするのがよいのではないかと思います。
また同じ番組で、「あるある大事典II」の捏造事件の関係で関西テレビ前から中継した若い記者が、
「(事実が)うやむやにならないまま(会見が終わった)」
と言ってしまいました。Sキャスターが、
「それは『うやむやになった』ということですね?」
と確認の問いかけをしなければ、リポート内容がまさに「うやむや」になってしまうところでした。これは、ふだん使わない言葉を無理矢理使って失敗した例ですが、
「言葉の衛生管理」
を、キチンとしないといけないなと思いました。
翌日(1月30日)の、同じ不二家関連のニュースで原稿は、
「ずさんな衛生管理の実態」
と直っていました。

2007/1/30


◆ことばの話2799「鍋に火をかけたまま」

1月20日、兵庫県宝塚市のカラオケ店で火事があり、客3人が亡くなるといういたましい事故がありました。原因は、アルバイト店員が調理室で鍋を火にかけたまま、そのことを忘れてしまったことですが、そのニュースの中で、なぜか読売テレビは、
「鍋かけたまま」
という原稿を書き、読んでしまいました。正しくは、
「鍋かけたまま」
あるいは、
「火に鍋をかけたまま」
ですね。鍋に火をかけたら、そりゃ燃え上がるでしょう。火炎放射器ではないのですから、火をかけてはいけません。
視聴者の方からのご指摘で気づくという体たらくです。申しわけありません。
しかしこういった文章はたしかに、スラッと読まれると気づきにくい間違いではあります。もちろん、
「意味を考えて書いたり読んだりしていれば、間違うはずがない」
ものです。

口調のよさに気を取られて、物事の本質や文章の表わすものの実体を見失うことのないように、気をつけたいと思います。
2007/1/30


◆ことばの話2798「『細かな』のアクセント」

2年目のMアナウンサーが、お昼のニュースの前にした読みをしていました。
『NHK日本語発音アクセント辞典』には、「細かに」が、
「コマカニ(LHLL)」
「コマカニ(LHHL)」
という「中高アクセント」が2つが載っていました。これに従うと、
「こまかな(LHLL)」
「こまかな(LHHL)」
になりますね。でも、私が入社した頃に教わったアクセントは、
「こまかな(HLLL)」
という「頭高アクセント」だったのです。おかしい!もう時代遅れになったのか?それとも、そもそも間違ったアクセントを教わったのか?
念のため、もう一冊『新明解日本語アクセント辞典』を引いてみると、「細か」で載っていました。そこには、
「コマカ(LHL)」
「コマカ(LHH)」(尾高)
の2つのアクセントの後に、( )が付いて、
「古はコマカ(HLL)」
として「頭高アクセント」も載っているではなりませんか!
そうかやっぱり伝統的なアクセントだったんだな。アクセントも、もちろん時代とともに変わっていくんですねえ。いまさらながら感じました。
2007/1/24


◆ことばの話2797「冷え性か?冷え症か?」

東京支社の、ある番組のチーフプロデューサーを務めている先輩から、電話がかかってきました。
「『ひえしょう』の『しょう』は、『りっしんべん』に『生きる』の『性』かな?それとも、『症状』の『症』かな?」
「ほうほう、それは言われてみると、どちらもありそうですね。」
「番組スタッフは、辞書を引いたら両方載っているので、これまで『性』を使って『冷え性』と字幕スーパーなんか出してきたんだけど、本当はどっちかな?という話になってさ。『性』の方は、『凝り性』『あがり性』とか、そういうのにも使われるよね。」
「『症状』の『症』は、ちゃんと病気として認められている場合で、それ以外に自分の気持ちとしてそういった傾向があるときには『性』を使って『冷え性』というんじゃないですかね。だから温泉の効能書きでも、法律なんかでも認められていて病気にきっちり効くと書けるものの中には『冷え症』と書いているのもあるんじゃないですか?それ以外は『冷え性』かなあ。ちょっと待ってくださいよ、読売新聞社の『読売スタイルブック2005』では、『冷え性=体質、冷え症=病気』と使い分けていますね。やっぱり『冷え症』は、そのような病気と認定されている場合のようですね。」
「うん、わかった。じゃあこれまでどおり『冷え性』でいいわけだね。」
「そうですね、一般的には。」
「ありがとう!」
ということでした。手前味噌になりますが、こういったところにもきっちりと気を配っている番組は、良い番組だと思います。
Googleの「日本語のページ」で検索したところ(1月26日)、
「冷え性」=207万件
「冷え症」= 67万件
でした。手元にある国語辞典を引いてみると、
*「冷え性」・・・10種類
『新明解国語辞典』『新潮現代国語辞典』『明鏡国語辞典』『岩波国語辞典』『デイリーコンサイス国語辞典』『三省堂国語辞典』『広辞苑』『NHK日本語発音アクセント辞典』『新明解日本語アクセント辞典』『大辞林』
*「冷え症」・・・0種類
*「冷え症」「冷え性」両方載っている・・・2種類
『日本語新辞典』『日本国語大辞典』

このほか、
『朝日新聞の用語の手引き』は、(冷え症)→冷え性
『NHK新用字用語辞典第3版』は「冷え性」=冷えやすい体質、「冷え症」=病気の場合
と言うことで、やはり「冷え性」の方が優勢のようです。そして、マスコミは社によっては、意味によって使い分けをしているようですね。
2007/1/26


◆ことばの話2796「江沢民の新曲」

Wアナウンサーが、話しかけてきました。
「この間、テレビの音声を聞いていたら、あるアナウンサーが、
『では、コウタクミンさんの新曲です』
って言ってたんですよ。それで、『え、なに?江沢民の新曲?なにそれ!?』と思ってよく見てみたら・・・」
「ふんふん、よく見てみたら?」
「倖田來未(こうだ・くみ)さんの新曲だったんです!」
中国の元・国家主席と、エロかわいい歌手。ちょっとの違いで大違い!よーでけた話やで。アナウンサーのカツゼツが悪いのか、Wさんの耳が悪いのか・・・。
そう言えば昔、「江沢民」を、
「えざわ・たみ」
と読んだ人もいたって、聞いたことがあるけどね・・・。
そうそう、「似てる」と言えば、「山口もえ」と「山口百恵」も1字違いですけどね。
家に帰って、この「江沢民」の話を妻に話したところ、表情も変えずに、
「それで?」
「いや、それでって・・・おもしろいやろ?」
「・・・・どこが?」
と言われました。ついでに「山口もえ」と「山口百恵」は1字違いの話をすると、
「山口もえって・・・誰?」
「女性タレントやんか!『たかじんのそこまで言って委員会』にも出てるし、最近、妊娠したってテレビや新聞にも出てたやんか!」
というと、
「テレビも見てるヒマないし、新聞も芸能関係は読んでないから、そんなむずかしい話題には、ついて行かれへん」
言われました・・・・

2007/1/25
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