◆ことばの話2765「あっかんよー」

1歳10か月の娘が、最近とみにしゃべるようになって来ました。
「ゴッソサン」(=ごちそうさま)
「ミカン」
「オハヨ」(=おはよう)
などなど。で、一番よく口にするのが、
「パパ、キライ」
しくしく・・・。
その次に最近覚えたのが、「アッカンベー」ならぬ、
「あっかんよー」
です。意図するところは明らかに「アッカンベー」なのですが、なぜか最後が「ベー」ではなく「ヨー」というのがおもしろいところ。
おそらく彼女は、「アカンベー」の「アカン」は、
「大阪弁の『アカン』」
だと思っているのではないでしょうか。だから、最後の「ベー」になじまずに、「あかんよ」というつもりで、
「あっかんよー」
と言っているのではないでしょうか。「あかんべえ」の本当の意味に気づくのは果たしていくつになった時でしょうね。そのときに私は何歳でしょうか・・・・。
2006/12/15

(追記)

あれから3週間。最近は「あっかんよー」が、
「あーかんもん!」
と言うようになってきました。そのほか、よく口にするのは、
「ぶっぱーちゅ(しゅっぱーつ)」
「しゅ」が言えないので「ぶっ」となるようです。
ご飯を食べ終わったあとは、
「あっとーたん(ごちそうさま)」
と言い、寝る前には「おやすみなさい」を省略して、
「・・・・いっ!」
受話器のおもちゃや、古い携帯電話を持っては、
「もちー(もしもし)」
といいます。これは私が教えました。そしてこれまで「ママ」「パパ」「にいにい(お兄ちゃん)」「ジージ」「バーバ」と個人を指名して、
「てっー!(見て!)」
と言っていたのが、「みんな」という言葉を覚えたので、
「みんな、みてー」
と言うようになりました。これは便利!そのほか、
「ぼーち(帽子)」
「もーいーかい」
「えび(魚全般)」
などもよく口にします。先日気づいたのですが、「歯の生え具合」によって当然、発音も変わってきますよね。最近、よくしゃべるためか、常にダラダラ「よだれ」を垂らしていて、服の胸元は「ベトベト」です。もうすぐ2歳。このぐらいの子どもの成長は、本当におもしろいですね。
2007/1/8

(追記2)

それから3か月、よだれはダラダラではなくなりました。2語から3語の文章になってきました。数日前、兄が路上に落としていたドラゴンボールのカードを、たまたま見つけた時のことを、母に報告した言葉は
「にーにのカード、おそとで、みつけたの」
と言ってましたから、なかなかの作文能力だなあ、と。
そのほか、面白い言葉としては、
「バーバーブー?」(=大丈夫?)
「くこ」(=ウンコ)
「くった」(=靴下)
なんてものがあります。
そうそう、最近面白いのは、2歳2か月にして「漫才」のボケツッコミを覚えたということなんです!娘が、
「パパ、行こかあ」
と言うので、
「○○ちゃん、行こかあ」
と答えると、
「いやや!」
と言うので、私が、
「なんでやねん!」
と突っ込むと、これがとっとも面白いらしくて、何回も何回も繰り返しやらされます。
ええ加減にカンベンしてくれよお・・・。

2007/4/8
(追記3)

娘の言葉、続編です。
「あちゅけて」(=たすけて)
「ちがゆ」(=ちがう)
「きゅーしゅ」(=ジュース)
だとすると、「九州でジュース」と言うと、
「きゅーしゅできゅーしゅ」
となるのかな?

2007/4/9


◆ことばの話2764「お時間いただいても大丈夫ですか」

最近、よく後輩の女性から、
「お時間いただいても大丈夫ですか」
と聞かれたことがあります。この、
「○○しても大丈夫ですか」
違和感を覚えました。
正しくは、「大丈夫ですか」ではなく
「よろしいでしょうか」
でしょう。「大丈夫ですか」に違和感を覚える原因について考えました。
「大丈夫」かどうかというのは、
「尋ねた本人の行為の許可・不許可」
を尋ねているのではなく、
「許可を前提とした場合の相手の状態を心配」
しているのです。これに対して本来の「よろしいでしょうか」は、
「相手の許可を求める」
もの。つまり「へりくだっている」のです。
しかし「大丈夫ですか?」は、許可が出たことを前提にしてものを言っているので、特に目下や年下の者から言われた場合には、その丁寧でやさしい口調とのギャップに戸惑いながらも、
「上からものを言われたような不快感」
を覚えるということなのです。
もちろん、いっしょに歩いていた人がこけたとき
「大丈夫?」
と尋ねることは、「大丈夫」の本来の使い方なので、なんら問題はありません。
また、「大丈夫ですか」には「思いやりの気持ち」も含まれているので、親しい間柄で使われる際にはなんら問題がないどころか、「よろしいですか」のようにかしこまった物言いよりも好まれるのかもしれません。特に女性の場合は。ある意味「女性語」「丁寧語」なのかもしれませんね。
2006/12/15


◆ことばの話2763「ベロ」

駅の改札の前。平日の昼下がり。
どうみても80代のおばあさんが4人まるで「Gメン75」のように、横一列で歩いてきます。その中の「丹波哲郎さんもかくや」というおばあさんの話す声が耳に入ってきました。
「ベロが、ねばついてな。」
おお、「ベロ」!しかも「ねばつく」!!魔法使いのおばあさんのヨーダ、いや、ようだ。
久々に聞きました、この言葉。「ベロ」は「舌」のことですね。大阪弁なのかな?「ねばつく」も大阪弁のイメージが。イメージ映像としては納豆にオクラを混ぜた感じでしょうか。牧村史陽『大阪ことば事典』を引いてみよう・・・予想に反して「ベロ」も「ねばつく」も載っていませんでした。ということは「ベロ」は標準語幼児語?あ、もしかしたら外来語かも?『新明解国語辞典』を引くと、
「べろ」=「舌」の意の口語的表現。
「ねばつく」=ねばって、くっつく
と載っていました。口語的表現かあ。
おお、いやだ!「ねばつく」はなんだか密着感の強い言葉です。まさに粘着質。しかも「ベロ」が「ねばつく」・・・。口の中がカラカラに乾いてきました。『新潮現代国語辞典』は、
「べろ」=(俗)舌。
「ねばつく」=粘って物につく。ねばねばする。
わりと簡単な記述でした。『日本国語大辞典』の「ベロ」は、さすがに用例が古いものも載っています。
「べろ」=(1)舌(した)。(2)(1に形が似ているところから)江戸時代、一両小判をいう。舌。(3)牛。べこ。(4)1に似た形をしたもの。「靴のべろ」
(1)の用例としては、『物類称呼』(1775)の、
「鮎魚女あいなめ<略>又、べろ といえるは東国片鄙の小児舌のことをいふ也 四国にても舌を べろ と呼もの稀に有也」
というものと、『洒落本・真女意題』(1781)から、
「真赤く塗だ人形か舌(ベロ)を出した」
という用例が載っていました。随分古く200年以上前の江戸時代に、
「東国の片田舎の小児語」
として「ベロ」は存在していたんですね。関西(西日本)にはなかったんだ、四国を除いて。
「ねばつく」=粘って物につく。ねばねばする。べたつく。(例)『日葡辞書』(1603−1604)「Nebat*uqi,u,ita(ネバツク)」、『刺青』(1910)<谷崎潤一郎>「あのしっとりとした、重い冷たい布が粘つくやうに肉体を包む時の心好さを思ふと」、『飼育』(1958)<大江健三郎>「充血した眼、粘ついて絡んで来る眼で僕を見あげた」
(*はポルトガル語の文字、下線は道浦)
谷崎潤一郎、すごい。「ふとん」のことを、こんなにねばついた表現で書けるなんて!
なお、「ねばつく」の横の見出しは「ネバダ」でした。ネバってるねー、この州は。シエラネバダ山脈。これはスペイン語で「雪の山」「ネバダ」は「雪」なんでね。日本語の語感とは随分違いますね。粘る雪。
おっと、ずいぶん横道にそれた。「ベロ」と「ねばつく」は、なんとなく分りました。現在はあまり耳にしなくなってきている言葉のようです。
そんな「ベロがねばついた」おばあさんたちが通り過ぎると、今度は2歳ぐらいの女の子が、
「やばい!やばい!」
と言いながら、走っていきました。彼女たちの「ベロ」は「ねばついていない」のでしょうね。2006年、師走の風景でした。
2006/12/15


◆ことばの話2762「毎晩のアクセント」

テレビで「ムヒソフト」のコマーシャルを見ていて、
「毎晩」
のアクセントが気になりました。最初は若い女の子が、
「毎晩(LHHH)、かゆいのよ」
「平板アクセント」で言い、それを聞いて出てきた和服の少し年かさの女性が、
「まあ、毎晩(HLLL)?」
「頭高アクセント」で言いました。
私はこれは、最初の「平板アクセント」の方が「副詞」で、あとの「頭高アクセント」の方が「名詞」なのではないか?と思ったのです。
この「毎晩」『NHK日本語発音アクセント辞典』には載っていないのですが、同じようなもので見出しに載っているものに、
「毎日」
があります。これも同じ傾向があるのではないか?と思いましたが、こちらのアクセントは「頭高アクセント」しか載っていません。
もう一つ、時制を表す言葉でアクセントで品詞が変わるものには、
「きのう」と「おととい」
があります。
「きのう(LHH)」=  副詞   「きのう(LHL)」=  名詞
「おととい(LHHH)」=副詞   「おととい(LHHL)」=名詞
のように、
「平板アクセント」=「副詞」
「中高アクセント」=「名詞」
ですね。「中高アクセント」や「頭高アクセント」は「起伏型アクセント」と呼ばれて、同じ仲間です。そういう意味では、
「名詞」=「起伏型アクセント」
ということで括れると思います。こういった区別が、もしかしたら「毎晩」にはあるのかも知れませんね。
「毎日」も、アクセント辞典には載っていませんが、もしかしたら「平板アクセント」の「まいにち(LHHH)」が「副詞的用法」で使われているような気がします。いかがでしょうか?
2006/12/12


◆ことばの話2761「伊丹空港のカレースタンドにて」

出張の帰りの伊丹空港のロビー。到着が正午過ぎだったのですが、出口に出る前のところにあるカレースタンドから、とってもいい香りが。そここで昼食をとることにしました。
スタンド(スツール)に座ってカウンターでカレーを食べていたら、40歳ぐらいの客が来て、すぐにひとこと、
「カレー」
とワンフレーズ注文。これに対して、立ち仕事のウエイトレスは間髪を入れず早口で、
「以上でよろしかったですか?」
注文を聞き取れなかったウエイトレスがまた聞いてきたと勘違いした男は、もう1度ひとこと、
「カレー!」
ウエイトレスはほかにコーヒーなどはいらないかという意味で、もう1度、
「以上でよろしかったですか?」
男は異常にハラが減っていたからか、もしくは異常に怒りっぽかったのか分りませんが、「なんで2度も繰り返し注文してるのに、こいつは聞き入れないんだ!」
という感じでハラを立てて、なんとそのまま、席に置きかけた荷物を持ってプイっと立ち去ってしまいました!
ウエイトレスは、あっけにとられてました。
これは、ウエイトレスがマニュアルどおりに「以上でよろしかったでしょうか?」と繰り返すのではなく、ひとこと添えてニコッと笑顔で、
「ご注文はカレーだけでよろしいですか?お飲物はいかがですか?」
とゆっくり聞いていれば、カレー1杯分600円、あるいはそれ以上の売り上げを増やすことが出来、客も空腹を満たすことができて幸せだったのに・・・。
実はこの店のウエイトレスは、先に私が席についたときにも、
「カレーください」
と注文したあとに、水を持って来たと思ったら、
「ご注文は何にしますか?あ…」
ということがあり、
「もう、今、言うたやんか」
と、口にこそ出しませんが、思ったのでした。機嫌の悪い時の私ならば、
「人の言うことをちゃんと聞いて、脳みそで考えてから働かんかい!」
と叱りつけているであろうところですが、大人の対応をすることが出来たこの日の私は、特にトラブルも起こしていないのでした。
さらに、あとから来た女性客が、
「すみませーん」
と呼んだのに、聞こえないのか聞こえないフリをしていたのか、まったく無視。少し大きな声でもう一度呼んで、ようやく客のカウンターへ向かったのでした。客の姿は見えているはずなのに、「いらっしゃいませ」ぐらい言えんか?ま、はっきり行って接客態度はなっていません。
また客も客で、みな食べ終わったら「ごちそうさん」も言わずに「無言で」立ち去っていく。カレーは結構うまいし、香りにつられてスタンドに座ってしまったくらいのものなのに…。ウエイトレス側から店の雰囲気を変える必要性を感じました。
あの店の対応は、伊丹空港に来た大阪以外からのお客さんの大阪に対するイメージを、著しく貶めていると思います。素早い対応が待たれます。
そう言えば、こないだ出張で行った愛媛の松山空港のうどん立ち食いカウンタ−の女性の対応も、ひどかったけどね。空港のカウンターで立ち仕事をしている女性は、なんか、イライラしているというかやる気なさそうと言うか。この1か月に出くわした2つの空港での出来事です。(それを普遍化するつもりはありません)
家に帰って妻にこの出来事を話し、
「カレーは結構おいしかってんけどなあ、いい香りしてて・・・残念や」
と話すと、あきれた顔をして、
「あんなのレトルトに決まってるじゃない」
と言われてしまいました。そうなのか?そこまで騙されていたのか、俺?
(レトルトが悪いというのではなく、その店での手作りではないという意味です。悪しからず。)
2006/12/11
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