◆ことばの話2755「風水のアクセント」

夕方の日本テレビ「ニュース・リアルタイム」の男性ナレーターが、占い(?)の
「風水」「平板アクセント」で、
「フースイ(LHHH)」
と読んでいるのを耳にして「うん?」と思いました。普通は「頭高アクセント」で、
「フースイ(HLLL)」
ではないか?と思ったのです。そこで、『NHKアクセント辞典』をみると、たしかに「平板アクセント」の、
「フースイ(LHHH)」
しか載っていません!
しかしこの「風水」は「風と雨」、つまり「風水害」の「風水」なのではないでしょうか? 占いの場合は「固有名詞扱い」で、「頭高アクセント」の「フースイ(HLLL)」しかないのではないか?と思うのですが。
新幹線の「はやて(HLL)」と、「疾風」の「はやて(LHH)」の違いと同じではないか、と思うのですが、いかがでしょうか??
この疑問をNHKの原田邦博さんにぶつけたところ、
「『日本国語大辞典』や『新明解国語辞典』を見ると、両方の意味を記載したうえで『平板アクセント』のみを採用しています。ですから、もともとはどちらも平板だったのが、昨今の「風水ブーム」のなかで、関係者が「頭高」を使用したことから広まったのではないでしょうか。「固有名詞」ではないように思います。あるいは「背景」「解決」「指導」の頭高化に通じるのかも?」
というお返事をいただきました。頭高アクセントの方が新しいのは確かですが、急速に昨今の「風水」の意味の方が使われるようになって、「頭高アクセント」が定着したのでしょうね。おそらく、まだ辞書が追いついていないのでしょう。
今後も「風水のアクセント」に注目です!
2006/12/1
(追記)

12月20日、漫才コンビ「カンニング」の中島忠行さんが、2年間の闘病生活もむなしく亡くなりました。35歳でした。そのニュースを見ていて思ったのですが、このコンビの名前も、普通名詞(試験の時に人の答案をこっそり見ること)で言うと「平板アクセント」で、
「カンニング(LHHHH)」
なんですが、これが固有名詞(漫才コンビの名前)になると、「頭高アクセント」になって、
「カンニング(HLLLL)」
となるのですね。
合掌。
2006/12/21


◆ことばの話2754「シチ面倒くさいのシチ」

「しち面倒くさい」
という言葉の頭に付いている、
「しち」
って一体何だろうか?ということが、急に気になりました。そこで『広辞苑』を引いてみると、
「接頭語」
になっていました。でも、
「しち(四智)」
という仏教用語があるから、「面倒」という言葉の響きから、もしかしたら「仏教用語」かもしれませんね。『日本国語大辞典』を引いてみましょう!
「しち」(接頭)形容詞や形容動詞の上に付いて、程度を強めるとともに、わずらわしくていやだという気持ちをあらわす。「しちくどい」「しちめんどうくさい」「しちむずかしい」など。
へー、「しちくどい」とか「しちむずかしい」なんてのもあるのか。Google検索(12月2日)です
「しちめんどうくさい」= 687件
「しち面倒くさい」= 714件
「しち面倒臭い」= 982件
「しちくどい」= 109件
「しちむずかしい」= 59件
「しち難しい」= 157件
おお!「しちくどい」「しちむずかしい」それに「しち難しい」は、一応使われているのですね!驚きました。
「こむずかしい」よりも「しちむずかしい」の方が難しいそう。でも「しちめんどうくさい」「しちくどい」とは言っても「こめんどうくさい」「こくどい」とは言いませんね。
「こめんどうくさい」= 21件
「こ面倒くさい」= 83件
「こ面倒臭い」= 17件
「こくどい」= 27件
ね!ほとんど使われていませんね。こうやっていちいち検索するのも、結構「しち面倒くさい」のですが・・・。それにしても、言葉って不思議だなあ。
2006/12/2


◆ことばの話2753「ハジブ」

『JAF・MATE』という雑誌の2006年12月号「海外交通ニュース」のイランの欄に、「女性専用タクシーが必要なわけ」という記事が。そこに載っていた写真の女性タクシー運転手は、髪や体の線を隠す黒いイスラムの衣服を身にまとっていました。それを着用する義務があるんだそうです。その衣装の名前は、
「ハジブ」
と言うそうです。
あ、なぜ女性専用タクシーが必要かと言うと、イランでは鉄道が発達していないので、タクシーは都市に住む人にとっては重要な交通手段なのですが、女性が男性運転手のタクシーに乗ると、夫が嫉妬するとか、男性運転手に暴行されかかったことがあるなどの理由からだそうです。とんでもないなあ。
そして11月30日、カタールのドーハで開かれているアジア大会の女子サッカー・なでしこジャパン(日本代表)の試合を見ていたら、対戦相手のヨルダンの選手のうち何人かは、頭に白い布をかぶっていました。下は普通のユニフォームで、短パンをはいていましたが。あんな布をかぶったら視野が狭くなるし、ヘディングとか、やりにくくないのかなあ。あの白い布も髪を隠すものでしょうが「ハジブ」と言うのですかね?サッカーの国際試合で、ああいういでたちは初めて見ました。陸上競技では見たことがありましたが。あれ?ちょっと待てよ。ハジブ・・・あ、そうか髪を隠しているのは、
「ヘジャブ」
だ!フランスの学校での着用を禁止された、あのヘジャブ!(平成ことば事情1563「ヘジャブ」をご参照ください)
そうかフランス語では「ヘジャブ」で、イラン語(アラビア語?)では「ハジブ」なのか。微妙に違いますね。
2006/12/2


◆ことばの話2752「ベビーカーとバギー」

ニュース原稿に、
「ベビーカー」
という言葉が出てきました。最近は、「ベビーカー」のことは、
「バギー」
と言うのではないか?と思ったのですが、そもそも「ベビーカー」と「バギー」はどう違うのか?「ベビーカー」はわかりやすいのでもしかしたら「和製英語」なのかも?
とりあえず国語辞典を引いてみました。『大辞林・第二版』では、
「バギー」(buggy)=(1)折りたたみ式の小型のうば車。ベビー・バギー。(2)(サンド・バギーの略)砂地を走行するためのレジャー用自動車。タイヤが太い。(3)小型の運搬車。特に、ガーデニングに使われる一輪の手押し車。ガーデン・バギ−。
「ベビーカー」=(和baby+car)赤ん坊を腰掛けた形で乗せる(折りたたみのできる)乳母車。
あ、やっぱり!「ベビーカー」は和製英語か!
「ベビーカー」も「バギー」も意味は同じだけど、和製英語か英語かという違いのようですね。「乳母車」との違いは、「ベビーカー」も「バギー」も「折りたためる」という点。これは利用者の立場から言わせてもらうと、本当に便利です。私なんか片手でヒョイっと折りたためますよ。
その昔、私がそれに乗っていた頃は「うば車」、それが和製英語の「ベビーカー」になって、最近ベビー用品の名前が英語になってきたことの流れ(参考・平成ことば事情584「スタイ」、2228「アフガン」をお読みください)の中で「バギー」という呼び名が広がってきているということですね。
もしかしたら、これは大店法の関連で「ベビザらス」のような外資系の子ども用品店が進出してきたことも関係しているのかもしれませんね。
2006/12/2


◆ことばの話2751「セブンイレブンの略称」

皆さんはコンビニエンスストアの
「ファミリーマート」
のことを略して、
「ファミマ」
と言いませんか?実際その略称をそのまま付けた、高級感のあるコンビにもあるようです。(略称が高級感に繋がるのか?という疑問はあるのですが。)
では、同じくコンビニエンスストアの
「セブンイレブン」
のことをあなたはどう略しますか?
去年の11月、入社前の女性アナのタマゴ(当時)に「セブンイレブンの略称」について、
「若者ことば辞典によると、もう10年前から『ブンブン』という言い方があるよ」
と話したところ、後日、こんな返事がメールで返ってきました。
『10年前からブンブンと呼ばれていたとは驚きです!結構メジャーな呼び方なんですね。
あの日アナウンス部にいらっしゃった方と、私がアドレスを知っている先輩方に聞いたところでは、
「略さない」=8人
「セブン」=3人
「イレブン」=1人
「セブレ」=1人
「コンビニ」=1人
でした。』
という返事でした。
それから1年。
先月(11月)24日、武庫川女子大学で開かれた言語セミナーでの講演で、大阪外国語大学の小矢野哲夫教授は、「ファミリーマート」のことを「エフ(F)」、そして「セブンイレブン」のことを、あえて隠語風に、
「なな(7)」
とおっしゃっていました。その前にマンガの
「NANA」
の中に出て来る言葉の話をされていたので、ちょっと、ややこしかったです・・・。
2006/12/2
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