◆ことばの話2750「ご当地検定」

今年初めのこと・・・と言うと、もう丸1年経ちちますが、2006年1月14日の日経新聞に、
『初の「奈良検定」来年1月実施』
という見出しが。そう言えば「○○検定」という、
「ご当地検定」
がブームです。2004年に始まった通称「京都検定」(京都・観光文化検定試験)がブームの火付け役でしょうね。今年も12月10日に「第3回」の京都と検定が行なわれるようです。
2006年3月5日には、兵庫県明石市で、
「明石・タコ検定」
が行なわれ、533人が受験したと、「ニューススクランブル」で特集していました。試験の内容は、たとえば、
「タコの血の色は?」
など100問で、80点以上の方には、「タコ」だけに、
「お墨付き認定書」
が授けられるそうです。うまい!(なお、正解は「青」なんだそうですよ。)
第1回の合格者は442名(合格率83、4%)でした。また7月2日には第2回の検定が行なわれ、10歳から79歳まで580人が受験しました。
そして10月8日には鳥取県境港市で、
「境港妖怪検定」
が行なわれました!境港と言えば、妖怪マンガで有名な水木しげるさんの故郷。そこで「妖怪検定」となったわけですね。でも境港と言えば、漫才の大助・花子の大助さんの出身地でもありますから、そのうち、
「夫婦(めおと)漫才検定」
なんてのが行なわれたりして・・・。
このほかにも、「尾張一宮学科検定」「高崎山サル博士検定」「香住!カニ検定」「足利ふるさと検定」「大江山鬼検定」「ふるさと小松検定」「映画検定」「伊賀学検定」「阪神タイガーズ検定「函館歴史文化観光検定」「小樽観光大学校年亭資格試験」「札幌シティガイド検定」「「彦根城下町検定」「大阪検定」「いばらき何でも知っとこ検定」「いたみ学検定試験」「奈良まほろばソムリエ検定」「姫路観光文化検定試験」「白鷹SAKE検定」などなど。
日本商工会議所の「ご当地検定情報」によると、2006年10月現在、商工会議所が主催・共催も含めて43、NPOなどが主催するものを含めると優に60を超えるそうです。
このほか検索してみると「ご当地検定DS」というのもありました。これの「47都道府県の方言」の見本、音声付きでおもしろいですよ。
http://www.spike.co.jp/gotouchi/map.html
町起こしの一貫として、全国各地で行なわれ始めた「ご当地検定」。自分の街の歴史を改めて知るための一助としても、なかなかよいことではないでしょうか。
なおGoogle検索(12月2日)では、
「ご当地検定」=34万3000件
「奈良検定」=  1万7000件
「京都検定」=155万    件
「明石タコ検定」=  1910件
「境港妖怪検定」=1万9300件
でした。
2006/12/2


◆ことばの話2749「ソリティア」

映画『父親たちの星条旗』に出てきた、先住民兵士・アイラが好きだった、
「トランプの占いのような一人遊び」
の名前が、
「ソリティア」
だそうです。「ソリテリア」というと、
「カーペンターズの曲にも『ソリティア』というのがあった」
と思いますが、それも、カードの遊びのことだったのでしょうか!英語の歌詞はよく分らなかったのですが・・・。今から30年ぐらい前にはやりましたよね。
ネットのフリー百科事典「ウィキペディア」によると、
「ソリティアは、一人で遊ぶ事のできるゲームの事でトランプやボードとコマなどを使い、与えられた目的を達成することを楽しむ遊び。パズルも一種のソリティアである。
特に、トランプの「一人用ゲーム」(カード・ペーシェンス)の総称として、言う場合がある。ソリティアとして、多数の種類がある。」
とのことでした。
2006/12/1


◆ことばの話2748「泥臭く」

『現代用語の基礎知識2007』「日本のことば」に、今年も執筆しました。発売中です。その中で、編集部から「これについて書いて!」と要望があって初めて気づいた言葉がいくつかあります。そのうちの一つは、
「泥臭く」
という言葉です。注意してみていると、なるほど最近はよく使われているようです。
10月11日の日本経済新聞・夕刊には、
「インド戦、播戸に期待〜サッカーアジア杯予選、泥臭く得点狙う」
10月12日の同じく日経新聞には、期待通りインド戦で2得点を挙げた播戸選手に関する見出しで、
「泥臭く懸命に〜播戸2発」
という見出しと、本文にも、
「播戸がDFの体の前に泥臭く頭から飛び込んで奪った。」
と、「泥臭く」がまた使われていました。きれいな芝のピッチでも「泥臭く」ですね。実際の「泥」は関係ありません。
サッカーだけではありません。本当に文字通り「泥まみれ」になるイメージが多いラグビーも、10月4日の日経新聞・夕刊で、日本ラグビーの最高峰トップリーグに初参戦して約1か月の「コカ・コーラウエスト」が、4戦して1勝3敗で「通用する部分もある」という記事が載っていました。見出しは、
「泥臭いラグビー手ごたえ」
本文を見ると、
「格上の相手に激しく泥臭いプレーで対抗」
でした。対戦したトヨタ自動車の監督の評は、
「ひたむきでいいチーム。トップで上位を争う実力はある。」
というもの。そういうチームのことを、
「泥臭いチーム」
と呼ぶんでしょうね。「泥臭い」は、さらに野球でも!
11月14日、プロ野球セントラル・リーグの2006年度新人賞を獲得した、広島カープの梵(そよぎ)英心選手(26)が、インタビューに答えて、
「泥臭く全力でやるタイプなので」
と話していました。
また、第33回社会人野球日本選手権・第3日(京セラドーム大阪)の様子を報じた11月21日の毎日新聞の見出しは、西濃運輸を4対3で下したディフェンディング・チャンピオンの松下電器のことを指して、
「連覇へ松下泥臭く」
でした。どういうふうなことが「泥臭い」かと、本文を読んでみると、
「送りバント」
が、まず「泥臭い」ようです。
『これまでは2死になると危険を冒すより、長打で点を取ろうとしていた。でもそんなきれいな野球をしていては勝てない』九回にも失敗に終わったが、新田が1死から送りバントを試みている。」
長打で点を取ろうとするのは「きれいな野球」で、送りバントを使うのは「泥臭い野球」なんですね。
バントでも敵失を誘ってでも、塁に出たり、走者を進める。六回に二ゴロで一塁にヘッドスライディングした3番梶原しかり、七回に『何が何でも』とボールにくらいつき、イレギュラーバウンドの適時打を放った新人坂口しかりだ。鮮やかでなく、泥臭かったからこそ、かえって印象に残る勝ち方だった。」
これは書名記事で、「長谷川隆広記者」が書いています。
私が『現代用語の基礎知識2007(自由国民社)に書いたのは、以下のような文章です。
****************************************
「泥臭く」
「泥臭い」は『日本国語大辞典』によると「姿やふるまいがあかぬけていない。いなかくさい。やぼったい」とある。しかしその見た目とは裏腹に、「地道に成果を挙げる」プラス面に光を当てた使われ方をされ始めている。
2006年ワールドカップ・ドイツ大会の日本代表メンバー発表の際、ジーコ監督が最後にその名を読み上げた、巻誠一郎選手(ジェフ千葉)が、その直後に感想を「しつこくボールを追いかけ、自分らしい泥臭く、アグレッシブなプレーをしたい」と述べたがその中に「泥臭く」があった。決して華麗でも上手くもない反面、しぶとく地道な努力の積み重ねを思わせる形容詞だ。また2006年3月、バレーボール男子Vリーグで8シーズンぶり3度目の優勝を果した堺ブレイザーズの中垣内監督も、就任2年目での優勝に「感無量。泥臭く、1点を取りにいった結果です。」とコメントした。
スポーツだけではない。2006年に結成30周年を迎えた劇団「東京乾電池」のメンバーが、それまで所属していた「自由劇場」を飛び出したときの動機は「泥臭くて下らない芝居をやろう」ということだったという。「泥臭く」が持つマイナス・イメージを、上っ面だけのきれい事ではない、いぶし銀的な渋み、粋を表す言葉として使われるケースが増えたことは、「見た目よりも中身」を求める”本物志向”の人が増えたということかもしれない。
こういった使われ方がいつ頃から始まったのかは定かではないが、同じようにマイナスイメージの言葉をプラスイメージで使う例として「(良い意味で)ファンの期待を裏切る演技を目指す」「見た目を裏切る広さ」という使われ方を始めた「裏切る」という言葉があるが、この使い方が広まったのが2001年秋頃。「泥臭い」もそのあたりからか?

ということです。他にもいろいろ書いてますので、『現代用語の基礎知識2007』、買ってくださいね!え?もう買った!ありがとうございます!!では、お子さん用、会社用、お友だち用に、もう1冊、いかがですか?・・・・・これも「泥臭い」営業活動です。
2006/12/2
(追記)

2009年2月11日の読売新聞スポーツ面第2回WBC(ワールド・ベースボール・クラシッ)の臨む代表選手の特集の見出しが、
「泥臭く 貪欲に」
でした。西武ライオンズの中島裕之選手について斎藤明徳記者が書いている文章の見出しです。
本文の中では、どういうふうに「泥臭く」が使われているかというと、
「松井稼(現アストロズ)の米メジャー移籍でスターダムにのし上がったが、エリートとはひと味違う。『チャンスをもらった時に絶対つかもうと思って、準備する。そういうのをいつも思ってますね』。泥臭く積み重ね続けて、今度はWBCの舞台が待つ。」
要するに、
「かっこよくスマートではない、地道な積み重ね」
を指して「泥臭く」と使っています。
なお、「貪欲」の「貪」は常用漢字ではありませんが、見出しにはルビはなく、本文の中では、
「更に貪欲(どんよく)になった。」
と、ルビが振ってありました。
2009/2/12


◆ことばの話2747「牛ふんと鶏ふん」

近くの日曜大工センター(だっけか?)の横を通ったら、園芸用の肥料が、セメント袋ぐらいの袋に入って山積みされていました。何気なく目をやると、
「鶏ふん 15Kg94円」
と書いてありました。セメント袋一袋で15キロ、たったの94円!安いなあ。まあ、「ふん」ですからね。でも思わず、園芸なんかしないのに二袋ぐらい買おうかと思ったぐらいです。さらにその横に目をやると、今度はこんな表示が。
「牛ふん 40L、248円」
思わず、
「さすがに牛ふんは高いなあ(たったの248円なのに・・・)」
と思ったのは束の間、ヘンなことに気づきました。それは、
「なぜ、鶏ふんと牛ふんでは、キログラムとリットルというふうに単位が違うかの?」
ということです。重さで表示するのは、たとえば
「コメ 10キロ」
などで、慣れていますが、同じような袋に入っていながら、なぜ「牛ふん」は、
「L(リットル)」
という容積の単位で表すのでしょうか?「牛ふん」は、乾いてないのかな?・・・それは嫌だなあ、もって帰るのが。座席シートには置きたくないな。実際、「固形物ではない」のかもしれませんね・・・。Googleで「牛ふん、リットル」で検索したら(12月1日)、715件出てきました。その中には、
「乾燥無臭牛ふん 5リットル」
などと書かれていましたから、私が心配したような事態は避けられそうな形態になっているようです。それならなぜ「リットル」なのか?あ、軽いからかな?キログラムにするととてつもない量になってしまうからか?サイトの中を見てみると、
「観葉植物用の土」
「リットル」表示でした。さらにネットサーフィンしてみると、独立行政法人・農業・食品産業技術総合研究機構・果樹研究所というところのサイトに、
「特殊肥料の品質表示基準を定める件」
という農林水産省告示第364号という平成17年4月1日に施行された法律が載っていました。それを見ると、
「正味重量は、キログラム単位で記載すること。ただし、容積量をリットル単位で併記することができる。」
とあります。つまり「原則はキログラム」で「リットルも併記」なのかな?
また調べておきますね。
2006/12/1


◆ことばの話2746「食卓にのぼるか?あがるか?」

後輩のディレクターから、質問を受けました。
「道浦さん、『食卓に』の後に続くのは『あがる』でしょうか?『のぼる』でしょうか?」
まーた、難しいことを聞いてくるねえ。
うーーん、と考えてこう、答えました。
「『のぼる』は過程を経て(家庭に)やってくるということで『過程重視』、それに対して『あがる』は過程はあまり加味・考慮せずに『その場に出た』ということのみを表しているんじゃないかな。」
似たようなものには、
「話題にのぼる・あがる」
「議題にのぼる・あがる」
がありますね。
でも、表記だけだったら、
「上る」
にしておけば(普通は「のぼる」だけど「あがる」と読めないこともないので)済む話かもしれませんねえ・・・。
2006/12/1
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