◆ことばの話2745「知人と知り合い」

滋賀県多賀町の町議会議長が、知人の女性(51)と一緒にタクシーに乗った際に、胸を触ったりキスをしたりしたために女性の訴えを受けて警察が捜査、9月28日に強制わいせつの疑いで逮捕されました。このニュース原稿に出てきた、
「知人の女性」
ですが、「知人」を「知り合い」に置き換えるかどうかで悩みました。結局そのまま、
「知人」
で読んだのですが、「知人」と「知り合い」は、どうニュアンスが違うのでしょうか?
思うに、「親密の度合い」が、
「知人 < 知り合い」
のような気がします。なぜか?「知人」という漢語だと公の場で使う言葉で、いきおい、その関係も公の場を中心としたもの、個人的な付き合いはあまりしていないような感じその人の奥さんの名前までは知らないし、子どもが何人いるかも知らないような、そういった感じが「知人」。そしてもう少し個人的にプライベートの部分でもつきあいがあるような感じがするのが「知り合い」話し言葉的でなじみやすさを感じますね。もちろん、奥さんの名前も分っていて、お互いの家にも行ったことがあったりして。
そういう感覚だと、やはりこの事件の場合は「知人」だからこそ起きたような気がします。「知り合い」には親しいからこそ、このようなことはしないでしょう。(親しいからするかもしれないけど・・・)
もしくは容疑者は相手を「知り合い」以上の関係だと思っていたのに、女性は「単なる知人」だと思っていたということだとも言えるのではないでしょうか。
『日本国語大辞典』を引くと、
「知人」=知っている人。しりあい。しりびと。ちかづき。
「知り合い」=知りあうこと。また、知り合った相手の人。知人。ちかづき。
でした。こういうときはあまり役に立たないな。『新明解国語辞典』を引いてみるか。
「知人」=何らかの関係で互いに知っている人。知り合い。知己。
「知り合い」=交際して、相互の実情・気心などを相当の程度まで知っていること。また、そういう関係にある人。
うん、こっちの方が「肌が合う」感じがしました。
2006/11/30


◆ことばの話2744「3便のアクセント」

これも以前、書いたような気がするのですが、検索しても出てこないので・・・。
台風13号が日本列島を襲った9月17日、NHK総合テレビの20時45分のニュースで、末田正雄アナウンサーは「503便」の「3便」を、
「サンビン(LHHH)」
「平板アクセント」で読んでいましたが、全国ニュースに続いて出てきた大阪放送局の坪倉善彦アナウンサーは、「頭高アクセント」
「サンビン(HLLL)」
と読んでいました。この坪坂アナウンサーは、「4便」「2便」も「頭高アクセント」
「ヨンビン(HLLL)」「ニビン(HLL)」
でした。
NHKアナウンス部のサイトによると、末田アナは昭和26年(1951年)生まれで広島県出身、坪倉アナは昭和40年(1965年)生まれの東京都出身です。年代や地域の差なのでしょうか?わかりません。
もう一つは、後輩のHアナウンサーが言っていたのですが、
「頭高アクセントと平板アクセントでは、意味が違う」
という話です。
つまり
「頭高」だと、「第3便」(「ANA003便」のような)
を指し、
「平板」だと、「合計3便」
を指すというような使い分けをしているという説です。うーん、果たしてそこまで考えて統一して使い分けられているかと言うとかなり疑問ですね。でも可能性は、ないことはない。本当のところはどうなんでしょうね?
2006/11/30


◆ことばの話2743「完膚なきまでに」

テニス教室に通っている小3の息子。同じクラスに、結構強い女の子がいるみたいで、その子に関して、こんなことを言いました。
「完膚なきまでに叩きのめしたいねんけど、なかなかできへんねん。」
「ちょ、ちょっと待てや。どこでそんな『完膚なきくまでに叩きのめしたい』なんて言葉、覚えたんや?」
「ん?『テニスの王子様』に書いてあったもん」
そうなんです、
「まだまだだね」
という生意気なセリフが口癖の、ちょっとニヒルな天才テニス中学生が主人公のマンガ、
『テニスの王子様』(略称『テニ・プリ』)
に、息子ははまっていて、何回も何回もその単行本を読み返し、またテレビ東京系で放送していたアニメのビデオを何回も何回も見ては、同じところで笑っています。その中で覚えてしまった言葉なのでしょう。使い方(使うシチュエーション)としては間違っていないですが、小学3年生が使う言葉ではないでしょう。まいったなあ・・・。
2006/11/30


◆ことばの話2742「知恵の神様」

11月24日のお昼のニュース、奈良県桜井市にある安倍文殊院では、色とりどりのパンジーの花で来年の干支・イノシイ(亥)をかたどった、合格祈願の花絵ができたという原稿を読みました。
ただ、下読みの段階で、気になる表現が。
「知恵の神様をまつる安倍文殊院では」
とあったのですが、和亜ツィが引っかかったのは、
「文殊菩薩は神様か?仏様ではないのか?」
ということです。『広辞苑』を引くと、
「文殊菩薩」=「仏の知恵を象徴する菩薩で、特に般若経で説かれる。(以下略)」
とありました。
そのことをデスクに言うと、
「す、すみません!」
ということで結局原稿は、
「仏の知恵をつかさどる文殊菩薩をまつる安倍文殊院では」
となって放送されました。
しかし!放送後に「菩薩」を引いてみるとそして、
「菩薩」=(1)さとりを求めて修行する人。もと、成道以前の釈迦牟尼および前世のそれを指して言った。(中略)観世音・地蔵のように、仏に告ぐ崇拝対象ともされる。(2)略(3)神仏習合による日本の神の尊号。「八万大菩薩」
とありました。この(3)の意味だと、
「菩薩=神」
なのですね!あらまぁ・・・・!
日本人は、
「神様仏様」
とひっくるめて言うぐらいで、あまり区別なく神様も仏様も使っていますが、やはり注意しないといけないと思うのですが、『広辞苑』に出てきた、
「神仏習合」
が曲者ですね。これも引いてみよう。
「神仏習合」=「日本固有の神の信仰と仏教信仰とを折衷して融合調和すること。奈良時代に始まり、神宮寺・本地垂迹(ほんじすいじゃく)説などはその現れ。神仏混淆。」
奈良時代から!随分昔からなんですね。結局この安倍文殊院の場合はどうすればいいのかなあ。「安倍文殊院」のサイトを見てみると、やっぱり
「寺」
ですよね、神社じゃなくて。じゃあ、「神」はおかしいよなあ。難しいよなあ・・・。
2006/11/30


◆ことばの話2741「除雪車」

11月27日の「ニューススクランブル」で、京都府福知山市で除雪車の準備が始まったというニュースが流れていました。そこに出てきたのが、
「京都府除雪車準備車庫」
これはとっても言いにくい!カツゼツ練習用にいいですね!そう思って新人の虎谷温子アナに、
「『京都府除雪車準備倉庫』って、3回言ってごらん!』
と言うと、なんと驚いたことに、
「『京都府除雪車準備倉庫』『京都府除雪車準備倉庫』『京都府除雪車準備倉庫』」
と、スラスラと言ってのけたんではないですか!
「や、やるなあー!」
とほめると、得意げに、
「除雪車は毎日のように口にしていた言葉ですから」
という答えが。あ、そうか、彼女は青森の出身だった!
「昼間は交通の邪魔になるから、毎晩、寝静まった頃に除雪車が来るんです。けっこう音がうるさいんですよ。」
へー、そうなのか。「除雪車」にはほとんど縁のない生活をしていた私なんかは、「除雪車」はけっこう言いにくい言葉だけどな。同じように「除雪車」に縁のない生活をしていてSアナなんて、私が虎谷アナに声をかけたとたん、自分にそーっとアナウンス部を出て行きましたから・・・。
2006/11/28
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