◆ことばの話2685「即決裁判」

10月16日のお昼のニュースで、裁判の迅速化をはかった、
「即決裁判」
というものが今日(10月16日)から始まったと報じていました。それを伝えた日本テレビのお昼のニュースでは、「即決裁判」の対象となる犯罪を説明していました。その中で、
「万引きや外国人の不法滞在、覚醒剤の使用など、比較的軽い罪が対象」
という一文があったのですが、これに引っかかりました。「覚醒剤の使用」が「比較的軽い罪」なのでしょうか?「比較的軽い罪」と言うと、(ちょっと尾篭ですが)立ち小便だとか、なんだかそんな感じを受けます。ここはもう少し正確に、
「比較的、量刑の軽い罪」
というふうに「量刑」もしくは「刑」という言葉を「軽い」の前に付けるべきではないでしょうか?その、たったひとことで、内容がきっちりと際立ってきます。
その日のNHKのお昼のニュースを見ていたら、ちゃんと、
「比較的、刑の軽い罪」と読んでいました。これが正解ではないでしょうかね。

2006/10/20


◆ことばの話2684「青潮」

先日、新聞の一面で、
「青潮」
という見慣れない文字を見ました。「赤潮」は文字も実物も見たことがありますが、「青潮」というのは初めて見ました。Google検索したところ(10月2日)、
「青潮」=8万2800件
と、随分たくさん出てきました。
その後『新解さんリターンズ』(夏石鈴子、角川文庫)を読んでいたら、132ページに「青潮」が出てきました。ということは『新明解国語辞典・第6版』(2004、11)に「青潮」は載っているのか!さっそく『新明解』を引いてみました。
「青潮」=「海底の有機物が腐敗して酸素をほとんど奪われた状態の水塊が海面に上昇し、青白く見える現象」
ちゃんと載っていました。(1997年の5版にはなかったのですね)
『日本語新辞典』(2005、1)『新潮現代国語辞典』(2000、6)には載っていませんでした。でも、『明鏡国語辞典』(2002、12)には載っていました!
「青潮」=「硫化物やプランクトンの色素により海水が青色になる現象。酸素の欠乏で魚類の大量死を招く。」
『岩波国語辞典』(2000、11)にも載っていました。
「青潮」=「沿岸部の海水中の硫化水素が紫外線に反応して青白い帯状にわき上がり漂うもの。水中の酸素が欠乏し、魚や貝を害する。▽「苦潮(にがしお)」とも言う。」
『三省堂国語辞典』(2000、3)にも載っていました。
「青潮」=「酸素がほとんどふくまれていない海水。青白く変色して見える。」
ということで、辞書ではだいぶ採用されている言葉のようですね。
最後に『日本国語大辞典』を引いてみると、「青潮」は載っていたのですが、ちょっと違いました。見出しの「しお」が濁っていて、
「あおじお」
になっていたのです。
「あおじお(青潮)」=「『あおばじお(=青葉潮)』に同じ」
とありました。あれ?これはちょっと違うかな。一応「あおばじお」を引くと、
「あおばじお(青葉潮)」=初夏、青葉の頃にプランクトンの繁殖で濁った海水を押しのけて本州沖に近づく黒潮。青山潮(あおやまじお)。<季・夏>
とありました。ちょっと、違うような気もする。
つまり、昔から「あおじお」という言葉があって、最近「あおしお」という言葉が出てきたのではないか、という気がします。濁るか濁らないかで、違う言葉のようですね。やっぱり日本語は難しいですねえ・・・。
2006/10/20
(追記)

「青潮」が載っていた先日の新聞、というのが出てきました。2006年9月4日の読売新聞朝刊、1面トップでした。見出しは、
「青潮 大阪湾4年7度 頻発」「海底土砂採取 くぼ地一因?」
とあり、リードでの「青潮」の説明は、
「酸素濃度の低い貧酸素の海水によって生物を死滅させる青潮」
とあります。
「貧酸素」
という、意味はよく分るけど見たことのないことばも出てきます。Google検索では(11月30日)、
「貧酸素」=7万2300件
もありました(日本語のページで)。専門用語なのでしょうね。『ウィキペディア』には、
「貧酸素水塊」として載っていて、こう書かれていました。
「貧酸素水塊とは、水中溶存酸素量が極めて不足している孤立した水塊、あるいはこのような水塊の占める水域のこと。これらの移動により、海中あるいは海底に生息する生物の大量死が発生し、漁業や養殖業といった水産業において壊滅的な打撃をもたらす事がある。
閉鎖的な内湾(東京湾、伊勢湾、三河湾など)でよく発生する。」
よくわかりました。

2006/11/30


◆ことばの話2683「夜の虹」

先日、珍しい「夜の虹」が観測されたというニュースを、テレビでやっていました。手前に「(通り)雨」が降って、月の光によって虹が見える、という現象で、
「月虹」「ムーンボウ」
というような名称があるようです。夜に虹が見えることもあるのですね。
そのニュースを見て思い出したのは、NHKの松平アナウンサーが新人の頃の話。
泊りのラジオのニュース番の時に、仮眠で寝過ごしたか何かで、取るものも取り合えずスタジオに入り、初見で天気予報原稿を読んだ時に、
「夜には『ニ』(カタカナの「ニ」を○で囲った記号)があるでしょう」
という一文が出てきた、と。松平アナウンサーはとっさに、
「夜には『虹』が出るでしょう」
と読んだというエピソードだったのですが、正解は、
「夜には『にわか雨』があるでしょう』
だったのです。咄嗟だったので、そう読んじゃった、と。先輩に叱られると思ったら、
「夜の虹とはなかなかロマンチックだねえ」
と言われたと、確か本に書いてありました。確かに「夜の虹」って、ロマンチックな感じがしますね。
ま、しかし、寝過ごさないようにすることと、下読みはキッチリしましょう、ということですね。現実的な話に落ち着いてしまいました・・・。
2006/10/20


◆ことばの話2682「デブ」

朝、会社に来ると、いきなりスタッフの男性から声をかけられました。
「道浦さん、デブって何語ですか?」
え?俺のこと?と一瞬ドキッとしましたが、そういう訳ではないようです。
「うーん、そりゃ日本語だろ。」
「カタカナで『デブ』って書くし、なんとなく外国語が起源のような気がするんですけど。」
「そういう時は、まず辞書を引くこと!」
と、手近にあった『広辞苑』を引くと、
「でぶ」=肥えていること、また、その人をあざけっていう語
とあり、さらに「でぶでぶ」を引いてみると、
「でぶでぶ」=肥えて肉のしまりのないさま。
とありました。
「あ、そうか、『でぶ』は『でぶでぶ』という擬態語からできた言葉じゃないかな。そもそも両方濁音がついた擬態語って、余分にあまっている感があるよね。
『だぼだぼ』『どぼどぼ』『ずぶずぶ』
とかさ。これが、片一方が清音になると、やや軽い感じでちょっとニュアンスが変わってくるんだけど。
『たぼたぼ』(=水が半分ぐらいは入っている感じ)、『とぼとぼ』
なんかね。半濁音もかわいいよ。
『ぷくぷく』『ぷよぷよ』『ぷりぷり』
なんだかいい感じだね。片方だけ濁音でも、
『ぶよぶよ』『ぶくぶく』『ぼよぼよ』
なんてのは、『余分感』にあふれているよね。濁音の『ぶ』と『ぼ』は、ほかの音とくっ付いて『「余分」を表す音』なんじゃないだろうか?で、『でぶ』は擬態語『でぶでぶ』の省略形なんじゃないだろうか?」
「はは、そうすると、外国語ではないんですね?」
「たぶんそうだろうね。」
なんとなく、日本語の擬態語の音の不思議に触れた、朝のひとときでした。
2006/10/20


◆ことばの話2681「イートイン」

先日近くのデパートで「北海道物産展」をやっていました。これって、いっつも人気があるんですよね。北海道の食べ物はおいしいから・・・。
その物産展に、うちの家族(私以外、つまり妻と子ども2人)が行ったそうです。いいなあ。小3の息子の話によると、
「あんなあ、夜7時まではイートインで食べられるねん。だから、がんばって走って行ったから、7時までに間に合ってん」
それを聞いて、聞きなれない「イートイン」という言葉を普通に使っている息子に驚きました。
「イートインって何?」
と聞くと、
「あんなー、そこのお店で買ってな、すぐに食べられる場所があんねん。いすとか机とかあって」
という言葉が返ってきました。なんとなくイメージは沸きましたが、その「イート」は「食べる」ですよね。では「イン」は、「東急イン」の「イン(inn)」?それとも「ズームイン!!」の「イン(in)」?「テーチイン」の「イン」かな?ネットで検索してみると、
「イートイン【eat-in】」
飲食店における商品提供方法の一。物販部分と客席部分とを併用する営業方法で、ファースト-フード店に多く見られる。
とありました。「ズームイン!!」の「イン(in)」でしたね。
『日本国語大辞典』『現代用語の基礎知識2006』『知恵蔵2006』には載っていないようでしたが、「イミダス2006」には載っていました。
「イートイン(eat-in)」=パン屋やファストフード店などの店内で飲食すること。
この「イン」と言う言葉を使ってちょっと遊んでみると・・・
「大学イン、平等イン、敗イン、暴イン、人事イン」
なんてのもあるとおもしろいな。あるけど。
2006/10/20

(追記)

「シアトルベスト」というカフェのレシートに、
「イートイン」
と記されていました。
「店内でのご飲食」
の意味でしょうが、
「持ち帰り」
との区別のためでしょうかね?
2006/11/15