◆ことばの話2655「おさない夢乃ちゃん」

9月25日、埼玉県川口市で、保育園児たちの列に車が突っ込み、小山内(おさない)夢乃ちゃんら保育園児3人が死亡する痛ましい事故がありました。この、
「小山内夢乃ちゃん」
の苗字の読み方を聞いていると、本来なら、
「おさない(LHLL)」
「さ」の部分だけを高く読むはずなのに、どうも、
「おさない(LHHL)」
「さな」を高く読んでいるケースを何度か耳にしました。(9月29日テレビ朝日のお昼のニュースの女性アナウンサーなど)それだと、
「幼い」
と聞こえて、なんだかヘンです。細かいアクセントですが、キッチリと読まないといけないなと思いました。
2006/9/29


◆ことばの話2654「徹底討論」

先日の用語懇談会放送分科会で、
「最近ワイドショーなどで、たった15分しか枠がないのに『徹底討論です』などと言っているのは、おかしい」
という意見が出ました。たーしーかーにー!と言っている尻から、うちの夕方のワイドショー「情報ライブミヤネ屋」で、
「徹底討論です」
とアナウンサーが言っているではないですか!
きっとこれは、「討論」という言葉には必ず「徹底」という形容詞(?)をつけること!と言うことが、「徹底」されているのでしょうね。
このほか、耳障りな常套句には、
「密着です」
「一部始終です」
があります。もうまったく新鮮味のない言葉です。口にすると口がベタベタするような気がします。
乱用しないようにしたいものです。

2006/9/22


◆ことばの話2653「したむきなコメント」

大相撲秋場所は朝青龍の18回目の優勝で幕を閉じましたが、その千秋楽を伝えた9月24日のNHKラジオ第一放送を聞いていたら、敢闘賞を受賞した安馬(あま)関がインタビューに答え、
「さらに稽古に精進します」
と話していました。それを聞いたラジオ解説者が、
「したむきなコメントですね」
と言いました。それを聞いて一瞬、
「下向きなコメント???」
と思いましたが、すぐにこれは「東京訛り」なのだとわかり、本当は、
「ひたむきな(姿勢の)コメント」
と言いたかったのだとわかりましたが、東京(江戸)訛りの、
「ひ」→「し」
という変化が、
「ひたむき」→「下向き」
になってしまった、と。ふーん、こういうケースは、方言が誤解を招く原因になることもありますね。注意しないと。
2006/9/25


◆ことばの話2652「参入」

中公新書の『重光 葵』(渡邊行男著)を読んでいたら、
「参入」
という言葉が出てきました。別に何の変哲もない言葉ですが、引っかかりました。というのも文脈が、こういう感じだったからです。
1955年8月、重光 葵(まもる)が外相として初めて訪米することになり、8月20日に那須の御用邸に滞在中の昭和天皇に、降伏文書の時以来10年ぶりに拝謁し、渡米のごあいさつを申しあげた時のことです。
「駅から宮内庁の車で御用邸に行き、控室で入浴、更衣ののち昼食をいただき、参入して渡米の使命について内奏した。」
という文章の中の「参入」ですから、ちょっと皇室関係の用語なのかな?と思ったのです。
天皇の居所に入ることを「参入」と言うのでしょうか?
『広辞苑』を引いてみると、1番目の意味に、
「高貴の所にまいること。入って行くこと。参上。」
とありました。やっぱりね!そして2番目の意味、いま私たちがふだん使う意味の、
「加わること。参加すること。」
でした。
皇室用語としての「参入」は、なんとなく「入内(ジュダイ)」という言葉を思い出させますね。そこで「入内」も引いてみると、
「入内」=「中宮・皇后・女御などが正式に内裏に参入すること」
と、ここにも「参入」が出てきました。やっぱり!
ふだんよく目にする言葉の、別の意味を知りました。
2006/9/21


◆ことばの話2651「プレゼンツのアクセント」

これについては書いた気もするんだけど、検索してもでてこないので、書きます。
ミュージカルのスポットCMのナレーションで、
「○○○ PRESENTS」
という原稿が出てきて、
「英語っぽく読んで」
とディレクターに頼まれました。この場合の「PRESENTS」=「プレゼンツ」
同じミュージカルの東京公演のスポットナレーションを読んだ男性の声は、「贈り物」の意味の「プレゼント」と同じアクセントで、
「プレゼンツ(LHLLL)」
というふうに「レ」のところにアクセントがあったのですが、「提供する」という意味の動詞の「PRESENTS」のアクセントは、「贈り物」という名詞のアクセントとは違って、
「プリゼンツ(LLHLL)」
「ゼ」のところにアクセントが来るはずです。しかも発音記号を見ていると、
「プレ」ではなく「プリ」
のはずです。そこで私はそのように読みましたが、結構「贈り物」で読んでいる人が多いのではないでしょうか。
2006/9/22
(追記)

12月に行なわれ、南米チャンピオン・ブラジルのインテルナシオナルが、欧州チャンピオンでロナウジーニョを擁するスペインのバルセロナを破って優勝したクラブワールドカップ。そのタイトルには、
「トヨタ・プレゼンツ」
となっていました。アクセントも「プレゼント(LHLLL)」と同じように、
「プレゼンツ(LHLLL)」
だったのですが、本当にそれでいいのかなあ?
2006/12/21
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