◆ことばの話2575「行けることができる」

今年4月から甲南大学で「マスコミ言語研究」という講座を、週に一日教えています。その講義を受けている学生から、こんな質問を受けました。
「テレビで、わりと年配の人が『行けることができる』のように、『可能動詞』に『することができる』をくっ付けた言葉を使っているのを耳にしますが、こういった言い方は正しいのでしょうか?」
「そりゃあ、もちろん間違いでしょう。重複しているよね。『行ける』という可能動詞だけだと、可能の意味が足りないように感じてしまって、『〜することができる』をおしりにつけているのでしょうね。言葉に自信がないから、そういうことになるんじゃないでしょうか。」
と答えておきましたが、そう言われてみると、ちょっと耳にするようなしないような・・・。自信がない・・・。Google検索(6月1日)では、
「行けることができる」=133件
でした。具体的な使用例は、
「強気に攻めて行けることができる
「ゴールまで行けることができるかな?」
「ある程度自分で生きて行けることができるようになること、それが目標でしょうか。」「応募者全員が試写会に行けることができるといいのに」
「生前の罪が消えて天国に行けることができるようです。」
「裏技で3周目以降にも行けることができる。
などなど。結構いろいろありますね、必ずしも年配の人が使っているようでもないのですが。今後もちょっと気をつけておきます。
2006/6/1


◆ことばの話2574「欧風・・・」

4月から毎週、非常勤講師として通っている甲南大学。その(私にとっての)最寄り駅「摂津本山駅」近くにあるお店の看板が気になります。そこには、
「欧風中国料理」
と書いてあるのです。「欧風」、つまり「ヨーロッパ風」の「中国料理」って、そんなの、あり?まあ考えてみれば、
「日風フランス料理」「日風中華料理」「日風インド料理」「日風タイ料理」「日風イタリア料理」エトセトラ、エトセトラ・・・などもありますから、不思議はないか。普通は「和風」と言いますがね。でも「欧風」とうたっているのに、日本の店。なんかやっぱり変。普通に中国料理ではだめなのかなあ?
Google検索してみると(6月1日)
「欧風中国料理」=67件
「欧風中華料理」=22件
でした。この「欧風中国料理」の検索結果を全部見てみたら、
「ミスター・ハル」(京都)62件
「青峰」(神戸)2件
「チャイニーズレストラン美麗華」(帯広)1
その他2件(「和風欧風中国料理」と書いてあったのを検索してしまった)
でした。京都の「ミスター・ハル」というお店がどうも「欧風中国料理」に関する情報の大部分を占めているようなので、メインなのかなと。写真を見ると、たしかにお店の中の雰囲気は、いわゆる中華料理店の感じではなく、フランス料理でも出てきそうな「欧風」ですね。
このうち私が看板を見たのは「青峰」でした。実際お店に入ってみたのですが、出てきた料理はごくごく普通の中華料理で、お値段もお昼の定食で800円台と、リーズナブルなものでした。店内も「中華料理店風」ではありませんでしたが、取り立てて「欧風」というわけでもなく、どのへんが「欧風」なのかはわからなかったし、聞けなかったのですが・・・・。
そこでふと思い出したのが、テレビコマーシャルなどでも使っている、
「欧風カレー」
です。欧州に特徴的な「ヨーロッパ風カレー」があるのでしょうか?
Google検索(6月1日)では、
「欧風カレー」=24万1000件
と、相当数出てきました。それらを見た中から「欧風カレーの特徴」を書き出すと、
「フォン・ド・ボーやソテー・ド・オニオンを使用」
「コクのある豊かな味わい」
「ほどよい辛さとコクのあるまろやかな味わい」
「ソテーした野菜とブイヨンでじっくりと煮込んだ旨みとコク」
「スパイスをマイルドに包み込んだ味わい」
「コクと旨味」
「インドカレーの特徴が”辛さと香り”だとしたら欧風カレーの特徴は”コク”」
といったところです。なるほど、ちょっと納得しました。
それにしても今度、青峰かミスター・ハルに行くことがあったら、なぜ「欧風」中国料理なのか、聞いてみますね。
2006/6/1


◆ことばの話2573「釣り味」

『ビッグコミック』の6月10日号を読んでいたら、なんと「カムイ伝」で有名な白土三平さんと、作家の夢枕 獏さんが「カムイ伝を語る」という対談をしていました。白土さんは今年で74歳だそうです。写真でお顔を初めて知りました。
その中で、話題は「釣り」の話に。白土さんが、磯を達者に歩いているさまを見て夢枕さんが、
「キス釣りといえばアオギスらしいということで、釣り味をたしかめようと、去年、アオギスが生き残っている九州へ3回釣りに行きました。」
この中の、
「釣り味」
という言葉が、釣りをしない私には新鮮に映りました。そのあと、白土さんも、
「イシモチやクロダイ釣りをしていると外道でかかってくるんですよ。食べても味はいいほうではないですが、カカーンと当たりがあって、けっこう引くから釣り味はいいんです。」
と言っています。ここから想像するに、「釣り味」とは、
「魚の”当たり”の時の、竿の手ごたえ」
のことのように思われます。
GOOGLE検索(5月31日)では、
「釣り味」=1万9000件
でした。結構使われていますね。これは「つりあじ」なのか「つりみ」なのか?恐らく「つりあじ」だと思いますが、「醍醐味」は「み」ですね。『新明解国語辞典』にはどちらも載っていませんでした。『日本国語大辞典』『広辞苑』『三省堂国語辞典』『新潮現代国語辞典』『明鏡国語辞典』にも、どちらの読み方でも載っていません。読売新聞の記事だと、
「30センチもあって釣り味を楽しめ、食味も良い。」
とありました。「食味」は「しょくみ」かな?これもあまり目にしない表現ですね。
GOOGLE検索では(5月31日)、
「食味」=78万3000件
もありました。『新明解国語辞典』では、
「しょくみ(食味)」=食べ物の味(のつけ方)[例]京の食味
と載っていました。
2006/5/31


◆ことばの話2572「アパッシュ」

4月から週に一回、甲南大学で非常勤講師として「マスコミ言語研究」という講座で教え始めました。その帰り道に、いつも昼飯を食べるとんかつ屋さんの壁に張ってある、宝塚歌劇の古いポスター。復刻版かもしれませんが、そのポスターの中の文字に目を魅かれました。
「喜歌劇『アパッシュ』」
右から左に書かれたその文字「アパッシュ」は、もしかしたら、
「アパッチ」
のことではないか?このポスターは昭和の初期のものか、そんな感じがするのですが、その頃は「アパッチ」ではなく「アパッシュ」と言っていたのか?そんなことが気になりました。ポスターをよく見ると、
「宝塚少女歌劇 花組公演。11月3日から18日まで及び23日、25日」
「宝味淋鬢詰」
「宝塚中劇場 座席券30銭」
などの文字が見えます。「タカラみりん」ね。またハンコが押してあって、そこには、
「承認 9 11 25 事業係」
という文字が見て取れます。昭和9年11月25日ということでしょうかね。
今、GOOGLEで検索すると(5月31日)、
「アパッチ」=78万3000件
「アパッシュ」=1万3900件
でした。「アパッシュ」も「アパッチ」に比べると少ないながらも1万件以上もあるのですね。ネットのサイトを読むと、
「フランス語の“アパッシュ”は、もともと流行語のひとつで、英語の“アパッチ”(Apache)を、そのままフランス読みにしたところから始まっている」
「『アパッシュ』という発音をする場合は『ごろつき』とか『やくざ』というあまりよくない意味になる。」
とありました。『日本国語大辞典』を引いてみると、載っていました!
「アパッシュ」(フランスapache)ならず者。もとパリのモンマルトルを根城として、夜間市内に出没する無頼漢。粋で、愛嬌があり無邪気なのを特色とする。*(例)放浪記(1928−29)[林芙美子]「かつて、本郷の街裏で見た、女アパッシュの群れ達の事が胸に浮かんできた。」*古川ロッパ日記―昭和九年(1934)一月一四日「『黄門』の中には渡辺 篤と二人のアパッシュがある。」
ちなみに「アパッチ」も載っていて、
「アパッチ」(英Apache)アメリカンーインディアンの一部族。アサバスカン諸族のうち、アリゾナ州・ニューメキシコ州からテキサス州にかけて住む諸族の総称。
どうやら「宝塚」の「アパッシュ」は、粋で愛嬌のある、『日本国語大辞典』に載っている意味の「アパッシュ」のようですね。時代も合致するし。昭和10(1935)年前後の流行語だったのでしょうか?米川明彦『日本俗語大辞典』(東京堂出版)および『明治・大正・昭和の新語・流行語辞典』(三省堂)には「アパッチ」も「アパッシュ」も載っていませんでした。残念!
ところで、「アパッチ」と言えば子供の頃に、
「アパッチ野球軍」
というアニメがあったなあ。ネットで調べたら、1971年10月6日〜1972年3月29日まで、毎週水曜日19時30分〜20時00分、NET系で放送されていたようです。原作はなんと花登 筺さんと、梅本さちおさんという人。花登筺といえば、その一連のど根性ものの。道理でねえ・・・。主題歌の「アパッチ野球軍」も作詞は花登 筺、作曲は服部公一。驚いたことに(?)演出の一人に、あの高畑 勲さんが入っていました、宮崎 駿もので有名な。ふーん、そうだったのか。
2006/5/31


◆ことばの話2571「ヌューダ」

キリンビバレッジから、
「NUDA」
という名前の炭酸飲料が新発売されました。レモンの味がほんのりとした甘くない、のどに気持ちよい炭酸飲料です。今年の夏は、甘くない炭酸飲料が流行のようですね。各社、新製品を出しているようです。
ところで、この「NUDA」ですが、カタカナ表記は、
「ヌューダ」
なのです。これって、どう読めばいいのでしょうか?コマーシャルで名前を叫んでいるのを聞くと、
「ニューダ」
と聞こえるのですが・・・。文字に素直に従うと、唇を突き出したような形になって、
「ヌュ〜ダ」
と言ってしまいますね。大げさにフランス語で、
「ジュテ〜ム」
と言っているような雰囲気。それにしても、何でまたこんな表記にしたのか?キリンビバレッジの「NUDA」のホームページで「よくある質問」を見ると、やはりその名のとおり「よくある質問」なのでしょう、その理由が載っていました。そこから引いてくると、
Q「発音は『ヌ』なのになぜパッケージは『ヌュ』になっているの?」
A「ネーミングとしての斬新さ、個性的なインパクトを意図しています」
なるほどまあ、インパクトというか違和感はありますね。なんだか発音しにくいのですがねえ。
ついでに、「NUDA」とはどういう意味かと言うと、こう書いてありました。
「『糖分、カロリーゼロのソーダ』を歯切れの良い語呂でスタイリッシュに表現しました。『ニューソーダ』という意味も込めています。」
とのことです。一度お試しあれ。
2006/5/31