◆ことばの話2570「贅沢なお産」

「贅沢なお産」という、日本テレビ系で5月30日に放送予定のドラマの番組宣伝を見ていたら、いきなり原作者の女性の顔のアップが映って、そこに字幕が、
「贅沢なお産」
と出ると同時に、彼女が、
「桜沢エリカです」
と言ったので、一瞬戸惑いました。
え?何が戸惑ったかって?つまり私は、彼女の顔にかかった字幕を、「彼女の名前」だと思ったのです。つまり、
「『贅沢なお産』と書いて『サクラザワエリカ』と読むのかと思ってしまった」
のです。そんなことはありえないので戸惑ったのです。なぜそんな「ありえない」間違いが頭の中で生じたかと言うと、
「『贅沢』の『沢』と『桜沢』の『沢』」が同じ漢字」
で、
「『贅沢なお産』も『桜沢エリカ』もともに『5文字』」
だったからだと思われます。ということは、人間は・・・というか私は、こういった文字群を読む場合に、最初から順番に文字を読んでいくのではなく、全体のイメージをまず捉えてから、その中のポイントとなる文字に着目して、耳から入った音と文字の読みとの一致を試みているのではないかと思われます。
また、「顔が映った時に出る文字は、その人の名前である」という常識が、私の頭にあったことも、こういった勘違いを起こした原因の一つでしょうね。
ちょっとビックリしましたが、けさ(5月29日)の読売新聞朝刊の記事でも「うん?」と思いました。28日、梅田の阪急百貨店の時計売り場から、高級腕時計2億円分が盗まれたという事件の記事で、
「7階は一部屋上になっており」
という文があり、しかも、
「7階は一部屋」
「上になっており」
というふうに「一部屋」のところで「改行」されていたので、私は、
「7階はひとへや上になっており」
と読んで、意味がわからなくなってしまったのです。
もう一度読み直して、ようやく、読み間違いに気づきました。これを書いた人は、
「7階は一部(いちぶ)屋上(おくじょう)になっていて」
と読ませるつもりだったのです!それならば、「一部」の後に「、」を打って、
「一部、屋上」
と書いて欲しかったな。それなら私も「ひとへや」と読み間違うことはなかったでしょう。スペースの問題でしょうが、なんとかならんかったのかなあ・・。

2006/5/29


◆ことばの話2569「原爆トウカ後」

夕方の日本テレビ系列のニュース番組「ニュース・リアルタイム」の原稿で、
「原爆投下後に」
という言葉が出てきました。そのまま読んで放送したのですが、ちょっと気になったのは、
「原爆10日後に」
に聞こえはしないか、ということです。そこで「きょうの出来事」では、
「原爆が投下された後(あと)に」
に変更して読みました。
「10日」と「投下」
日本語って同音異義語が多いですから、誤解を招かない表現が求められますね。
ちなみにこのワープロソフトで「とうか」を変換すると、
「投下」「糖化」「透過」「灯火」「等価」「当課」「燈火」「踏歌」「当科」
といった熟語が出てきました。知らない言葉もありますが、本当に同音異義語が多いなあ・・・。
2006/5/27


◆ことばの話2568「白ごはん」

先日(5月6日)テレビを見ていたら、
「白ごはん」
という言葉が出てきました。もちろん、「普通の白いごはん」のことです。これまでにも耳にすることはあったのですが気にならなかったのだけど、その時はふと、ヘンなことが気になりました。
「白いご飯は、別に『白ごはん』と言わなくても、そのまま『ごはん』でいいのではないか?なぜわざわざ『白』をつけて『白ごはん』と言うのか?」
ということです。
その理由を考えると、これまでは圧倒的に優位な立場にいた「白い普通のごはん」に対して、加薬ご飯やらサフランライスやら、ケチャップソースをまぶしたご飯やら、玄米食やら五穀米やら、といろいろな種類のごはんが台頭してきて、白いごはんも、
「そういったほかの勢力の中の一つ」
の地位に交代してしまったためではないか?と考えました。これは携帯電話の普及によって、これまではただ単に「電話」と呼ばれていたものが「固定電話」だとか「家電」と呼ばれるようになったのと同じでは無いでしょうか?
報道フロアにいた若手の部員やアルバイトの学生さんに聞いてみたら、皆、
「『白ごはん』って言いますね。」
とのこと。
Google検索では(5月23日)
「白ごはん」=6万7800件
「白ご飯」=16万6000件
でした。ついでに、
「白いごはん」=9万7200件
「白いご飯」=41万9000件
でした。「白いごはん」なら別におかしくないですが、それが一語になって「白ごはん」となったところに特徴がある、つまり上に述べたような、白いごはんを巡る世の中の動きが象徴されていると思います。
2006/5/23


◆ことばの話2567「靖国参拝のアクセント」

5月10日の朝の日本テレビのニュース430で、中田キャスター「靖国参拝」をコンパウンドして、
「やすくにさんぱい(LHHHHLLL)」
「中高アクセント」で読んでいました。なんだか、
「産業廃棄物のよう」
に聞こえました。「産廃」。これは、「靖国(神社)」に「参拝」するのだから、分けた形で、アクセントの山が2つある形の方がいいと思うのですが。
読売テレビのアナウンス部で聞いたところ、
「やすくにさんぱい(LHLL・LHHH)」=道浦、萩原、森若、三浦
「やすくにさんぱい(LHHHHHHH)」=大田、横須賀
でした。
皆さんはいかがでしょうか?
参拝の是非ではなく、アクセントの是非ですから、外国も口出しはしますまい。
2006/5/22


◆ことばの話2566「ヤコブの梯子」

呉 智英の『大衆食堂の人々』(双葉文庫)を読んでいたら、
「ヤコブの梯子(はしご)」
という言葉が出てきました。「ヤコブ」って十二使徒の一人でしたっけ?
この「ヤコブの梯子(はしご)」、英語では、
「jacob'ladder(ジェイコブズ・ラダー)」
と言います。つまり「天国への道」のことだと、以前どこかで読んだ覚えがあります。また、その名もずばり『ジェイコブズ・ラダー』というタイトルの映画もありましたね、昔。
別名「天使の梯子」とも。この本には「ヤコブの梯子」について、こう書いてありました。
「イサクの子ヤコブが原野で、天使たちが天上と地上に懸け渡された光の梯子を昇り降りするのを見たという故事にちなんで、雲の隙間から漏れる光条をヤコブの梯子という。」
え!そうだったのか!「雲の合間から漏れる光の筋のこと」だったのか!知らなかったなあ・・・。『デイリーコンサイス英和辞典』を引くと、
「ヤコブが夢に見たという天にまで届くはしご。[植]ハナシノブ[海]縄ばしご」
とありました。[海]というのは海洋用語なんでしょうね。船員用語とか。[植]は植物ですね。
ワインの『ジェイコブズ・クリーク』は関係ないのかな?
本を読むと、いろいろと物識りになれますね。
ネットのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「ヤコブ」を引くと、

『創世記』によると、父はイサク(イツハク)、母はリベカ、祖父は太祖アブラハム。ヤコブは兄エサウを出し抜いて長子の祝福を得たため、兄から命を狙われることになって逃亡する。逃亡の途上、天国に上る階段の夢(ジェイコブズ・ラダー(Jacob's ladder)という言葉の由来)を見、自分の子孫が偉大な民族になるという神の約束を受ける。ハランにすむ伯父ラバンのもとに身をよせ、やがて財産を築いて独立する。兄エサウとの和解を志し、会いに行く途中、ペヌエルで神と格闘したことから神の勝者を意味する「イスラエル」(「イシャラー(勝つ者)」「エル(神)」の複合名詞)の名を与えられる。これが後のイスラエルの国名の由来となった。

『ヤコブは、起源の人名ヤアコブの日本での慣用表記。ヤアコブはヘブライ語で「かかとをつかむ者=人を出し抜く者」を意味するとされる。それは旧約聖書のヤコブ(イスラエル)が、兄のかかとをつかんだまま生まれ、兄を出し抜いて長子の祝福を得たことに由来する。ギリシャ語では Iakobos(ヤコーボス)、ラテン語ではJacobus(ヤコブス)、日本語ではヤコブと表記するのが慣例である。英語ではJacob(ジェイコブ)またはJames(ジェームズ)、フランス語ではJacques(ジャック)または James(ジャムス)、ドイツ語ではJakob(ヤーコプ)、ペルシャ語ではYa'qub(ヤアクーブ)、トルコ語ではYakup(ヤークプ)、イタリア語ではJacomo(ジャコモ)、スペイン語ではJaime(ハイメ)または異形 Diego (ディエゴ)、ポルトガル語ではJaime (ジャイム)などになり、いずれも男子の名としてよく見られる。』

あ、「ヤコブ」はフランス語ではジャックなのか!そうすると、「ジャックと豆の木」も、もしかしたら「ヤコブの梯子」にヒントを得て書かれた童話なのかも知れないぞ!?もう少し読んでみよう。
(1)ヤコブ(イスラエル)=旧約聖書のイサクの息子。イスラエルの名を得て、ユダヤ人の祖となる。
(2)ゼベダイの子ヤコブ=イエスキリストの十二使徒の一人。ヨハネ(使徒)の兄弟。
(3)アルファイの子ヤコブ=イエスキリストの十二使徒の一人。

あれ?この「ヤコブの梯子」の「ヤコブ」は十二使徒ではないな。間違いました。すみません。「ヤコブの梯子」の「ヤコブ」は(1)のユダヤ人の祖となったイスラエルのヤコブでした。「ヤコブの梯子」に関する旧約聖書の28章10〜22節に出てくる記述を「新共同訳」から引用すると、以下のとおりです。
「ヤコブはベエル・シェバを立ってハランへ向かった。とある場所に来たとき、日が沈んだので、そこで一夜を過ごすことにした。ヤコブはその場所にあった石を一つ取って枕にして、その場所に横たわった。すると、彼は夢を見た。先端が天まで達する階段が地に向かって伸びており、しかも、神の御使いたちがそれを上ったり下ったりしていた。」
このヤコブの夢にでてきたのが「ヤコブの梯子」または「天使の梯子」ですね。ヨーロッパでは雲間から差し込んだ光をこう呼ぶのだそうです。アーメン。
2006/5/19