◆ことばの話2550「芸妓と舞妓」

4月4日のお昼ニュースで、2年目の長野出身のRアナが、京都の「芸妓」を、
「げいぎ」
と読みました。京都のニュースを読む時に、読売テレビでは(というか在阪のテレビ局では)、「芸妓」は、
「げいこ」
と読みます。確かに『広辞苑』や他の辞書にも、
「芸妓」は「げいぎ」、「げいこ」は「芸子」
となっていますが、「まいこ」は、
「舞子」とも「舞妓」とも
書きます。そこから歩調をそろえるために、「芸妓」と書いても「げいこ」と言う(読む)のではないかと思われます。
「まいこ」を「舞妓」と書いたからと言って、「まいぎ」とは絶対に言いませんよね。「芸妓」の場合はそれほどではないですが、やはり放送では「げいこ」と読んで欲しいです。「芸妓」を「げいぎ」と読むのは、「芸者」の漢語的表現と、『新明解国語辞典』には書いてありました。
なお、「芸妓組合」は「げいぎくみあい」と読みます。
2006/4/21
(追記)

4月21日の読売新聞夕刊に、京都の舞妓と芸妓の話題がカラー写真入りで載っていました。一時は30人を切るまでになっていた舞妓さんの人数が3年連続で増加、過去10年では最高の75人にまでなっていることがわかったという記事です。1975年には28人にまで落ち込んだものの1995年に78人に回復。その後50人から70人の間で2003年には54人だったそうです。この「舞妓」には「まいこ」と、そして「芸妓」には「げいこ」とルビが振ってありました。
ことばの話2404「舞はん妓」もお読みください。
2006/4/24


◆ことばの話2549「雑穀ソムリエ」

3月5日の読売新聞朝刊に、
「雑穀ソムリエ」
という資格が主婦に人気だと、いう記事が載っていました。なんでも、日本雑穀協会というところが認定しているのだそうです。
「ソムリエ」というのは言うまでもなく、元来「ワイン」のプロフェッショナルで、案内人たる人の資格・職業名。レストランやホテルでワインを仕入れ、品質を管理し、客の相談に応じてワインを選定・提供するワインの専門的知識をもった専門職ですよね。
「語源由来辞典」というサイトhttp://gogen-allguide.com/によると、ソムリエの語源・由来は、最初、運搬や労役用の動物の使い手を指していた語で、「ワイン」や「専門家」とは無関係の者だったそうです。「ソムリエ(sommelier)」は、「荷役用の牛馬」を意味するラテン語「sagmarius」「saumarius」に由来し、12世紀にフランス語に入って「sommier」となり、13世紀に動物の使い手を意味する「sommelier(ソムリエ)」の語が生まれたそうです。ソムリエは「動物の使い手」の意味から、王の旅行に随行し荷物を運搬する仕事を仕切る者を指すようになり、取り仕切って管理することから、宮廷で食事とワインを管理する者を「ソムリエ」と呼ぶようになったと。その後、フランス革命で王による政権が崩壊し、宮廷を追われたソムリエは、レストランやカフェのワイン係となり、ワインの専門職へと転じていきました。近年、日本のレストランでもソムリエを置くところが増え、1995年の『世界ソムリエ・コンクール』では、ヨーロッパ圏以外の出身者として初めて、日本の田崎真也さんが優勝して、一般的になりました。また、ワイン以外でも「野菜のソムリエ」のように、ある事物に精通しアドバイスできる者といった広い意味で、「ソムリエ」の語は用いられるようになった、と言います。
それを、何にでも「ソムリエ」と付けちゃうのは、やはり1998年頃から始まった第何次かのワインブームがあったから、それで「ソムリエ」の認識が上がったためでしょうか?たしか去年か、おととしには、
「酢ムリエ」
という、いかにも「オヤジギャグ臭」が漂う、ダジャレ・マニア(オレか!?)には、たまらない名称もありましたし。「○○ソムリエ」というキーワードで出てきた「ソムリエ」を、Google検索して、件数を調べて並べてみました(4月18日しらべ)。
まず、何もつかない「ソムリエ」はと言うと、
「ソムリエ」=242万件
もありました。当然多いですね。それ以外は、
「野菜ソムリエ」=15万3000件
「フードソムリエ」=2万3200件
「温泉ソムリエ」=1万8400件
「キャッシングソムリエ」=1万3200件
「雑穀ソムリエ」=1万2700件
「ミュージックソムリエ」=597件
「人物ソムリエ」=509件
「芋ソムリエ」=292件
「オーガニックソムリエ」=172件
「カードソムリエ」=171件
「分別ソムリエ」=129件
「家作りソムリエ」=87件
「茶ムリエ」=695件
「酢ムリエ」=508件

「本のソムリエ」=56万2000件
「旅のソムリエ」=1万5500件
「暮らしのソムリエ」=1万3100件
「薪のソムリエ」=262件
「保険のソムリエ」=132件
「ドリンク剤のソムリエ」=88件

「本のソムリエ」と「野菜ソムリエ」が、群を抜いて多いですね。「本のソムリエ」は、もしかしたら「本」だけにも反応して多いのかも。「フードソムリエ」「温泉ソムリエ」「キャッシングソムリエ」「雑穀ソムリエ」「旅のソムリエ」「暮らしのソムリエ」1万件以上ありました。「酢ムリエ」「茶ムリエ」は意外と少ない。
「名付け方」の傾向としては
(1)「○○ソムリエ」と、その物の名前の後に「ソムリエ」を付けたもの。
(2)「酢ムリエ」のようにそのものの名前のあとに「ムリエ」と付けたもの。
(3)物の名前の後に、助詞の「の」でつないでから「ソムリエ」を付けたもの。
に分かれますね。
(2)は、ドイツの「ハンブルグ」(ハンバーグ)と言う土地の食べ物だから「ハンバーガー」となっているので「ハンバーグ+ガー(er)」という語構成なのに、後ろの「バーガー」に意味を見つけて「ハン+バーガー」だと思った結果できたと思われる、「チーズバーガー」「照り焼きバーガー」のようなもので、本来は間違った形の使われ方ですけど、間違っているとわかっていても、語呂の良さから、あえて使っているのでしょう。

読売オンラインの「鈴木美潮のdonna」というコラム記事は、キーワードで読売新聞夕刊と日本テレビの夜の番組を紹介するミニ情報番組「イブニングプレスdonna(ドンナ)」にレギュラー出演中の鈴木美潮記者がつづるWeb日記だそうですが、その2005年11月8日の記事「芋ソムリエまで誕生」によると、
『ソムリエと言えばワインを選ぶ人、と思っていたら、最近は、グルメブームや食の安全への関心を背景にしてか、様々な分野にソムリエが誕生している。(中略)そして、この季節にぴったりと言うべきか、「芋ソムリエ」という制度まであるのだ。オシャレな焼き芋屋「カドー・ドゥ・チャイモン」を運営する白ハト食品工業の社内資格で、サツマイモの品質に精通した社員に与えられる資格。芋の仕入れで「テイスティング」したり、店頭で客の好みに合う種類のサツマイモを選んでくれたりする。そうはいっても、ワインと違って、相手はサツマイモ。それほど大きな違いはないのでは、と思ったら、これが大違い。なんと、サツマイモは、現在、約1000種類あるそうだ。店頭には、そこから厳選した3〜5種類が並ぶ。さらに「しっとり系」とか「ホクホク系」などの客の好みに合う芋を選ぶのがソムリエのお仕事。(中略)カドー・ドゥ・チャイモン東京・銀座の三越地下1階に、昨年開店した焼き芋店。冬は週に300キロの芋を売り上げる。昨年人気だった「甘蜜安納芋」を今年は5トン確保。店頭には、芋ソムリエのほか、ソムリエ候補の芋エキスパートもいる。』
とのことでした。やはり増えてるのよ、「○○ソムリエ」
でもなー、中にはちょっとそれは・・・ムリエ、いやいや、そら無理え・・・(なんで急に京都弁になるんどすか?)と言うものも、あるなあ・・・。
社団法人「日本ソムリエ協会」http://www.sommelier.jp/に電話して、
「『ソムリエ』って名前をいろんなものに使われていますけど、これは構わないんでしょうか?」
とお聞きしたところ、
「『ソムリエ』という名前自体は一般名詞なので、ヘンな意味で使われない限り、うちが規制するものではありません。逆にこれで『ソムリエ』という言葉の認識が広まってくれれば、喜ばしいと思います。」
というお答えでした。
今後も「○○ソムリエ」は、まだまだ増えそうですねえ。
2006/4/18


◆ことばの話2548「鬼嫁」

なんでも、インターネットのサイトで、
「実録・鬼嫁日記」
というのがとっても人気があるらしく、それが本になって売れているそうです。テレビでやっていました。最近はブログから単行本になるケースが多いですね・・・って、まあ、私の初めての著書『「ことばの雑学」放送局』(PHP文庫・・・ちょっと宣伝)も、ネットのサイトから文庫本になったのですが。
それはさておき、この「鬼嫁日記」は、「恐妻家」のだんなさんが書いたもの。つまりここで言う「鬼嫁」というのは、
「妻」
のことです。本の宣伝文句を見ると、
「鬼嫁――それは善良な会社員・カズマに対し、日夜罵詈雑言を浴びせ、理不尽な要求をつきつける鬼のような嫁のこと。本来、愛し合って結ばれた2人なのに何故こうなってしまったのか…。本作は、実在の家庭に起きた赤裸々なる愛(哀)の記録である」
とありました。
・・・ちょっと待てよ。
昔、わが読売テレビで放送していた「2時のワイドショー」の名物コーナーに、
「究極の鬼嫁」
というコーナーがありましたが、ここ(2時のワイドショー)で出てくる「鬼嫁」というのは、
「姑が、(意地が悪く根性の悪い)息子の嫁を指して呼んだ」
のです。つまり「鬼嫁」による被害者は「姑」だったのです。
ところがここで「鬼嫁」の被害にあっているのは「夫」で、その夫が、妻のことを指して、「鬼嫁」
と呼んでいるのです。関西では妻のことを「ヨメ」と呼ぶことがありますので、恐いヨメのことを「鬼嫁」と呼ぶのはわからないでもないですが、本来、関東圏では妻のことをヨメと呼ぶ習慣はないはずです。(このあたりの事情については「平成ことば事情1218ヨメとカミさん」、同じく「1248ヨメとカミサン2」をお読みください。)
それなのに「鬼嫁日記」となるのは、この著者の恐妻家は、関西在住もしくは出身なのか?と思いましたが、テレビに「顔だけモザイク」で出てきた男性のしゃべり方を聞いていると、関西弁ではありませんでした。
うーん、どうしたことだろうか?
もしかしたら、関東の女性が自分たちのことを「ウチラ」と言うようになったのと同じように、妻を指して「ヨメ」と言う言い方が、関東にも広まったのでしょうか?
サイトを読んでみると、なんだかこの「鬼嫁」のダンナの「カズマ」という男性は、福岡に住んでいるような気も・・・特定はできないんですが。福岡で妻のことを「ヨメ」と言うのかなあ?今度、調べておきます。
2006/4/14


◆ことばの話2547「ハブる」

皆さんは、
「ハブる」
という言葉を耳にされたことはありますか?先日、アナウンス部内で、「ハブる」という言葉を知っているかどうかという話題が出ました。
「知ってますよ!学生時代に使っていました!『ハブる』『ハブられる』『ハブにする』というふうに使いますね。」
と言うのは、入社4年目、25歳東京出身のAアナウンサー。彼女は高校ぐらいまで使っていたそうです。意味を聞いてみると、
「仲間はずれにする」
とのことで、「語源は?」と尋ねると、
「ハブじゃないんですか?蛇のハブ。みんな恐がって近づかないから。」
とのこと・・・違うんじゃないの?この言葉自体、知らなかったけど。きっと違う気がする・・・。同じく、この言葉を知っているという入社2年目、長野県出身23歳のRアナウンサー。
「小中高校まで使っていました。意味は、仲間はずれにすることです。」
語源は?
「わかりません・・・。」
そこで、『日本俗語大辞典』(米川明彦編、東京堂出版)を引いてみると、載っていました!
「はぶにする」=(「むらはちぶにする」の略)仲間はずれにする。小中高生のことば。「はちにする」「はぶく」「はぶる」とも言う。<類義語>はみご。(用例)『現代用語の基礎知識1986年版』若者用語「はちにする、はぶにする、はぶく、仲間はずれにする。『村八分にする』から」
用例というか、辞典からですが、それにしても1986にもう登場しているのですね。しかもRアナウンサーが言ったとおり、小中高校生が使う言葉なのですね。大学生ではもう使われないと。
語源は、Aアナウンサーが言うとおり「蛇のハブ」から・・・ではなく、「村八分」からでしたね。「村八分」については、以前書いたな、「平成ことば事情1096 村八分」で。
それはさておき、少子化で子どもの数が減ると、当然、学校でのクラスの数も減る。ということは、「クラス替え」もしにくくなるとともに、クラス替えしてもあまりメンバーが変わらず、「いじめ」が固定化する恐れがあるという話も聞きます。
「仲間」のグループを作るために、「アンチ仲間」のグループを想定しなくてはならないというのは、人間の、と言うより動物のサガなのでしょうか?悲しいことです・・・。
2006/4/17
(追記)

『甲南大学キャンパスことば辞典1992』
(http://ha8.seikyou.ne.jp/home/wexford/newpage106.htm)
に、「はぶる」と同じ意味のよく似た言葉が載っていました。
「ハブ」[●●](金沢方言)。仲間外れにするという意味。
とのこと。金沢方言なんですかぁ。ま、金沢の若者の間で使われている(た)ということでしょうね。そこから関西に入ってきたということなのかどうかは、不明ですが。
2006/5/10

(追記2)

『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)の2006年11月6日号に連載中の、『OMEGA TRIBE KINGDOM(オメガトライブキングダム)』(玉井雪雄)第56話「シナリオの完成」の中の台詞に、
「噂では梶君がハブられてるとか・・・」
というのが出てきました。発言者は、元・暴走族(古屋という名前)という設定です。
2006/10/30


◆ことばの話2546「お日様さん」

4月12日、車でNHKラジオ第一を聞いていたら、吉田拓郎
『結婚しようよ』
がかかっていました。懐かしいなあ(1971年の曲)と思いながら聞いていると、曲は3番に入り、その歌詞の中に出てきたのが、
「お日様さん」
でした。
「♪雨があがって 雲の切れ間に お日さまさんが 見えたら ひざっこぞうを たたいてみるよ 結婚しようよ♪ンンンー」
あれ?なんだか違和感が。そうか、「お日様」で既に「様」がついているのに、それにさらに「さん」が付いているから、なんだかヘンなのか!
「道浦様さん」
と言うようなものだよね、言ってみれば。当時は全然気づかなかったなあ・・・。
似たような例を探してみましょう。
「神様さん」
これは、それほど違和感はないな。
「仏様さん」
これは違和感があるな。
「おひさまさん」
は「さん」の前が「おひさま」と4文字、「神様さん」も「さん」の前は「かみさま」で、やはり文字。これに対して「仏様さん」は「さん」のまえが「ほとけさま」で5文字、「道浦様さん」は「さん」の前が「みちうらさま」で6文字、ということは、「さん」の前が「4文字」が、一番落ち着くのではないでしょうかね。
要は、「お日様」と言ったときの「様」は敬称というより「名前の一部」と感じられるから、さらに「さん」を付けるのでしょうね。それほど「お日様」という言葉の組み合わせに一体感があるということでしょう。
「アグネスチャンちゃん」
とはちょっと意味が違いますが、違和感は同じです。
Google検索では(4月13日)、
「お日様さん」=613件
でしたが、中には「お日様さんさん」というようなものもあったので、この件数どおりではありません。表記を変えてみると、
「お日さまさん」=176件
でした。吉田拓郎さんは、確か広島出身・・・と思って調べてみると、なんと鹿児島生まれですが、9歳のときに広島に転居していました。関西人が何にでも「さん」を付けるのと同じ傾向が、拓郎さんの言語環境にもあったのでしょうか?
ちなみに驚いたのは、拓郎さんは今年の4月5日でなんと「60歳」になっていたということです。あらまあ・・・。
2006/4/13
(追記)

最近、1歳7か月の娘にせがまれて、よく童謡を歌わせられます。その中の1曲に、「時計のうた」(作詞:溝上日出夫)があります。その歌詞の中に、
「コチコチカッチン お時計さん」
というのがあるのですが、この、
「お時計さん」
というのは、なじみがない言葉ですよね。というより「時計」に「お」をつける例というのは、この歌ぐらいしか知りません。なんでまた「お○○さん」という形なんですかねえ。不思議な歌だ。
2006/9/6
(追記2)

「追記」で書いた「とけいのうた」では作詞は、「溝上日出夫」になっていますが、家にあった別の絵本では「筒井敬介」になっていました。おかしいな。
「とけいのうた・筒井敬介」 =524件
「とけいのうた・溝上日出夫」= 34件
でした。
音楽之友社のリストを見てみると、どうやら、「とけいのうた」というタイトルの曲が2つあるようで、どちらの曲もあるみたい。で、「コチコチカッチンおとけいさん」は、筒井さんの作詞のようです。
それで、この「おとけいさん」の仲間で、
「おねこさん」
というのを見つけました。『ふうせんねこ』という童話です。「平成ことば事情3176」をお読みください。
2008/3/24