◆ことばの話2525「部長を事情聴取しました」

同じ話題が続きます。
ちょっと古いですが・・・市立泉佐野病院の薬剤科部長が200万円相当の接待を受けていたというニュースを、1月28日の夕方の番組で新人アナのM君が読んでいました。
そのときの原稿に、
「部長事情聴取しました」
とあって、それを聞いた私は、
「『部長を』か?『部長に』ではないかい?『を』なら『部長を取り調べました』となるのでは?」
と思いました。
「部長『に』事情『を』聴取しました」
ともなりますね。
「を」の場合には、まさにその対象物のど真ん中という感じ、「に」だと外角低めいっぱいというか、ど真ん中ではない感じ、と個人的には思います。
たとえば、
「軍需工場『を』直撃」
という場合は、目標は軍需工場で、まさに命中ですが、「軍需工場の横の病院」に当たった場合は、
「病院『に』直撃」
でも、その結果の重大さを強調したいのなら、
「病院を直撃」
でもよいと思います。
「に」というと「外角低め一杯」なので、「直撃」の「直」がそぐわないですね。「を」だと「ど真ん中」なので「直撃」でよいと思います。
このニュースの前、1月18日に放送していたニュースで、
「ホリエモン直撃」
という見出し(スーパー)もありましたが、これは逆に、
「ホリエモン直撃」
ではないか?と感じました。「直撃」した事実よりも、直撃することで、ホリエモンに話を聞いたことの方がメインでしょうから。
いやあそれにしても、助詞って、本当に難しいですねえ・・・。
2006/3/24


◆ことばの話2524「真紀子さん(に・を)切りつけ」

1月15日の「きょうの出来事」でお伝えした、兵庫県姫路市のスーパーに男が押し入り、女性店員にカッターナイフで切りつけたというニュースで、原稿には、
「店員の女性切りつけた」
「女性店員の首突然切りつけました。」
「男は女性切りつけたあと」
「切りつける」という言葉が3回出てきて、その全ての助詞は、
「を」
でした。私の言葉の感覚からいうと、「切りつける」という動詞の場合は、「〜を切りつける」ではなく、
「〜に切りつける」
の方がしっくりくるのですが。というのも「切りつける」という動詞は「切る」と「付ける」という2つの動詞が結合した複合動詞です。その動詞の前に「目的語」を取る形になっています。「目的語」なので、つい無意識に「を」を使ってしまうのだと思います。しかし「切る」なら「を」で良いと思いますが。「切りつける」と「つける」が付くと、「に」ではないかな、と感じるわけです。一般的に、
「へ」は方向、「を」は目的、「に」は目的+方向
を表しますね。「切りつける」と「つける」が付いた場合は、「目的」に加え「方向」が出てくると思うわけです。だから「に」を使った方がよいように感じるのですが、いかがでしょうか?
2006/3/24


◆ことばの話2523「石綿新法」

3月27日に施行される「石綿による健康被害の救済に関する法律」、通称、
「石綿新法」
の給付申請の事前受付が、3月20日から始まったというニュースをお昼のニュースで伝えていました。読売テレビではこれを、
「セキメン」
と読みました。
これについて、系列の広島テレビのKアナウンス部長から、さっそく質問が来ました。
「セキメン、いしわた、読みはどっち?」
うち(読売テレビ)では「セキメン」と読んだ旨を伝えた上で、
「用語委員会の知人などにも聞いてみます」
と答えました。まず、読売テレビでアスベスト問題担当のM記者に聞いたところ、
「『石綿』と書いて、関係者はみんな『セキメン』と言っていますね。だから法律名は『セキメン』でいきますが、それ以外はニュースでは、『アスベスト』という呼称を使いたいです。」
とのことでした。そうこうしているうちに、メールで質問の返事がきました。フジテレビのYさんから、
CXでは『いしわた』です。『青石綿』も『せいせきめん』ではなく『あおいしわた』です。」
という返事が来ました。うちとは違う読み方ですね。わかりやすさを優先させたということでしょうか。つづいて毎日放送のFさんから、
「『石綿新法』は『セキメン』で読みますが、『アスベスト新法』を主に使っています。」
という返事が。これはうちと同じです。専門用語の読み方を優先したのでしょうね。
そして、系列キー局の日本テレビのアナウンス部にも電話して聞いてみたところ、Sアナウンサーがわざわざ報道局に聞いてくれました。その結果は、
「『いしわた新法』、あるいは『アスベスト新法』と言っているそうです。」
とのことでした。あれあれ、困ったぞ。日本テレビとうちで「いしわた」と「セキメン」に分かれてしまったぞ。
3月20日の新聞夕刊(大阪版)を見てみると、各紙1面にこの記事が載っていました。
(見出し) (本文)
<読売>  アスベスト新法 アスベスト(石綿)
<朝日> 石綿新法 石綿(アスベスト)
<毎日> 石綿新法 アスベスト(石綿)
<産経> アスベスト給付申請始まる、
アスベスト新法
アスベスト(石綿)
<日経> 石綿救済法 アスベスト(石綿)
各紙「石綿」には、読み方(ルビ)はついていませんでした。見出しも「石綿」と「アスベスト」に分かれていますが、本文の主流は「アスベスト」のようです。
この日の夕方の各局ニュースでも取り上げていました。私がウォッチした範囲では、
  (スーパー)  (読み)
<読売テレビ> 石綿新法
アスベストの救済新法

アスベスト新法、新法
<朝日放送> アスベスト新法 アスベスト新法
<関西テレビ> アスベスト新法 アスベスト新法
<NHK> アスベスト救済法 今回の救済法
ほとんどが「アスベスト」でした。(毎日放送はチェックできませんでした。残念!)
このほか、専門用語として出てきた、
「石綿肺」
は、読売テレビ、関西テレビともに、
「セキメンはい」
と読んでいました。(インタビューに答えた専門家も)
とここまで書いたところで(3月20日午後7時10分)、また駆けつけでメールが届きました。
静岡放送(SBS)のKさんです。
「SBSでは『いしわた』に統一しています。耳で聞いてわかりやすいからです。例外は、『社団法人・日本石綿協会(にほんせきめんきょうかい)』『青石綿(あおせきめん)』『茶石綿(ちゃせきめん)』です。」
とのこと。また、NHKのSさんからも、
「『石綿新法』は『セキメンシンポー』で、正式名称を『いしわたによる健康被害の救済に関する法律』としたらどうでしょうか?」
というご意見をいただきました。
続きは、また後日・・・
2006/3/20
(追記)

朝日放送のOさんからもメールが届きました。
「本日(20日)夕方のニュース枠での原稿は『アスベスト新法』としてます。『石綿』は、ほとんど『アスベスト』と言い換えています。(「デスク」及び「石綿問題のドキュメンタリー担当記者」曰く、「日常的にアスベストと言ってるから」。)」
とのことです。
2006/3/21
(追記2)

朝日放送のTさんからも返事が来ました。
「うちのラジオニュースの場合、『石綿』だけだったら『イシワタ』と読みますが、できるだけ『アスベスト』と言い換えます。原稿冒頭で、『イシワタ=アスベストが……(云々)』と一回だけ『イシワタ』と読んでおいて、あとは『アスベスト』を使います。『青石綿』とか『石綿肺』等の場合は、それぞれ『アオセキメン』『セキメンハイ』と読みます。」
とのことです。ありがとうございます。専門用語では「セキメン」という読み方もあるが、一般的には「いしわた」、そして「アスベスト」をメインで使うということですね。
それにしても、ひらがなで「いしわた」と書くと、なんだか
「いわした(岩下)」
と読んでしまいそうです・・・。その後今度はテレビ東京のKさんとテレビ大阪のCさんからメールが届きました。
「テレビ東京の報道は『石綿』は原則『イシワタ』で通しています。おたずねの件は『イシワタシンポウ』『イシワタによる・・・』という方針です。なお『イシワタ』に関してはできるだけ『アスベスト』に言い換える方向での意思統一も動き出しています。その場合には『今月27日から施行されるアスベスト新法・・・』ということになりますね。」
「テレビ大阪では、系列を含めたすりあわせがまだのようですが、デスクによると『いしわた』で行く方向です。ちなみに、青石綿は『アオセキメン』です。」

2006/3/21
(追記3)

3月21日の朝刊(大阪版)では、この新しい法律による申請初日の受理件数は79件だったことを報じています。表記は下記の通り。
(見出し) (本文)
<朝日>石綿新法 石綿による健康被害者や遺族を救済する石綿新法
<毎日>新法の救済申請 「石綿による健康被害の救済に関する法律(石綿救済新法)
<産経>石綿新法 アスベスト(石綿)
*読売と日経は記事が見当たりませんでした。
ということでした。記事自体が小さかったので、「アスベスト」と5文字使うよりは「石綿」と言う2文字、あるいは法律を指して「新法」という2文字にしたのでしょう。新聞は今後もおそらく「見出し」では使い分けるのでしょうね。
2006/3/23
(追記4)

読売テレビ報道局は、日本テレビ報道局の用語担当者と協議して、
「『いしわた新法』の方がわかりやすいだろう」
ということになりましたが、「アスベスト新法」も平行して使うことになると思います。
また、去年古本市で買った楳垣 実『外来語辞典』(東京堂出版、昭和41年)で「アスベスト」を引くと、果たして載っていました!
「アスベスト」(オ)asbest<(ラ)asbestos [鉱物]石綿。火浣布。「火浣布の名を・・・・アスベストスともいへり」平賀源内『火浣布略説』(1765)
なんと平賀源内は、アスベストの利用についての本まで書いていたのですか!何でもやる人ですねえ、恐れ入りました。
2006/3/27
 


◆ことばの話2522「脚光を集めた」

3月22日のニューススクランブルでYキャスターが、カーリングの小野寺選手が結婚する話題を伝えていました。その原稿で、
「トリノオリンピックで脚光を集めた小野寺選手」
というのがありました。これは間違い!「脚光」は「集める」ものではなく、
「浴びる」
ものですね。もともと「脚光」とは、ステージ上の前のほうにある、
「フットライト」
のことです。だからそのライトを「浴びる」ことはあっても「スポットライト」のように「集める」ことはできません。これは
「注目を集めた」と「脚光を浴びた」
混交表現と言えるでしょう。うろ覚えの言い回しを使うと、えてして、こういうことになります。原稿を書いたAデスクに、
「脚光は『浴びる』だよ」
と言いに行ったら、
「すみません!何の疑いもなく、日本テレビの原稿をそのまま使い回していました・・・」
とのことでした・・・あらあら・・・。チェックしない方が悪いね。よそはよそ、うちはうち。
たとえデスクが間違っていてもアナウンサーやキャスターがチェックできないといけないんですけどねえ・・・。

2006/3/22

(追記)

NHKの原田さんから、一つ教えてもらいました。それによると「注目を集める」も、混交から生まれたという説があるんだそうです。つまり、「衆目を集める」と「注目を浴びる」の混交という見方なんだそうです。確かに「注目を集める」は、「注目」の「注」と「集める」が重複表現のようにも思えます。「注目」は「浴びる」が正しいのか。Google検索してみると(3月27日)、
「注目を集める」=113万件
「注目を浴びる」= 56万3000件
「脚光を集める」=     520件
「脚光を浴びる」= 70万6000件
「衆目を集める」=     845件
「衆目を浴びる」=     123件
それぞれ、そこそこの件数出てきましたが、多いほうの表現をとると、「注目を集める」「脚光を浴びる」「衆目を集める」になりました。

2006/3/27
 


◆ことばの話2521「ターラコー、ターラコー」

おなじみ「キューピー3分クッキング」の前後に流れていた、
「♪ターラコー、ターラコー♪」
と歌うキューピー人形の団体さんが出てくるキューピーマヨネーズのコマーシャルをご存知でしょうか?この無表情なキューピーの団体さんは、決して可愛くなくて、むしろ不気味です。音楽はなぜか「ロシア風」でもの哀しく、あの人形たちの行く末が心配です。でもなんだか記憶に残るコマーシャルの一つでした。最近はもう流れていないようですが、このコマーシャルとよく似たテイストの映画を、レンタルビデオで見ました。ティム・バートン監督の、
『チャーリーとチョコレート工場』
という映画。去年の夏ごろ公開されて、小2の息子が見に行きたがったのですが、なかなかヒマを作れない間に公開は終わってしまいました。最近はすぐに(半年ほどで)レンタルできるので、便利だといえば便利です。
この映画、ティム・バートン監督のテイストが十二分に発揮されていて、「本当はコワイグリム童話」のようなイメージです。ティム・バートンと言えば「ビートル・ジュース」「シザーハンズ」「バットマン・リターンズ」「ナイトメアー・ビフォー・クリスマス」「マーズ・アタック」、最近では「コープス・ブライド」という映画も作っています。とくれば、これも大体雰囲気は想像がつくと思いますが。
この「チャーリーとチョコレート工場」という作品自体は、ロアルド・ダールの世界的ロングセラー児童書『チョコレート工場の秘密』を、1971年のジーン・ワイルダー主演で「夢のチョコレート工場」というタイトルで映画化されており、それに続く2度目の映画化ですが、私は知りませんでした。
説明が長くなりましたが、映画の中に、主人公のウォンカ氏が恐らく南米かどこかのジャングルの中で出会った小人の種族で、その後ウォンカ氏のチョコレート工場で従業員として働くことになった、
ウンパルンパ」
という人たちがいるのですが、これが皆、顔が一緒で無表情。ここで話は最初に戻りますが、「タ〜ラコ〜」と歌うキューピー人形と、このウンパルンパは、とてもよく似ているように思いました。
さらに。先日、久々に宇多田ヒカルのニューシングル『Keep Tryin’』(携帯電話のコマーシャルソングに使われています)を購入したところ、ジャケットの写真が、まるでキューピー人形大行進のように、宇多田ヒカルが一杯行進しています。赤とピンクとグレーのアーガイル柄のVネックセーターに、プリーツの入ったベージュのミニスカートをはいた宇多田ヒカルが、数えてみたら、28人と顔半分が4人いました。(ジャケットの正面だけ)ちょっと気持ち悪い。曲はいい感じなのになあ。
最近、この手の表現法が流行っているのでしょうか?

2006/3/22

(追記)

ああ、なんと、あの「♪ターラコー」が、なぜか今頃大ブレーク!歌っていたのは「キグルミ」という、たらこの帽子をかぶった小学生の女の子のデュオです。CDまで出ていたので買ってしまいました。もう1か月ぐらい前のことです。
しかも今日(10月31日)、「ズームイン!!SUPER」をみていたら、今度は「クリスマス・バージョン」まで発売されるというではないですか!スゴイなー。
もしかしたら、私がここで取り上げたからヒットしたのかな?なわけ、ないか。
このCD、パソコンに入れてみると、なんとDVDのように映像が出てきました!歌に合わせた「キグルミ」の踊りの振り付けを見ることができるのです。すごいなあ、最近のCDは。
そのCDを買った晩、子ども部屋の隣のリビングにあるステレオで、音を絞って「♪ターラコー」を聞きながら、歌詞カードを見て小さな声で歌っていました。すると、急に子ども部屋のドアが「ガチャッ!」と開いて、子どもを寝かしつけていた妻が、
「あなたっ!その♪ターラコーっていうの、歌うの、やめて!」
「え!?で、でも、音もこんなに絞っているのに・・・」
「あなたの♪ターラーコー、ターラコーっていう声が、妙に耳について寝られないのよっ!!」
と叱られてしまいました・・・。そんなこと、言われても。
2006/10/31
(追記2)

『チャーリーとチョコレート工場』で、主人公のウォンカ氏が、南米かどこかのジャングルの中で出会った無表情な小人の種族「ウンパルンパ」を、自身のチョコレート工場で働かせて作った「ウォンカチョコレート」、なんと売っていました!写真はこちら!

ネスレ日本が輸入。原産国オーストラリアでした。去年、クリスマスプレゼントを買いにいった時に見つけました。こわくて(?ウソ)まだあけていません。
2009/2/24