◆ことばの話2480「お孫さま」

2月8日夜10時20分頃、NHKテレビでアナウンサーが、
「天皇・皇后両陛下にとっては四人目のお孫さまになります。」
という原稿を読んでいました。それを聞いて、
「おまごさま〜??」
とビックリしました。「お子様」は聞いた事がありましたが、「お孫さま」は初めて耳にしました。Google検索では(2月9日)
「お孫さま」=  521件
「お孫様」=2万6200件
うーん、「様」が漢字だとけっこう使われているんですね。ということは、しゃべり言葉よりも書き言葉っぽいということかな?まあ、そうとばかりは言えませんが。
この「お孫様」、なんとなく、「患者さま」の違和感に通じるものが・・・「患者さま」に関しては『文藝春秋』の最新2006年3月号丸谷才一さんが、お医者さんとの対談で、「違和感がある」と発言していたようですけど。
どうなんでしょうかねえ。「お孫様」は定着するのかどうか。それとも、もう定着してるのか?どう思われますか?
2006/2/13


◆ことばの話2479「イラクなまり」

いつ書いたのか分らないメモが出てきました。そこには、こう書かれていました。
「ヨルダンで自爆テロの『イラクなまりの男』」
そうか、ヨルダンでは「イラクなまり」とか「イランなまり」とか分るんですね・・・。
今日は、以上!
2006/2/9


◆ことばの話2478「紀子さま、ご懐妊・懐妊」

2月7日、秋篠宮妃の紀子さまに「ご懐妊の兆候がある」と宮内庁から発表されました。そのニュースを伝える2月8日の各紙朝刊を見てみると、「ご懐妊」「懐妊」の二通りの表現が見られました。
皇室の妃殿下の「ご懐妊」「懐妊」の表記については、平成ことば事情40「雅子さま、懐妊の兆候」、同じく268「ご懐妊」で書きましたが、それ以来、久々にこの言葉を取り上げられます!

  (見出し)  (本文など)
(読売) 「紀子さまご懐妊」 「懐妊されたことが7日、分かった」
「ご懐妊の兆候があったため」
(朝日) 「紀子さまご懐妊」  「懐妊されたことが、7日わかった」
(毎日) 「紀子さまご懐妊」 「懐妊の兆候がある」
「懐妊を電話で報告」
(産経) 「紀子さまご懐妊兆候」 「紀子さまのご懐妊」
(日経) 「紀子さま第三子ご懐妊」 「懐妊の兆候が確認された」

*宮内庁の朝刊の談話の引用は、すべて「ご懐妊」

私の妻が妊娠しても、
「いやあ、妻が懐妊してね」
とは言わないことからわかるように、「懐妊」は、偉い人・高貴な方にしか使えないということのようなので、既に「懐妊」の中に尊敬の気持ちが込められているのではないか、だから「ご」を付けなくても良いし、付けると二重敬語になってしまうのではないか、という主旨のこと(直接は書いてないみたいなんだけど)を書いていましたが、世の流れは、
「懐妊」→「ご懐妊」
のようです。私がウォッチしたテレビ局は、

  (コメント)  (字幕スーパー)
(日本テレビ) 「ご懐妊」 「ご懐妊」
(フジテレビ) 「ご懐妊」 「懐妊」
(T B S) 「懐妊」
(N H K)  「懐妊された」 「ご懐妊」

という具合に民放のコメントは、
「ご懐妊」
でした。というのも、「懐妊」単独だと、「カイニン」という音の響きが、
「解任」
のように思えてしまうことがあるのではないでしょうか?
NHKは、字幕は「ご懐妊」でしたが、コメントは、
「懐妊された」
と後ろに「された」と尊敬の助動詞を付けていました。でも、これでも状況によっては「解任された」のように聞き取れなくもないのですが・・・。
一方、新聞は、見出しは5紙すべて、
「ご懐妊」
でしたが、本文を見ると、「ご懐妊」だけを使っていたのは産経(社説)だけ、読売は「懐妊された」と「ご懐妊」を併用していたほかは、朝日・毎日・日経は「懐妊の兆候」「懐妊された」という表現でした。
思うに、見出しで「懐妊」だけだと、尊敬の意が伝わりにくいので「ご」をつけたが、本文では後ろに「された」を付けることで尊敬の意味を表せるから、二重敬語に注意して「ご」を外した表現にしたのではないでしょうか?
前2回のこの言葉に関するウォッチでは、見出しと本文の違いにまでは気を配らなかったので、ちょっと比較は難しくなってしまいました・・・。残念!
2006/2/9
(追記)

2月9日午前0時40分現在朝日新聞電子版では、見出しは、
「紀子さまご懐妊」
本文は、
「紀子さまの懐妊について」
でした。2月8日の夜22時頃、NHKのニュース、コメントは、
「懐妊されていることがわかりました。」
字幕スーパーは、
『ご懐妊』。
でした。
また2月9日の朝刊では、「結核予防関係婦人団体中央講習会」の開講式に、結核予防会総裁として出席された紀子さまの様子が、1面で写真入りで報じられました。その文章に注目すると、

  (見出し)  (本文)
(読売) 「紀子さまご懐妊」 「ご懐妊を祝う参加者らの拍手に」
(朝日) 「紀子さま、笑顔の公務」 「第3子のご懐妊の兆候が」
「ご懐妊の兆候が発表」
(毎日) 「紀子さま笑顔で公務」 「懐妊の兆候については」
「懐妊の兆候が明らかに」
(産経) 「祝福に紀子さま笑み」 「第三子のご懐妊が」
「近くご懐妊を正式に発表」
(日経) 「紀子さま笑顔」 「第三子のご懐妊」
「ご懐妊を報告された」

という具合で、見出しに「ご懐妊」を使ったのは読売だけでした(「懐妊」も含めて)。本文では、
「ご懐妊」=読売・朝日・産経・日経
「懐妊」 =毎日
という結果になりました。
2006/2/10


◆ことばの話2477「『生態系』のアクセント」

2月1日の日本テレビ「ニュースD」で女性アナウンサーが、上海ガニが生態系を乱す外来生物であると環境省が定めた事を報じて いました。(規制対象として新たに43種を指定)このため、2月1日からは、環境省の許可なく生きたまま、上海ガニを輸入することはできなくなったので す。また、輸入の申請から許可まで約1か月かかるため、許可に手間取るなどして上海ガニを扱えない店が出てくることも予想されるとのことです。
それも困ると言えば困る・・・かもしれませんが、私はこれまで上海ガニを食べたことがないので、そんなに困らないのですが。
それより困ったのは、そのニュースを読んだ時の「生態系」のアクセントが、
「セイタイケイ(LHHLLL)」
「中高アクセント」であったことです。私はそれを耳にして、
「性体系」
あるいは
「性大系」
かと思ったのでした。そんな、上海ガニの「性体系」も「性大系」も興味ないんですが・・。そう思ったのは私だけ?
「生態系」のアクセントは、やはり
「セイタイケイ(LHHHHH)」
「平板アクセント」なのではないでしょうか?生態系を乱す上海ガニも問題ですが、生態系のアクセントを乱すアナウンサーも問題です。
「生体肝移植」を、
「セイカンタイ移植」
と読んでしまったアナウンサーがいたことを思い出しました。「性感帯」が移植できるのか、いや、そんなことは果たして必要なのだろうかと、悩んだ覚えがあります。
「生態系」という言葉は、私が持っている『NHK日本語発音アクセント辞典』1998年4月、第1刷)には載っていないのですが、
「〜系」
という形の言葉のアクセントとして考えれば、やはり「平板アクセント」が導き出されるのではないでしょうか?アクセント辞典の巻末に「複合名詞の発音とアクセント」をまとめたところがあって、そこも見てみたのですが、「〜計」はありましたが、「〜系」は載っていませんでした。是非、今度の改訂で「〜系」も載せて欲しいなと思いました。
2006/2/1


◆ことばの話2476「非姉歯」

2月8日のお昼のニュースを各局見ていたら、耐震偽装事件関係で、例の姉歯・元建築士以外の建築士が設計したビルも耐震偽装していたケースが出てきました。(木村建設が施工した福岡市内の賃貸マンション3棟の構造計算書に偽造があったことが、8日、同(福岡)市の調べでわかった。姉歯秀次・元一級建築士以外による偽造が明らかになったのは初めて。=8日、読売新聞夕刊)
それを指して、日本テレビとフジテレビの字幕では、
「非”姉歯”」
と出ていました。なんじゃ、その「非”姉歯”」という表現は!夕方のTBSのニュースの字幕ではさらに、” ”がなくなって、
「非姉歯」
と「一語」になっていました。恐るべし、「非姉歯」。虫歯菌のようです。たしかに「非」は、
「〜に非(あら)ず」
という意味でしょうから、「非〜」という形になるのでしょうか。これを見た報道局のMプロデューサーは、
「”非ピリン系”じゃあないんだから・・・」
と言っていました。「非」を使うと、何でもそういう言い方ができますよね。
「非読売テレビ」「非学校」「非日本」
いやいや、そんな無理矢理でなくても、
「非常事態」「非常時」「非常口」「非道」「非行」「非難」「非番」「非常識」「非番」「非公式」「非公開」「非凡」「非核三原則」
といろいろあります。「非行に非ず」は「非非行」になるのでしょうか?「ヒヒ爺」みたいですね。
でも「非」の後ろに「個人の苗字」がくる物は、何かほかにあるでしょうか?
「非小泉」「非松井」「非イチロー」
って、なんだかヘン。だって、本人以外は、皆「非〜(本人)」なのは当たり前ですからね。この「非姉歯」の場合は、「姉歯」というのは実は略語で、実際は、
「姉歯・元建築士ではない建築士の設計による建築物」
「姉歯・元建築士による設計ではない建築物」
という意味ですね。でも、なんだかなじみません。Googleで検索したら(2月8日)、
「非姉歯」=4万9900件
でした。もう既に結構使われていました。新聞では、
「姉歯以外」
という表現が目立ちました。(2月8日夕刊)
読売新聞=『「姉歯以外」3棟偽装』
日経新聞=『「姉歯」物件以外も確認』
産経新聞=『「姉歯以外」で初確認』
朝日新聞=『「非姉歯」全関与物件調査へ』
毎日新聞=『「姉歯」以外も偽装か』
また翌日2月9日の各放送局も、
「姉歯以外」
を使い始めたようです。(日本テレビ、テレビ朝日など)
2006/2/9
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