◆ことばの話2445「切子」

1月19日の夕刊の広告に、
「切子」
という文字が見えました。ああ、ガラスのコップなど「江戸切子」「長崎切子」、いっとき、好きでよく見に行ったなと思ったら、全然違いました。これは「きりこ」ではなく、
「きれこ」
だったのです。「切子(きれこ)」とは、
「明太子(めんたいこ)の端が少し切れているもの」
のことだそうで、贈り物にするには、形がちょっと不恰好なのでダメだけど、自宅で食べる分には、品質にはまったく問題がない、というような商品。つまり、
「曲がったキュウリ」
「大きさが不揃いのミカン」
のような、いわゆる、
「規格外品」
のことのようですね。もちろん、おいしくてその上安ければ、多少ぶかっこうでも消費者は喜んで買うのではないですかね。「きれこ」、覚えておきましょう。
2006/1/20


◆ことばの話2444「二極化」

ここ数年、特に去年あたりは、一億総中流社会が完全に崩壊し「二極化」が鮮明になったという論が、毎日のように新聞紙面や書物、テレビで言われました。『下流社会』もベストセラーと同時に流行語になったと思います(一部で)。
それを数字で裏付けるような記事が、新年1月3日の朝日新聞の一面に載っていました。それによると、2004年度に「就学援助」を受けた人は東京・大阪4人に1人。「就学援助」というのは、公立小中学校の文具代や給食費、修学旅行代などの援助のことで、それを受けた児童・生徒が4人に1人ということです。つまり、クラスに40人いるとすると、そのうち10人は「就学援助」を受けているということですね。都道府県別の「就学援助」率は、
(1)大阪= 27.9%
(2)東京= 24.8%
(3)山口= 23.2%
(4)北海道=19.3%
と続き、全国平均12.8%です。最低は静岡の4.1%で、栃木、山形が4%台、茨城・群馬・富山・福井・岐阜が 5%台。ということは、農村部(とは限らないけれど)というか、一般的に見て「(大)都会でない」ところは低い。リストラや給与水準低下がないからなのでしょうか?逆に人口の多い大都会は率が高い。そういう意味では、山口県が3位に入っているのはなぜなんだろうか と、少し疑問に思います。
なお、市区町村別では東京都足立区が42.5%でダントツです。この数字もスゴイです。もちろん足立区は「農村部」ではなくて、町工場とか中小の企業の自営業の方が多いのではないでしょうか。それにしても42%、クラスのほぼ半数が「就学援助」を受けているのです。
この援助を受けるのには恐らく「親の収入」が関係してくるのでしょうが、自営の人と会社員の人で、援助を受けるための収入の基準は違ったりはしないのでしょうか?奨学金をもらう時にはそういうことがありましたよね、昔は。今は知りません。
いずれにせよ、こういった「援助」は税金で行われているわけです。こういった援助をしなくても、皆十分にやっていけるような社会、職業環境を整えることが政府に望まれるのではないでしょうか。自由競争をさせると言っても、スタートラインの違う状態でやれば、弱い立場の人がワリを食うのは目に見えているのに、そこに触れないのは、本当の意味での平等ではないのではないでしょうか。そんなことを、年頭に感じました。
2006/1/20
(追記)

日経新聞の1月22日朝刊に、こんな記事が載っていました。
「金融広報中央委員会の家計の金融資産に関する世論調査2005年版によると、貯蓄を持っていないと回答した世帯(二人以上)が22.8%を占め、1963年に調査を始めて以来最高になった。」
貯蓄を持っていない家庭が5世帯に1世帯。これもやはり「二極化」の一つの現れでしょうね。
「一億総中流」である時代は完全に終わりを告げたと言えるでしょうが、我々の子どもの世代、あと20年後には、どういうふうになってしまうのでしょうか・・・。
2006/1/23


◆ことばの話2443「ワーストワン、ベストワン」

先日、用語懇談会の委員から、
「ワーストワン、ベストワンは重複表現ではないか?」
という質問が出ました。
確かに「ワースト」「ベスト」だけで最上級なので、「一番悪い(良い)」という意味ですよね。でも、
「ベストテン」
という言い方もあるぞ。あ、それは和製英語で、英語では、
「トップテン」
か。GOOGLE検索(2005年11月19日)では、
「ベストワン」=13万2000件
「ワーストワン」=2万5700件
と、よく使われていました。
そういったことを調べたあとの11月28日、夜勤の際に読んだ「きょうの出来事」のニュース原稿で、
「大阪府は認知犯罪の件数で、再び全国ワーストワンになるおそれがある」
というニュースが出てきました。
一応、その旨デスクに話して、本来の使い方ではないようなのだが・・・と説明したのですが、
「今回は、これで行ってください。」
ということで、そのまま読みました。私は、
「重複表現ではあるけれども、強調表現としては許容範囲ではないのかなあ」
と思いました。いかがでしょうか?
2006/1/20


◆ことばの話2442「ポッドキャスティング」

去年の10月、読売テレビも出資している映画『ALWAYS三丁目の夕日』に関連して、こんなメールが回ってきました。
「『ALWAYS 三丁目の夕日』公式サイト「Pod Cast」コンテンツについて」
「Pod Cast」?それって一体何?と思って先を読み続けると説明が書いてありました。

「Pod Castとはインターネットラジオ番組だとお考えください。ただし一般的なラジオ放送とは違い、デジタルデータとして収録した内容をユーザーに方にダウンロードをしてもらい、PC(パソコン)上で聞くラジオ番組です。番組を一度登録すると、自動的に番組内容が更新していきます。(番組自体のHPへ行かずとも、常に最新の放送内容を聞く事ができます。)三丁目公式サイトでも、Pod Cast番組専用ページを作り、HP上でも更新していきます。」
とうことでした。つまり、
「ダウンロードして聞く形式のネットラジオ」
ということですかね。参考サイトを見てみると、
『「ポッドキャスティング」(Podcasting)とは、一言で説明すると「i―Podのような携帯音楽プレーヤーでラジオ番組を楽しめるようになる仕組み」のことです。「音楽を聴くのに飽きた」という人は、インターネット上にあるラジオ番組をポッドキャスティングで聴いてみてはいかがでしょうか?ポッドキャスティングは、2004年の夏ごろにアメリカで誕生しました。ポッドキャスティングは、ネットラジオを聴く人はもちろん、ネットラジオ局を開設して声や音を発信したい人にとっても大変便利な仕組みであるため、世界中で利用者が増えており、注目を集めています。ポッドキャスティングの便利な点を、ネットラジオを聴く人と情報発信したい人の両方から見てみると、以下のようになります。
<聞き手にとっての利点>
■ネットラジオの更新をいちいち確認する手間がない
■好きな場所でネットラジオを聴ける
<発信者にとっての利点>
■簡単にネットラジオ局を開設できる
■リスナーの携帯音楽プレーヤーに、最新の番組をもれなく届けることができる

ということのようです。ふーん、便利そうですね。でも、i-pod、持ってないから、よくわかんない・・とも言っていられません。というのも、この「三丁目の夕日」でも「ポッドキャスティング」を試験的にやるので、アナウンサーに映画の感想をしゃべって欲しい、という依頼だったんです。とりあえず若手のアナウンサー3人を録音に向かわせました。
その後、この「ポッドキャスティング」に関して、2005年12月2日の日経新聞・夕刊に載ってました。今、注目なのですね。
そして、なんと読売テレビのアナウンス部のサイトの人気メニューである、脇浜アナウンサーと気象予報士・米畑詩子さんのトーク・ラジオ『y@cafe』でも、いつの間にか「ポッドキャスティング」ができるようになっているではありませんか!

"y@cafe"
■PODCAST について
---ポッドキャストって何?
y@cafeをパソコンや携帯オーディオプレイヤーで楽しむことができます。携帯オーディオプレイヤーを使えばいつでもどこでもy@cafeを楽しめます!
---利用する為には?
ポッドキャスティングを利用するには専用ソフトが必要となります。代表的なのはアップル社のiTunes。まずは受信ソフトをダウンロードして下さい。ボタンを、ポッドキャスティング対応の受信ソフト(iTunesなど)にドラッグ&ドロップすれば、自動的にy@cafeの最新番組がダウンロードされます。

とのことですので、今後この形式はさらに増えていくのでしょうね。世の中、進んでるなあ。でも、ホリエモンみたいなことにならないように、ゆっくりじっくり行けばいいですね。
1月29日のGOOGLE検索では、
「ポッドキャスティング」=106万件
「ポッドキャスト」=   159万件
ともにIT用語だけに、ネットではものすごくたくさん使われているようです。
2006/1/20


◆ことばの話2441「離婚状・放妻状」

2005年10月30日の日経新聞のベタ記事の切抜きが出てきました。見出しは、
「中国唐代にも『離婚状』存在〜女性像、別の見方も」
として、敦煌の唐代(西暦618−907年)の遺跡で、
「放妻状」(離婚状)
が見つかったとのことです。北京発の時事通信の記事です。これは、
「二人の心が擦れ違い、元に戻るのは難しい」として両家の父母や親族を呼んだ上で別れようと提案。綺麗に着飾って、「高官」と再婚して欲しいなどと記されていたと、中国紙「北京科技報」の電子版が伝えていたそうです。
記事によると、
「中国では長い間、女性は圧迫され、離婚の自由はないとされてきた。しかし放妻状では妻の再婚を願う配慮まで言及」
しているので、唐代には「男女平等」だったという見方も出てきそうだと記されています。
その内容はともかく、私はこの
「放妻状」
という言葉を初めて目にしました。GOOGLE検索(1月16日)では、
「放妻状」=8件
でした。少ない!しかも全部今回のこの記事に関連したもの。ということは、新しく作られた言葉ではないか?という気もします。それとも中国語なのでしょうか?だとしたら、見つかった『ブツ』に「放妻状」と記されていたということかな。
それにしても、「妻を放つ」ということは、それまで妻を拘束・束縛していたということでしょうから、「唐代には男女平等だった」という見方は、いくらなんでも、「ない」と思うのですが、いかがでしょうか?
2006/1/19
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