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◆ことばの話2423「黒澤監督のアクセント」
早稲田大学の飯間さんから新年初メールです。
『正月のテレビ番組で、気になる発音を耳にしました。日本テレビ「ぶらり途中下車の旅・新春スペシャル・東海道線」(2006.01.07放送)で、横浜中華街にある「故・黒澤監督行きつけのお店」を紹介していました。そこでナレーターの滝口順平さんが、
「黒澤監督は……」
としきりに言うのですが、アクセントは中高、つまり
「クロサワカ’ントク(LHHH・HLLL)」
のように「カ」の後で下がるように発音されていました。私ならば「平板」で言うところです。「中高」にすると、「現場監督」「美術監督」「助監督」などと同じく、一般名詞のような印象を受けます。
『新明解アクセント辞典』の「アクセント習得法則15 後部が漢語二字の結合名詞」(p.(24))によれば、「後部が平板型・尾高型・頭高型の語は、後部の最初の第一拍まで高い」とあり、「日記→絵日記」「時代→江戸時代」などの例が出ています。「監督→現場監督」も当然、この規則に沿っています。
しかし「黒澤+監督」のように「監督」が接尾語になる場合にも中高になるのは標準的と言えるのでしょうか。
私のアクセントでは、「監督」は名字のアクセントを生かす形で付きます。
〈名字が平板型〉「ハラカントク」(原監督)、「オカダカントク」(岡田監督)
〈名字が頭高型〉「オ’ーカントク」(王監督)、「オ’チアイカントク」(落合監督)
〈名字が中高型〉「ブラ’ウンカントク」(ブラウン監督)、「バレンタ’インカントク」
(バレンタイン監督)
ちなみに、滝口順平さんは、かつてNHKの人形劇「プリンプリン物語」で、怪人ランカーの声をつとめていました。ヒロインの名「プリンプリン」をみんなが、
「プリ’ンプリン(LHL・LLL)」
と発音している中で、滝口さんの怪人だけは、
「プリンプリ’ン(LHH・HLL)」
と独特の発音をしていました。今調べると千葉県の出身だそうです。』
ようそんな古いことまで覚えていますね、飯間さん。「プリンプリン物語」の怪人のアクセントまでは、なかなか覚えていませんよ。
これに関して私は、こんなふうなお返事を。
『「黒澤監督」のご指摘のアクセントは、うちのアナウンス部にも、これを使う女性アナウンサーがいて、注意しています。「高田社長」と言うのを「平板」ではなく、「社」まで高い音を引っ張り、
「たかだ・しゃちょう(LHH・HLL)」
と言うのです。
このアクセントは「関西風かな」と私などは思っていますが、彼女は、なんと滝口順平さんと同じ「千葉出身」です。彼女のアクセントには、関東出身なのに、時々関西風のなまりが聞き取れます。
今、アナウンス部の中で聞いてみたら、スポーツ担当のNアナウンサーから、
「野球解説の掛布さんは、よく『岡田監督』のことを『か』が高い『おかだ・かんとく(LHH・HLLL)』と言っています。」
という証言が得られました。掛布さんも千葉県出身です。もしかしたら、本当に「千葉訛り」なのかも!そう言えば、同じく千葉県出身の長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督も、「岡田監督」をそのようなアクセントで言っていたのを聞いたことがあるような気がしてきました。
千葉に、関西・和歌山から渡った人たちが伝えたアクセントだったりして。千葉には、白浜とか勝浦とか、和歌山と同じ地名がありますからね。昔、和歌山から房総半島に行った人たちがいますよね!そのつながり、という可能性は???どうなんでしょうか?
そうだとしたら、おもしろいですね。』
これはまだ、断定は全然出来ないんだけど、ちょっとおもしろくないですか?また調べてみたいと思います。 |
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2006/1/11 |
(追記)
1月12日の日本テレビ「ニュースプラス1」で、山本真純アナウンサーが、ヒューザーの小嶋(おじま)社長のことを、
「おじま・しゃちょう(LHH・HLL)」
と読んでいました。ホームページによると、彼女は東京都出身のようですが。
そしてわが社(読売テレビ)の高田孝治社長も東京出身ですが、巨人軍の原監督のことを、
「はら・かんとく(LH・HLLL)」
と、年頭記者会見で言っていました。東京でもこのアクセントはあるのでしょうか?
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2006/1/13 |
(追記2)
1月15日の深夜(1月16日午前1時頃)に放送していた日本テレビ系の『爆笑問題のススメ』の2005年分の総集編みたいな番組で、「ブログ」の話をしていた時に、女性のナレーターが、ホリエモンのことを指して「堀江社長」と言っていたのですが、
「ほりえ・しゃちょう(LHH・HLL)」
とコンパウンドして言っていました。
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2006/1/15 |
(追記3)
なんだか胸騒ぎがしたのでしょうか、堀江社長の話を「追記2」で書いたのは。(関係ないか。)1月16日午後、ライブドアに強制捜査が入りました。そのニュース関連で、1月17日朝のテレビ朝日「スーパー・モーニング」で、松井康真アナウンサーが、「堀江社長」を、
「ほりえ・しゃちょう(LHH・HLL)」
とコンパウンドしていました。
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2006/1/17 |
(追記4)
1月17日夜のフジテレビ『ニュースJAPAN』の男性ナレーターもコンパウンドして、
「ほりえ・しゃちょう(LHH・HLL)」
と言ってました。ヒューザーの小嶋社長もコンパウンドして、
「おじま・しゃちょう(LHH・HLL)」
と言っていましたが、中継していた太田大記者も男性キャスターも箕輪解説員も、平板アクセントで、
「ほりえ・しゃちょう(LHH・HHH)。
と言っていました。
1月18日朝の日本テレビ『情報ツウ』の女性リポーターは、コンパウンドして、
「おじま・しゃちょう(LHH・HLL)」
でした。同じ番組で流された前日の衆議院の証人喚問のVTRで、質問に立っていた民主党・馬淵澄夫 衆議院議員もコンパウンドして、
「おじま・しゃちょう(LHH・HLL)」
と言っていました。馬淵議員は奈良出身。ホームページによると、なんとお子さんが6人もいらっしゃるそうです。関係ないけど。
そして今、1月19日の『情報ツウ』に出演している民主党の長妻昭 衆議院議員も、
「おじま・しゃちょう(LHH・HLL)」
とコンパウンドしていました。 |
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2006/1/19 |
(追記5)
1月25日、参議院本会議の国会中継を見ていたら、社民党の福島みずほ党首が代表質問で、「小泉政権」を、
「こいずみ・せいけん(LHLL・LHHH)」
と、分けて発音していました。普通は、これはコンパウンドして、
「こいずみ・せいけん(LHHH・HLLL)」
と言うことが多いと思うのですが。「小泉政権」は認めない、という考え方・信念から、よく使うとコンパウンドするこの言葉を、コンパウンドさせずに言ったのでしょうか。それとも、「小泉」と「政権」の間で、「原稿の行が変わった」のでしょうか?真相は如何に!
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2006/1/25 |
(追記6)
1月26日の衆議院予算質疑で、民主党の馬淵議員の質問に答えた、安倍晋三官房長官は、
「おじま・しゃちょう(LHH・HLL)」
とコンパウンドしていました。
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2006/1/26 |