◆ことばの話2415「瞳孔が開くと・・・」

目医者に行きました。
数年前に「網膜裂孔」という、網膜に穴が空く症状でレーザー治療をしてから定期的に通っています。目の検査をするためですが、その際に瞳孔を開く目薬(?)の点滴をします。
この点滴をすると、しばらくして瞳孔が開いてくるので、検査しやすくなるみたいです。でも、
「瞳孔が開く」
と聞くと、
「死んでるのではないか」
と思ってしまいます。実際、瞳孔が開いてくると、まぶしくてまぶしくて、とても目を開けていられないくらいです。それで思ったんですが、昼間、ネコが眩しくて目を開けてられないのは、瞳孔が大きい(開いている)からなのかもしれません。それで昼間はあまり活動せずに夜行性なのか?それとも夜行性だから瞳孔がそういうふうに出来ているのか?ニワトリが先かタマゴが先か、みたいな話ですが。
検査が終わって帰る時には、今度は瞳孔が閉じる(元に戻る)点滴をしますが、元に戻るのには3、4時間かかります。両眼同時にすると、帰りに両目をつぶることになって歩けないので、検査はいつも片目ずつです。
で、この「瞳孔が開いた状態」の時に感じることですが、瞳孔が開くと、(カメラでいうところの)露出が高くなって、明るくて眩しくて、本当に真っ白なんです。これって、よく臨死体験の人が話しているような、
「死ぬ前に、輝く光の世界が見えた」
という状態なのではないでしょうか?つまり、
「輝く光の世界が見えた」というのは「瞳孔が開くからそう感じる」
のではないでしょうか?
そんなことを、まばゆい光の世界に感じた、年の暮れでした。なんだか年の瀬に、病院ネタが2題、続いてしまいました。
皆様、よいお年をお迎えください。来年が、輝くまばゆい年になりますように・・・・・あ、ご臨終が近いという意味ではなくて、文字通りに。
2005/12/28


◆ことばの話2414「ガッカセンエン」

土曜の朝、起きたら、右のノドが腫れてグリグリしていたので、さっそく近くの病院に行きました。おかげさまでめったに病院に行かなくてもすむ体なので、その病院に行ったのも初めてでした。病院に着いたら、朝10時頃でもう超満員!1時間半ほど待って、ようやく診察を受けられました。そしたら、右だけでなく左も腫れてるって。病名は、
「顎下(がっか)腺炎」
というものでした。口の中の傷からバイキンが入ったのではないか、ということでした。そう言えば先週いっぱい、舌にできていた「口内炎」があやしいな。なんだ、この病名って、私が説明した、
「顎の下の腺が腫れてる」
ってのを四字熟語(?)で言っただけじゃん。「原因」ではなく、表面上みられる「結果」を言ってるだけなんですよね。でもホッとする。これはおそらく、
「命にかかわるような誰でも名前を知ってるような重病ではない」
というふうに、
「ではない」
ことを、「病名告知」によって知ることが、「安心」につながるのではないでしょうか。病名が判明すると、なんとなく安心するのです。不思議なものですね、名前って。抗生物質を五日間分、処方されました。
その処方箋を、一番近い薬局に持って行ったところ、すぐに薬剤師さんに呼びつけられ、
「あのお、これは何の病気だと言われて出された薬なんでしょう?」
と聞くので、
「顎下腺炎です。」
と言うと、
「ガッカ・・・センネン?それはどんな字を書くんですか?」
と言うので、
「あご、した、せんが炎症です。」
と説明したのですが・・・素人の私でもわかるような病名、薬剤師も知っておけよな。
薬をもらって支払いをしようと料金を聞くと、
「980円です。」
「ガッカ・センエン」
なのに「キューヒャク・ハチジューエン」かい!
そう思ったんだよ、と家に帰って小学2年生の息子に言ったところ、シニカル顔でしゃらりと、
「ダジャレやろ」
と言われました・・・。
あ、おかげさまで、もう治りました。
2005/12/23


◆ことばの話2413「ビニール袋か?ポリ袋か?」

12月15日、和歌山で3人の乳児の遺体が見つかった事件で、遺体が、
「ビニール袋に入っていた」
と、読売テレビのニュース原稿にはありましたが、15日朝刊各紙を見ると、

(読売・朝日)ポリ袋
(毎日)ビニール袋
(日経)ナイロン袋

(産経は、袋に関する記述なし)

と分かれていました。しかし、私が11月の用語懇談会報告で書いた文によると・・・・・・
『NHKの原田委員から、「日本ビニル工業会の関係者から、『最近は「ビニール袋」はほとんどなく、たいていは「ポリ袋」である。事件などの時に「遺体の一部はビニール袋に入れられ・・・」などと出て来るが、これも「ポリ袋」であることが多いので、(一般論として)間違えないで欲しい』と申し入れがあった」』

放送上、具体的に何か問題があったわけではないそうですが。
細かいことですが、何でもかんでも「ビニール袋」とすることで「ビニール」のイメージが低下することは避けて方がいいですし、そもそも正確な表現かどうかについても、この際、考える必要があるのではないでしょうか。
『広辞苑』によると、
*「ポリ袋」=ポリエチレンで作った薄い袋

*「ポリエチレン」=エチレンを重合させて得られる合成樹脂。熱可塑性で軽く、安価で耐薬品性が強く、加工しやすい。また電気絶縁性がよい。軟化しやすく可燃性であるのが欠点。フィルム・シート・成形品に多用する。

*「ビニル」=(1)ビニル基。エチレンから水素原子一個を除いた原子団。
化学式CH2=CH−
(2)ビニル樹脂の略称。ビニール。

*「ビニル樹脂」=ビニル基を持つ単量体を重合させた合成樹脂の総称。塩化ビニル樹脂・酢酸ビニル樹脂の類。

*「ナイロン」=元来はアメリカの科学者カロザースが発明しデュポン社から発売された合成繊維の商標名。現在はポリアミド系の合成高分子化合物の総称。(以下略)。「ナイロンの靴下」

とのことです。
Google検索では(12月15日)、
「ビニール袋」=131万0000件
「ビニール製袋」=159件
「ビニル袋」=3万8500件
「ビニル製袋」=11件
「ナイロン袋」=4万0500件
「ナイロン製袋」=252件
「ポリ袋」=35万1000件
「ポリ製袋」=68件
「ポリエチレン袋」=2万1800件
「ポリエチレン製袋」=269件

と、ネット上では、
「ビニール袋」>「ポリ袋」>「ナイロン袋」>「ビニル袋」>「ポリエチレン袋」
の順で使われています(件数1万件以上)。
ついでに、キーワードを2つにしてみました。
「ビニール袋、遺体」=0件
「ポリ袋 遺体」=2件
「ナイロン袋、遺体」=0件

あんまり違いは出ませんでした。
用語懇談会加盟の各社の委員にメールで、どう表現したかを聞いたところ、
(NHK)袋
(毎日放送)ビニール袋
(朝日放送)ナイロン袋
(フジテレビ)ナイロンのような袋
(関西テレビ)ナイロン袋
(静岡放送)ナイロン袋
(共同通信)ナイロン袋
(読売新聞)ナイロン袋
(朝日新聞)ポリ袋
(毎日新聞)ビニール袋
(テレビ大阪)(今回の事件では、袋については触れていないので、どちらの表現も使っていない)

ということで、
『当初、和歌山の駐在カメラマンから来た原稿では「ナイロン袋」になっていたが、和歌山県警発表が「ビニール袋」だったので、「ビニール袋」で放送している。』(毎日放送)
『和歌山県警発表の広報文FAXには、入れられていた袋の素材については何も書かれていない。現場記者が取材した捜査員が「ナイロン袋」と、袋の素材について言及し、そのまま原稿化したものだろう。ニュースセンターの用語担当者が不在だったので、報道部としてポリ袋、ビニール袋、ナイロン袋をどう使い分けしているのかは不明。その後、報道担当デスクに聞いたところ、「恐らく担当記者が現場で得た情報の表現をそのまま使用したのでは・・」とのこと。ビニール・ポリ・ナイロンなどや「○○袋」についての表現の使い分け基準等は、現在ない。』(朝日放送)
『ナイロン、ビニール、ポリエチレンはそれぞれ原料が石炭、アセチレン、天然ガスと違っているらしく、全く別物だと思う。従って、はっきりしていないため「・・・のような袋」という原稿になったと思う。』(フジテレビ)
『業界団体「日本ポリオレフィンフィルム工業組合」から申し入れがあったりして、前から「ポリ袋はビニールではない」と注意している。』(朝日新聞)
『1997年に「『ビニール袋』は原則として『ポリ袋』にする」ことになっていたが、今回は警察発表をそのまま流して「ビニール袋」となったようだ。』(毎日新聞)

ということでした。
朝日新聞の福田氏によると、こういった業界からの申し入れは「ポリ袋」業界側からで、「ポリ袋は水素と炭素だけで出来ていて、燃やしても環境を汚染しない」
ことを強調しているそうです。ビニールは、成分中に塩素を含み、燃やし方が悪いとダイオキシンを発生する可能性があるので、それとは違うということが主張の一因のようです。
悪いイメージの事件で使われても、「ビニールでなくポリ袋と書いてくれ」と、ポリ袋業界側が言うわけで、「ビニールのイメージ低下を避けるためにポリ袋に直す」ということではないようです。
こうしてみてみると、どうやら、「ビニール袋」「ポリ袋」が並列であって、最近の使用実態としては「ポリ袋」が増えている、それとは別に「ナイロン袋」というものがある、というようなことではないかと思われます。また警察発表はそんな細かいところの区別までキッチリと発表していないであろうことは、容易に想像がつきます。そこで、各社独自の判断をした結果、表記(というかモノ)に違いが出てきたのではないでしょうか?
読売テレビでは、その後、死体遺棄で逮捕された母親のニュースを伝えた時(12月17日)には、
「ポリ袋」
で放送しました。

2005/12/18
(追記)

NHKの原田さんから、「ナイロン」の扱いについてご意見をいただきました。
「私の理解では、総称が『プラスチック』で、硬い物だけでなく、軟らかいものも含まれ、その中に『ビニール』や『ポリ』の製品があるという分類。『ポリ』は『ポリオレフィン』を意味し、『ポリエチレン』や『ポリプロピレン』の総称。『ナイロン』が物質上、何に当たるかは分からないが、形状としては繊維状のものと、その織物を連想する。」
として、「業界団体に話をきいてみたら?」とサジェッションを頂き、私もそうしようと思っていたので、さっそく「日本ポリオレフィンフィルム工業組合」に電話して聞いてみました。
その結果、
「『ポリ袋』は一般的には、使い捨てされるようなもの、レジ袋とかゴミ袋のようなもので、ポリエチレンなどで出来ている。燃やしても塩化水素は出ないので、ダイオキシンも発生しない。これに対して『ビニール袋』は、もっと堅くて丈夫なものなので、一般的には『使い捨て』にはしない。椅子の背のビニール皮とか、透明な化粧ポーチ、浮き輪などに使われているものだ。これは燃やすと塩化水素が出るので、(超高温で焼いた場合は別だが)ダイオキシンが出ることがある。『ナイロン袋』というのは、耳にしないことはないが、あまり言わない。ナイロンは『繊維』なので、ストッキングなどに使われている。また、ジャンパーの生地に使って『ナイロンのジャンパー』などはある。『ポリのジャンパー』や『ビニールのジャンパー』はないだろう。」
というお話でした。NHKの原田さんのお話と、ほぼ同じでした。ここから考えると、一般的に「使い捨て」されるようなものは、やはり、
「ポリ袋」
とするのが一般的なのではないでしょうか。原田さんからはさらに、
「『ポル』『ビニール』は樹脂なので通気性はないが、『ナイロン』は織物だから通気性がある」
というご指摘もいただきました。ありがとうございました。
2005/12/22
(追記2)

用語懇談会でご一緒している、NHK放送文化研究所の柴田 実さんから「管見を・・・」とメールをいただきました。
『一般的にプラスチック製の袋を「ポリ袋」とするのはいかがなものでしょうか?ビニール業界の反発は、「正確に言え」ということと「分類が必要だ」ということの2点と思われます。これが趨勢なら、「ポリ」はたしかに「ポリ○○」の略として汎用的に使われていますが、高分子屋さんのほうでは、「ポリ」は「ポリエチレン」の常識があります。辞書にも言うように「ポリ袋」=「ポリエチレン袋」だと思われます。
「透明な袋」「袋」
で、いけないでしょうかねぇ・・・・せいぜい、
「プラスチック袋」
でしょうか。といって「プラスチック袋」を「プラ袋」はまだ無理なようです。
「ナイロン袋」は、昔ありましたが今はないかもしれません。これも、右代表で使うには「ビニール」と同じで問題があります。元が商標と言うことと、ポリアミド系も分化して「ナイロン」でくくれないものも多くなっています。
今後リサイクルや、資源問題で素材が問題になるのは避けられませんから、正確にするに越したことはないと考えますが、いかがでしょう。」
とのことです。
また、ご常連・川崎市の西尾さんからもメールをいただきました。
『ビニール袋やポリ袋の類を、関西では何でも「ナイロン袋」と呼ぶという説があるようです。実際インターネットで検索してみると、ナイロン生地の丈夫なバッグ類ではなく「ポリ袋」「ビニール袋」と思われるものを「ナイロン袋」と表記しているケースが多数あります。ざっと見た範囲では、中京以西、関西・中国・四国あたりが多いようです。隠れた方言と言えるかもしれません。』
ホウ、そうなのですか。また、関西ではポリ袋やビニール袋のことを
「ナイロン袋」
と呼ぶ傾向があるようだと。本当に方言なのかな。そう言えば、小学校の遠足の持ち物の中に、「ナイロン袋」というのがあったような気がするぞ。(その場合の用途は、「ゲロ袋」なんですが・・・。)
関西は、東洋紡とかクラボウとか日紡貝塚とか、昔は化学繊維工業が盛んだったから、その頃に「ナイロン袋」で定着していまだに言われているのかな??
また、大阪大学の岡島先生1996年9月28日のホームページ「レジ袋」で、福井市ではあの袋を「レジ袋」と言っているということと、岡島先生自身は「ポリ袋」と呼んでいたこと、そして、
『時折「ビニール袋」と言ってしまうこともあったが、透明で軟らかい感じのが「ビニール袋」で、白などの色付きで硬い感じのが「ポリ袋」』
だと思っていること、さらに、
『関西に住んでいた時に「ナイロン袋」という言い方を知った。京都で聞いたものだ(中略)神戸小学生殺人事件の時に、「不審な男」が「ナイロン袋」を持っていたと言っている人がいた。』
という記述も紹介してくれました。
http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/menicuita/9609.htm 
また、なんと、
「ナイロン袋(ポリエチレン製)」
という表示も見つけてくれました。和歌山の南部の梅干の会社です。「お召し上がりの際には、種にご注意ください。梅蜜の漏れ防止のためナイロン袋(ポリエチレン製)に入れております。
http://ume1.com/s_ume/kibako.html 
「ポリエチレン」で出来た「ナイロン」袋・・・。「ナイロン袋」というのは材料を示しているのではなく、固有名詞ということか!?
また「アソー株式会社」という大阪の会社の「ポリエチレンまめ事典」というサイトには、
『ポリエチレンは、需要家様では良く「ビニール袋」とか「ナイロン袋」と呼ばれ非常にポピュラーな包装材料です。この呼び方は別として、アソー株式会社ではこのポリエチレン袋の生産を専門として行っております。この度はこの「ポリエチレン」を少し掘り下げたレポートをまとめてみたく思います。』
と出ていました。
http://www.po-aso.co.jp/company/jiten/index.htm 
それによると、「ポリエチレン」には以下のような種類があるようです。
(1) 高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)
一番スタンダードなポリエチレンで、よく「ビニール袋」と称されているもの。透明で、柔軟性に富み、引裂き強度・引張強度に平均的に優れ、食品の包装からドラム缶の内袋まで巾広く使用されている。
(2) 直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)
上記LDPEと判別がつきにくいポリエチレンで、専門のオペレーターでも判別が困難。LDPEより歴史的にも新しく、物理的強度に優れたポリエチレン
(3) 中低圧法高密度ポリエチレン(HDPE)
代表的な用途としては、スーパーで買物をした際買物を入れる為に渡してくれる買物袋。この袋は15μ〜25μと非常に薄く、(極薄フィルム)「強化フィルム」と呼ぶ。スーパーの袋は、乳白色(酸化チタン)の着色剤を添加されたものだ、着色剤を入れていない物でも「半透明=すりガラス」状で、LDPEに比べると腰が強く、極薄フィルム(10μ〜30μ位)として利用される。また、50μとか100μになると、ゴワゴワ感が出てしまい柔軟性にかける為、特殊用途としてしか使用されない。引張強度はLDPEと比較すると非常に優れるが、引裂き強度に劣り一度切れ目が入るとすっと破れてしまうのが欠点。
(4) メタロセン触媒直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)
最近鳴り物入りで登場してきたポリエチレンで、メタロセン触媒で重合されたLLDPE。引裂・引張・突刺し強度・耐ピンホール特性に卓越した性能を誇るポリエチレン。
http://hougen.atok.com/themebbs/showthemebbs.sv?start=4978#4978
一口に「ポリエチレン」と言っても、これまた、いろいろ種類があるようなのですね。
そして西尾さんは、
「和歌山の事件は、ネット上のニュース記事でも3種類が混在していますね。」
と検索してくれました。
「和歌山・遺体・ビニール袋」 577 件
「和歌山・遺体・ポリ袋」   214 件
「和歌山・遺体・ナイロン袋」  71 件』

西尾さん、いつも詳細な調査を、ありがとうございます。
私もいろんな「袋」に注意を払っていたところ、「レジ袋」ではないのですが、年末に買ったCOOP(生協)の四角い切り餅が入った袋に、こう書いてありました。
「包材の材質・外袋:ポリエチレン、ナイロン。個包装:ポリエチレン、ポリプロピレン。」
外袋は「ポリエチレンとナイロン」の両方使われていたのです・・・。
こういった袋はなんと呼べばいいのでしょうか?
そのお餅を買った「大阪パルコ−プ」のレジ袋には、
「このポリ袋は、太陽の光(紫外線)、土中のバクテリアで自然分解します。」
と書いてありました。
また、京阪モールの袋には、薄いピンク色で、
「この袋はポリエチレン製ですので、有毒ガスは発生しません。」
という文字とともに、「プラPE」という文字と三角形の「プラスチック・リサイクルマーク」が印刷されていました。
また、コンビニのレジ袋だと思いますが、特定の企業名はなく、
「この袋は焼却しても塩素系の有毒ガスは発生しません。」
「レジ袋がご不要の方は、お申し出ください。」
と青い文字で書かれ、「プラPE」「M−11/25号」
とも印刷されていました。
そして、甥っこ達にお年玉のおもちゃを買った「トイザらス」の袋には、
『このポリ袋(HDPE)は、リサイクル対象品として分別収集に出せます。』
と印刷されていました。「HDPE」というのは、上のアソー株式会社のところに書かれていた、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、一番一般的なポリ袋の素材ですね。
また、100均ショップの「ダイソー」の袋には、
「この袋はポリエチレン製です。燃やしても有毒な塩素ガスは発生しません。」
「この袋には焼却炉でのダイオキシン発生源を強力に除去する添加剤(エコロマスター)が配合してあります。」
と黄色い文字で記されていました。

その後さらにネットで調べてみたら、ビニール袋に関するページに(http://www.kiddy.co.jp/POFSHOP/culumn01.html)、

「業界ではビニール袋といえば塩化ビニール製の袋を指すが、一般の人はポリ袋のこともビニール袋と呼ぶ。ナイロン袋というものはもともと存在しないが、ポリ袋やビニール袋のことをナイロン袋と呼ぶ人もいる。業界ではポリ袋といえばポリエチレン製の袋を指すが、一般の人はポリプロピレン系の袋もポリ袋と呼ぶ。」

と、大変わかりやすくまとめてありました。包装用としてよく使われるのはポリエチレンフィルム(正式にはポリオレフィンフィルム)ポリプロピレンで、ビニール(=塩化ビニール/PVC)は、定期入れとか車検証入れといったケースに加工して使われるそうです。また、ポリ袋にも2種類あって、「透明なポリ袋」の素材は、LDと呼ばれるもので、正式名称は「高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)」で、一般的にポリとかPEというとこのタイプを指すそうです。もう一つは、「半透明のポリ袋」で、HDと呼び、正式名称は「中低圧法高密度ポリエチレン(HDPE)」だそうです。上のアソー株式会社の説明と同じですが、透明か半透明かということで素材のポリエチレンの種類がわかるのですね。大変よくわかりました。
2006/1/30
(追記3)

「玉巻きテープ」
なる名前のテープが、車のトランクに入っていました。新聞を廃品回収などに出す時にくくる白い紐で、いわゆる「ナイロン紐」です。これの原料は、
「ポリプロピレン」
と書いてありました。
2006/2/8
(追記4)

2006年9月28日兵庫県たつの市で、塾帰りの小学4年生の女の子が男に刃物で刺される事件が起きました。」その第一報を伝えた時に、被害者の女の子が、
「男が白いビニール袋のようなものを顔に近づけてきた時に、胸に痛みを覚えた」
と話していると伝えたのですが、この時「ビニール袋」は本当に「ビニール袋」で良いのか?と報道のデスクに聞いたのですが「わからない」ということで、そのまま読みました。
しかし9月29日の朝刊を見ると、
「読売・朝日・毎日・産経」=「ポリ袋」
「日経」=「ビニール袋」
と、ほとんどの新聞は「ポリ袋」としていました。やはり、今、私たちの生活の周辺に、いわゆる「ビニール袋」という物はほとんど存在しないと考えていいのではないでしょうか?
2006/9/29
(追記5)

「情報ライブミヤネ屋」で2009年2月11日「大阪のオバチャンの特徴」の一つに、
「ビニール袋をたくさんもらう」
と紹介しましたが、実はこの「ビニール袋」という使い方は間違っています!正しくは、
「ポリ袋」
です。これについては以前調べました。(2005年12月)
これまでは「材質」に注目して袋の呼び方を規定していましたが、「用途」に注目した場合は、コンビニやスーパーでもらう袋は「レジ袋」と呼ばれています。遠足のバスに常備している「ポリ袋」は、別名「ゲロ袋」と俗に呼ばれますが、これも用途に注目しています。「ゴミ袋」も用途です。このあたりをどう使い分けるか?ということになるでしょう。
ちなみに今回の「袋」は、
『「レジ袋」ではなく、スーパーでカゴから自分の買い物袋やレジ袋などに移す時に、ブロッコリーやお肉を入れるために自分でグルグルと回してちぎって取る「半透明の袋」のことをどう呼ぶか?』
ということでしたが、材質に注目すると、この袋もレジ袋もみんな、
「ポリ袋」
です。
実際近くのスーパーで見つけた「ポリ袋」の写真です。


2009/2/17


◆ことばの話2412「ボウリングのボウル」

11月下旬、長崎市で開かれた日本新聞協会用語懇談会の秋季合同総会に出席しました。現在、10年ぶりの改定作業が進む『新聞用語集』の討議をしているのですが、その中の一つ、「外来語の表記」について出た質問に、こういうのがありました。
「球技で使う球(たま)のボールの表記は『ボール』だけで、『ボウル』の意味はサラダボウルのような深鉢や深鉢形の競技場しか記されていないが、ボウリングの球の表記は、『ボール』ではなく、『ボウル』ではないか?」
へー、そうなのか。でもボウリングの球も、やっぱり「ボール」でいいんじゃないかな、と思っていたのですが、英和辞典を引いてみてまた驚きました。球技のボールの綴りは「ball」
なのですが、ボウリングの球の方の綴りは、
「bowl」
なのです。ということは、日本語の表記でも区別する必要があるのかもしれませんね。
ただ、大きな意味での球技の球は、全て「ボール」と表記しても、なんら問題はないのではないでしょうか?より専門的に言うならば「ボウル」もあると。つまり広義の「ボール」の中にボウリングの「ボウル」は含まれる、という解釈ではいかがでしょうか?
結局この問題は、その場では結論が出ず、後日、幹事会で話し合うことになりました。
その会議が終わった翌日、帰るまでの時間、宿泊したホテル・グラバーヒルの周りをうろうろしていると、なんと、
「日本ボウリング発祥の地の石碑」
が、ホテル・グラバーヒルの前の坂の途中に建っているではありませんか!ホテルのある場所は、南山手居留地跡で「国際電信発祥の地」の石碑も建っています。1871年(明治4年)に長崎〜上海、長崎〜ウラジオストック間に、デンマーク系の大北(たいほく)電信会社によって海底電信線が開通され、ここが最初の通信所なんだそうです。そんな場所のすぐ近く(数十メートルしか離れていない場所)に、ボウリング発祥の地の碑があるとは・・・。
前日、ボウリングの話題が出たのも、もしかしたら偶然ではないのかもしれないなと思いました。ボウリングの神さんのお導きか?
で、結局、まだ結論は出ていません。
2005/12/23
(追記)

平成ことば事情2173「ボウリングとボーリング」もあわせてお読みください。
2006/3/15
(追記2)

4月12日の日経新聞の記事では「ボウリング」の「ボール」と出ていました。
2006/4/22


◆ことばの話2411「小惑星イトカワ」

11月26日、宇宙航空研究開発機構の探査機「はやぶさ」が、小惑星「イトカワ」の岩石採取に成功したと報じられました。その後、12月7日になって、採取時に地表に撃ち込むはずだった金属球が発射されなかった可能性が高く、岩石採取は失敗したと見られるというふうに残念なニュースになってしまいました。子供の頃は天体に興味があったのですが、最近はとんとその方面は縁が薄くなってしまった私も、「へえー」とちょっと興味を持ちました。そういった事実以上に私が興味を抱いたのは、その、
「小惑星イトカワ」
という名前です。これが、
「小学生イトカワ」
に聞こえてしまって、一瞬ビックリしたのです!
「え!『小学生イトカワ』が、そんなところに着陸したり岩石をとったらタイヘン!そんなところに行けるんかいな、そんなこと!だれ、そのイトカワって!」
と思ってしまったのは、私だけではないでしょう。え?私だけ?
これはもしかしたら、「小惑星」の「わ」と、「小学生」の鼻濁音の「が」の音が近いからかもしれないですね。
え?お前の耳が悪いせいだって?失礼しました・・・。
2005/12/23
(追記)

「小惑星」が「小学生」に聞こえた11月28日、その日の日経夕刊に、こんな訂正記事が。
『26日付「関係者から笑みと拍手」の記事で、小惑星探査機はやぶさと地球との距離が「約三万キロメートル」とあるのは「約三億キロメートル」の誤りでした。』
たしかに3万キロメートルだと、近すぎますよね、地球一周より短いですもんね。月まででも37万キロメートルあるでしょ。それより短いよな。「小惑星」が「小学生」に聞こえるぐらいの間違いですかね。(笑)
2006/1/15
(追記2)

業界ニュースの新聞を読んでいたら、FBS福岡放送の同期である古賀ゆきひと君の名前が。何があったのかと読んでみると、
「小惑星にFBS古賀アナの名前が命名」
???なんのこっちゃ?
「FBS福岡放送『めんたいワイド』のMCを勤める古賀ゆきひとアナウンサーの名前が小惑星の名前として登録された」
ええっ!古賀君が小惑星に!!すごいじゃん!うちの息子は小学生だけど。
記事によると、古賀君はこれまでも天文ネタの企画・取材レポートを続けてきて、小学校などの観望会の手助けをしたことが評価されたために、小惑星にその名前が命名されたとのこと。ふーん、なんだかスゴいですね。で、その小惑星ってどこにあるんだろう?今度聞いておきます。聞いてもわからないかもしれないけど。
2009/10/30
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