◆ことばの話2377「ネットワーカー」
9月9日、ロケの合間に、ファミリーレストランのSで遅い昼ご飯を食べていた時のこと、入り口に「新ルール」と題してこんな注意書きが。
「商談や会議のネットワーカーはお断わりします」
この「ネットワーカー」って何?ネズミ講のようなもの?
インターネットで調べてみると、GOOGLE検索では(11月22日)、
「ネットワーカー」=16万9000件
でした。
どうもいろんな人脈を使って繋がるものを「ネットワーカー」と総称するようです。「子育てネットワーカー」「NPOのネットワーカー」「市民運動のネットワーカー」などがあるほか、通信工業の世界では、「一人親方」「みなし法人」「個人事業主」のことを言うとあったりしますが、やはり、こういう記述もありました。
『ここで言う“ネットワーカー”とは世間一般で使われている意味(何らかのネットワークを利用、活用する人達)とは全然違います。“ネットワークビジネス(=MLM、マルチ商法)”に関わっている人達の中でも、特に複数のマルチ商法組織を渡り歩いている連中・・・いわばマルチ商法のプロを指す呼称です。マルチ商法関係者及びウォッチャーの間ではポピュラーな言葉ではありました』(『蛙の水鏡』というサイト、2004年9月26日付け)
やっぱりそうでしたか・・・・。
そう思ってから2か月あまり。昨日(11月21日)フラッと入った喫茶店で隣の席の人が、なにやら大きな声で話しています。
「うん、IP電話ってわかるかな、うん、今まではNTTを通さないとしゃべられへんかったのが、ネットでしゃべれるからタダになるわけ。タダとお金かかるのやったら、どっちがいい?・・・そうやんな、そりゃタダの方がええわな。」
というように、30代半ば位の男性が一方的にまくしたてています。その前の席には20代と思しき若い夫婦と3歳くらいの男の子。それと同じくらいの年恰好の女性が、若夫婦と向き合う席で、まくし立てる男の人の横に座っています。どうやら、若夫婦の妻とこの女性が「友だち」のようです。旦那はそれに付き合って来ているという感じ。
うるさいなあ、と思いながら、しばらく聞くとはなしに聞き耳を立てていると・・・こ、これだ!ネットワーカーというのは!
なんだか、電化製品を販売するとマージンが入ってくるというような話。そしてその「子」を増やせば、どんどん儲かる・・・という。しかも、
「“連鎖販売”っていうの聞いたことある?うん、これはそういう販売方法なんやけど、欲しい人にだけ売るっていう方法で・・・」
やっぱりネズミ講やんか!
若夫婦のうちしゃべっているのは妻の方だけ。儲かりまっせ!でも最初に協賛金というか資金がいる、という話を聞いて、
「生活費の足しにしたいし、儲かるのはうれしいんやけど、最初にお金を払うのはいや!」
と完全に拒否。女友達に対して、
「あんたが最初のお金出してくれるんやったら、ええわ」
「誰が出すって?私が・・・なんで?」
という人間関係崩壊スレスレの緊張感あふれる会話が、隣のテーブルで飛び交っています。
「私、お金をもうけるのは生活費のタシになるからいいんですけど、最初にお金を出すのはイヤなんです。」
と繰り返す若妻に対して、
「うーん、それは価値観の違いということで、そう言うこともあるよね。で、クーリングオフの期間は契約をした日を含めて○○日間ということで、もしやめたくなったらクーリングオフすればいいから・・・」
と、人の話を聞いているようでまったく聞かないで話を進めようとする男。
約1時間後、しゃべりまくった男が「ちょっと、トイレに・・・・」と席を立ったすきに、若夫婦がボソボソと話しています。
「・・・これってネズミ講やろ。オレ、お前の友だちやからこうして付き合ってやってるだけやからな。」
「わたしも、○○ちゃんとの付き合いがあるから一応、話、聞きに来ただけやん。」
どうやらこの商談は不成立のようです。
トイレから戻った男と若夫婦は、それから約20分、気まずさを取り繕うかのような会話をした後に、席を立って店を後にしました。
うーん、たしかに大きな声で、別に聞きたくもないほかの客の耳にまで聞こえてしまう内容の会話を、コーヒー一杯で1時間半以上も行われては、店の評判にも響くというもの。あのファミリーレストランが「ネットワーカーお断り」と貼り紙をしたのも分かりました。それにしても、やはりむげに客を断れないという気配りからか、
「新ルール」
と書いた店長、よっぽど困ってはってんね。
皆さん、この手の販売は「人情」に付け入りますから、ダメな物はダメ、イヤなことはイヤ、友情とこれは別。こんなことを押し付けてくるヤツの方が、友情がない!と、キッパリと断りましょうね! |