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◆ことばの話2350「談笑してください」
先日ロケに行ったときのこと。若いディレクターのB君が、私がインタビューする相手に対して、
「じゃあ、ここでまず、道浦さんと”談笑”していてください」
と言いました。相手の人は、
「談笑って、言われても・・・・」
と戸惑っています。ここでは私は口を出さなかったのですが、戸惑っている女性に対してB君はさらに重ねるように、
「いえ、もうただ”談笑”していただければ結構ですから・・・」
と言うので、私は我慢できずに口を出しました。
「いえ、普通に私となんか世間話でもしていればいいんです。お話の内容の音は録音しません。話をしている雰囲気の絵だけを撮影していますんで、お気になさらずにこのあたりにお座りください。」
その後、特にカメラの撮影を意識せずに、まさしく「世間話」をしていました。撮影は無事に終わりました。
私は別の場所でB君に少しきつい調子で言いました。
「あのなあ、『談笑』なんて言われて、お前『談笑』できるか?日本人1億2800万人のうちにふだん『談笑した』なんて言っている人なんていると思うか?そんなわけの分らん言葉を使うな!」
「・・・ハイ、わかりました・・・」
と彼はシュンとしてしまいました。
「ダンショウ」と聞いて「談笑」を思い浮かべてくれればいいですが、万が一
「男娼」
を思い浮かべられたら、一体どうするつもりだったのでしょうねえ。 |
2005/11/5 |
(追記)
11月12日に行われた高校サッカー大阪大会の決勝の中継。初めて応援席リポートを担当した新人のMアナ。選手の家族の試合前の様子をリポートしたコメントの中に、
「○○選手のお母さんは、最後に○○選手をホウヨウしたということです。」
というのがありましたが、この「ホウヨウ」が分かりにくい。当然、
「抱擁」
なんでしょうが、聞きようによっては、
「なんで”法要”なんだ?」
と思われるかもしれません。これはやはり、話し言葉としては、
「ギューっとしっかり抱きしめたということです」
と言うべきところでしょう。放送の言葉には、こういった工夫が必要です。
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2005/11/12 |
(追記2)
11月12日のNHK「ニュース7」を見ていたら、東京・町田市で起きた女子高校生刺殺事件の中継で、清水記者という人(男性)が、
「逮捕された少年は、友だちと談笑していました」
と言っていました。言い換えんかい!もうっ。談笑禁止!! |
2005/11/12 |