◆ことばの話2335「僕が日本語ラップを嫌いなわけ」

ふと思いました。
なぜ私は、日本語ラップがあまり好きではないのか?まあ、これは好みの問題ですが。
まず、あまり「音程がない」ことが理由の一つです。1音目と2音目に、音の高さの違いがありません。これは、英語なら「強弱アクセント」なので1音目と2音目が同じでも特に違和感はないのですが、日本語は「高低アクセント」なので、メロディに載らないお経のような感じに違和感あるのだと思います。クラシックの「レチタティーボ」も、同じ理由でなじめません。
でもそれを言ったら、「関西弁」は1音目と2音目が同じ高さのことがあります。そういう意味では、標準語(共通語)とは違う大きな特徴を関西弁は持っているのです。その関西弁もキライかと言うと、キライではない。
うーん、そうか、1音目と2音目で音の高さが違う「標準語」の言葉を使って歌っているから、日本語ラップには違和感があるのか、この歌詞が関西弁だったら、違和感はないのかな。
でも数年前に、学校を舞台にした関西弁の歌詞で、ものすごーく暗いラップを聴いて、2度と聞くものか!と封印したこともあったな。そうすると、歌詞が何語かということではなく、あのリズムと言葉のアクセントが合わない感じがイヤ、ということでしょうか。アナウンサーだから、そういうのがイヤなのかどうかは、よくわかりませんが・・・・。
2005/10/28
(追記)

さだまさしの昔の曲「雨宿り」も、音が一緒で平板な語り口調だけど、それでもまだ音楽が流れています。だからイヤじゃないです。また、「オレンジレンジ」の「花」は、ラップとメロディがうまくマッチしているので、悪くないです。
2005/11/3


◆ことばの話2334「レッドクリスタル」

9月21日の読売新聞のサイト版を読んでいたら、
「レッドクリスタル(=赤い菱形)のマークを国際赤十字に加える動き」
という記事が出ていました。レッドクリスタル?初めて聞く名前です。
「赤十字」をめぐっては、イスラム教の国からは、
「キリスト教の象徴である十字架は受け入れられない」
として、イスラム国では、
「赤新月」
という「赤い月」のマークが用いられ、救急車のボディにもペイントされていたりしますが、どうもそれでもうまく行っていない現状が、現地ではあるようです。そこで宗教をイメージさせない、新しい第3のマークとして「赤いひし形」を承認しようという動きが出てきて、スイス政府は年内にも、それについて話し合う会議を招集するとのことなんです。
以下、屋山明乃(ややまあけの)さんという方が、詳しくサイトに書かれていますが、それによると、実は赤十字運動の標章問題は、これまでに何度も議論が繰り広げられてきており、1990年代には「含意のないマークを」と新しい標章の使用が提案されていたそうです。そもそも白地に赤い十字は、赤十字国際委員会の創設者・アンリ・デュナンが、スイス国旗の赤と白を入れ換えて1863年に作成。その13年後、イスラム圏では「キリスト教を想起させる」として、十字の代わりに「赤い月(赤新月)のマーク」が加えられました。1949年にはジュネーブ条約で、さらにペルシアの「赤いライオンマーク」も加えられたのですが、イラン革命以後、イラン政府は「ライオンマークを使用しない」と宣言したため、今は赤十字と赤新月しか使用されていません。
一方、イスラエルの赤十字社にあたる「赤盾ダビド公社」(またはマーゲン・ダビド公社)は「赤いダビデの星」を標章に使用しています。しかし、ジュネーブ条約では上記に挙げた赤十字・赤新月・赤ライオンの3つの標章しか認めていないため、赤十字国際委員会も認めるわけにはいかないという状態にあり、国際赤十字・赤新月運動に加盟できていません。米国の赤十字社などは、イスラエル赤十字社が排除されていることへの抗議として2000年から、国際赤十字社・赤新月社連盟へ分担金を払うのを拒否しています。こういった状況を打開しようと、赤十字国際委員会が提案したのが「赤いひし形」(英語ではRed Cristal。公式名称ではない)です。各国で行なわれた長年の調査を踏まえて、
「全く、宗教や文化上の意味を含まないシンプルな形」
から選んだとのこと。「赤いライオン」が使われていないのなら、それにかわるマークとして「赤いひし形」が採用されるのも構わないのでは?と、素人考えでは思うのですが。
それにしても、一見、世界共通のマークと思えた「赤十字」は、そのような宗教的な意味を持ち、それに対して「赤新月」があり、さらに第3の道を模索しなければならないということの背景は、大変複雑です。人の命の重みは、宗教を超えると思っているのは、宗教を信じていない者だけなのでしょうか?神と人間では、神の方が偉いということでしょうか?しかし、それでは本末転倒のようにも思います。「よりよく生きる」ための一つの手段として、宗教はあるのではないのでしょうか。「よりよく生きる」ことの足かせになるのであれば、宗教の存在意義が問われるのではないでしょうか。
救命をめぐる「争い」に終止符(エンドマーク)を打つ「マーク」の登場を望みます。
会議の結果次第では、近い将来に、赤十字を表す標章として、「赤いひし形」が加わるかも知れませんが、この「赤いひし形」、なんだか、フランスの自動車会社「ルノー」のマークに似てなくもない感じですねえ・・・。
2005/10/27
(追記)

11月13日午前2時台に見たケーターサイトの読売新聞ニュースで、12月5、6日に「レッドクリスタル」の採用を巡ってジュネーブで会議が開かれる予定で、イスラム諸国の反対も予想されるという記事が載っていました。
2005/11/17
(追記2)

12月9日の各紙朝刊に、国際赤十字締約国会議は12月8日未明、従来の赤十字と、イスラム圏で使用されている赤い三日月(赤新月)に加えて、
「赤い水晶(レッド・クリスタル<ひし形>)」
を、第3のマークとして承認したと伝えています。これにより、十字と三日月は宗教色があるとして使用を拒否してきたイスラエルなども、赤十字の国際的な活動に参加できるようになるとのことです。
ただ、会議では、イスラエルに占領されているゴラン高原での救助活動を求めていたシリアが、この「赤い水晶」に反対、対立が続いたために全会一致の承認を断念、投票の結果、
「賛成98、反対27、棄権10」
で、新しいマークは承認されたと、日経新聞は新しいマークの旗のカラー写真(AP)とともに伝えています。
なお、「平成ことば事情887赤十字」もお読みください。
2005/12/16


◆ことばの話2333「わく」

『日本語の森を歩いて〜フランス語から見た日本語学』(フランス・ドルヌ+小林康夫、講談社現代新書)という本の115〜117ページ、「お湯がわく」について書いてありました。その中に、
『「沸く」という性質を持っているのは「お湯」だけなのです』
と書いてあったのです。それを見て「?」と思いました。そうかなあ?血は?
「血沸き肉踊る」
というではないですか!また、「力」「勇気」も湧いてきますよね。この場合は「沸く」ではなく「湧く」ですが、語源は同じでは?
そう思ったときに「あ!」とひらめいたのは、「わく」のは「液体」ばかりです。ということは「力」「勇気」と言うのも「液体」と考えられているのではないか?「力がみなぎる」「勇気がみなぎる」の「漲(みなぎ)る」は、「さんずい扁」でわかるように、「水が満々と張る状態」。だからやっぱり力や勇気は液体だ!リポDやユンケルみたいなものかな?これっておもしろい発見でしょ?
この話を同僚のHアナウンサーにしてみると、
「そうですかねえ、『わく』というのは液体だけですか?気体もわきませんか?『湯玉がわく』とか。『わく』は下から上へ上がってくるようなイメージがありますけどね。」
それを聞いてもう一度考え直して出てきた答えは、
「『わく』は奥の方から表面に出てくるということかな!『虫がわく』『シラミがわく』とかもどこからともなく、奥の方から出てくるというイメージですね。『湯玉』もそういうことでしょ。『泉』も土の奥底から水が出てくるんだし。『お湯』も、沸騰することで、見えない奥のほうから『湯玉』が出てくるのでそれが『わく』なのじゃないかな!『湯玉』ってのは、要は水の熱源に近い底の方から気化してるわけだ!そういうことかあ。
『力』や『勇気』も体の奥底から出てくるので、『わく』なんだね。
『妄想』も『わく』な。ふだんから妄想に包まれている人は、わかない。ふだんからずっと『わいた状態』の人は『あの人、(頭が)わいてる』と呼ばれることもあるね。『着想』も『わいて』くるね。ふつふつと『闘志』が『わく』こともあるね。楽しい気持ちがわいてくる状態が『わくわく』なんじゃないかな。いやあ、ワクワクするね!」
いやあ、本当にことばっておもしろいですね!
2005/10/26


◆ことばの話2332「辞職と辞任」

大阪市の関淳一市長が10月18日、辞表を提出しました。職を辞したわけです。これを伝えたニュースの中で使われた用語が、
「辞職」「辞任」
の2種類があったので、スタッフが「この場合はどちらが正しいのか?」と聞いてきました。
「『職を辞す』のが『辞職』だね。『辞任』は『任を辞す、辞める』ということだね。この場合は『市長』という役職、任を辞すのだから『辞任』でいいのじゃないかな。でも市長を辞めるということは、同時に市の職員を辞めるということでもあるので、『辞職』と表現しても間違いとは言えないね。だから両方あるんじゃないかな。」
と答えると、納得していました。こういうことでいいのかな?
説明は済んだけど、なぜ今頃市長を辞めるのか、それについての説明は、大阪市民に対して十分尽くされているとは言えないのではないでしょうか。
『新明解国語辞典』だと、
「辞職」=自分からその職をやめること。
「辞任」=その任務(職務)を自分からやめること。

でした。市長の場合は、職と任務が重なっているので、ちょっとややこしいのでしょうね。
なお、出直し市長選挙は、11月27日投票です。
2005/11/03


◆ことばの話2331「率いると擁する」

サッカーの日本対ラトビア戦の中継を見ていたら、テレ朝のアナウンサーが、
「次は、シェフチェンコ率いるウクライナと対戦します。」
と言っていました。これが、なんとなくひっかかりました。これは正しくは、
「シェフチェンコ擁するウクライナ」
ではないのでしょうか?
「○○率いる▲▲」
といった場合の「○○」は、普通は「監督」の名前が入るのではないかと。これに対して、そのチームの主力選手を紹介するのであれば、 「○○擁する▲▲」
となると思うのですが。「率いる」「擁する」の前に「助詞」を入れるとするならば、
「○○が率いる▲▲」
「○○を擁する▲▲」
となります。つまり「○○」は、「率いる」の場合には「主語」、「擁する」の場合は「目的語」になっているのですね。助詞を省略するので、そのあたりの感覚が分りにくくなっているのでしょう。テレ朝のサナウンサーの言い方だと、
「○○率いる▲▲」
となっているにも関らず、「○○」は「目的語」です。だから動詞は「率いる」ではなく「擁する」を使うべきだと思います。
最近、助詞の関係が分らないで、めちゃくちゃ使う若い人が増えているように思います。
2005/10/21