◆ことばの話2325「わが国」

10月19日青森県の三村申吾知事が、日本初の使用済み核燃料の中間貯蔵施設(青森県むつ市に建設を計画・東京電力)の建設に正式に同意したと、NHKのお昼のニュースで伝えていました。その際に知事の会見の様子が流れていましたが、その中で三村知事は、
「わがこく」
と言っていました。これはもちろん正しくは、
「わがくに」
です「わが国」。知事ともあろう人が、こんな読み間違いをするなんて・・・・
ただ、近ごろはニュースで「わが国」という表現は使わないんですよね。だから、文字で「わが国」と目に入ってきた時に、耳慣れない言葉なので、つい「わがこく」とコクのある読み方をしてしまったのではないでしょうか。
たしかに以前は「わが国」とニュースでも使っていましたが、書き言葉的であることなどから、使わなくなったようですね。
『NHK言葉のハンドブック』には、
「わが国は文語調のことばであり、やや主観の入ったことばと受け取られるおそれもあるので、ニュースなどの客観的な報道では、原則として使わない。」
〈例〉わが国の経常収支は・・・→日本の経常収支は・・・

という記述がありました。
2005/10/19


◆ことばの話2324「おひかえなすったほうが」

10月18日のNHKお昼のニュースを見ていたら、前日の小泉総理の靖国神社参拝について、村田国家公安委員長が、こう言ってました。
「こういった状況の中で靖国神社に参拝するということは、おひかえなすったほうがよかったのではないか」
と答えていましたが、この
「おひかえなすったほうが」
というのを聞いて頭に浮かんだのは、
「任侠の人」
ですね。思わず隣の席のHアナウンサーと顔を見合わせました。
「てまえ生国と発しますは、葛飾柴又、帝釈天に産湯を使い、姓は車、名は寅次郎、通称フーテンの寅と申します」
とかなんとか言い出しそうで、おかしかったです。これはやはり、
「おひかえになったほうが、よかったのではないか」
と言った方が、良かったのではないでしょうか。
2005/10/18


◆ことばの話2323「丁稚」

Hアナウンサーが、来年入社予定のアナウンサーの卵・Kさんについて話しています。
「昨日、Kが原稿を持ってきて、『これ、なんて読むんですか?』と聞くので見てみると、『丁稚』と書いてありました。あらあ、『でっち』が読めないのかぁ、とガックリしながら、『「丁稚」と言うのは、昔商家に住み込みで働いていた小僧さんで、年に2回、「薮入り」の時にしか実家に帰れなかったんだよ』って教えてやったんですが・・・」
「その『薮入り』もわからなかったんだろ?」
「そのとおり!」
「そりゃそうだろ、『丁稚』が分らないのに、『薮入り』が分るはずないじゃないか。」
「そうですかねえ、『薮入り』ぐらいは、分ると思ったんですが・・・。」
若者をなめちゃあいけないよ。
「知ってるわけ、ないじゃん!」
ぐらいに思っておくと、ハラが立ちませんからね。
そんなことを話しているうちに、話は、「丁稚ようかん」にうつりました。
「なんで、その食べ物は『丁稚ようかん』と言うのか?」
という話題。I部長によると、
「丁稚が食べるくらい薄くて小さいから」
私の故郷の伊賀上野も「丁稚ようかん」が名物の一つですが、たしか私が聞いた語源は、
「丁稚が食べるので、普通の羊羹のようにしっかりとした固さや重みがなく、ちょっと薄まった味だから」
というものでしたが、真相は?ネット検索で調べたところは、
「丁稚さんがお盆に帰省するときに、店の旦那がお土産に持たせた、というのが語源」
と出ていましたが、どうなんでしょうか。京都、滋賀、伊賀(三重)、越前(福井)あたりでは、ごく普通に使われている呼び名のようです。(まあ、そのモノがある、ということですね。)
Google検索(10月18日)では、
「でっちようかん」=589件
「丁稚ようかん」= 402件
「丁稚羊羹」=   617件

でした。
2005/10/18
(追記)

川崎市の西尾さんからまたメールをいただきました。

『番頭はんと丁稚どん』の昆ちゃんや小雁ちゃんは知らなくても、毎日香のCMの「さだきち君」ぐらいは、知ってて欲しいです。「薮入り」の言葉もCMに出てきた覚えがあります。円楽師匠の語りでした。昭和も遠くなりにけり…でしょうか。
>「なんで、その食べ物は『丁稚ようかん』と言うのか?」
『たべもの起源事典』(岡田 哲、東京堂出版)にはこんな記載があります。
「でっちようかん(丁稚羊羹)」=庶民的な蒸しようかんの一種。明石市(兵庫県)・神戸市・京都市辺りの名物蒸しようかん。赤アズキのこしあんに,コムギ粉・葛粉・黒蜜を混ぜ合わせ,竹の皮で包んで蒸し上げる。京阪神の年季奉公人に,長い問にわたり親しまれる。丁稚の名の由来は,(1)いつでも,気軽に食べられ,丁稚にも買えるほど安いとか,(2)丁稚奉公に出ている人が,値段の高い練りようかんの代わりに,手軽に里帰りのお土産にできたとか,(3)あんを練り上げる操作を,でっちる(捏ねる)と呼んだからとする説がある。江戸中期の文政年間(1818〜29)に,明石の藤江屋寅吉が,丁稚ようかんを創作したとする説がある。京の茶人の問でも,手軽で美味しいと評判になり,丁稚ようかんの老舗がある。」

明石の老舗「藤江屋分大」の話が、神戸新聞のサイトにありました。既にデッドリンクなので、Googleのキャッシュから今のうちにサルベージ。
「丁稚羊羹(明石) 思いやりが生んだ庶民の味 (掲載日:2002/10/12)
しっとり落ち着いたあずき色が、素材の味わい深さを物語る。表面のつややかな光は上品な甘さを象徴するよう。さくっとした歯ごたえが、至福のひとときにいざなう。丁稚羊羹(でつちようかん)。何とも庶民的なネーミングと、品の良いさっぱりした風味が人気だ。発祥の地といわれる場所は、滋賀県など関西を中心にいくつかあるが、もっとも有名なしにせが明石の「藤江屋分大」(同市本町一)。一八一八(文政元)年の創業で、初代当主の藤江屋文太夫が考案したという。「歴史はうちが一番長いはず」と安藤晋三社長(60)。江戸時代、城下町として栄えた明石。文太夫は参勤交代で江戸から戻った知人にうまい和菓子の話を聞き、それをもとに独自の菓子を作っていた。そんな文太夫は羊羹を初めて食べたとき、「こういううまいものを丁稚(少年店員)にも食べさせたい」と思ったという。羊羹の材料はあずきと砂糖、寒天。高価な砂糖をふんだんに使った羊羹は当時、使用人には手の届かない高級菓子だった。そこで文太夫は砂糖を控え、あずきの風味を生かすことにした。「丁稚」でも買える安さから付いた名は「丁稚羊羹」。豊かなあずきの風味とあっさり味が評判で、茶菓子としても重用されたという。

発祥説も語源説も色々あるようです。素朴で庶民的なお菓子ですから、各地で独自に考案され名付けられたというのが正解かもしれません。
ところで、『番頭はんと丁稚どん』がいつ頃の放送だったのか、ふと気になって「テレビドラマデータベース」で調べてみました。
http://www.qzc.co.jp/DORAMA_CGI/DORAMA1.EXE?RECNUM=1537
タイトル「番頭はんと丁稚どん」キー局・MBS、放送期間1959/3/9 〜 1961/12/25、
放送回数=146回
今では考えられない長寿ドラマですね。東京ニュース通信社の『テレビ50年』には、十円ハゲのこん松と小雁ちゃんの懐かしい一コマが載っています。いつも「こん松、ちょっと来い」と呼ぶのは、番頭の雁之助さんでしたか。

はあ、すごい!いつもいつも西尾さん、ありがとうございます!

2005/11/6


◆ことばの話2322「休工日」

10月10日、自動車を運転していたら、「工事中」の看板の上に、
「休工日」
という貼り紙がされていました。
工事が、今日は、休みのようです。でも生真面目に、まるでお店のように「本日休業」を示したこの「休工日」という言葉は初めて見ました。学校が休みの「休校日」や、図書館がお休みの「休館日」は見たことがありますが。(余談ですが、今「きゅうこうび」とパソコンに打ち込んで変換したら、「急交尾」と出ました・・・)
Google検索(10月18日、日本語のページ)では、
「休工日」=177件
と少なかったです。(全体でも同じく177件でした。)
先日、大阪では「五・十日(ごとび)の工事はやめよう」という記事が出ていたのを目にしました。「五・十日」の混雑が、ほかの日に比べて何十パーセントも高いというデータがあったためです。それによって「工事は休みの日ですよ」ということアピールするために張り出されたのでしょうか、この「休工日」という貼り紙は。
おかげでまた新しい言葉を一つ知ることができました。
2005/10/18


◆ことばの話2321「二人の間に」

新人アナの研修をしているときのこと。I君が、
「二人の間には」
という原稿の文章を、抑揚たっぷりに、
「二人の(LHHL)間には(LHHHL)」(Lは低く、Hは高く発音する)
と読んだのですが、それを聞いて私は違和感を覚えました。妙に「間には」が強調されているように感じたのです。
この原稿の「二人の間には」は、殺人事件における「二人の間」、つまり「人間関係」を示しているのです。だから、それほどアクセントの抑揚をつけずにスラッと
「二人の(LHHL)間には(LhhhL)」(hはLとHの中間ぐらいの高さで発音する)
と読んだら、
「二人の人間関係」
を表し、素直に耳に入ってくる気がしますが、I君が読んだように、抑揚を付けすぎて「二人の間に」の「間に」を強調して少し高めに言い直すと、それは、
「物理的な空間の意味の『間(あいだ)』」
になってしまう気がします。つまり、
「ライトとセンターの二人の間にポトリと落ちた」
のような感じです。
アクセントの微妙な違いで、表す意味も変わってくる、というようなことをI君に教えたのでした。
2005/10/18