◆ことばの話2295「『ん』の種類」

日頃、日本語は書いたままの表記・文字を発音に変えるものだと、つい思い込んでいますが、実は「ん」には3種類あるのだと、以前読んだ『初めての言語学』という本に書いてありました。
それを実際に表記で示している看板を街中で見つけました。地下鉄の駅名表示のローマ字です。
まず、大阪市営地下鉄・御堂筋線「なんば」駅。この駅のローマ字表記は、
「Namba」
この「ん」は「m」ですね。
そして同じく御堂筋線の「心斎橋」駅は、
「Shinsaibashi」
この「ん」は「n」です。また、「新大阪」駅は、
「Shin−Osaka」
「ん」は「n」。で「新」と「大阪」の間には「−」が入っています。
そして「本町」駅は、
「Hommachi」
で「ん」は「m」です。つぎの「町」の「ま」も「m」で始まるので「m」を2回重ねた形になっています。
また「新金岡」駅は、
「Shinkanaoka」
「ん」は「n」
ですが、こちらは「新大阪」と違って、「新」のあとに「ー」はありません。
ついでに、私鉄の「南海」は、
「Nankai」
「ん」=「n」でした。
もひとつ、ついでに、6月20日「本間ゴルフに民事再生法」というニュースが流れたときに映った「本間ゴルフ」の建物の看板、ローマ字表記は、
「HONMA」
で、「ん」が「M」ではなく、「N」でした。
2005/9/23
(追記)

こないだ、東京出張したときに見た、東京の「日本橋(にほんばし)」のローマ字表記は、
Nihombashi」
と、「ん」は「m」で表記されていました。
ちなみに地下鉄の駅のテープアナウンスは、平板アクセントではなく「中高アクセント」で、
「にほんばし(LHLLL)」
でした。「二本橋」みたいですね。
2006/7/13
(追記2)

東京に出張で行った時に見た地下鉄の駅のローマ字表記、「銀座」が、
「GIZA」
で、「新橋」が、
「SHIBASI」
でした。つまり「ぎんざ」の「ん」「N」で、「しんばし」の「ん」「M」だったのです。大阪で言うと「難波(なんば)」「日本橋(にっぽんばし)」の「ん」が「M」ですが、ともに「ば(B)」に続く前の「ん」ですね。「新橋」もこれと同じで「ば(B)」に続く「ん」なので「M」になるのでしょう。

2009/8/13


◆ことばの話2294「こっさり」

9月4日、京都市美術館で開かれている「ルーヴル展」を見に行った帰りに、東山三条の交差点の角で見かけたラーメン屋さん、こんな文字が目に入りました。
「こっさりらーめん」
え?「こっさり」?
「こってり」なのか?「あっさり」なのか??この相反する二つの要素を兼ね備えた、奇跡のラーメンなのか???「さっぱり」わかりません。時間がなくてそのお店に入って食べることはできなかったのが残念です。
Goolgle検索(9月11日)では、
「こっさり」=472件
有りました。まだ多いとは言えませんが、数百件ということは、ここのお店だけがやっている表現、というわけでもなさそうです。検索した中には、
『発祥の京都の店の一部では、「あっさり」と「こってり」の中間「こっさり」という中華そばがあるらしい。』
という記述もありました。今度京都に行ったら、ぜひ食べてみますね!
2005/9/23
(追記)

その後、半年経つのですが、まだ「こっさり」ラーメンを食べるチャンスにはめぐり合っていません。そんな中、『大阪弁「ほんまもん」講座』(札野和男、新潮選書)という本を読んでいたら、「こてこて」という大阪を特徴付ける味の表現が載っていて、そこには、
「『こてこて』というのは『こってり』の程度のきついことだが、実はラーメンの場合、『こってり』の度合いは、大阪よりも京都の方が強い」
と書いてありました。そうなのか、京都のラーメンは「こってり」なのか!そうすると「こっさり」なる表現が出てきた土壌に「こってり」があり、そこに「あっさり」が加わったと考えられますね。
京都は学生さんが多いので、若い学生の食欲に合わせて「こってり」が出てきて、その後ヘルシー志向の女子学生や京都を訪れる女性観光客などの需要に合わせて「あっさり」が登場、さらにその折衷案として「こっさり」が出てきたのかもしれませんね。
2006/3/31


◆ことばの話2293「やばい2」

先般の文化庁の調査で、「やばい」という言葉は、もともとは、
「危ない、危険だ」
というマイナス・イメージの意味であったのに、最近はプラス・イメージの場合にも使われるようになってきた、という調査結果が出ていましたね。
その話をMアナウンサーとしていると、彼が、
「先日、実況を担当した『鳥人間コンテスト』で、応援団の若い連中が、『飛びすぎてヤバイ、ヤバイ』と言ってましたよ。」
というデータを提供してくれました。やはり、そういうふうに使われているんですね。これは「飛びすぎて危険」ではなく、
「下手すると優勝しちまうぜェ!イエイ!」
というニュアンスですかね。また、大学サッカー担当のNアナウンサーは、
「サッカーでは『徳永のドリブルは、ヤバイです』というふうな表現をしますね。僕の後輩で30歳のスポーツ担当ディレクターは、そういうふうに使っていました。」
と、また新データを。そして、サッカー以外に野球実況もするNアナは、
「野球では『今日のピッチャー、160キロ出ててヤバイぜ』とは言わないですねえ。なんででしょうかねえ・・・。」
とスポーツの種類、その愛好者の傾向によって「やばい(ヤバイ)」の使用者に偏りがあることを示唆してくれました。最後に、鳥人間のMアナは、
「『危ない』と『かっこいい』の両方の意味の『やばい(ヤバイ)』をどちらもよく使っているのは、タレントの出川哲郎じゃないですか?よく『ヤバイよ、ヤバイよ!』って言ってますよ。」
とのことでした。たしかに・・・。
2005/9/23
(追記)

文化庁の日本語に関する世論調査によると、「ヤバイ」を肯定的な意味で使うのは、10代で71・1%、20代で52・5%。判断がつかないときに「ビミョー」を使うのは、10代で96・4%、20代で89%。とのことですが、7月21日、産経新聞の夕刊「言葉の乱れ、医療現場への波及懸念」
と題した記事で、医療関係のNPO法人が医学生を対象に行った調査で、「ヤバイ」を肯定的に使う新しい使い方(=本来とは正反対の意味)をする若者が、半数以上もいたというのです。伐栗恵子記者が書いています。それによると、
『6月下旬、NPO法人「ささえあい医療人権センターCOML」(辻本好子代表)が西日本のある都市で医学生らを対象に開いた「医療系学生のためのコミュニケーション講座」に約25人の国立医大生らが参加したが、講師を務めた山口育子事務局長が「ヤバイ」の使い方を問うと、本来の「危険」「危ない」という否定的な意味ではなく、「素晴らしい」や「すごい」「おいしい」といった肯定的な意味で使うと答えた学生が半数以上。指摘されて初めて間違った「ヤバイ」を使っていることに気づいた学生もいた。
医師を目指す若者たちも決して例外ではなく、山口事務局長は「患者さんの年代は幅広く、仲間内だけの言葉が通じないことを認識する必要がある。もし、20代の医師が七十代の患者に向かって、『ヤバイ数値でした』とニコニコ顔で検査結果を告げたとしたら…。患者は顔面蒼白(そうはく)になってしまう」「若者言葉を使わなくても、『おなか(を見せて)』と単語でしか話さない医師も増えている。年々高まる医療不信の根底には、医師と患者のコミュニケーション不足がある。若者言葉がそれに拍車をかけなければいいのですが…」と訴えている。』
とのことでした。
机の中からこの記事が出てきたので、一応記録しておきます。
2006/1/15
(追記2)

見事、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で優勝した日本代表チーム、チームを牽引したイチロー選手が、会場となったサンディエゴのペトコパークに隣接したホテルで会見した様子が、3月22日の朝日新聞夕刊に載っていました。見出しは、
『イチロー「やばいです本当に」』
本文を読むと、
『イチロー選手は「これだけ同じ気持ちで一つの目標に向かったことはない。いい仲間に巡り合え・・・、やばいですね、本当に」と笑った。』
とあります。プラスの意味での「やばい」の使用例ですね。
2006/3/22


◆ことばの話2292「すき込む」

夏休に北海道に行きました。その時に読んだ北海道新聞(8月20日)に、こんな見出しが・・・。
「ホクレン、キャベツ104トン廃棄」「価格低迷、3産地で開始」
今年はキャベツが豊作過ぎて、仕方なく廃棄処分をしているということのようです。そのニュースとともに私の目に入ったのは、次の一文でした。
「農協で二十トンを産地廃棄し、十九、二十の両日でキャベツを畑にすき込む。」
この文の中の
「すき込む」
という言葉が、目新しかったのです。写真のキャプションにも、
「値崩れによる産地廃棄で、出荷直前に畑にすき込まれたキャベツ〜上川管内東神楽町」
とありました。「すき込む」は聞き慣れない、耳新しい言葉だです。さらに本文の中にも、
「十トンを畑にすき込んだ東神楽町の木村公俊さん(四九)は…」
とありました。よく、すきこんでいますね。北海道独特の言葉なのでしょうか?それとも農業用語なのでしょうか?9月8日Google検索では、
「すき込む」=1万2100件
もあり、一方言と言うよりは、農業関係用語のような気がします。「すき込む」という作業は、新聞の写真から想像すると恐らく、商品にならなくなったキャベツ(=玉菜)をつぶして畑の土に「まぶして」(?)しまう作業のことでしょう。
『日本国語大辞典』を引くと、
「すきこむ」(漉込)=「紙にふつうの原料以外の繊維を混ぜて漉く。また、紙をすくときに木の葉・蝶などをはさみこんで漉く。」
とありました。イメージはこれに近いのですが、「紙を漉く」の「すく」ではなく、農具の「鋤」(すき)の「すく」のイメージですね。
2005/9/23


◆ことばの話2291「老雄ダエイ」

8月18日の読売新聞か日経新聞スポーツ欄の見出しに、サッカーのイラン代表のベテランダエイ選手のことをこう記した見出しが出ていました。
「老雄ダエイ」
たしかにダエイ選手は、サッカー選手としては超ベテラン。調べてみると1969年3月21日年生まれの36歳ですが、イランの国民的英雄に対して、いくらなんでも「老雄」はかわいそうという気がしました。
ちなみにGoogleで「老雄」を検索(=606件:9月23日)して出てきた人の名前には、
「峠の老雄EF16」(電気機関車)
「老雄C58」(蒸気機関車=昭和19年製造)
「老雄エンゲルグレーセ」(競走馬)
「老雄スピードシンボリ」(競走馬)
「明治の老雄・肥薩線の木造駅舎」
「アラファト議長」
「ベネズエラの老雄レオ・ガメス(40)」(ボクシング)
「老雄マテウス」(サッカー、ドイツ)
「ジュビロは藤田を含め日本サッカーの宝と言うべき3人の老雄を抱えており」(サッカー、日本)
「老雄戦艦『伊勢』『日向』」(戦艦)
「先日、ダイエー創業者の中内氏も亡くなっており、戦後的価値を体現した老雄(後藤田正晴、中内功)二人の退場は暗示的でもある」
「4階級制覇に執念を燃やす老雄ロベルト・デュランにベルトを奪われてしまうのである。」(ボクシング)

といったところが上がりました。うーむ、思っていたより、「老雄」は使われているな。でも実は人間に対してと同じくらい、モノや動物に対しても使われているんですね。
ま、サッカーでもジュビロの藤田や(おそらく)ゴン中山、ドイツのマテウスなどのサッカー選手が「老雄」ならば、ダエイも「老雄」でも仕方がないのかもしれません。でも、なんだかかわいそうです・・・。同じくらいの年の三浦カズ選手のことは「老雄」とは言わないような。生年月日はカズが1967年2月26日生まれの38歳で、ダエイよりも2歳年上なんですけどね。
2005/9/23