◆ことばの話2245「ヤカラ」

7月16日、電車の中で耳に入ってきた3人の若者の言葉。大学2、3回生ぐらいでしょうか。話の内容から、テニス部の上級生が一人とその後輩二人と思われます。いくつか「おっ!」と思った(意味不明、あるいはよくわからない。私は使ったことのない)言葉を使っていました。
*「オレ『そろえる系』嫌いですから。」
〜「そろえる系」とうのは、上から下まで同じブランドで服装を「そろえる」ということなんでしょうかね。

*「試験プーやんな、一問目から。」「プーやん(LHLL)」。
〜「プー」は尾高アクセントだが「や」をつけると中高。「まったく箸にも棒にもかからないぐらいダメだった」という意味でしょうか。

*「教員(きょ・う・いん)」

〜「きょういん(LHLL)」と、「う」が高い「中高アクセント」。標準語だと「きょういん(LHHH)」と平板アクセントのはず。中高アクセントの「きょういん(LHLL)」は、「教員採用試験」のことでしょうか?

*「ヤカラ(LHL)じやないすか。」

「ヤカラ」は「中高アクセント」でした。なんか、「ヤクザか不良」というような意味、「一般人ではない」というような意味に思えました。
「ヤカラ」という言葉にこういう使い方があるのかどうか、「ことばについての会議室」に書き込んだところ、Yeemarさんから書き込みをいただきました。

『その用法は初めて聞きました。「やから」にもともと悪い意味はないのでしょうね。「や」は「家」、「から」は血縁関係にあることを表すとのこと(『日本国語大辞典』第2版)。つまり、一族。天皇の一族のことも「御」をつけて「みうから(御親族)、みやから(御族)」などと言っています。昭和天皇の大喪の礼のときには「皇太子(ひつぎのみこ)をはじめ、みうからみやから、御別(みわか)れ告げたまひ……」と祭詞を読み上げていました。
「不逞のやから」などと悪い形容をつけて言われることは多くなったものの、「やから」自体には悪い意味がなかった。ところが、単独でも「やからがやって来た」などと悪い意味で使われるようになったとすれば、おもしろいですね。
あたかも、「ていたらく」が、「呆れたていたらく」と悪い形容をつけて使われつづけたあげく、「ていたらくな生活(=ひどい生活)」と単独で悪い意味に用いられるようになったのと似ています(参照:飯間浩明『遊ぶ日本語 不思議な日本語』2003 p.101、読売新聞校閲部『日本語「日めくり」一日一語』2003 p.125)。』


ということで、「やから」そのものには、もともと悪い意味はなかったが、「不逞のやから」など悪い意味の文脈で使われる中で、「やから」にも悪いイメージがついてしまった、と。その類では、「ていたらく」も単独では悪い意味はなかったのに、「呆れたていたらく」などと使われる中で、悪いイメージがついてしまったということですね。ご指摘、ありがとうございました。
それで思い出しました。2002年6月18日、ワールドカップの決勝トーナメントの日本対トルコの試合が終わったあとに、大阪・道頓堀の川に飛び込む若者たちの様子を中継した時に、私が、
「ここで飛び込んでいるヤカラ(LHH)は、本当のサッカーファンではありません!」
と中継でコメントしたこと。放送の中で「ヤカラ」という言葉を使ったのは、前にもあとにも、この1度きりです。アクセントは「平板アクセント」でした。
2005/7/29
 


◆ことばの話2244「山鉾巡行」

7月17日と言えば、「京都・祇園祭」の
「山鉾巡行」
の日です。(もう過ぎちゃいましたが。これを書き出した時には「まだ」だったのです。)
この「山鉾」の読み方ですが、「鉾」を濁るかどうかが、テレビ局によって違います。
私が確認した限りでは、
*「やまぼこ」と濁る=「朝日放送」(テレビ朝日系列)「関西テレビ」(フジテレビ系列)
*「やまほこ」と濁らない=「読売テレビ」(日本テレビ系列)「NHK」「毎日放送」(TBS系列)

でした。その辺の事情について、また、各鉾の呼び方(特に「月鉾」について濁るかどうか)各局に聞いてみたところ、こんな返事が返ってきました。
(ABC)「ヤマボコジュンコー」で統一している。
これまで非公式に、
「『やまボコ』やで」「いや、『やま』と『ほこ』やから『やまほこ』やでぇ・・」
など様々な論議があり、(非公式に)揺れていた時期もあったが、あくまで正式には、
「やまボコじゅんこー」
この他の「鉾」の呼び方は、
「なぎなたボコ」「つきボコ」「ふなボコ」「かんこボコ」。(つまり濁る)

(MBS)「ヤマホコジュンコウ」と濁らず。

「鉾」の読み方は、MBSで作っている資料によると、
長刀鉾・・・「ナギナタボコ」、船鉾・・・・「フネホコ」、綾傘鉾・・・「アヤガサボコ」、函谷鉾・・・「カンコボコ」、菊水鉾・・・「キクスイホコ・〜ボコ」、月鉾・・・「ツキボコ」、鶏鉾・・・・「ニワトリボコ」、放下鉾・・・「ホーカボコ」など。
なお「鉾」の読み方については、1992年、祗園祭山鉾連合会が「ホコ」に統一し「ボコ」は使わないと一旦は決めたようだ。しかし鉾町側が反発し、翌年(1993年)連合会が前年の呼び名統一を撤回、それ以降は各鉾町の判断に委ねられているとのこと。

(NHK京都放送局)「ヤマホコ」と濁らずに読んでいる
「ヤマ」と「ホコ」が巡行するのだから(あくまで並列)というのが理由づけになっている。「ヤマボコ」という名前の鉾が巡行するという誤解を生じさせないという意味合いもある。「山鉾町(ヤマホコチョウ)」も濁らずに読む。
個別の鉾の名前は、9年前(1996年)に山鉾連合会とNHK京都とで協議した結果、
「ボコ」
と濁って読んで良いということでご了解をいただいており、ニュース原稿では原則「ボコ」と濁って読んでいる。
「長刀鉾」・・・「ナギナタボコ」、「月鉾」・・・「ツキボコ」、「船鉾」・・・「フネボコ」、「函谷鉾」は「カンコボコ」。(函谷鉾の「函谷」は「カンコク」がもともとの読み方だが、通称として「カンコボコ」の方が通っている。)
ただし個別の鉾の名前は、中継などで地元の方も登場される場合、当然その方々の発音に合わせた方が良いので、取り決めは取り決めとして個別の鉾は「ボコ」が金科玉条というわけではない。鉾町の方々も、
「どっちゃでもよろし」
とおっしゃる方もあり、
「『濁る』」『濁らない』は、鉾の歴史の古さと深く結びついているのでおろそかにして欲しくない」
とおっしゃる方もあり、で様々。
長刀鉾のような定番中の定番の鉾や、函谷鉾のように、よく取材対象になる鉾は別として個別の鉾については、その都度、取材者が先方に確認する方が良い。(以上、NHK京都放送局 石踊アナウンサーによる)

また、新聞紙上でも「濁る」「濁らない」が違うようです。注意して調べてみると、
「やまぼこ」=読売、産経
「やまほこ」=朝日、毎日、日経

(読売、朝日、日経は7月16日朝刊、産経、毎日は7月11日の夕刊)
でした。
各新聞社の知り合いにメールで「なぜ濁るのか(濁らないのか)」尋ねたところ、朝日新聞の方からお返事をいただきました。
『記事データベースで見ると、「やまほこ」300対「やまぼこ」180。山と鉾は並列で形容関係ではないので、濁らない方が正解と思うが、厳密には運用していないようだ。』
また「月鉾」の読み方(ルビ)については、
「つきほこ」対「つきぼこ」対「ルビなし」=「4:2:44」。
「月鉾」の「ルビなし」が多数なのは、記事の前の方に「山鉾」が出てきて、そこでルビを振るケースが多いからと考えられる。」

また「鉾建て」の記事で朝日新聞だけは、
「山鉾建て」
としていたので「なぜかな」と思って聞いたところ、
「鉾建て」と「山建て」を合わせての総称として「山鉾建て」と言うのだそうです。初めて知りました。

ついでに「月鉾」も「つきほこ」なのか「つきぼこ」なのか。今年の宵々山(15日)に、京都市が鉾の前に立てている札を、9基の「鉾」全てを確認しましたが、すべて、
「ぼこ」
と濁っていました。当然「月鉾」も「つきぼこ」と濁って振り仮名がついていましたが、「月鉾保存会」の看板には「つきほこ」と濁らないでふりがなが振ってありました。
各局はNHK、ABC、MBSとも「つきボコ」と濁っているようですね。読売テレビは、
「つきほこ」
と濁りません。
また「船鉾」も難しいのですが、
(NHK)フネボコ
(ABC)ふなボコ
(MBS)フネほこ

とバラバラです。「船鉾」の前にあった京都市の立て看板には、
「ふねぼこ」
とふりがなが振ってありました。
2005/7/25
 


◆ことばの話2243「マクドのアクセント」

「ことばの話10まいど・おいど・マクド」「平成ことば事情988マクドとマック」にも書きましたが、関西ではハンバーガーの「マクドナルド」を「マクド」と略し、関東では「マック」と略するというのは、ごくごく一般的な話。
これは一般に若い人が会話の中で使うのですが、一般紙(新聞)もこの略称を使っています。またそれを目撃しました。
7月27日に、日本マクドナルドの創業者で去年4月に亡くなった故・藤田田(でん)氏の一族が、保有する株式を売却したというニュースで、新聞各紙(7月28日朝刊・関西版)の見出しは、
「マクド創業者一族 保有の株式を取得」(読売)
「藤田氏一族がマクド株売却」(朝日)

と、読売・朝日が「マクド」という略称を使っていました。そのほかの新聞は、
「藤田一族との資本関係消失 日本マクドナルド」(毎日)
「日本マクドナルド 創業者一族が全株式を放出」(産経)
「日本マクドナルド 創業者一族保有株を売却」(日経)

と、省略していませんでした。「マック」も使われていませんでした。
さて、それで思い出したのですが、この「マクド」のアクセントは「3拍中高」、つまり、
「マクド(LHL)」
です。これと同じようなアクセントの、ちょっと奇妙なアクセントの言葉を、7月20日午前0時のNHKニュースで耳にしたのです。それはフィリピンのアロヨ大統領の名前です。この「アロヨ」を、その時の男性アナウンサーは、あろうことか、
「アロヨ(LHL)大統領」
「中高アクセント」で読んでいたのです。これはなんだか違和感がありました。やっぱり、「頭高アクセント」で、
「アロヨ(HLL)大統領」
の方が、落ち着きが良いなあ。そう思った時に「マクド」を思い出したのでした。「中高アクセント」の「アロヨ」は関西アクセントだったのかな?東京のスタジオからのニュースでしたが・・・。
2005/7/28
(追記)

7月21日の日経新聞夕刊にこんな見出しが。
「ファミマが 米1号店〜和製コンビニ初上陸」
あ。「ファミリーマート」は大阪では略して、
「ファミマ(LHL)」
ですが、「マクドナルド」は略していなかった日経新聞でも、この略称「ファミマ」は使っていました。
ついでに言うと、7月27日の日経新聞は、「フェスティバルゲート」を略した「フェスゲ」を見出しに使って、
「フェスゲ売却も 〜大阪市長表明」
という記事が出ていました。
2005/7/29
(追記2)

ファミリーマートの高級店の名前が、本当に「ファミマ」になってしまいました。
また11月9日の読売新聞朝刊、再開した「新日本語の現場」で、「マクドかマックか」の分布地図が出ていました。
2005/11/9
 


◆ことばの話2242「コンタクトレンズの数え方」

土曜日の午前中、久しぶりに新聞のチラシをパラパラと見ていました。実は、欲しいものを探していたのではなく、チラシの中に出てくる「助数詞」を調べてやろうと思って見ていたのです。そんな中、コンタクトレンズの広告が目に留まりました。そのコンタクトレンズの数え方は、「1枚、2枚」ではなく、
「片眼1ケ月分(1箱30枚入)」
と書いてあったからです!
「片眼」という表記に「すごいなあ!」と思ったのです。と言うのも、このコンタクトレンズは、普通のものではなく、1日使い捨てタイプ(1DAYタイプ)の「ワンデイ・アキュビュー」だったのですが、その「1日使い捨てタイプ」が「1箱」。
あ、そうか。毎日使うからそれが1箱分入っているけれども、
「右眼と左眼で度数が違う」
ので、1か月分を左右別々に売っているということなんですね。普通のコンタクトレンズならば「1(ワン)セット」「2(ツーセット)」などと数えるところですね。
ついでに、そのチラシに載っていた「メガネ」の数え方は、
「メガネ限定30本」
のように、「本」でした。『数え方の辞典』(飯田朝子、小学館)によると、「メガネ」の数え方は、
「本、点、つ、個」
となっていました。「コンタクトレンズ」は、
「枚、組」
とあり、「片眼1ケ月分」などという「1日使い捨てタイプ」の数え方は、載っていませんでした。
2005/7/28


◆ことばの話2241「G4とAU」

国連の常任理事国入りを目指して日本が動いています。その関連のニュースで、最近よく目にするのが、
「G4とAU」
です。7月19日日経新聞の見出しを見たときには、国連の話とは思わずに、
「痔の薬とケータイのメーカー」
の話かと思ったら、違いました。ホラあったでしょ、お尻のクスリで「G4」ってのが、「AU」は、もう、そのままですよね。
実際は、「G4」「グループ4」、つまり、
「国連常任理事国入りを目指す4か国=日本・ドイツ・インド・ブラジル」
のこと、そして「AU」とは、
「アフリカ連合」。
「G4」の常任理事国入りを左右する安全保障理事会で大きな勢力である、アフリカの国々53か国の団体のことです。
常任理事国入りを目指すということは以前から話題になっていましたが、急に「G4」やら「AU」やら言われても、なんだか戸惑ってしまいますよね・・・。
2005/7/27
(追記)

ケータイの方の表記は、大文字ではなく小文字で、
「au」
でした。毎日見ているようでも、なかなか気づかないものです・・・。
2005/9/9