◆ことばの話2231「半陰陽」
7月15日の毎日新聞スポーツ欄に、ロイター時事の記事としてこんな見出しが出ていました。
「女性と称した『男性』陸上選手 禁固刑判決〜ジンバブエ」
それによると、ジンバブエの陸上選手が女性と偽って競技(三段跳びなど)を続けていたとして、性別詐称で逮捕されたサムケリソ・シトレ選手が14日、同国の裁判所で、禁固3年6月の判決を受けたということ。シトレ選手は公判で、
「自分は男女両方の性器を持っているが、女性として生きてきたと主張。しかし医学検査の結果は男性だった。」
と記事は結んでいます。
医学検査の結果は「男性」と出たわけですが、シトレ選手の、
「自分は男女両方の性器を持っている」
という主張を信用すると、彼(彼女)は、いわゆる
「両性具有(者)」「半陰陽」
と呼ばれる存在です。インターネットで「半陰陽」の解説を検索してみたところ、こう出ていました。
「intersex」「ふたなり」とも。英語ではインターセックス。仮性半陰陽(遺伝子上の性別とは逆の外性器を備えていること)と真性半陰陽(両性の外性器を備えていること)があり、特に真性半陰陽の状態は個人差による所が大きい。この性質を持つ人は、半陰陽者、インターセクシュアル(インターセクシャル)、ハーマフロダイト?などと呼ばれる。」
『インターネット大辞林』を引くと、
「はんいんよう」―いんやう 3 【半陰陽】=「外性器が生殖腺の雌雄と反対の外観を呈すること。また、同一個体に両性の生殖腺を有すること。半陰半陽。ふたなり。」
「りょうせい-ぐゆう」りやう―いう 5【両性具有】=「男女両性を備えた神話的存在。相対立するものの一致、全体性などの象徴とされる。」
とありました。
そして、『日本国語大辞典』を引くと、結構詳しく載っていました。
「半陰陽」=性別のはっきりしない一種の異常。染色体異常が一因でおこる。女性の染色体XXと男性の染色体XYが同一の個体にモザイク状に存在する。陰茎睾丸をそなえていながら外陰部が女性のようなもの、女性であるのに性器の一部が肥大して陰茎のように見えるもの、睾丸と卵巣を同時にそなえていて男女の区別が困難なものなど、さまざまな程度がある。ふたなり。*裸に虱なし(1920)〈宮武外骨〉男に乳房のある理由「妊娠後の三ケ月間は、対峙に男女の差別が無く、半陰陽(ハンインヤウ)の体(てい)であるのが、四ケ月目に男になり女になるのであって」
「両性具有」=男女両性を備えていること。特に心理学的な両性の傾向体現や、神話や儀式などに現れる原初の全体性を象徴する存在をいう。
ついでに・・・
「ふたなり(二形・二成)」=(1)ひとつのもので、二様の形状を持っていること。特に、一人で男女両方の性器をもっていること。また、その人。半陰陽。はにわり。ふたなりひら。
『読売テレビ放送用語ガイドライン』には、第2章に、「性差をめぐる表現」という項がありますが、「半陰陽」に関する記述はありません。ただ、「セクシュアル・マイノリティー」に関する記述はあります。もっぱらゲイとレズビアンと性同一性障害に関する記述ですが、
「性的少数者差別」を行ってはならないという主旨の記述から考えると、この「半陰陽」のジンバブエの陸上選手に関する記事の取り扱いに関しても、面白おかしく取り上げるのではなく、十分に内容を吟味した上で、どういう方向性で取り上げるのか、慎重に取り扱わなければならないでしょう。
|