◆ことばの話2195「課題は・・・」

6月13日のニュースで見た、前日の女子ゴルフで12位に終わった宮里藍選手、インタビューに答えて、
「課題は山盛りです」
と言っていました。新しいなあ・・・。普通は、
「課題は山積です。」
って、常套句では言うんですけどね。この場合、「山積」は、
「サンセキ」
というのが正しいとされています。しかしよく、
「やまづみ」
と言っている記者やアナウンサーがいます。そういう時には
「サンセキだよ」
と注意をするのですが、それにしても、
「山盛り」
はすごいよなあ、予想外だよなあ。さすが藍ちゃん。恐れ入りました。
2005/6/14



◆ことばの話2194「49日」

6月11日土曜日、お昼のNHKニュースを見ていた時のこと。12時10分になって大阪のスタジオから関西のニュースに切り替わった時に、藤本アナウンサーがJR福知山線の脱線衝突事故の犠牲者の四十九日(しじゅうくにち)法要が営まれたというニュースを伝えていました。そのときの字幕スーパーには、
「49日」
と出ていたのですが、私はこれに違和感を覚えました。「四十九日法要」は、亡くなってから49日ということでしょうが、法要の名前としては漢字で、
「四十九日」
と書くべき性格のものではないでしょうか。
アナウンサーの基本として、数字の読み方の一つ、「四十九日」は「シジュークニチ」と読み、決して「ヨンジューキューニチ」「ヨンジュークニチ」とは読まないようにということを教えられます。それと同じように、表記も「49日」ではなく「四十九日」であるというふうにするべきではないかと思うのですが、いかがでしょう?「四十九日法要」の「四十九日」は、固有名詞的な性格を持つものだと考えられます。つまり、
「三重県」「四日市市」「五島さん」「六地蔵(京都の地名)」「七味唐辛子」「八日市」「九重部屋」
などを、
「3重県」「4日市市」「5島さん」「6地蔵」「7味唐辛子」「8日市」「9重部屋」
と書いているような違和感を私は覚えたのですが、皆さんはいかがでしょう?
参考までに、2005年の2月から、「記事では洋数字(アラビア数字)を使うのを原則とする」というふうに方針変換した読売新聞の『読売スタイルブック2005』をひもとくと、「数字の書き方」の項に、「次のようなものは漢数字書きとする」と書いてあります。それは、以下のようなものです。

*「ひと(つ)、ふた(つ)、み(っつ)と読む場合」=一つ屋根の下、二間続き、三つ星のレストラン、四つ葉のクローバー、五つ子
*一人(ひとり)の場合=
<ことわざ・成語・熟語>一人芝居、一人っ子、一人息子
<単独の語感や意味合いが強いもの>一人でも動かせる、ただ一人、誰一人として、夜道の一人歩き
<ほかの数字に置き換えられない場合>IT時代のリーダーの一人
*二人(ふたり)の場合=
<カップルやペアを示すとき>お二人、二人の世界(注)「5人のうち2人」のように人数を示すときには洋数字。
*「概数・あいまい数」=二、三百円、二十数人、(200〜300人、20人を超える)など表現を工夫する)
*「熟語・成語・ことわざを構成する数字」=三日天下、三度目の正直、三十にして立つ、六十の坂を越す、白髪三千丈、二者択一、三位一体、九分九厘
*「歴史的に表記が固まっている語」=前九年の役、三国干渉、倭の五王、一国一城令、八色の姓、三民主義
*「他の数字と自由に差し替えられない数を含む語」=一村一品運動、百万長者
*「囲碁・将棋・武道などの段位(級は洋数字)」=内藤九段、アマ三段、柔道五段
*「伝統芸能・伝統工芸などの『代』や『世』など」=十二代目市川団十郎、十四代酒井田柿右衛門、十三世名人
*「漢数字書きの固有名詞・タイトル・引用文」=壺井栄作「二十四の瞳」
*「続き柄」=二男、三女(2男3女をもうける)など人数を表すときは洋数字)
*「学校名・会社名など」=旧制一高、第一生命、八十二銀行
*「その他漢数字書きがなじんだ語」=一からの出発、一家5人、一眼レフ、一戸建て(中略)、二院制、二期作、二次感染(中略)、三角形(四角形・・・)、三が日、三原色(中略)、四肢、四の五の言わずに、四半世紀(中略)、五言絶句、五七五、五指に余る(中略)、六三制、第六感、七五調、七転八倒、七福神(中略)、八宝菜、八方美人、口八丁(中略)、九死に一生、九輪、十戒、十八番、二十三番札所、二十四節季、四十方、四十七士(以下略)

そして「仏事・伝統行事など」という項に「五百年遠忌」「一周忌」「十七回忌」「お七夜」「七五三」などと並んで、「四十九日」が載っていました。やはり漢数字で書くべきものですね。
この話とは直接は関係ないのですが、藤本アナウンサーはニュースの中で、花の「菖蒲」のアクセントを、平板アクセントで「ショーブ(LHH)」と言っていました。『NHK日本語発音アクセント辞典』を引くと、「菖蒲」のアクセントは「勝負」「尚武」と同じで、
「ショーブ(HLL)」
という頭高アクセントしか載っていませんでした。
気になりだすと細かいところまで気になる、ということですかね。
なお、その日(6月11日)の夜9時のNHK−BS1のニュースの字幕では、
『脱線事故各地で四十九日法要』
と漢数字を使っていました。
2005/6/11


◆ことばの話2193「高1の日常語」

『週刊文春』の5月19日号の「阿川佐和子のこの人に会いたい」のゲストは、女優の竹下景子さんでした。阿川さんとはほぼ同世代で、話も弾んでいたようです。
その中で、竹下さんの2人の息子に関する話が出てきました。上のお子さん(19歳)は高校1年の時からイギリスに留学させていて、それにならって16歳の下の息子もイギリスに行かせようとしたら反抗にあって、イギリス出発当日に「プチ家出」されたとのこと。その前日の様子がこのように語られていました。

竹下「夜中の二時か三時に廊下で擦れ違ったとき、パジャマでいるはずの時間なのに彼は普通の洋服でいたんですよ。で、珍しく『おやすみ』って言ったんです。」
阿川「それって珍しいことなの?」
竹下「ふだんはほとんど口ききませんから。何か言っても『微妙』とか『余裕』、あと『忘れた』『無理』『別に』、単語にどのくらいのニュアンスをつけるかが違うぐらいで、四言か五言で生活してますから(笑)」
阿川「じゃ、『おやすみ』は大事件だ。」


そうなのかぁ、今の高1は、まあ、こんなものなのかなあ、反抗期だしなぁ。自分のことを思い出しても、中学・高校の時の親との付き合い方は、こんなものだったものナア。でも、そんな家庭の生活は、
(笑)
で済まされないような気もしました。
2005/6/14



◆ことばの話2192「四ツ星」

5月11日のニューススクランブルの特集で、ニューヨークから5人の菓子職人(パティシエ)がやってきたという話題をやっていました。その中で、
「四ツ星のケーキ」
というような表現がありました。
何かひっかかったのですが、たとえばミシュランには四つ星はあるのでしょうか?三ツ星まででは?
とこう考えてディレクターに聞きに行ったところ、
「たしかにミシュランは三ツ星までですが、ここのお店では四ツ星があるのです」
ということでした。たしかに「ホテルの評価」なんかは「四ツ星」だったような気がします。いや、「五ツ星」だったかな。
このように、「星の数」というのは、「3つが最高」というものもあれば「4つが最高」、あるいは「5つが最高」というものもあります。「3つが最高」と考えているところでは「三ツ星」は「最高」を意味しますが、「5つが最高」のところでの「三ツ星」は「凡庸である」ことの表現にしかなりません。「四ツ星」も同じことです。
このあたり、星の数の表現は一体どういうふうになっているんでしょうね???
ちょっとこの話をメモしてから時間が経ってしまった(1か月も!)のですが、Googleで検索してみました。(6月14日)
「三ツ星」=9万2600件
「四ツ星」=4320件
「五つ星」=6380件
「3つ星」=107万件
「4つ星」=104万件
「5つ星」=119万件

ということで、星の数が「漢数字」では「三ツ星」が圧倒的に多いのですが、洋数字になると逆に「5つ星」の数が多いということがわかりました。ついでにその前後の数も調べてみようかな。
「一ツ星」=994件
「二ツ星」=503件
「六つ星」=6610件
「七ツ星」=772件
「八ツ星」=66件
「九ツ星」=19件
「1つ星」=119万件
「2つ星」=113万件
「6つ星」=110万件
「7つ星」=72万件
「8つ星」=68万6000件
「9つ星」=67万6000件

ありゃ。ややこしくなりましたねえ。「5つ星」「1つ星」がまったく同じ119万件、次いで「2つ星」「6つ星」「3つ星」「4つ星」の順で、すべて100万件を超えています。ムチャクチャ多い!
またついでに、漢数字の方の送り仮名を、平仮名の「つ」にしてみるか。
「一つ星」=1万2800件
「二つ星」=1万件
「三つ星」=3万6000件
「四つ星」=1万6300件
「五つ星」=18万1000件
「六つ星」=649件
「七つ星」=4500件
「八つ星」=75件
「九つ星」=25件

ということで、これは割とわかりやすいかな。「五つ星」が圧倒的に1番。次いで「三つ星」、そのあと、「四つ星」「一つ星」「二つ星」の順で、ここまでが1万件超え。あと、め”ぼし”いのは4500件の「七つ星」ぐらいでしょう。これは「北斗七星」の関係かな。
ということで、私の勝手な判断で、
『星の数による評価は「五つ星」が一番多い!』
ということしておきましょう!

2005/6/14
(追記)

『読売スタイルブック2005』によると、「ひと(つ)、ふた(つ)、み(っつ)と読む場合」として、
「三つ星のレストラン」
というのがありました。表記は「三つ星」でした。
2005/6/15
(追記2)

6月15日の日経新聞夕刊に、
「3つ星に未練なし〜新境地求める仏料理界の重鎮」
という見出しの記事が載っていました。見出しは、
「3つ星」

で洋数字ですが、本文を見ると、
「ミシュランガイドの三つ星」
などと
「三つ星」
という漢数字が使われていました。
2005/6/17



◆ことばの話2191「車列」

イラクでまた自爆テロがあった、というニュースを見ていた時に、Sアナウンサーがふと、

「『車列』という言葉、なんか普通に使われるようになりましたね。」

と話しかけてきました。あ、たしかに。あまりふだんは使わないような気がする言葉です。
『広辞苑』『新潮現代国語辞典』『新明解国語辞典』『三省堂国語辞典』『日本語新辞典』『明鏡国語辞典』『岩波国語辞典』『大辞林』『日本国語大辞典』には、見出しでは載っていませんでした。
Google検索では(6月14日)、
「車列」=3万5300件
日本語のページ限ると、
「車列」=3万4800件
とあまり変りません。随分と使われています。イラクがらみだけでなく、
「渋滞の車列にトラック追突」
というような国内の事故の記事にも使用例がありました。
ただ、ざっと見た感じでは、イラクがらみのものが多いようです。新しい言葉かもしれません。というより、軍隊用語なのかもしれません。また、調べて見たいと思います。

2005/6/14
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