◆ことばの話2180「かみます」

大阪の看板の文字は、直接的です。
昔、東京の友人が大阪に来て電車に乗った時に、
「大阪って恐いなあ。電車のドアのところに『指づめ注意!』ってシールが貼ってあったけど、ふつう『指づめ』なんて言わないよな。ヤクザのような感じだよね。東京だと『ドアにご注意ください』って書いてあるよ。」
と言われたことがありました。「そうかなあ、普通だと思うけど」と、その時は思いましたが、今は「たしかにそう言えばそうだな」と思うようになりました。現在はこの「指づめ注意」というシールは見かけなくなりましたが。
一方で、結構よく見かけるのが、動物園の猛獣の檻にかけられた
「かみます」
というプレートです。おととし(2003年)に閉園した宝塚動物園に行った時に見かけたホワイトタイガー。(2003年3月)


この檻にも、
「手をだすとかまれます」
というダイレクトな注意書きがありました。たぶん、過去にかまれたお気の毒な方がいたんでしょうね。


一方この年(2003年)の10月に行った六甲山牧場の、これは馬だったかなあ、柵に、
「かみます、ちゅうい!!」
という赤い文字がありました。


関西の動物が「よく、かむ」ということではなく、やはり直接的な表現で危険を告知しているのだろうと思います。かむと言えば、ウチのKアナウンサーもよく「かみ」ますが。特に看板の注意書きは出していません。
その一方で、以前、京都市動物園に行った時の話。カバの檻のところに何やら注意書きが。小さめの文字なので、遠くからだと読めません。
「字が小さいよなあ、なんて書いてあるんだろう・・・」
と思いながら檻に近付き、ようやく読めたその文字は、
「カバが糞を飛ばしますから、あまり近寄らないように。」
おいおい、人を近付けておいて、そりゃないやろ!カバに、いやいや、バカにするな!
と思わず二、三歩飛び下がったら、その目の前に、ベチャッ・・・。
2005/5/6



◆ことばの話2179「さおだけ」

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?〜身近な疑問からはじめる会計学』(山田真哉、光文社新書:2005、2、20初版1刷)という本を読んでいたら、妻が、
「さおだけ屋さんって、さお”だけ”売ってるから”さおだけ”って言ってるの?」
「・・・本当にそう思ってるの?」
「だって、ほかに何を売ってるの?売ってないでしょ。さおの専門店なんだ、きっと。だって、♪さおーだけ〜♪って言ってるじゃない。」
「ちがいます!さおだけは、『竿竹』だよ。さお”オンリー”の”だけ”じゃないよ!そんなの、小学校の低学年の頃から、知ってるでえ」
「えー、そんなの、みんな知らないよ!きっと絶対知らないよ!!」

そんなこと、ないと思う。

会社で周りの人に聞いてみましたが、みんな当然のことながら知っていた、たった一人を除いて。誰とは言いませんが。ねえ、Aさん!
皆さんも当然、ご存知ですよねえ。
ただ、先日あるコマーシャルを見ていて、妻がこのように思ってしまうのにも、少しは納得したのでした。そのコマーシャルとは、NTTドコモが放送していた、
「ドコモ茸(だけ)」
というキャラクターが出てくるコマーシャル。キノコのキャラクターの「ドコモ茸」と、そのサービスがほかの携帯電話会社にはなく、
「ドコモだけ」(=「オンリー」の意味の「だけ」)
という意味をかけたコマーシャルです。
さおだけ屋さんもそのうちに、
「さお茸(だけ)」
というキャラを出すかもしれません・・・出さないか。タハッ。

(追記)

「なめ茸」はスーパーで、瓶詰めで売っています。

2005/5/6



◆ことばの話2178「ご誕辰」

今日、4月18日は礼宮様の36歳の誕生日。その日の読売新聞朝刊で、「紀宮さま誕生日の回答要旨」を読んでいたら、その中にこんな一文がありました。
「両陛下から学んだことは、悲しみの折にもありました。事実に基づかない批判にさらされ、平成5年ご誕辰(たんしん=誕生日)の朝、皇后様は耐え難いお疲れを悲しみの中で倒れ、言葉を失われました。」
ここで出てきた皇后陛下の平成5年の、
「ご誕辰」
という言葉。「誕生日の漢語的表現」なんだそうですね。(『新明解国語辞典』)
へえー、そんな言葉があるんですねえ。知りませんでした。
Googleで検索(5月10日)すると、「ご誕辰」はたったの54件。その全てについて、誰に対して「ご誕辰」が使われているかを調べたところ、
「皇后様」=32件(うち、30件は今回の紀宮さまの発言)
「大谷光真門主」=10件
「菅原道真(天神様)」=5件
「明治天皇」=3件
「紀宮さま」=1件
「昭和天皇」=1件
「その他」=2件

でした。
その後、去年(2004年)復刻版(?)が出た『言海』(大槻文彦、ちくま学芸文庫)を引いてみると、
「誕生日」=人ノ生マレタル日。誕辰。
と、「誕生日」の漢語としての「誕辰」が出ていました。「誕辰」を引くと、
「タンジャウビ」
とありました。もちろん旧仮名遣いです。
「誕辰」の「辰」には「生まれる」という意味があるそうです。この話をしたらHアナウンサーは、
「なるほど、それで『妊娠』の『娠』の字は、『辰』の字が使われているのですね!」
と膝を打ちました。
そのほか、この辞書では「たんじょうび」と「たんしん」だと、「たんしん」の方が先に載っているんです。「じょ」よりも「ん」が先。
さらによく見てみると、「ん」は、「む」と「め」の間にあるんです。現在の辞書のように「わいうえを」の次に「ん」とは、なっていないんですね。
つまり「ん」の発音は「む(MU)」と「め(ME)」の間にあると考えられていたのではないでしょうか。想像するに、「ん(MN)」のように「M」で始まる音として「ん」を捕らえていたと考えられます。
『言海』自身は一応「あいうえお順」(五十音)で言葉が並んでいますが、冒頭の「索引」は「あいうえお」と並んで「いろは」の表も示されています。これも何かで読んだ覚えがありますが(石山茂利夫さん『国語辞書事件簿』だったかな)、大槻がこの『言海』を完成させた時のパーティーに呼ばれた福沢諭吉が、スピーチで、
「あいうえお順(五十音順)は気に入らん!」
と言ったとか。いまや「いろは」で引けと言われても困るようになっていますが・・・。
2005/5/11



◆ことばの話2177「悲鳴を上げるなどしていた」

去年の7月21日の読売新聞の3段ほどの小さな記事。大阪は吹田の万博公園、エキスポランドで、
「横溝正史ミステリー・八墓村」
の催し物、お化け屋敷ですね、それが開幕したという記事。去年で8回目の夏恒例の行事です。
なぜそんな小さな記事を切り取ってあったかというと、その中の表現に気になったものがあったから。そこには、
「招待客らはテープカットの後、入場し悲鳴を上げるなどしていた。」
と書かれていたのです。この、
「悲鳴を上げるなどしていた。」
って、普通の文章じゃないでしょ?新聞特有の書きことば、常套句のパターンですよね。ま、テレビでもニュースの原稿に出てきますが。テレビのニュースって、そういう意味では、
「話し言葉と書き言葉の中間」
なのだなと、強く感じますね。
「〜するなどしていた」
という形です。たとえばプールへ行ったら、
「水を掛け合ったり、浮き輪で遊ぶなどしていた」
となりますし、公園に行ったら、
「キャッチボールをしたり、サッカーをするなどしていた」
となります。これはいいんですが、このお化け屋敷での、
「悲鳴を上げるなどしていた」
は気になります。「悲鳴を上げる」意外にどんなことをしていたのでしょうか?気になります。
「悲鳴を上げたり、失禁したりしていた」
のでしょうか?それとも
「悲鳴を上げたり、気絶したりしていた」
ということでしょうか?いずれにせよ、相当コワイのは間違いない。今年ももうすぐ第9回があるのかな。今年の記事が楽しみです。
2005/5/5



◆ことばの話2176「弁慶の刀」

アナウンス部の仲間とお昼ご飯を食べたあとの喫茶店でのこと。それぞれ注文して、あとはAアナだけ。ウエイトレスさんがオーダーを待ちます。Aアナは落ち着いて、
「えーっと、アイスティーオレ・・・・ホットで。」
「えっ?」

できるかい!そんなもの!また笑かしてくれるわ。

ちゃんと届いた冷たい「アイスティーオレ」を飲みながら、なぜか「弁慶」の話題になりました。そこでふと思いついてAアナに聞いてみました。
「弁慶が牛若丸に会うまでに、対戦した相手から奪った刀は何本か、知ってる?」
「・・・それは、なぞなぞですか?」
「違うよ、お話の上で、何本、刀を集めたかと言うこと。」
「えー・・・1000本?」
「惜しい!」
「じゃあ、987本?」
「(ズリッ)なんで、そんな中途半端なのよ!!」
「だって、9、8、7で語呂がいいかと・・・」
「そうじゃないよ。」
「うーんと、じゃあ、1001本?」
「惜しいなあ、ちょっと増えすぎ。」
「あ、わかった、キューヒャク・キュージュー・・・・」
「うんうん!」
「キューポン!」
「ガックシ・・・なんじゃその『キューポン』ってのはあ!!」
「すみません、1001本のあとだったので、つい・・・」

相変わらず、笑わしてくれますねえ・・・・。

2005/4/22