◆ことばの話2140「クラクフとクラコフ」

亡くなったローマ法王・、ヨハネ・パウロ2世の故郷は、ポーランドの「クラクフ」(Krakow)という町。これを4月8日のNHKのお昼のニュースでは、
「クラコフ」
と読んでいました。字幕も「クラコフ」と出ていました。
GOOGLEで検索したら(4月8日)、
「クラクフ」=2万0500件
「クラコフ」=  3680件
「ポーランド、クラクフ」=1万0600件
「ポーランド、クラコフ」=   656件

でした。ネット上ではメディアはどちらの表記を使っているか?私の調べでは、
「クラクフ」=読売、日経、朝日、毎日、産経、東京、中日、四国、河北新報、静岡の各新聞、TBS、CNN。
で、「クラコフ」はNHKだけでした。一文字違うだけですが、印象は派全然違いますよねえ。めったに出てこない地名の表記は、統一されていないものなのですね。
と、思って日本新聞協会の『新聞用語集』を見ると、ちゃんと載っているではありませんか。それによると、
「クラクフ」
でした。つまり各新聞社は、新聞協会の『新聞用語集』の「クラクフ」に従っているのだけれど、NHKは独自路線ということですね。
こういう例はほかにもいくつかあります。フランスの新酒「ボジョレ・ヌーボー」は、『新聞用語集』では「ボージョレ・ヌーボー」ですが、共同通信の『記者ハンドブック・新聞用事用語集』では、「ボジョレ・ヌーボー」と、「−」が入る部分が違います。日本テレビ系列は共同のハンドブックと同じです。ちなみに「クラクフ」は共同のハンドブックでも「クラクフ」です。
外来語の表記はかくも難しく、なかなか意見の統一が見られないということです・・・。

2005/4/8


◆ことばの話2139「フェムト」

ちょっと古いですが、去年(2004年)12月2日の新聞(朝日・毎日)にこんな記事が載っていました。
それによると、
一瞬だけ、ストロボのように明るく光る「短パルスレーザー」の1回の発光時間を、
「0,95フェムト秒」
にまで短くすることに東京大学物性研究所の渡部俊太郎教授(レーザー物理学)らが成功したとのことです。
この、「0、95フェムト秒」という「フェムト」というのは、一体なんなのか?記事をよく読むと、「フェムト」というのは、なんと、
「1000兆分の1」
という単位なんだそうです。い、いっせんちょう分のいち?
小さすぎて、よう、わからん・・・。数字で書くと、
「1000000000000000分の1」。
うーん・・・なんだかスゴイ。
そして、こういった「短パルスレーザー」はの技術、この「フェムト秒」よりもさらに短い時間、1フェムト秒の1000分の1の、
「アト秒」
単位で発光させる技術で、世界で競っているんだそうです。アト秒というのは、
「1000000000000000000分の1秒」
です・・・。アト、0何個?
これもいわゆる「ナノテク」の一種ナノでしょうかねえ。この技術を使えば、電子の動きを観察することも可能になるのだそうです。
なんだか、すごい・・・。

2005/4/8
 
(追記)
上田浩史著『ワールド・ワード・ウェブ』(研究社、2002)の92−93ページに、「原子から宇宙まで」という項で、こういった単位が載っていました。国際単位法(SI)で決まっているのだそうです。それによると、大きいほうから単位は
Y(ヨッタ)= 10の24乗
Z(ゼッタ)= 10の21乗
E(エクサ)= 10の18乗
P(ペタ)=  10の15乗
T(テラ)=  10の12乗
G(ギガ)=  10の 9乗
M(メガ)=  10の 6乗
k(キロ)=  10の 3乗
h(ヘクト)= 10の 2乗
da(デカ)=  10の 1乗
d(デシ)=  10のマイナス1乗
c(センチ)= 10のマイナス2乗
m(ミリ)=  10のマイナス3乗
μ(マイクロ=)10のマイナス6乗
n(ナノ)=  10のマイナス9乗
p(ピコ)=  10のマイナス12乗
f(フェムト)=10のマイナス15乗
a(アット)= 10のマイナス18乗
z(ゼプト)= 10のマイナス21乗
y(ヨクト)= 10のマイナス24乗

となっているそうです。この中に、しっかり「フェムト」もありますね。
小さい方は「小文字」で「y、z、p」とありますが、大きい方には「大文字」で「Y、Z、P」とあるんですね。
小学校の時に、単位の覚え方として教わったのが、
キロキロと ヘクト出か(デカ)けたメートルが 弟子(デシ)に追われて センチ ミリミリ
という文章でした。短歌のようにリズムが良い。その中に「キロ」「ヘクト」「デカ」(メートル)「デシ」「センチ」「ミリ」というふうに単位が読み込まれています。30年以上経っても忘れていません。
Google検索してみたら(7月17日)、
「キロキロとヘクトでかけたメートルが」=9件
でした。その中にはこう言うのも。
「うちの伯母が理科の教師やってて。なぜかおいらに『キロキロとヘクトでかけたメートルがデシに追われてセンチミリミリ』という非常に意味不明な単位の覚え方を教えてくれました。まったく役に立ちませんでしたが。一体なんだったんでしょう。でヘクトってヘクタールくらいしか知らないんですが。これまた何か意味でも?」
わからんのかい!うーん、意味も一緒に教えてあげて欲しかった・・・。
また、こんな方も。
「『キロキロとヘクトでかけたメートルがデシにおわれてセンチミリミリ』
札幌の小学校でならっただ〜〜」

やっぱり習った人もいたんだね。懐かしいなあー。
 
2005/7/17


◆ことばの話2138「滋賀県水口町」

4月6日、滋賀県の水口町交通安全協会が行った、忍者の格好で交通安全を訴えるイベントを取材したニュースが、お昼の「ニュース・ダッシュ」と夕方の「ニュース・スクランブル」で放送されました。その原稿には、
「滋賀県の水口町で」「水口町交通安全協会が取材」
といった文章があり、お昼のニュースでMアナはそのまま読んでしまいました。夕方のニューススクランブルは、完パケ用(事前にナレーションまで録音したもの)の原稿を録音していたHアナが、
「水口町は去年10月に甲賀市に合併統合されていた」
ことに気づき、
「滋賀県甲賀市」
と原稿を手直しして読みました。こういった意味で、
「アナウンサーは最終チェック機関」
といつも私は言っていますが、そのチェックが、昨日はここで働いたたわけです。
しかしその後、元の原稿のパソコン内での訂正が行われておらず、翌7日の「あさイチ!」のオープニングでその話題を取り上げた際にも、
「滋賀県水口町」
で原稿が回ってきましたが、私が事前に気づき「甲賀市」に訂正して放送できました。
ただ「水口町」は、「甲賀市」の一部になった現在も、住所は、
「甲賀市水口町」
のようになっているので、「交通安全協会」の名前には「水口」が残っている可能性がありました。そこで、旧・水口町役場(現・甲賀市役所水口支所)に電話で確認したところ、
「『水口町交通安全協会』は今はない。現在は『甲賀湖南交通安全協会』という名称になっている」
との返事が。
平成の大合併で、近畿は滋賀県と兵庫県がかなり多くの市町村が合併で消滅していますので、細心の注意が必要です。
また、インターネットのホームページに載せたり、あとの番組で同じ原稿を使ったりする可能性も十分にあるで、オンエアー後も気を抜かずに「原稿の訂正」をする必要があります。
「平成の大合併」はこんな所にまで(アナウンサーにまで)影響を及ぼしているのです。

2005/4/8


◆ことばの話2137「子どもたちの将来の夢」

三学期が終わって春休みに入る時に、小学一年生の息子が持って帰ってきた学校からのお知らせに、卒業生たちの将来の夢が記されていました。卒業する6年生は全部で104人。その"夢"を見ていて、ちょっと統計を取ってみる気になりました。
さてその統計の発表でーす!
同率第6位は…
      「動物関係の仕事」(獣医、動物看護師、ペット屋さん)=3人
     「小説家」                           =3人
同率第4位!…「声優」           =4人
          「ファッション・デザイナー」=4人
第3位は…「プロサッカー選手」=5人

そして、第2位は…なんと「プロ・バスケットボールの選手」=12人!
うち9人はアメリカNBAのプロバスケットボール選手になりたいと書いています。田臥選手の影響はこんなところにまで及んでいるのでしょうか。
そして、栄えある第1位は…「プロ野球の選手」=13人でした。うち2人はメジャーリーグの選手になりたいということです。
なんだかんだ言って、野球の人気は衰えていないのかな、と感じました。
そのほかの将来の夢には、医者、キャビンアテンダント、バレリーナ、イラストレーター、先生、プロ・テニスプレーヤーが各2人、そしてF1レーサー、コック、マッサージ師、ピアニスト、ソフトボールの選手、バドミントンの選手、パティシエ(!)、宇宙飛行士、保母、建築家、科学者、俳優、そしてなぜか松下電器のサラリーマンが各1人。
パティシエなんて、今風ですねー。多種多様ながら、私たちが子供の頃の30年ほど前と比べると、そのころ出てきて今は出てきていない答えとして思いつくのは、
「お嫁さん、弁護士、新聞記者、アナウンサー、女優、歌手、警察官、大工、消防士、政治家」
といった職業です。(「お嫁さん」は職業じゃないけど)世の中は変わってきているんだなあと改めて感じました。
そして昨日(4月6日)の読売新聞を見ていると、やはり将来の夢のデータが載っていました。こちらは、この春入学する新1年生とその親8000人に、将来就きたい職業と、就かせたい職業をクラレがまとめたものです。
それによると、男児に人気の職業は7年連続でスポーツ選手がトップ(29,8%)。去年19、9%だったサッカー選手が14,5%に下がった反面、野球選手が去年の7,6%から8,6%に、わずかながら上昇したようです。
女児はお菓子屋さん(23,1%)、花屋さん(15,3%)、看護師(10,7%)で上位は3年連続で同じだそうです。またスポーツ選手が、女子プロゴルフの宮里藍選手の人気などの影響で、去年の12位から8位に上昇したそうです。
一方、親の希望は、男児が公務員・スポーツ選手・医師の順、女児は、看護師・公務員・保育士の順だということです。
うちの息子の小学校の6年生の方が、夢にバリエーションがあるように思えますが、まっ、そこは1年生と6年生の差でしょうか。いろんな職業のことを知っている6年生の方が、可能性と希望が広がっているということですかね。みんな、頑張れ!!
2005/4/7

(追記)

『週刊ダイヤモンド』(2005年4月9日号)の特集「息子・娘を入れたい学校」で、日本IBM会長の北城かく(「りっしん扁」に「各」)格太郎さんが、こう書いています。

「日本で働いている人はおよそ6300万人。そのうち5000万人は会社で働いています。しかし、子供たちに将来なりたい職業を聞くと、男の子ならサッカー選手や野球選手、女の子なら保育士や幼稚園の先生と身近にあるものしか出てこない。多くの人がなる会社員という職業は子供にはなかなかイメージできない。」

とのこと。たしかに一理はあります。子供に「会社員」のイメージはできないでしょう。でも子供が考える「職業」というのは「会社員」や「フリーター」「契約社員」という「身分」ではなく、北城さんが言うように、実際に自分たちが触れることができる身近な職業でしょうから、そこで「会社員」という答えは出てきにくいのではないでしょうか。だからと言って、会社員の中の具体的な仕事である「営業(マン)」とか「総務」とか「人事」という「仕事・職業」を挙げる子供がいるとは思えませんし。
最近よくマスコミで取り上げられているので、
「公務員」
なら、子供たちもイメージできるかもしれませんが、一体どんなイメージを公務員に持っているのでしょうね。おそらく親の意識の反映ではないかと思うのですが・・・。ちょっと心配です。

2005/4/8

(追記2)

4月29日の日経新聞に、第一生命が2004年7月から8月に、全国の1080人の幼稚園・保育園児と小学生に対して行ったアンケートの結果が載っていました。
それによると、男の子の「大人になったらなりたい職業」のトップが3年ぶりに「野球選手」(15、5%)になったということです。前回トップだった「サッカー選手」は10、7%で2位に後退したとのこと。3位は「学者・博士」(5、4%)だそうです。
一方、女の子の1位は8年連続で「食べ物屋さん」(14、8%)、2位が「保育園・幼稚園の先生」(9、6%)、3位が「看護師さん」(7、4%)ということです。

2005/5/1


◆ことばの話2136「ボン」

アナウンス部のみんなで(・・と言っても5人ですが)、インド人が作る本格的なカレー屋さんで昼食を取っていた時のこと。ひょんなことから、「ベルリンの壁が崩れてもう15年も経つんだな」という話になり、「ドイツの首都移転からも随分経つよね」と話は転がっていきました。その話を横で聞いていた若手のAアナウンサーの顔が目に入り、もしや・・・と思いながらこう聞いてみました。
「ボンはどこの国の首都だった?」
知らないかもしれない・・・とは思いましたが、今までの話の流れから言えば、当然答えはひとつ・・かまあ、ふたつでしょう。西とか東とか。しかし彼女の口から出た答えは、

「ロシア?」

期待通りと言うか、期待はずれと言うか・・・・。
「いやそうじゃなくて・・・、今、話してたでしょ、分裂とか統合とかさ。」
困惑気味の表情の彼女の口から出た次なる国の名は、
「えー、ソ連??」
いやいや、そうじゃなくて・・・。
「あ、インド?」
たしかに今はインドカレーのお店に来てるけどさ。そうじゃないでしょ。どんどん離れて行くじゃない。なんで?と思った時に、私の脳に電気が走りました。なぜ彼女が「インド」などというとんでもない答えを言ったのか。その"連想ゲーム"が私にもひらめいたのです。彼女が連想したのは、「ボン」という聞いたこともない都市名と、今いるお店「カレー屋さん」が結び付けられた、
「ボン+カレー」=インド
という答えだったのです!そうに違いない!!と思って、なんでインドと言ったか、聞いてみると、
「えー、だってボン・・・カレーでしょ。」
と想像ズバリの答えが返ってきました。
「ボンは、旧・西ドイツの首都だったんだよ。」
と正解を教えても、彼女は、
「なーんだ、西ドイツですか・・・」
と、つまらなそうでした・・・。こうして、春の昼下がりの時間は過ぎて行ったのでした。

2005/4/7
 
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