◆ことばの話2075「メル友とメール友だち」

2月10日、大阪で女子高校生が68歳の「メル友」に、気に入らない同級生のカバンをひったくって欲しいと依頼し、68歳の男はその同級生を襲ったものの、これが人違いだったという事件がありました。あきれて物も言えません。
この事件を伝えた2月11日のテレビ朝日のお昼のニュースでは、
「メル友」
と言って、一回も「メール友だち」とは言いませんでした。
「正確に略さずに『メール友だち』と言うべきではないか?」
と言うと、周りのアナウンサーが、
「いやあ、『メル友』と『メール友だち』は、ニュアンスが違うでしょ。」
と言うではありませんか!それによると、「メル友」の方が、何か「悪いイメージ」があるというのです。そうなのか!単に略しているのではないのか?と聞いてみると、
「『メール友だち』は、メールをしているだけの友達ということですが、『メル友』と言うと、これまでにいろいろ事件が起きているので、そのイメージが付着していますね。」
なんだそうです。
「そうすると『ペンフレンド』と『ペンパル』の違いかい?」
「そうかもしれません!『メル友』と『ペンパル』は、悪いイメージで」
「ほんまかいな!『ペンパル』にそんな悪いイメージないだろ?」
「そもそも『パル』ってどういう意味ですか?」
「『友だち』っていう意味だろ?」

と英和辞典を引くと、
「(話)仲間、仲良し、相棒、共犯」
とあるではないですか!
共犯!?やっぱり『ペンパル』は悪い意味でも使うの???
と、わけがわからないうちに終わってしまったのでした。
2005/2/11


◆ことばの話2074「日本に虎視」

2月11日の朝日新聞スポーツ欄、前々日の北朝鮮との試合に辛勝したものの、これから当たるイラン、バーレーンも強敵で、なかなか簡単にはワールドカップへ行かせてくれそうにはないというような記事だったのですが、その見出しがこうでした。
「中東勢 日本に虎視」
なんか、ヘン。これって「虎視眈々」の下を省略したのかな、字数の関係で。大体「虎視」なんて言葉、「虎視眈々」以外で使ったことないぞ!そう思って『日本国語大辞典』を引くと・・・ちゃんと「虎視」が載って印した。一応あるのね、「虎視する」という動詞として。しかしそうすると、今度は「日本に虎視」というとことの助詞の「に」がおかしい。
「日本を虎視」
と「を」を使うべきではないか、という問題が出てきました。
いずれにせよ、ちょっと違和感のある見出しだなあ。
その一方で、「これはうまい!」と思った見出しも。
2月17日の朝日新聞の小さな記事で、サッカーのベッカムの奥さん・ビクトリアさんなど著名な女性たちが、チャリティーのためにヌード写真集を出版することになったというもので、見出しは、
「ベッカム夫人ら ヌード写真で一肌」
というもの。これってつまり、チャリティのために「一肌脱ぐ」というのと、ヌードだから「脱ぐ」というのをかけているんですね。うまい!座布団一枚!
座布団一枚・・・と言えば、今日開港した中部国際空港・愛称セントレアは、なんと世界で初めて、空港内に「展望風呂」があるんだそうです。それを報じた今朝(2月17日)の「あさイチ!」で私、
「そのお風呂は、『銭湯レア』・・・なんちゃって」
とオンエアーで言ってしまいました・・・。誰も言ってくれないから、自分で言います、
「ヤマダくーん、座布団、一枚!」
2005/2/17
(追記)

おもしろい見出しをまたまた見つけました。おもしろいというか、ちょっと誤解を招きそうなものです。2月18日の朝日新聞朝刊、特集「がっこう」で、「荒れる教室」についての広島の中学校の例。見出しは、
「生徒とパイプ持ち続け」
これを見て、最初に思ったのは、
「ああ、荒れている中学だから、生徒が鉄パイプを持ち続けて暴れたのか」
ということでしたが、よく読むと、
「先生が生徒との話し合いのパイプを持ち続けたことによって、生徒が落ち着いた」
という、最初に感じたのとはまったく逆の事態でした。「パイプ」が「凶器」なのか、「コミュニケーションの絆」なのか、同じ言葉でも取りようによって逆になってしまうので、危ないですね・・・って、誰も間違えないか、そんなふうには。チラッと思ったものですから・・・。

2005/2/18


◆ことばの話2073「ベテラン陣とベテラン勢」

朝の番組の中でOアナウンサーが、
「ベテラン陣」
と言ったのが気になりました。それも言うなら、
「ベテラン勢」
ではないのかと。
そこでこの「陣」と「勢」の違いについて考えてみました。「陣」の場合は、
「投手陣」「首脳陣」「経営陣」
など、「何か共通の敵(相手)を持っていて、固まって戦うためのグループ」という感じがします。これに対して「勢」は、「単に数が集まっている様子」で、そこに一定の意志というものは感じられません。
このOアナウンサーが使った場合の「ベテラン陣」というのは、特に何かに対抗して集まったのではなく、ベテランたちをひっくるめて呼んだに過ぎないわけですから、やはり「ベテラン陣」はおかしい。「ベテラン勢」と言うべきところだったのでしょう。
この話をHアナウンサーにした所、
「プロレスなどの場合は、『若手陣』に対抗する『ベテラン陣』というような”くくり”があってもいいように思いますね。何せ、いつも対立相手を作って戦っていなきゃいけませんから。そういったプロレス実況用語(?)が一般の言葉にまで侵食していくと『ベテラン陣』も、そんなに違和感なく使われることになるかもしれませんよ。」
うーむ、なかなか読みが深いっすね。
2005/2/11


◆ことばの話2072「『ごくせん』と『こるああっ』」

読売テレビ系列で土曜日の夜9時から放送中の、仲間由紀江さん主演の学園ドラマ
「ごくせん」
が校長です。いや、好調です。おもしろいんだ、これが。で、原作のマンガ本を読んでみました。現在10巻まで発売中。その中で気づいたのは、極道の孫娘である主人公やその家族の極道が、極道っぽくしゃべる時の吹き出しの中の文字が、たとえば、
「こらあ」
というものを、
「こるああっ」
と表記しているのです。これって普通は、
「こらあ」
と書きますよね。実際にこの文字表記のようにしゃべると、巻き舌っぽくて、なんだか極道のようなしゃべり方に聞こえるから不思議です。このほかにも、
「おるあああっ」(=おらあ)
「うるるせえ、だまりゃがるえっ」(=うるせえ、だまりやがれ)
「待てー、こるああっ」(=待てー、こらあ)
「なるああ、ちょいと」(=なら、ちょいと)
「きっちり思い出させてやるおーかっ!!」(=キッチリ思い出させてやろうか!!)
というような表記が見られ、しかもこの巻き舌の「る」は、「小さい”る”」なんですねえ。なかなかマンガらしい、おもしろい表現だなと思っていたのですが、こういう表記を目にしたのは「初めてではない」ことに、はっと気づきました。高校時代に、と言いますから今から20年以上も前に友達の家で読んだマンガ、
「伊賀のカバ丸」(亜月裕)
で、たしかこれと同じような表記を見たことがあるのを思い出しました。
なーつーかーしー!
このマンガ本は、たしかその友人のお姉さんの持ち物だったと思います。少女マンガ系統だよね。ネットで検索したら、その「伊賀のカバ丸」は、伊賀忍者の末裔であるカバ丸が、名門「金玉(きんぎょく)学院」で引き起こす大騒動を描いたものだとのこと。そうでした、そうでした・・・おや?
「金玉(キンギョク)学院」?
そう言えば「ごくせん」の舞台の学校の名前も、
「白金(シロキン)学院」「黒銀(クロギン)学院」
ではなかったか。ネーミングがよく似ていますね。もしかしたら、「ごくせん」の作者の森本梢子さんは、「伊賀のカバ丸」の影響を受けているのかも。
これについて、ネットで調べてみましたが、よくわかりません。ただ亜月さんは長崎県に佐世保の出身、森本さんは熊本県出身らしいということで、二人とも九州出身のようだということはわかりました。それだけじゃなあ。
でも、影響は受けてると思うんだよなあ。どうでしょうか?
2005/2/14


◆ことばの話2071「米原市」

本日2月14日、滋賀県山東町、伊吹町、米原(マイハラ)町の3つの町が合併して、
「米原(マイバラ)市」
が誕生しました。
これによって、これまで町役場の名前やインターチェンジの呼び名は、
「マイハラ」
JRの駅名や警察の名前は、
「マイバラ」
というふうに、濁るか濁らないかという区別があったのですが、やはり「紛らわしい」ということもあったのでしょうが、
今後はすべて、「マイバラ」と「濁る」
ことになったそうです。さっき、NHKのお昼のニュースで知りました。
これはアナウンサーにとっては朗報です。面倒臭い言い訳をしなくてもいいのですから。これまで20年以上にわたって、「米原」の濁るか濁らないかに関して、いかに細かい神経を使ってきたことか。ようやくとりあえず「米原」に関してはその努力から解放されるわけです。合併バンザイ!
ところが、それを知らせたメールを関係者に送ったところ、Sアナウンサーから、
「高速道路のインターチェンジも、『マイバラ』と濁るのですか?」
という質問が。そこで米原(マイバラ)市役所(旧・米原町役場)に電話して確認したところ、
「市の管轄の箇所はすべて『マイバラ』と濁るようになった」
と。ただ、
「『高速道路のインターチェンジ名』は、管轄が『日本道路公団』なので、これは、これまでどおり、『マイハラ』と濁らない」
とのことでした。当事者の日本道路公団・関西支社にも電話して聞いたところ、
「今のところ、『マイハラ』で変える予定はありません。」
「もともと以前には、マイバラと濁って言っていた時期もあったのですが、米原町の方から『マイハラと濁らずにして欲しい』という要望があって『マイハラ』とした経緯がある。また変えるとなると、表示板から何からH→Bに変えなくてはならないので費用もかかる。今のところ変えるという話は来ていない」

ということでした。
ということで、インターチェンジは「マイハラ」。濁りません。
まだ当分、ちょっとややこしいですね。
2005/2/14
 
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