◆ことばの話2065「エースに直撃しました」

サッカーのワールドカップ・ドイツ大会のアジア最終予選、2月9日、日本は北朝鮮に2対1で辛勝しましたが、その試合を控えた時期、対北朝鮮戦への関心は異常な盛り上がりを見せました。(試合中継のテレビ視聴率も、関東のテレビ朝日は47%、関西の朝日放送も43%と、その関心の高さを示していたのですが。)
さて、北朝鮮チームへの取材をしたというニュースの特集の前ふりで、タイトルのようなコメントをキャスターが口にしました。つまり、
「北朝鮮のエース『に』直撃しました」
というコメント。この「に」が気持ち悪い。これって、
「北朝鮮のエース『を』直撃しました」
ではないのでしょうか?「に」か「を」かという問題は、以前、
「靖国神社(に・を)参拝する」
で取り上げましたね。この”靖国問題”の場合は、「参拝」という言葉にしくみがあって、「参る」と「拝む」という2つの動詞が複合されているので、「参る」だと「〜に参る」、「拝む」だと「〜を拝む」となるので、そのどちらのイメージを重視するかによって「に」か「を」かが決まり、逆を重視している人には違和感を与えるというような結論だったと思います。
今回の場合も「直撃」に問題があるのでしょう。「直撃」は「直(じか)」に「撃(うつ・あたる)ということで、動詞は「撃」の方ですよね。だから、「エース」というターゲットに対して「あたる」ということなら、「に」でいいのか?でも目的語・ターゲットの「エース」というのがポイントだから、それを際立たせるには「を」である方がいいのではないかな、と思うわけですね。
いかがでしょうか?
2005/2/11


◆ことばの話2064「光の春」

1月末から2月はじめにかけてのこの冬一番の大寒波が過ぎて、寒さも一段落。立春を過ぎてからは寒さの中にも、「真冬」は通り過ぎて何か変わったなという気がします。日差しが柔らかくなったというか、明るくなったような気がするのです。
昔、お天気おじさんの倉嶋厚さんが、こういう時期のことをロシアでは、
「光の春」
と呼ぶと言ったのを聞いたことがある(か、読んだことがある)のですが、まさに今は「光の春」かなあと、一人感じ入っているのです。
そして、冷たい風に吹かれながらもやさしい日差しを浴びて口ずさむ歌は、
「冷たい風の丘に咲く 光る花はネコヤナギ」
という歌詞で始まる「春を待つ少女」という曲です。高石ともやとザ・ナターシャーセブンが歌っていました。
ネットで「光の春」を調べると、やはり倉嶋さんが関係していました。この言葉のロシア語を「光の春」と日本語に訳したのは、倉嶋さんご本人のようです。
『お天気歳時記〜空の見方と面白さ〜』(倉嶋厚、株式会社チクマ秀版社:初版・1997年5月8日)という本の中に、

「二月の光は誰の目から見てももう確実に強まっており、風は冷たくても晴れた日にはキラキラと光る。厳寒のシベリアでも軒の氷柱から最初の水滴の一雫(ひとしずく)が輝きながら落ちる。ロシア語でいう『光の春』である。」

という記述があり、これについて気象キャスターの森田正光さんが、ネットの書評で、
「『光の春』はよく耳にする言葉ですが、もともとはロシア語を倉嶋先生が翻訳されたということはあまり知られていないのではないでしょうか。」
と書いていました。
GOOGLE検索すると(2月11日)
「光の春」=3620件
でした。
また、2月9日の読売新聞夕刊に「季語の風景47」で「柳魚危(やなぎばえ)」という文章が載っていました。山崎しげ子さんという随筆家の方が書いています。
「光が明るくなった。春浅い南紀、古座川。ゆったりとした広い川幅。白い小石の中洲と、さざ波立つ清冽な青い流れ。山々も空も青い。ひと足早い春の訪れ。」
という書き出しがゆったりとしていて、これって「光の春」なんじゃないかなあと感じました。その文章の上に大きく載っている南紀の水面の写真、きれいだなあ、行ってみたいなあ。

2005/2/11


◆ことばの話2063「たしはぁ」

先日、新人アナウンサーの採用試験で女子大学生のしゃべり方を聞いていた時のこと。多くの学生に共通するしゃべり方として気になったのは、
「わ抜け言葉」
です。つまり、
「わたしは」
と言うべきところが、
「ったしはぁ」
と聞こえるのです。昨日(1月26日)の「トリビアの泉」に出てきた、TOTOの広報部員の女性も、
「わたくし」
と言っていたのに、私には、
「たくし」
と聞こえました。また、
「洋式トイレ」
の「ようしき」が、
「よしき」
とも聞こえました。こういう傾向は昔からあったのでしょうかね?

2005/2/6


◆ことばの話2062「数字のたてよこ」

以前から気になっていたことがあります。本棚の本の並べ方なのですが、たとえば10巻ある本を並べる場合に、
「右から並べるか?左から並べるか?」
という問題です。悩んだこと、ありませんか?ない?あ、そう。
結構昔から悩んでたんですよ、私は。
なぜ悩むのか、本棚を眺めていたある日、急にその原因に思い当たりました。要は、
「たて書きか、横書きか」
という問題なのです。
日本語の書物の場合は、たいてい背表紙の文字は、
「たて書き」
です。そこに「巻数の数字」が来るのです。洋数字の場合もあれば漢数字の場合もありますが。その意味では「たて書き」のタイトルの一部として巻数も取り扱えば、右から順番に並べるのが正しい。
ところが、実際に10巻並んでいますと、背表紙のタイトルとは別に、数字がずらりと右から左に並ぶのが見えます。つまりこういう具合です。
「10 9 8 7 6 5 4 3 2 1」
すると、なんだか落ち着きが悪い。なぜならば、数字を(たて書きでなく、横に並べて)書く時は、
「左から右に書く」
ものだからです。だから全体を捉えるとこの並び方は、カウントダウンしているかのように、「逆に並んでいるように見える」から気持ち悪いのです。
つまり数字は「左から右への横書き」が普通なのに対して、たて書きの背表紙の場合は「右から左に」進む。その葛藤が、本棚で繰り広げられているというわけなんですね。
これがわかると、とてもスッキリして、どちらから並んでいても、それほど気にはならなくなりました。
と、そのとき、息子がこんなことを言ってきました。
「おとうさん、『ごくせん』の単行本は左からやで。だって背表紙に絵が描いてあって、それがつながってるもん。」
あ、ほんとだ!そんな本もあるのですね。もうどちらから並べるか、指定してあるということですね。たしかに、ページのめくり方(続き方)から言うと、左から並べる方が、合理的ではありますね。

2005/2/1


◆ことばの話2061「ロジ」

最近耳にする言葉に、
「ロジ」
があります。初めてこの言葉を耳にしたのは、事件・事故の中継の時。
「ロジ、どうする?」
というような文脈です。最初は、
「ロジ?道が狭いのか?中継車を停められるのかということかな?」
と思ったのですが、この「ロジ」は、「路地」、大阪弁で言うところの「ろうじ」ではなく、
「ロジスティックス」
つまり、
「兵站(へいたん)」
の略だったのです。中継の場合の「ロジ」とは、わかりやすく言うと、
「弁当」
のことでした。だったら、そう言えよ、という感じなのですが、最近ちょこちょこ耳にしますね。
昨日は、横断歩道で信号を待っている時、走り去ったトラックのおなかに、
「○○ロジスティックス」
という社名が書かれていました。その分野では「ロジ」はもう日常語なんでしょうね。そういえば社名変更で、それまでの、
「○○通運」
から、
「△△ロジスティックス」
に変えた会社もあるようですね。「ロジ」という呼び名は、流行なのかもしれません。
2005/2/1

(追記)

「ロジ」は、結構反響がありました。その関連のお仕事をしている友人のYさんからのメールです。
「弁当の事を『ロジ』というのは知らなかったが、物流業界で『ロジス』といえば『ロジスティクス』の事で、小さな「ツ」は不要。この言葉は業界の中でですら、意味が正確に使われていない言葉で、理解できない者が使うと「ロジスティッス」と誤用されている傾向がある(単に「物流」という言葉を「ロジス」と置き換えているところが多い)。」
とのことで、ちっちゃい「ッ」はいらないとのこと。
GOOGLE検索してみましょう。(2月11日)
「ロジ」=      4万0300件
「ロジス」=     1万2600件
「ロジスティックス」=16万8000件
「ロジスティクス」= 16万8000件

で、ちっちゃい「ッ」が入っても入らなくても同じ件数ということは、GOOGLEではこの区別をしていないということですね。内容を良く見てみると、
「社団法人日本ロジスティクス協会」「NECロジスティクス」「三菱電機ロジスティクス」「セガ・ロジスティクスサービス」「ヤマトロジスティクス」「リコー・ロジスティクス」
など、このあたりはすべて、ちっちゃい「ッ」のない「ロジスティクス」でした。ただ、
「株式会社ロジスティックス」
というちっちゃい「ッ」がある会社もありました。英語のつづりは、
「Logistics」
で、意味は「兵站術」。発音記号でみたら「ロジスティクス」と「ッ」がないですが、カタカナにした場合は「ッ」がない方がしゃべりにくいですね。でもそのギョーカイでは、どうやら、ちっちゃい「ッ」はつけない方が、正解のようですね。Y君、どうもありがとう。
またアナウンス部のSアナウンサーからは、
「何年か前の外務省機密費問題の際に流行語(?)になった『ロジ担』を思い出しました。
『ロジ』というのは、てっきりテレビ業界用語だと思っていたのに、霞ヶ関でも使われていたのかと、妙に感心したことを思い出しました。」

というメールをもらいました。あったあった「ロジ担」!時代ですねえ。

2005/2/11

(追記2)

3月14日、
「(株)ロジスティクス・ネットワーク」
と書かれたトラックを見かけました。
2005/3/25