◆ことばの話2035「靄る」

タイトルは、
「靄(もや)る」
と読みます。文字通り、靄がかかった状態を言います。ガスがかかった状態を、
「ガスる」
というのと、ほぼ同義ではないでしょうか。
ところが、この「靄る」という言葉は、正しい言葉ではなく俗語だということを、読売新聞大阪本社の前・校閲部長の篠原嘉彦さんが書いた(と思う)のを読んだことがあります。それ以前にも、K元アナウンス部長が、「もやるという言葉はおかしい」と言っていたのを覚えています。初めてそのことを聞いたときには「へえー、そうなのか。」と思いました。私はフツウに「靄る」を使っていたからです。この「靄る」の用例を小説で見つけました。。
小林信彦さんの『侵入者』(文春文庫)という短編集文庫本。表題作の「侵入者」の冒頭に、「ネコのひたいほど、と形容するのがふさわしい庭だが、奇妙に靄(もや)っている。」
と出てきました。さらにその2ページ後にも、
「土だらけになっている職人に、『靄っていますね』と声をかける。」
とあります。この小説の初出は1994年9月でした。
手持ちの国語辞典に「靄る」は載っているか、調べてみました。
『新潮現代国語辞典』『岩波国語辞典』『明鏡国語辞典』『日本語新辞典』には「靄る」は載っていません。
『新明解国語辞典』(第六版)
には、
「靄る」=一面に靄がかかった状態になる
と載っていました。『三省堂国語辞典』には、
「靄る」=(俗)もやがかかる。もやう。
『広辞苑』
にも載っていました。
「靄る」=(「靄」を活用させた語)靄がかかる。靄がかかったように、ぼんやりする。
『日本国語大辞典』
にも載っていました。「もやがかかる」と、まあ「そのまんま」という感じですが。
ということで、まあ、載ってる辞書と載っていない辞書が分かれている、今後は載せる辞書が、さらに増えるのではないかな、という言葉でした。


2005/1/6


◆ことばの話2034「ストーカー女」

12月14日の読売新聞夕刊に、
「ストーカー女逮捕」
という見出しがありました。大阪府藤井寺市の31歳の女が、大阪府松原市内の飲食店経営者の長女(30)にストーカー行為を繰り返した挙句に放火した疑いで逮捕されたのです。翌15日読売夕刊にも、
「ストーカー女 『近くにいる』被害女性通報 松原署、記録残さず」
とまた「ストーカー女」が使われています。それにしてもこの「ストーカー女」という表現、わかりやすいですが、なんだかな・・という気もします。
2005年1月6日の産経新聞では、ドン・キホーテ放火の容疑で、万引きで捕まっていた女を再逮捕する方向だという記事の見出しが、
「万引き女再逮捕へ」
でした。
「女」だけではありません。「男」もいます。12月16日の産経新聞にはこんな見出しが。
「女児追いかけられる〜アフロ男 中学生が救助・東淀川」
今度は、「アフロ男」。なんだかなあ。仮面ライダーの「怪人」みたいだ。この「アフロ男」は、
「アフロ風の茶髪だった」
ということですが。
平成ことば事情346の「リス男」もお読みください。


2005/1/7


◆ことばの話2033「へっちゃら」

もう1年前の話になってしまいました・・・。2004年2月10日、FM802を家で聞いているとDJのヒロ寺平さんが、
「へっちゃら」
という言葉を取り上げていました。それによると、「へっちゃら」は、もともと、
「へいちゃら」
でこの「ちゃら」は、「べんちゃら」「ちゃらちゃら」などにも通じると。
「ちゃら」という語尾が共通ですね。接尾語かなと思って辞書を引いてみましたが、接尾語としての「ちゃら」は見当たりませんでした。
接尾語ではない「ちゃら」を『日本国語大辞典』で見ると、
「ちゃら」=(1)口から出まかせを言うこと。でたらめ。うそ。ちゃらくら。ちゃらっぽこ。(2)にせもの(3)差し引きゼロにすること。
とありました。ほかに「ちゃらかす」という動詞も載っていました。
「ちゃらかす」=(「かす」は接尾語)冗談を言ってからかう。冗談を言ってふざける。出まかせを言う。ちゃかす。ちゃらす。
うん?ちょっと待てよ。もしかしたら、この「ちゃらかす」は、「ちゃかす(茶化す)」に意味もなく「ら」が紛れ込んだのではあるまいか。
「ちゃかす」は、お茶を飲みながら休憩の余興にするようなものとか、「茶々を入れる」のように、真剣な話をやっているところへ真剣でない余計な話で割って入ること(ティータイム・一服するかのように)。
だとすると、「へいちゃら」は、「平気」+「ちゃ(ら)かす」が、
「平」+「ちゃら(かす)」=「へいちゃら」

になったのではあるまいか。この場合の「平」は「ちゃら(かす)」を強調する意味で、「ちゃらかす」ぐらい、気持ちや状況に余裕があるということなのではないかな、という気がしてきました。
一方「べんちゃら」は、「弁」が「ちゃらちゃら」しているのでしょうし、「ちゃらちゃら」「ちゃら」という言葉を重ねて強調したということで、
「簡単」「楽」→「いいかげん」
となったのではないかな、というふうに思いました。「ちゃら」という拗音は、一般的に軽いイメージがありますね。
アーよかった。1年ぶりにこの項目、解決したぞ!

2005/1/7



◆ことばの話2032「キーパーチャージ」

先月、高校サッカー中継の仕事を10何年かぶりでやりました。と言っても実況をしたわけではなく、メイン・アナの横でアシスタントをやる「サブアナ」という仕事だったのですが。
仕事は無事に終わって会社に帰ってから、
「この場面は、『キーパーチャージ』でしょう。」
などと、放送を見ながらスタッフと話をしていると、メインのOアナンサーが、
「3年ほど前から『キーパーチャージ』という言葉は使わなくなりました。」
と言うではありませんか!えー、そんなの知らなかった。どう変わったか聞くと、
「『キーパーへの妨害行為』です。」
なんだ、内容は一緒じゃん!
サッカーでは、ゴールキーパーに関するルールは、結構頻繁に変更されますが、あまり根本的なルールを変えられると、そのスポーツの本質が変わってしまうような気がします。もちろん、中には望ましい変更もありますが、そのあたりルール変更はよく考えて行なって欲しいな、と思いました。

2004/12/9
(追記)
「日本サッカー審判協会」のホームページのQ&Aを見ると、このように書かれていました。
(Q)
先般の12条の回答の中で、『昔の競技規則ではご指摘のような解釈(キーパーチャージ→間接FK)がされた頃もありましたが、現在の競技規則にはそのような規定はありません。競技規則12条間接フリーキックの項では「ゴールキーパーがボールを手から離すのを妨げる」と間接FKになると記していますが、キーパーだからといって特別な保護をされるわけではなく、正当なチャージであれば許されます。』とありますが、その場合のゴールエリアは、相手方の間接フリーキックの場所を示すほどの意味しかないのでしょうか。
(A)
競技規則の中に見られるゴールエリアに関する表記は以下の2点になります。
1.ゴールエリア内で与えられた間接フリーキックは、違反の起きた地点に最も近いゴールラインに平行なゴールエリアのライン上から行う
2.(ゴールキック)守備側の競技者がゴールエリア内の任意の地点からボールをける

(Q)
ゴールエリア内ではキーパーは特に保護されているため相手フィールドプレーヤーとの接触(ジャンプ時等)は守備側の間接フリーキックを与えられると解釈していましたが、ルールブックの第何条に明記されているでしょうか?(キーパーが相手の接触を受け、よろめきボールがゴールに入った)。実際、接触受けなくても、高いボールで届かなかったかもしれませんが得点を認められた。選手(少年)の怪我を考慮しても私でしたらファールをとりますが間違いでしょうか?
(A)
昔の競技規則ではご指摘のような解釈(キーパーチャージ→間接FK)がされた頃もありましたが,現在の競技規則にはそのような規定はありません。
競技規則12条「間接フリーキック」の項では「ゴールキーパーがボールを手から離すのを妨げる」と間接FKになると記していますが,キーパーだからといって特別な保護をされるわけではなく,正当なチャージであれば許されます。
もちろん「不用意に,無謀に,あるいは過剰な力で」ゴールキーパーに「飛びかか」ったり「チャージ」した場合は,他の競技者に対する場合と同様に,直接FKで罰せられることは変わりありません。

ということで、ゴールキーパーも「チャージ」に関しては、ほかのフィールド・プレーヤーと同じ扱いになったことから、やはり「キーパー・チャージ」という反則はなくなったと考えてよいようです。1997年、「GKもフィールドプレーヤーと同等に扱う」というルール改正が行われた時に、「キーパーチャージ」という項目は削除されたとのことです。
GOOGLE検索では、
「キーパーチャージ」= 598件
「キーパーへの妨害行為」= 1件

でした。

2005/1/8


◆ことばの話2031「お名前ペン」

平成ことば事情2030「おニュー」にちょっと関連するかもしれませんが。
「お」のつくものに注目していたら、先日、玩具店で、子供の学用品に名前を書くためのマジックペンを見つけました。その商品の名称は、
「お名前ペン」
「お名前」を書く「ペン」ということで、用途を明示したものですが、この「お」も、うっとうしいな。幼稚園・保育所や小学校低学年の子供が対象の商品なので、なんにでも「お」をつけているのでしょうか。ちょっと気になりました。
だって、「お名前ペン」で「お名前」を書くのはたいてい親ですから、親が使う言葉(親に対して物をアピールして売る言葉)としては、
「名前ペン」
でいいのであって、「お」は、いらないと思います。
そして自分で名前が書けるくらいの年齢の子供ならば「お名前」とは言わないだろうから、やはり「お」は、いらない、「名前ペン」でいいと思います。
いずれにしても、「名前ペン」でいいのじゃないのかなあ。まあ、商品名ならば、つけようがつけまいが勝手ですが。つい「お」について気にしていたもので、そんなことを考えてしまいました。

2005/1/6