◆ことばの話1975「タメ語」

大阪の西梅田に11月9日オープンした「ハービス・エント」について女性アナウンサーたちが話をしています。その後の話の流れの中で、ブティックに洋服を見に行った時に店員が、
「こっちの方が似合うと思うよ」
「うーん、ちょっと派手かな」
などと、
「タメ語」
で話しかけてくるのがイヤ!という話になっているのを、聞くとはなしに聞いていて、その「タメ語」というのに引っかかりました。これまで、
「タメ口(ぐち)」
という言葉は耳にしたことがありましたが、「タメ語」というのは初めてです。念のために意味を聞いてみると、
「タメ口をきいている人が使っている種類の言葉」
を「タメ語」と称しているようです。
GOOGLEで検索したところ(11月10日)、
「タメ語」=1万2500件
でした。
「タメ口」と「タメ語」、どう違うのか?その違いは、わかるようでわからないような気がしますねえ。
梅花女子大学の米川明彦先生編による『日本俗語大辞典』(東京堂出版、2003)で「タメ語」を引いてみると・・・なんとちゃんと載っていました!

「ためご」(ため語)=「ためぐち」に同じ。若者語。

なーんだ、やっぱりおんなじだったんだ!

2004/11/15
(追記)

『かがやく日本語の悪態』(川崎洋)の197ページに「ためぐち」の項があり、そこに、「関西では」として「ためご」、載っておりました。

「ためご(語)」=同世代に対する言葉、また言葉づかい。「後輩のくせにため語使わんといて」

これは、京都の高校教師・高山勉先生が4つの高校、9つの大学の学生163人から調査した『キャンパス用語集』を参考にしたそうです。高山先生、こんなところでも活躍されていたのですね。高山先生は「すっきゃねん若者言葉のつどい」のメンバーでもありました。

2004/12/16


◆ことばの話1974「京とうふ」


平成ことば事情1953の「棒すし」に触発されて・・・。
近くのスーパーで、商品(食品)の名前の表示に注目してみました。というのも、まず目に付いたのが、
「京とうふ」
で、「とうふ」が「京どうふ」とは濁らなかったからです。その後、スーパーの中を歩き回って、「連濁するもの」のと「連濁しないもの」を見つけました。それプラス、ほかに思いついたものを分類してみましょう。
<濁るもの>
ずわいがに、にらみだい、ゆでだこ、湯豆腐、上海ガニ、沢ガニ、押し寿司、回転寿司、

<濁らないもの>
京とうふ、うどんつゆ、やきそば、たぬきそば、生さんま、生たらこ、味付けたこ、 湯たこ

同じ「豆腐」や「たこ」でも、上に付くものによって、濁ったり濁らなかったりします。
その一方で、「そば」「つゆ」「さんま」「たらこ」は、上に何が来ようが濁りませんね。
そもそも連濁をするものは、濁音があるものですから、
「カ行・サ行・タ行・ハ行で始まる言葉」
ですね。細かく書くと、
「カキクケコ、サシスセソ、タチツテト、ハヒフヘホ」
で始まる言葉です。でも「コンピューター」とか「カード」「サイエンス」「トロンボーン」「ホログラム」というような「外来語」は、何が上に来ても濁りません。
但し「例外」としては、は古くから日本語の中に入ってきたポルトガル語の系統である、
「合羽(カッパ)」
「カルタ」
といったものは、たとえば、
「雨合羽(アマガッパ)」
「いろはガルタ」
というふうに連濁しますね。
それと、後ろに来る語の中に、既に濁音がある時には、連濁はしません。
漢語はどうでしょうか?漢語か和語かの区別を知るためには、『新潮現代国語辞典』が便利です。この辞書では、「漢語」の見出しは「カタカナ」で、「和語」の見出しは「ひらがな」で表記されているのです。
辞書をパッと開いて・・・「算用(サンヨウ)」は漢語ですが、「胸算用」と複合語になれば、
「ムナザンヨウ」
と濁りますね。あ、「豆腐」も漢語だ。でも「高野豆腐(コウヤドウフ)」と連濁してるな。「たこ(蛸)」は和語ですが、「マダコ」「イイダコ」など濁りますね。
ということは、漢語も和語も濁るときは濁る、と。あまり基準になりそうもありません。
要は、複合語になる時に後ろに来る言葉の自立性が高ければ「濁らず」、複合語全体の存在感が高く後ろの語はその一部分に吸収されてしまった時には「連濁する」ということではないのでしょうか?これは、複合語のアクセントにおける、
「コンパウンドする・しない」
という問題でも同じことだと思います。
今後もこういうものを集めて、連濁は如何にして起こるか、継続して調べたいと思います。
2004/11/19


◆ことばの話1973「ラッシュのアクセント」

また、Sアナウンサーから内線電話です。
「道浦さん、取材してきた未編集のテープのことを『ラッシュ』と言いますよね。この場合アクセントは、平板ですか?それとも頭高ですか?」
「どういう文脈?」
「『我々が取材をして録画をしてきたテープのことを、ラッシュテープ、あるいはラッシュと言います』という文章です。」
「うーん、ふだんは『ラッシュ(LLHH)』と平板やなあ。」
「そうですよね。」
「でも改めて言うとなると、『ラッシュ(HLLL)』かなあ。」
「えーでもそれじゃあ、なんだか『通勤ラッシュ』みたいじゃないですか」
「そう言われればそうだけど・・・。」
「どっちですか!」
「うーん、どっちでもいいんじゃない?」

ということで、「シナリオ基礎知識・業界用語集」というサイトを覗いてみると、
「あらへん」=荒編。本編集前の荒編集。
と並んで、
「ラッシュ」=rush。未編集の試写用映画フィルム。
とあって、もともとは映画業界用語のようです。
「rush」を英和辞典で引いてみると、
「rush」=突進する、突撃する、急行する、にわかに起こる。
といった動詞とともに、名詞としては、
「突進、突撃、忙殺、(注文)殺到、乱闘」
といった訳語がありました。これは「通勤ラッシュ」の「ラッシュ」ですね。その次には、
「(映)前日撮影分の編集用プリント」
とありました。これですね。これがテレビ業界でも援用されているので、ビデオテープでも「ラッシュ」と使っているのですね。
英語のアクセントを使うなら「ラッシュアワー」「通勤ラッシュ」の「ラッシュ」と同じく頭高アクセントの、
「ラッシュ(HLL)」
でしょうが、外来語として日本語に定着(テレビ業界では)している「未編集テープ」のことを指す「ラッシュ」は、平板アクセントの
「ラッシュ(LHH)」
でいいのかな、と思いました。
2004/11/19


◆ことばの話1972「上弦の月と下弦の月」

平成ことば事情1971の「弦とつる」と関係あるんですよ、これが。
私、小学2年生の頃から四十を過ぎた現在まで30年以上、「上弦の月」と「下弦の月」の区別が、今一つ、わからなかったんです。
先日、「あさイチ!」で午前5時半に読売テレビ前でお天気コーナーを担当したとき、空には月が浮かんでいました。そこで気象予報士の米畑詩子さんに聞いてみました。
「ねえ、上弦の月と下弦の月は、どうやって区別するの?」
「そんなの簡単ですよ。月が上ってくる時に弦(げん)が上を向いていたら、上弦の月、下を向いていたら、下弦の月ですよ。」
「そうだよね。弦が上を向いてたら上弦だよね。でも、月は一日で上って沈むだろ、上る時は上向きでも、沈むときは下向くじゃない。じゃあ、途中で名前が変わるの?」
「そうではなくて、上る時の弦の向きで言うんです。」
そこでちょっとひらめくものがあって、米畑さんに聞きました。
「米畑さん、弦って、丸くなっている方を言うの?それともまっすぐの方?」
「え?丸いほうでしょう?」
そうなのです、私が思っていた「弦」と米畑さんが考えていた「弦」は、逆のものだったのです。平成ことば事情1971で書いた「弦とつる」の問題です。バイオリンやギターで「弦(げん)」と言えば、ピンと張ったまっすぐな(直線の)部分を指しますが、同じ「弦」という字を書いても弓では「弦(つる)」と読みます。「上弦の月」「下弦の月」の「弦」は、もしかしたら、「つる」の部分を指しているのではないか?少なくとも米畑さんはそう理解しているようです。
翌日、今度は同じく気象予報士の藤田君に同じ質問をしました。すると、藤田君の答えは、 「ピンと張っている方が弦でしょう。丸い方は『弧(こ)』というんじゃないですか?」 ということでした。たしかに言われてみればそうだ。つまり、数学などで出て来る「弦」と弓の「弦(つる)」は別の部分を指しているのですね。
辞書などを見ると、月の異名は、「新月」(真っ暗で何も見えない)から始まり約1か月の間に「満月」まで行って、またやせ始めて「新月」になるという動きの中で、新月から3日目が「三日月」で、左側に向かって三日月の顔があります。「花王」のマークの向きです。それからどんどん太って行って、その途中の半月に近い、新月から7日目の月が「上弦の月」で、15日で「満月」、22日目ぐらいが「下弦の月」のようです。
私は、細い月は全部「三日月」かと思っていました。正式には違うんですね・・・。
それにしても,
まだよくわからない「上弦の月」と「下弦の月」なのです・・。
2004/11/14

(追記)

またまた川崎市のNISHIOさんからのご指摘です。

「月の入り」、つまり西の空に沈むときの形が基準になります。このときに、弦が上にあるのが上弦の月、下にあるのが下弦の月ですね。別の言い方をするなら、陰暦7日頃の「右側が明るい半月が上弦の月」、陰暦23日頃の「左側が明るい半月が下弦の月」です。ただし北半球での話。
< 陰暦日付  月の呼び方など >
  1日頃  新月(しんげつ)、朔(ついたち=月立ち)
  2日頃  二日月(ふつかづき)
  3日頃  三日月(みかづき)
  7日頃  七日月、上弦月(じょうげんのつき)
 13日頃  十三日月、十三夜(じゅうさんや)
 14日頃  十四日月、小望月(こもちづき)
 15日頃  十五日月、十五夜、望月(もちづき)、満月(まんげつ)
 16日頃  十六日月、十六夜(いざよい)
 17日頃  十七日月、十七夜、立待月(たちまちづき)
 18日頃  十八日月、居待月(いまちづき)
 19日頃  十九日月、寝待月(ねまちづき)、臥待月(ふしまちづき)
 20日頃  二十日月、更待月(ふけまちづき)
 23日頃  二十三日月、二十三夜、下弦月(かげんのつき)
 26日頃  二十六日月、二十六夜
 30日頃  三十日月、晦(みそか、つごもり=月隠り)

月の満ち欠けの1サイクル(1朔望月)は約29.5日。概ね7〜8日間隔で,
「新月→上弦月→満月→下弦月→」
の変化を繰り返します。また、月の出の時刻は諸条件によって変わりますが、毎日約50分〜1時間ずつ遅れます。極めて大雑把に言うと下記のようになります。
 し:新月 ………  6時頃に昇り、12時頃に南中、18時頃に沈む。
 じ:上弦月 …… 12時頃に昇り、18時頃に南中、24時頃に沈む。
 ま:満月 ……… 18時頃に昇り、24時頃に南中、 6時頃に沈む。
 か:下弦月 …… 24時頃に昇り、 6時頃に南中、12時頃に沈む。
これを覚える呪文は「しじまか6」、意味は見ての通り。
「どんな形の月がどの時間にどの空に見えるか」、中学入試の理科もこれで
ばっちり。文学作品に登場する月の描写の当否を確認することもできますね。

『数学などで出て来る「弦」と弓の「弦(つる)」は別の部分を指しているのですね。』
の部分については、

数学では、円周上の2点A、Bを結ぶ線分を「弦AB」と呼びます。また、「弦AB」で分割された円周の短いほうを「弧AB」と呼びます。JIS規格の漢字コードには、数学記号の「⌒」(弧)が規定されています。武具の弓具のほうの「弦(つる・げん)」「弓弦(ゆみづる・ゆづる)」は、数学で言う「弦(げん)」と同じく、ピンと張った部分のことです。

『新月から3日目が「三日月」で、左側に向かって三日月の顔があります。「花王」のマークの向きです。』についても、

花王石鹸の初期のマークは右を向いていました。二十六夜ごろの月です。これでは「痩せ細っていく一方」だということで、「太っていく」ほうの三日月に変えたという、まことしやかな説があります。

というご指摘をいただきました。これについては私も以前読んだことがありました。
NISHIOさん、ありがとうございました。

2004/11/24
(追記2)

呉智英『ロゴスの名はロゴス』(双葉文庫)という本の中に、同じ問題について書いてある(199ページ〜202ページ)のを見つけました。
「上弦の月だっけ、みょうに忘れっぽいね」
というコラムで、これは吉田拓郎の「旅の宿」という曲の歌詞、
「上弦の月だったっけ ひさしぶりだね月みるなんて」
のもじり。本筋は、
「月の上弦下弦が憶えにくく、誤用されることも珍しくない」
ということで、まさしく私の悩みと同じなのです!
そして、あの横山大観の「上弦の月」という作品に描かれた月は、向かって左側が輝いているので「向きが逆」だと指摘しているのです。呉智英さんによると、
「上弦は月の出が昼で(当然、見えない)、深夜西に没する。これが徐々にずれてゆき、下弦は深夜の空に上り始め、明け方に南中する。」
「普通の人が上弦下弦の区別があいまいであってもしかたがない。そもそも『上弦下弦』
の意味するところがわかりにくい。この『弦』は弓の弦である。半月の輪郭の弧の部分を弓に見立て、直径の部分を弦に見立てたわけだ。そして弦の向きが上向きの月を上弦の月、下向きの月を下弦の月、と言った。しかし、この半月の弓の弦、実際には必ずしも上弦が上向きで下弦が下向きにはならない。」

やーっぱりな!ややこしいんだよ、上弦と下弦は。スッキリしました。
2004/12/8

(追記3)

『はい、こちら国立天文台〜星空の電話相談室』(長沢工、新潮文庫)を読んでいたら、「月に関してのいろいろ」という項目に、こんな記述がありました。
「一朔望月(いちさくぼうげつ)の前半で、細い月がだんだんに太っていく過程で、半月になるとときが上弦である。また後半、満月からしだいに月が細くなるときに通過する半月が下弦である。時期の早い方が『上』、遅い方が『下』である。一ケ月を上旬、中旬、下旬といい分けるのと同じ発想である。しかし、これを月面の明暗境界線の弦の見かけの上下と勘違いしている人がいて、
『半月のときの弦が上側に見えるときが上弦ですね』
と、念を押されることがある。これはちょっと困る。
『いや、そういうわけではないんですよ。月の出の時に弦が上だったとしても、その月が沈むときには下側になってしまいますから、弦の上下で決めることはできません。満月の一週間程前に起こる半月が上弦、満月後一週間ぐらいの半月が下弦になります』
などと答えることになる。月の形がわかっていても、その形の見かけの向きは、月の出から入りまでの間に大きく変わる。それを電話で説明するのはなかなか難しい。」
そうでしょうね。ご苦労様です。
2005/10/20


◆ことばの話1971「弦とつる」

去年から気になっていて、メモしておいてもう1年近く経っちゃったネタです。それは、

「弓の『げんひも』でない部分(=持つところ)は、何と呼ぶ?」

という疑問。「弦」と書いて「ゲン」とも「つる」とも読むでしょう?
そうすると、よくわからなくなっちゃうんだよなあ。
ご存知の方いらっしゃいますか?

今回は、これで終わりです。
2004/11/11