◆ことばの話1955「馬匹」

自家用車で高速道路を走っていたら、隣のレーンを並んで走っているトラックのおなかに、こんな文字が記されていました。
「競走馬輸送中」
へえー、サラブレッドを運んでるんだ、と思ってその車をよく見ると、その運送会社の名前が、こう書かれていました。
「東海馬匹」
この「馬匹」という言葉、競馬をやらない私にとっては初めて目にする言葉でした。
インターネットのGOOGLEの日本語のページで検索すると、なんと5350件も出てきました。あるもんやなあ。大学の馬術部のホームページが多く、
「馬匹紹介」
という言葉がよく出ています。
「ばひき」

と読むんでしょうか。おととい買ったばかりの新しい辞書『日本語新辞典』(松井栄一<しげかず>編・小学館:2005、1、1初版・・って、来年の話をすると鬼が笑うなあ。)で引いてみたけど、載っていない。同じ松井さんが携わった日本最大の国語辞典『日本国語大辞典』は・・・載ってないなあ。『新明解国語辞典』にも載っていない。
ほかのネットのページを見ると、
「ばきゃく」
とルビを振ってあるものもありました。ばきゃく?「馬脚」なら知っていますが、この「ばきゃく」も辞書には載っていない。もうちょっとネットを読み進めると、今度は、
「『日本馬匹輸送』の『馬匹』は『ばひつ』と読みます」
と書いてあるものも見つけました。漢和辞典によると、「匹」の読み方には「ひき、ひつ」とあるので、
「もしかしたら『ばひつ』かも・・・」
という気もしてきました。そこでまず、(社)日本馬術連盟の事務局に電話して、「馬匹」はどう読むのか聞いてみたら、
「うちでは『ばひき』と言ってますが・・・」
とのこと。「ばひき」とは「馬」のことだそうです。「馬匹」で検索して出てきた群馬県の運送会社にも電話で聞いてみましたが、やはり、
「『ばひき』です。」
との答えでした。GOOGLEで「馬匹+読み方(ひらがな)」で検索してみると(11月10日)、
「馬匹 ばひき」= 1件
「馬匹 ばひつ」=83件
「馬匹 ばきゃく」=1件

ということで、中国新聞の2004年8月6日の社説にも
「旧陸軍馬匹(ばひつ)検疫所があった。フェリー乗り場から峠道を歩いて約二十分の距離だ」
という「ばひつ」の例が載っています。ホームページの中には、
「馬の運送会社でも『ばひき』と言うようだが本来は『ばひつ』」
と書いてあるものもあって、うーん、どうなんだろうか?ご存知の方、教えてください。
ちなみに、このワープロソフトでは「ばひき」でも「ばひつ」でも「馬匹」と変換されます。
2004/11/10
(追記1)

川崎市のNISHIOさんからメールで情報を教えてもらいました。
『広辞苑』や『大辞林』などには「ばひつ」しか載っていませんね。
   ば‐ひつ【馬匹】馬のこと。「―改良」

ついでに【匹】の字解(広辞苑)。
   左右二つに分かれている馬のしりの象形で、馬を数える語。
ウシでもブタでも同じような気がしますが、「匹夫・匹婦」の意味がこれでようやく分かりました。

そうですか、広辞苑は「ばひき」だけでしたか。ありがとうございました。
2004/11/19



◆ことばの話1954「県魚と町魚」

11月5日の朝刊を見ていたら、鳥取県の「県魚」は「ヒラメ」だが、あまり獲れずになじみがないので、いっそのこと有名な「ズワイガニ」にしたらとの声が上っているのだが、そうすると、すでに県魚を「ズワイガニ」としている「福井県」と「カブって」しまう。さあどうしよう??という記事が出ていました。そもそも「ズワイガニ」は魚なのか?という問題もありますわねえ。
「県の魚」で「県魚」。「県の鳥」の「県鳥」とか、「県の花」で「県花」というのは聞いたことがありましたが、「県魚」とは!そもそもその存在を知らなかったな。内陸の海のない県はどうするの?え?川や湖があるって?まあ、そうかもしれないけど・・・。
そもそも大阪府だったら、「府魚」と言うのでしょうか?聞いたことないなあ。じゃあ「府の花」は「府花(フカ)」?二つあったらフカフカ・・・これは不可!「都魚」「道魚」もなんだかなあ、と思いますが、ネット検索、いつものようにGOOGLEでしてみました。(11月8日)
「県魚」=2290件
「府魚」= 44件
「都魚」= 96件
「道魚」= 429件
「道魚、北海道」=71件

でもこれはほとんど「北海道漁連」の略「道漁連」で引っかかっているみたい。「道魚」という欄のあるホームページでもその欄は空白になっていて、「道木」=「エゾマツ」、「道鳥」=「タンチョウ」、「道花」=「ハマナス」となっていました。

県魚はどんなものがあるかも調べてみましょう。全漁連のホームページに「県魚」の紹介ページがありました。(数字は制定年、( )内の数字は制定順位、×は県魚制定なし)

*北海道=×
(3)青森=ヒラメ(1987)
(18)岩手=南部サケ(1992)
(32)秋田=ハタハタ(2002)
(20)宮城=(魚・藻類12種類)カツオ・マグロ・サンマ・カレイ・ギンザケ・ハゼ・アユ・カキ・ホヤ・アワビ・ノリ・ワカメ(1992)
(19)山形=サクラマス(1992)
*福島=×
*新潟=×
(25)茨城=春:鹿島灘ハマグリ夏:カツオ秋:ヒラメ冬:アンコウ淡水魚:ワカサギ(1995)
*栃木=×
(8)群馬=アユ(1989)
(17)埼玉=ムサシトミオ(1991)
(6)千葉=タイ(1989)
*東京=×
*神奈川=×
*山梨=×
*長野=×
(9)岐阜=アユ(1989)
(24)静岡=(旬の魚14選)マグロ、ニジマス、ブリ、サバ、マダイ、サクラエビ、カツオ、シラス、ウナギ、イカ、アジ、タチウオ、キンメダイ、カキ(1994)
(15)愛知=クルマエビ(1990)
(31)富山=ホタルイカ・シロエビ・ブリ(1996)
(5)石川=イカ(1988)それとは別に「四季のさかな」制定(1995)
春:サヨリ・カレイ、夏:イカ、秋:アマエビ、冬:ブリ・ズワイガニ・コウバコガニ
(7)福井=越前ガニ(ズワイガニ)(1989)
(16)三重=イセエビ(1990)
*滋賀=×
(2)和歌山=マグロ(1987)
(29)京都=「丹後・旬のさかな20選」春:サヨリ・メバル・マダイ・イサザ・ワカメ、夏:サザエ・トビウオ・タチウオ・トリガイ・シロイカ、秋:アキイカ・グジ(アマダイ)・ハタハタ・ササガレイ・ニギス、冬:ズワイガニ・ブリ・ヒラメ・アンコウ・カキ(1997)
*大阪=×
*兵庫=×
*岡山=×
(14)広島=カキ(1990)
(10)山口=フグ(1989)
(13)鳥取=ヒラメ(1990)
(11)島根=トビウオ(1989)
(26)香川=ハマチ(1995)
(28)徳島=「阿波の踊るさかな」マダイ、アユ、アワビ、ワカメ(1997)
(21)愛媛=マダイ(1993)
(4)高知=カツオ(1988)
(23)福岡=(福岡のさかな12選)サバ・アジ・アマダイ・ブリ・ヒラメ・アユ・コイ・
クルマエビ・ワタリガニ(ガザミ)・ケンサキイカ・アサリ・ノリ(1994)
*佐賀=×
*大分=×
(27)長崎=(長崎県のさかな)春:タイ・イカ・アマダイ、夏:アジ・イサキ・アワビ、秋:サバ・アゴ(トビウオ)・ヒラメ、冬:ブリ・イワシ・フグ(1996)
(12)熊本=クルマエビ(1989)
(22)宮崎=春:カツオ、マグロ、タイ、夏:カンパチ、シイラ、トビウオ、秋:イセエビ、
アジ、イワシ、冬:ブリ、ヒラメ、オオニベ、川:アユ、ウナギ、アヤメ(1989)
(22)鹿児島=(かごしま旬のさかな)マダイ・カツオ・アオリイカ・トビウオ・キビナゴ・トコブシ・マダイ・ウナギ・バショウカジキ・ツキヒガイ・サバ・カンパチ・アサヒガニ・ブリ・マイワシ・カサゴ・イセエビ・クルマエビ(1994)
(1)沖縄=タカサゴ(1972・5・15)
(順番は、北から私が思いついた順です)

おお、沖縄の制定日は、沖縄が日本にアメリカから返還された日だ!その当日にもう「県魚」も決まっていたとは!
それにしても・・・おいおい、広島、「カキ」は「魚」か?「貝」だろ、「貝」!「県魚」ではなく「県魚介類」とすべきではないか?三重の「イセエビ」や福井の「越前ガニ」も、「魚」かと言われると首をかしげるし。徳島の「阿波の踊るおさかな」には「ワカメ」が入っていますよ。明らかに魚じゃないだろ、「海草」だろ!。
それに春夏秋冬、川と海、それぞれに、もう好き勝手に「なんでもいうたれ!」という感じの水産県もいくつかありますが、これでは「代表」が決まらなくて印象が薄れるだけで何のメリットもないと思うのですけれど・・・そうでもないんですか?「みんな並んで1着ゴール」の運動会のような・・・。
それに!愛知県と熊本県はともに「クルマエビ」が「県魚」になっているではありませんか!鹿児島も、18種のうちに「クルマエビ」が入っていますし、福岡の12種の中にも入っています。
欲張って10数種類も季節によって挙げている県もあるのだから、ここは一つ鳥取県も、「ヒラメ」プラス「ズワイガニ」を「県魚」にしたら?大体、鳥取県のは「松葉ガニ」でしょ、福井のは「越前ガニ」だから、まあ、いいじゃない!?

全漁連のホームページによると、県魚制定の背景には、
1)200海里時代に入り、「つくり育てる漁業」の定着から栽培漁業推進者に漁業者の意識高揚を図り、水産業の振興に資すること
2)魚を通して県のイメージアップを図ること
3)地元の身近な魚を見直し、水産に対する県民の理解と親しみを深めてもらうこと
4)水産物の需要拡大・魚食普及を進めること
などがあげられ、
5)水産資源を守り育てる「資源管理の運動」
6)魚の生息する海や川などの水域の自然環境の保全や資源保護
などの期待も込められているとのこと。
最初に制定した沖縄県が1972年で、2番目の和歌山県が1987年で、この間15年は空白ですから、実質的な「県魚」制定ブームは1987年に始まったと言えるのではないでしょうか。現在「県魚」を制定している府県は32、制定していないのは15都道府県です。水産にかかわりのある北海道や、新潟、宮崎、佐賀、大分、兵庫、岡山が制定していないというのは不思議ですね。
でも、この日の朝の「ズームイン!!SUPER」を見ていると、北海道の鵡川町(むかわちょう)が「町」の魚、「町魚(ちょうぎょ)」として「ししゃも」を定めているという話題を放送していました。チョーギョ!チョー・ビックリ!!
「町魚」=1520件
「鳥魚・町の魚」=10件

10件なら全部見られるな。見てみると、「町魚」で出ていたのはこの2種類でした。
「和歌山県串本町」=「トビウオ」(1988)
「愛媛県南宇和郡西海町」=「石鯛」(1992)

いろんな魚がいるものですねえ。

2004/11/8

(追記)

川崎市のNISHIOさんからご指摘いただきました。
「奈良県が抜けているのでは・・・・」
あ・・・・・。
奈良の皆さん、ゴメンナサイ。
*「奈良」=×
はい、でも「県魚」、制定していませんね。NISHIOさんによると、

県魚は未制定のようですが、強いて候補を挙げれば、大和郡山の「金魚」か吉本の「さんま」でしょうか。どっちも食卓にはのぼりませんが。
「県魚と町魚」があるなら…と思って探してみると、「市魚」や「村魚」もけっこう見つかります。都道府県・市区町村の「木」「花」「鳥」「魚」「獣」、いろんなシンボル
がありますね。

とのことで。そうかあ、「市魚」や「村魚」
あるのかあ。GOOGLE検索では(11月19日)、
「市魚」=3050件
「村魚」= 649件

「市魚」では、岡山県玉野市が「メバル」、沖縄県糸満市では「タマン」、沖縄県石垣市は「ハマフエフキ」という魚、沖縄県名護市は「キス」、高知市は「アカメ」といったものがありますが、今「市魚、市の魚」とキーワードを増やしたところ、たった12件になりました。
「村魚」では、沖縄県伊平屋村は、方言名「イシミーバイ」、和名「カンモンハタ」。そうそう、沖縄県の県魚「タカサゴ」は和名で、方言名では「グルクン」だそうで、「ああなんだグルクンなら知ってるわ」と思いました。沖縄の魚は、方言名の方が耳になじんでいるかもしれません。
沖縄県渡嘉敷村は「カツオ」、沖縄県多良間村は「ミーバイ」、沖縄県上野村「アオブダイ」、
沖縄県具志頭村「トビウオ」

・・・なんだか「村魚」は沖縄ばかりだな。「村魚、沖縄」で検索したら、37件出てきました。
今帰仁村(なきじんそん)=「ツノダシ」、多良間村=「ニバリ」
やっぱり沖縄だア。県魚制定全国一番とい言うのも頷ける魚との近しい距離を感じますね。

2004/11/19
(追記2)

川崎市のNISHIOさんからご指摘いただきました。
「奈良県が抜けているのでは・・・・」
あ・・・・・。
奈良の皆さん、ゴメンナサイ。
*「奈良」=×
はい、でも「県魚」、制定していませんね。NISHIOさんによると、

県魚は未制定のようですが、強いて候補を挙げれば、大和郡山の「金魚」か吉本の「さんま」でしょうか。どっちも食卓にはのぼりませんが。
「県魚と町魚」があるなら…と思って探してみると、「市魚」や「村魚」もけっこう見つかります。都道府県・市区町村の「木」「花」「鳥」「魚」「獣」、いろんなシンボル
がありますね。

とのことで。そうかあ、「市魚」や「村魚」
あるのかあ。GOOGLE検索では(11月19日)、
「市魚」=3050件
「村魚」= 649件

「市魚」では、岡山県玉野市が「メバル」、沖縄県糸満市では「タマン」、沖縄県石垣市は「ハマフエフキ」という魚、沖縄県名護市は「キス」、高知市は「アカメ」といったものがありますが、今「市魚、市の魚」とキーワードを増やしたところ、たった12件になりました。
「村魚」では、沖縄県伊平屋村は、方言名「イシミーバイ」、和名「カンモンハタ」。そうそう、沖縄県の県魚「タカサゴ」は和名で、方言名では「グルクン」だそうで、「ああなんだグルクンなら知ってるわ」と思いました。沖縄の魚は、方言名の方が耳になじんでいるかもしれません。
沖縄県渡嘉敷村は「カツオ」、沖縄県多良間村は「ミーバイ」、沖縄県上野村「アオブダイ」、
沖縄県具志頭村「トビウオ」

・・・なんだか「村魚」は沖縄ばかりだな。「村魚、沖縄」で検索したら、37件出てきました。
今帰仁村(なきじんそん)=「ツノダシ」、多良間村=「ニバリ」
やっぱり沖縄だア。県魚制定全国一番とい言うのも頷ける魚との近しい距離を感じますね。

2004/11/19


◆ことばの話1953「棒すしと棒ずし」

先日、「あさイチ!」の番組の中の「あさイチ!グルメ」というコーナーの取材で、大阪中央卸売市場の中のお寿司屋さんに行きました。そこのお店の名物は、「バッテラ」と「鯵の棒寿司」。バッテラの発祥の店はこちらだというふうにパンフレットにも書いてあります。当初のバッテラは、「サバ」ではなく、「コノシロ」を使っていたそうです。
さて問題はバッテラではなく「鯵の棒寿司」です。お店のお品書きを見るとそこには、
「棒すし」
と書いてあるのですが、ご主人は、
「棒ずし」
と濁って発音しているのです。まあ、どっちでも物は一緒ですからいいようなものですが、気になります。思い切ってご主人に聞いてみました。
「あのう、これは『棒すし』と濁らないか、『棒ずし』と濁るのかどちらでしょうか?」
するとご主人は、
「うーん、たしかに文字では『棒すし』と濁らないけど、言うときは『棒ずし』と濁ってるねえ・・・。」
と言うではないですか!それで判りました。必ずしも書いてあるとおりに発音するとは限らないのです。つまり、濁点のところに濁点が打ってあるとは限らないのです。言文一致とは限らないということですね。
その理由としては、長年口にする言葉だから「棒」と「すし」がくっ付いたのが一語となって、「棒ずし」と濁って言うわけだけれど、文字で見る時に「ずし」と濁るのはなんだかイヤだ、お寿司であるということをわからせたい、という思いから、文字は、
「棒すし」
と濁らずに「すし」とわからせるという「言文不一致」なんですね、「言文一致」ではなく。
こういうこともあるのですね。

2004/10/28
(追記)

川崎市のNISHIOさんからのメールです。

江戸では「火消しとお寺は濁り、橋と鮨は澄む」と言われていたそうです。橋は水上にかかるので濁るのを嫌って「日本橋」を「にほんはし」と書くなど。鮨は本来「酢し」なので「す」の字を大切にしたという説です。現在の発音は、橋も鮨もほぼ例外なく連濁になっていますが、昔はどうだったのでしょう。
googleで探すと、「鯖すし」「握りすし」「いなりすし」「ちらしすし」など、濁らない「〜すし」が多数ヒットします。意識的に書き分けているのかは不明。ちなみに、すし学の権威、篠田統博士の『すしの本』(柴田書店、1993年新装復刻版)では、「棒ずし」「箱ずし」のように、すべて平仮名の「〜ずし」で統一されています。先日神田の古本屋で入手した1966年の初版も同じでした。

とのことです。NISHIOさん、どうもありがとうございました!
2004/11/18


◆ことばの話1952「『両替できません』の英語」

近くのスーパーマーケットに行った時のこと。レジの横に貼り紙がしてありました。そこには、
「両替できません」
という日本語と一緒に英語で、
We can’t change money」
と書いてあったのです。それを見て、ふと疑問に思ったのは、
「この場合、主語はYouではないのか?」
ということでした。つまり、本場の英語だと、
You can’t change money」
となるのではないか?と思ったのですね、唐突に。
で、翌日出社した時に、英語に強いWアナウンサーに聞いてみました。すると答えは、
「Weで良い」
でした。彼女が言うには、
「『You can’t』というのはとても強い禁止の言い方なので、お店が提示するにはちょっとどうかと思う。『can’t』は強い言い方なので、たとえば『Can you speak Japanese?』のような聞き方は『あなたなんて日本語はしゃべれるわけないわよね?』というふうな、見下げた失礼な物言いになる。『あなたは日本語しゃべれますか?』と聞くのならば、『Do you speak English?』と言うべきだ。」
とのことでした。そうだったのか!でも中学校で習った英語では、「キャン・ユー」だったよなあ。Can’tにそんな強い意味があったとは知りませんでした。
英語はムズカシイ・・・。
2004/10/29


◆ことばの話1951「アホ毛」

若手のAアナウンサーとMアナウンサーが、アナウンス部でお昼のニュースをHDテレビで見ていました。画面に出てきた同僚のYアナウンサーを見て、Aアナウンサーがひと言。
「すごいクリアーに明るく映りますねー。これだとアホ毛まで見えますよね。」
なんじゃ、その「アホ毛」というのは?と、少し恥ずかしい気持ちを抑えて聞きました。もし、ヘンなところの毛の事だったらどうしよう・・・。するとAアナウンサーが答えていわく、
「頭のてっぺんとか後ろの方で、ピンと1本だけ立っちゃってるような毛のことです」
との事。ああ、たしかに。クシで撫で付けても、寝グセがついたりなんかして、言うことを聞かない髪の毛、ありますね。あれを「アホ毛」と言うのか。
インターネットのGOOGLE検索で調べると(11月5日)
「アホ毛」=4780件
ありました。随分あるものですね。若者言葉かな?ネットで「アホ毛」の定義を調べてみると、こんなのがありました。

「アホ毛」
1.美容業界で、まとめた髪の毛の表面からぴんぴん出てきて(跳ねて)しまう短い毛のことを指す用語。英語の「Frizz」と同義で使われている。
2.漫画、アニメ、ゲームなどで、頭部から1本(または複数本)触角のように飛び出して立っている毛のことを指す用語。

ハアー、そうやったのか。美容用語。しかもアニメなどにも使われているとはちっとも知らなかったなあ。英和辞典を引くと、
「Frizz」=「縮れ髪(毛)」
と載っていました。ちょっと「アホ毛」とは違うような気もしますが、要は、
「ゆうことをきかん髪の毛」
のことを言うようですね。でもなぜ「アホ毛」なんだろう?「バカ毛」とか「マヌケ毛」とは言わないのだろうか?またGOOGLE検索。
「バカ毛」= 485件
「マヌケ毛」= 1件

あ、そうか。「マヌケ毛」って、「ケ」が重なるから、それを言うなら、
「マヌ毛」
かあ。
「マヌ毛」=69件
でもこれは、2ちゃんねる用語のような感じ・・・。ほかのページも見てみると、「まぐまぐ」の中に「アホ毛か?バカ毛か?」という人気投票がありました。(2004年10月5日)ここでは「アホ毛」を、
「頭のてっぺんあたりからチョロチョロと出ている髪の毛」
「分け目などから流れに逆らってちょろ〜んと生えているあの毛」

と定義しているようですが、その人気投票によると、

「アホ毛」= 674票(51、0%)
「バカ毛」= 117票( 8、9%)
「ブタ毛」= 100票( 7、6%)
「波平」= 215票(16、2%)
「その他の呼び方」= 216票(16、3%)

だそうです。つまり過半数の人が「アホ毛」と呼んでいるようです。でも「波平」というのも捨てがたいな。もちろん、漫画・アニメの「サザエさん」で、サザエさんのお父さんのあの風貌からそう呼ばれるのでしょう。皆さん、ユニークなネーミング(一面、『見たまんま』という声が、なくもないが・・・)を考えるものですねえ。

2004/11/5
(追記)

追記するのを忘れていました。2004年11月7日の朝日新聞の夕刊に、
「『あほ毛』広がる」
という見出しが!これを書いた2日後じゃないの!
「ぴんぴん出てくる髪指す言葉」
「ルーツは大阪?の中・高生」
「CMにも登場 若い人の間では全国区」

と、松尾慈子記者が書いています。CMというのはP&G(本社・神戸)が9月に発売した、「ヴィダルサスーンのパールジェリーワックス」
のものだそうで、
「最初は不安だったんですよ。『あほ毛』って聞こえも良くないですから。でもほかにいい言葉が浮かばなかった」
と、記事の中でP&G研究開発室の吉美美奈子さんは答えています。
東京に本社がある「花王」の研究所でも、取材に対して「あほ毛」という表現を「使う」と答えています。「浮き毛」とも言うそうです。「ライオン」(本社・東京)の広報は、
初めて聞きました。商品企画部門では『うねり毛』というのですが、担当者は『あほ毛』を知っていたようです。」
と答えています。そしてコメンテーターとして梅花女子大学の米川明彦先生が、
「20〜30年前からある言葉で、基本的に関西の中・高生が使っている」
とコメントし、また京都文京中・高校の高山勉先生が編集した『キャンパス用語集』の1991年版に収録されているということ。高山先生は、
「使用層は確実に広がっている」
と答えています。そして地方によっては「ばか毛」「いも毛」「ブタ毛」、和歌山では、「ジジ毛」とも言うそうです。
「あほ毛」、バカにできませんね。

2005/2/24
 
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