◆ことばの話1920「小数点以下のケタ」

円周率を小数点以下5万4000ケタまで暗唱したという千葉県の58歳の男性の記事が新聞に出ていました。是まで慶応大学の学生が持っていた世界記録を破ったそうで、ギネスブックに申請するそうです。
世の中にはすごい人がいるものだ、それにしてもそんなに円周率を暗誦して、何の役に立つんだろうか?と思って記事をよく読むと、この男性は、人の悩み聞いてあげるメンタル・ケアの仕事をしているそうで、相手の話を聞いてあげている途中で口を挟んだり眠くなったりしないように、頭の中で円周率を暗誦しているうちに、こんなに何万ケタも暗証することができるようになったそうで・・・って、それって人の話はちゃんと聞いていないということかい!と、ちょっとツッコミ入れましたが、気持ちはわかる。
実は、この話を聞いて考えたことは、
「プラスの数はケタに千とか万とか億とか兆とかの名前がついているが、小数点以下には付いていない。それはなぜなのだろう?しかも、今回の円周率というのは小数点以下5万4000ケタ暗誦したということだが、これがもしプラスの整数で5万4000ケタならば、一体いくつまでなのか?単位は何なのか?」
ということでした。
たとえば「1000億」でもゼロの数は、たったの11個に過ぎないのです。小数点以下5万4000ケタですよ!文字通り、ケタが違います。
整数で、プラスの方向で5万4000ケタの数字の単位をご存知の方、是非ご一報ください!

2004/10/7
(追記)

アメリカのI先輩からまたメールで教えを請いました。整数のプラスの方向、億の上は京(けい)ですが、それ以上に関しては、4桁づつの繰り上がりで、
垓(がい)、<糸へんに予と書く漢字>(じょ)、穣(じょう)、溝(こう)澗(かん)、正(せい)、載(さい)、極(ごく)、恒河沙(ごうがしゃ)、阿僧祗(あそうぎ)、
那由他(なゆた)、不可思議(ふかしぎ)、無量大数(むりょうたいすう)。

となるそうです。昔、小学校の頃「ものしり図鑑」みたいなので、見た覚えはありましたが、忘れていました。でも4桁づつ繰り上がりでも72ケタ(かな?)に過ぎません。
小数の方も1桁づつ下がっていって、
分(ぶ)、厘(りん)、毫(もう)、絲(し)、忽(こつ)、微(び)、繊
(せん)、沙(しゃ)、塵(じん)、埃(あい)、渺(びょう)、漠(ば
く)、糢糊(もこ)、逡巡(しゅんじゅん)、須臾(しゅゆ)、瞬息(しゅん
そく)、弾指(だんし)、刹那(せつな)、六徳(りっとく)、虚(きょ)、
空(くう)、清(せい)、浄(じょう)。

だそうです。「割、分、厘、毛」までは、野球の打率や、貯金の利率で見てましたね。それ以下がこんなにあるとは知りませんでした。なおI先輩からの追伸によると、
「無量大数より大きい数は『ない』ということになっているらしいので、5万桁なんて数字は『ありません』ということになっているようです。小さいほうも同じく、浄(小数点以下23桁)よりも小さい数字は「ない」ということになっているらしいです。数は有限であるという考え方が、なんとなく面白いですね。」
とのこと。たしかに。数の大きい方は限度をこちらで作ればそれ以上は「ない」と言えるでしょうが、小さい方はいくらでも細かくできそうな気がします。でもそれって、素粒子とか中性子とかなんだかそんな世界に通じる考え方なのではないでしょうか?ウサギはカメを追い抜けるのか?とか、微分とか細かく細かくしていくと最後はどうなるの?というお話。「無限」と「有限」の間には何があるのか?(「株式会社」がある?それは関係ない。)興味深いですね。
ところで、この単位はおそらく中国のものですよね、漢字だし。ゼロを発見した国・インドではどうなのでしょうね?いろいろと疑問が膨らみます。
2004/10/12


◆ことばの話1919「前がかり」

2004年9月8日、インドのコルカタ(旧名カルカッタ)で行われたサッカーワールドカップ、アジア一次予選の日本対インドの試合、

「より前がかりになってくれればチャンスですね。」

と実況のTBS清水アナが。彼はもともと日本テレビ系列の札幌テレビにいて、その頃に高校サッカーで一緒に仕事をしたこともありますし、大学のゼミの一年後輩でもあります。
この「前がかり」という言葉、私がサッカー中継を担当していた10年ほど前には、耳にしなかった言葉ですが、最近はサッカー中継で大変よく耳にします。
読売テレビのサッカー担当の小澤アナウンサーに
「この前がかりってことば、いつ頃から言うようになったの?」
と聞くと、彼は、
「私が中継を始めた頃には、もう使っていましたね。Jリーグ発足の時ぐらいからではないでしょうか?」
とのことでしたが、私はもっと最近のような気がするんだけどなあ。
GOOGLEで検索したところ(10月8日)、
「前がかり」=2900件
でしたが、ざっと見たところ、そのほとんどはサッカーに関して書かれたものでした。私が見た中では
「前がかりの経営」
というのがサッカー以外の用例でした。
え?「前がかり」の意味ですか?まあ、字のとおりなんですが、
「攻撃のために、前(相手の陣地内)に多くの選手が入り込む」
というような意味でしょうか。攻撃に人数がかかっているということはそれによって当然、
「守備の人数が、手薄になる」
という事態を招くため、「前がかり」には、暗にそういった意味、
「守備がおろそかになる」
というニュアンスもありそうですね。
「平成ことば事情」の更新に「前がかり」になると、五時の訂正がおろそかになって・・・・ホラ、「五時の訂正」ではなく「誤字の訂正」ですね。こういった漢字かな。いや、感じかな。

2004/10/8


◆ことばの話1918「和三盆」

ニュース原稿に出てきた、
「和三盆」
皆さん、もちろんご存知ですよね。でも・・・若手のAアナウンサーに聞いたところ、
「わさんぼん?・・・わ?丸いんですか?」
とトンチンカンな答え。最初から「無理かなぁ・・・」とは思ったんだけどさ。
ま、しかしそれは織り込み済み。ところが驚いたことに、
「Aに答えを教えてやって!」
と、当然知ってると思って話を振ったSアナウンサーとUアナウンサーも、
「和三盆?って何ですか?知りません」
という答え。あれま。
そこで、「どっちの料理ショー」のリポーターとして活躍中の、清水健アナウンサーに、
「和三盆って何か知ってる?」
と聞くと、少しの間があり、唾をゴクリと飲み込む音が聞こえたような気がしました。次の瞬間、
「・・・砂糖・・・ですよね、高級な。」
との答え。おお!だてに「どっちの料理ショー」の取材に行ってはなかった!成長しとるやないか!とても1年9か月前に、
「山椒って、サカナじゃないんですね!」
「ウズラって、卵だけじゃないんですか?」
「黒豚の肉って、黒くないんですか?」
「このアンティーク家具、は全部、新品ですか?」

などとほざいていた人物と同一とは思えません!「どっち」で鍛えてもらったんだなあ、人間って成長するんだなあ・・・と、わたくし、いたく感激いたしました。
日々是、精進!肝に銘じました。
で、その清水アナウンサー、ロケから帰ってきて、おずおずと何か差し出します。
「何?これ?」
「和三盆です。取材に行ってきたので、どうぞ」

ホウと見ると、香川県は三谷製糖・羽根さぬき本舗の和三盆。綺麗な入れ物に入っています。中には、小さなテルテル坊主のように髪似くるまれた、落雁のような和三盆が。口に入れると、その上品な甘さにとろけそうになりました。
「作る時に、お盆の上で三度、研ぐから『和三盆』の名があるんですよね。」
おお、やはり百聞は一見にしかず。現場に行って見聞きしたことは忘れないもんな。えらいぞ!シミケン!!

2004/10/7


◆ことばの話1917「韓国語」

7月28日の「ズームイン!!SUPER」で、女性キャスターの駒村多恵さんが、
「歌手の平原綾香さんが今、新曲を韓国語で歌えるように練習中なんだそうです。」
とコメントしていました。
ここに出てくる、
「韓国語」
最近は、特に問題なく使われているようですね。でも以前は、結構もめて、なかなか「韓国語」という言い方はできない時期もありました。
たとえば、1988年のソウルオリンピックを控えて、NHKの外国語講座で新たに「韓国語」の講座を始めようとした時に、「韓国語講座」とすると北朝鮮の立場がなくなるので「朝鮮語講座」とすべきだという声もあり、だからといって「朝鮮語講座」とすると、韓国で使われているイメージがなくなってしまうという意見もあって、「じゃあ、韓国・朝鮮語講座」とすればどうか?という意見に対しては「名前が長すぎる」ということで、結局、
「ハングル講座」
という名称になったということを聞いたことがあります。しかし「ハングル」というのは韓国・朝鮮語の「文字」を指すもので、「言語」を指すものではありません。だから時々耳にする、
「ハングル語」
というのは、たとえば「日本語」のことを、
「ひらがな語」
と呼んでいるようなもので、明らかに間違いであると言われていました。しかし最近は、特に何の警戒もなく、韓国を指す時は「韓国語」、北朝鮮を指す時は「朝鮮語」というようになってきている気がします。両方を統合して呼ぶ時は、どうも「韓国語」のようです。
推測ですが、2002年の拉致被害者5人の帰国を機に、例の、
「北朝鮮=朝鮮民主主義人民共和国」

とは言わなくなり、単に、
「北朝鮮」
と呼ぶようになったことと、日韓共催ワールドカップが、この「韓国語」という呼び方の普及に大きな影響を与えたのではないかと私は考えています。
昨日(10月6日)放送のフジテレビの番組「トリビアの泉」に登場した、神田外国語大学の先生も、
「韓国語」
と言っていました。どういう話でこの「韓国語」が出てきたかと言うと、
「『微妙な三角関係』は韓国語でも『微妙な三角関係』(ビミョハン・サンカククアンケ)と言う。」
というものでした。おもしろかった。
10月7日に行われた新聞用語懇談会放送分科会で、この件に関して各社委員の皆さんに意見を伺ったところ、
「『韓国の大学に3か月通い、韓国語を学んだ』というような場合は『韓国語』だが、民族的な言葉として捕らえた場合は『朝鮮語』。」
「北朝鮮による拉致被害者の人たちがしゃべっていたのは『朝鮮語』だが、日本で家族で見ていた韓国ドラマは『韓国語』のものだった、と言える。」
というような意見が出ました。
韓国で話されている言葉を「韓国語」と言うことに関しては、16年前のような抵抗は、なくなっているのは、確かなようです。

2004/10/7
(追記)

10月20日、関西テレビのお昼のニュースの中の、大阪・ミナミで暴力団組員が刺されて死亡という事件のニュースで、男性アナウンサーが、
「韓国語で口論していたということで・・・」
という原稿を読んでいました。「韓国語」、何の疑問もなさそうに使っていました。
2004/10/22

(追記2)

2004年12月1日の読売新聞に載っていた記事2題。まずは、
「日本で暮らす中国、台湾出身者の身近な生活相談に乗っている市民グループ『関西生命線』は12月1日から7日まで、在日コリアンを対象にした韓国語での電話相談を受け付ける。」
「在日コリアンを対象にした相談は始めてで、外国人のうち在日コリアンの自殺者が多いことから、厚生労働省の『自殺予防週間』に合わせて実施する」

とのことです。「在日コリアン」という言い方だと「在日韓国人」と「在日朝鮮人」をまとめて短く言えるのですね。この相談は「韓国語」を「母国語」とする女性8人が対応したそうです。そしてもう1題は、
「韓国民団大阪本部と朝鮮総連大阪本部は(十一月)三十日、府立大二次試験の外国語科目に韓国・朝鮮語を採用するよう求める要望書を、府に共同で提出した。」
という記事。一次試験に当たる大学入試センター試験では、既に2002年度に「韓国語」が採用されているそうです。大阪府の生活文化部は「2007年度以降の入試で対応を考えたい」と答えているとのこと。
提出された要望書によると、現在大阪府内の34の公立高校で韓国・朝鮮語の講座が設けられ、民族系高校に通う生徒と合わせて、2000人以上が韓国・朝鮮語を学んでいるそうです。
また文部科学省によると、二次試験で韓国・朝鮮語を採用している国公立大は、富山大学人文学部しかなく、大阪府立大は英語のみ、大阪市立大学は英仏独中の4か国語を採用しているそうです。
府庁で会見した韓国民団大阪本部の方明宣(バン・ミョンソン)副団長と朝鮮総連大阪本部の夫永旭(プ・ヨンウク)副委員長らは、
「全国一多い15万人の在日韓国・朝鮮人が暮らす大阪から、教育の機会均等、他文化強制の機運を拡げてほしい」
と述べたそうです。
2005/2/19




◆ことばの話1916「ぜひ来てください」


10月5日、大阪・西梅田に、ルイ・ヴィトンやフェラガモなど高級ブランドのお店がいっぱい入ったビルがオープンしたということで、夕方18:17からの「ニューススクランブル」の中で中継しました。
中継を担当したのはMアナウンサー。本人は「ブランド大好き」という感じではない女性ですが、それでも高級感あふれるお店にうきうきした様子で伝えていました。
しかし、その中継の最後の一言に、私は引っかかってしまいました。
「ぜひ来てください!」
普通、常套句ではありますが、こういった中継の最後の一言は、
「皆さんも一度、訪れてみてはいかがでしょうか」
というもの。「ぜひ来てください」というのは、一歩踏み込んだ表現です。おそらく特に機にする視聴者の方は少ないとは思いますが、「ニュース番組」として伝えるのですから、「新しい高級ブランドのお店がオープンした」「ブランド好きの女性にはゼヒモノの情報」というのを伝えるのは、それはそれで良いと思いますし、大阪にこんな新名所が!という情報を知らせることは、高級ブランドにさほど興味のない人たちにとっても、世の中の動きを知るために悪くはないと思います。しかし、「ぜひ来てください!」という言葉を使うと、その時点でこの中継は、「広告・宣伝」になってしまい、悪い言い方をすれば、
「お店の手先」
になってしまいます。お店側の主張一辺倒ではなく、テレビ局としての視点を盛り込んでの新名所情報だからこそ、ニュース番組で中継する意義があると思います。Mアナ本人は、
「付け足しで最後にポロッと言ってしまい、失敗してしまいました・・・」
とのことですが、言わなくてもいいことは、言わない方がいいこともあるんですね。
実はMアナウンサー、この日は朝の「ズームイン!!SUPER」の関西ローカル枠での「パン屋さん中継」も担当していたのでした。これは毎週火曜日、おいしいパン屋さんを紹介するものです。この「パン屋さん中継」でなら、「ぜひ来てください」と言ってもかまわないと私は考えます。そこにはいわゆる「ニュース性」はなく、「おススメのおいしいパン屋さん」ということですから、その情報を聞いてその店に行くことは、即、視聴者のプラスとなると考えられますし、ニュース番組ではない情報番組としての性格から、中継をすること事態が既に宣伝ですし、店に代わって「来てください」と言っても許されると思います。1日のうちに(12時間のインターバルはありますが)2か所の中継をしたことで、そのあたりが混同されてしまったのではないでしょうか。Mさん、長時間勤務、お疲れ様でした。(Mアナは、ズームの後に「なるトモ!」の生本番もこなしていたのでした。3本立て!売れっ子です。)

2004/10/5