◆ことばの話1910「腕っこき」

子供の誕生日で行ったレストラン。テーブルに敷かれた紙のランチョンマットに、こんなセリフが記されていました。

「腕っこきのシェフが、腕によりをかけて」

この「腕っこき」、これは「腕利き」が強調と音韻変化したものなのでしょうか?
辞書を引いてみました。『新明解国語辞典』では、
「腕っこき」=(「腕こき」の強調形)特別の腕きき。
「腕利き」ではなくて「腕こき」の強調形だったのですね。そこで、「腕こき」を引いてみたら、なんと『新明解国語辞典』では「腕こき」は載っていないんです。ほかの辞書を引きました。『新潮現代国語辞典』でまずは「腕っこき」を。
「腕っ扱(こ)き」=「技術・能力の特に優れていること(人)。うできき。うでこき。(例)「その道では知られた腕っこきである」(「魚河岸」)
そして「腕扱き」は・・・
「腕扱き」=(1)すぐれた、勇気のあるもの。義侠(ギキョウ)心のある、つよい男。(2)うでっこき。うできき。
この(2)の意味なんですね。(1)との違いがあまり明確ではないのですが。
この「こき(扱き)」、「こく(扱く)」とはどのような意味なのか?『新潮現代国語辞典』では、
「扱く」=(1)長い物を、手で握ってずらしながら引く。しごく。(2)道具でイネ・ムギなどの穂を落す。
あ、そうか(2)の「扱く」は農機具の「せんばこき」の「こき」だったのか。
でも「腕扱き」はどっちの意味なんだろう??謎は残ったままです。
ちなみに「ウソこけ」
の「こけ」、「こく」は「放く」=「(1)体の外に出す。ひる。(2)「言う」「しゃべる」の卑語。」でまったく違う言葉のようです。
これはホントウ。

2004/10/2


◆ことばの話1909「大谷祖廟と大谷本廟」

9月23日、「彼岸の中日(ちゅうにち)」のお昼のニュース。毎年恒例ですが、読売テレビでは、京都・東山の、
「大谷祖廟」
にお墓参りする家族連れの様子を取材し放送しています。そのニュース原稿を前にしてちょっと疑問が。というのは、それに先立つ数日前、「彼岸の入り」の日にNHKで放送していたお墓参り家族連れが訪れていたのは、
「大谷本廟」
だったのです。同じようなお墓の映像でした。これって同じお墓なのか?名前が変わったのか?それとも別のお墓なのか?こういった問題にはまったく疎い私ですが、ほかのスタッフに聞いても、「うちは大谷祖廟だよ、なあ?」というだけでのその違いはわかりません。
インターネットで調べてみると、一発でわかりました。
「大谷祖廟」は「東本願寺」、「大谷本廟」は「西本願寺」
でした。危ない危ない!勝手に「祖廟」と「本廟」を同んなじものにしてしまっては、ご先祖様のバチが当たる。
なぜか読売テレビのニュースではいつも「大谷祖廟」に取材に行ってるなあ。京都のマスコミで、「祖廟」と「本廟」の取材の「棲み分け」があるのかもしれませんね。

2004/10/4


◆ことばの話1908「ヤング」

私はゴルフはしないのですが、家の近くにゴルフ場があります。最近はゴルフ人口が減っているのか、はたまた接待ゴルフ減ったためか、利用客を少しでも増やそうとサービス合戦が行われているようです。その、家の近くのゴルフ場の広告の大きな看板が目に留まりました。そこには、曜日ごとに、年齢別の平日割引の値段が書いてありました。その年齢の区分は、こうでした。
「シニア、ミドル、ヤング」
おお!「ヤング」!!
いやあ、懐かしい響きだなあ・・・。ヤングかあ。いまどき、言いませんよねえ。
「ナウなヤングのスポーツ」

ということなのでしょうか・・・・。でも最近70年代のファッションなんかが流行ってるから、「ヤング」というのが「死語」ではなくって、甦って流行るかもしれないなあ。
かえって、新鮮かも。受けますよ、きっと、ヤング・・・。
ちなみにそのゴルフ場の区分によると、「ヤング」は、
「10代から30代」
で、「ミドル」は「40〜50代」、「シニア」は「60代以上」でした。ちょっと幅広
すぎやしないか、「ヤング」。
ちなみにこれを読んで「ニール・ヤング」とか「ヤングOH!OH!」とか「SAY YOUNG」とか言っている人は、「ヤング」ではありません。間違いない。

2004/10/2


◆ことばの話1907「固め打ち」

大リーグ史上シーズン最多安打に向けて驀進中のマリナーズのイチロー選手。今年は、1試合に5安打といういわゆる「固め打ち」を何度もしています。1試合に固めて打つから
「固め打ち」
と言うわけですが、私、これを小さいときに、
「片目打ち」
だと思っておりました・・・。片目をつぶって打つなんてすごいなあ、と。

と、ここまで9月29日に書きましたが、今これを書いている日本時間の10月2日、やってくれました、イチロー選手。大リーグ記録の257安打を軽々と破って、259安打まで記録を伸ばしています。
Googleで「固め打ち」を検索したところ(10月2日)、5260件出てきました。
で、検索のキーワードを「固め打ち、イチロー」にしたところ、これもなんと2420件もありました。つまり「固め打ち」に占める「イチロー」の割合は46%にもなるのです!これって、すごくない?あ、若者言葉を使ってしまった・・・
ついでに、「片目打ち」を検索すると、24件あって、私と同じように子供の頃に「片目をつぶって打つこと」だと思っていた人が何人かいました。よかった。あれ?この人は・・・私だ!「平成ことば事情1259」の「マルチ安打」で、この話、書いてました・・・去年の6月30日。トホホ。それもイチローと松井の話の中で、です。でも去年の6月から1年3か月ほどで、650近く書いてるんだなあ・・・忘れもしますよね、みなさん!許してちょんまげ。

2004/10/2


◆ことばの話1906「激アツ」

アメリカ時間の10月1日(日本時間の10月2日)、シアトル・マリナーズのイチロー選手が、大リーグの年間最多安打の記録を84年ぶりに塗り替えました。レンジャーズ戦の第一打席で、これまでの記録(1920年のシスラー選手の257安打=154試合で)に並び、第二打席では、この記録を抜き去る今シーズン258安打目を記録。
結局この日はもう一本ヒットをハナって259安打まで記録を伸ばしています。シーズンの残りはあと2試合です。どこまで記録を伸ばせるか、楽しみですね。
試合後のインタビューでは、いつもはこういう場では冷静で喜びを表さないイチロー選手にしては珍しく、感激に目をうるませ、饒舌でした。よほど嬉しかったのでしょうね。そりゃあそうです、84年間も破られることがなかった記録を破ったんですからね。それも世界最高峰のメジャーリーグで。嬉しいでしょう!
そのインタビューで気になったイチロー選手の言葉は、
「激アツでしたね」
でした。この「激○○」という形、まあ、もう定着している言葉とはいえ、30歳になったいつも寡黙な感じのイチロー選手の言葉として聞くと、ちょっと意外な感じを受けました。
アテネ・オリンピック、水泳の北島選手の言葉、
「チョー気持ちええー(いいー)」
とともに、今年の流行語大賞のスポーツ部門に入るんじゃないかなあと。ビビッときましたね。どうでしょうか。

2004/10/2
(追記)

『週刊新潮』(2004年10月28日号)161ページに、
「女心を蕩けさせる『激アツ』チョコ戦争」
という見出しが。東京銀座の日本橋三越本店・新館地下2階には、お好みのチョコレートをその場でショコラティエ(チョコ職人)が作ってくれ、100グラム(2800円)以上買うと、それをワインセラーのように預けることができる、
「ショコラセラー」
というものが、日本で始めてできたという記事でした。けっこう年配の男性がお客さんなのだとか。同じ日本橋の高島屋も、ショコラティエを立てて、「熱き戦い」が巻き起こっているとかで、それが、『「激アツ」チョコ戦争』の見出しになったようです。

2004/10/22
 
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