◆ことばの話1880「牛肉偽装と偽装牛肉」

「ハンナン」の事件のこれまでの振り返りの原稿の下読みをしていると、
「偽装牛肉事件」
と書いてありました。
「あれ?これって『牛肉偽装事件』ではないの?」
と思って記者に聞くと、
「『牛肉偽装事件』は、輸入牛のラベルを国産牛に張り替えて売った事件で、今回のハンナンのように国のBSE対策で処分対象となった国産牛の代わりに輸入牛を国産牛と偽って買い上げさせたのは『偽装牛肉事件』として区別している。」
とのことでした。へー、全然気づかなかった。
よそのテレビ局や新聞がそういった区別をしているのかどうかは調べていませんが、果たしてその違いに視聴者は気づいてくれているのだろうか?という疑問が浮かびました。
皆さん、気づきましたか?
念のためGOOGLEで検索すると(9月9日、日本語のページで)、
「牛肉偽装事件」=1万1800件
「偽装牛肉事件」=   820件

で、圧倒的に「牛肉偽装事件」の方が多かったのです。そしてその内容はというと、ともに雪印食品の事件もありましたし、「ハンナン」の事件もありました。たとえば読売新聞は「ハンナン」に関して9月9日のウェブで「牛肉偽装事件」を使い、2004年4月16日の同じくハンナンの記事では「偽装牛肉事件」を使っています。特に区別はしていないのかな、という気がしました。

2004/9/9


◆ことばの話1879「愛ちゃんか?愛さんか?」

アテネオリンピック選手団で最年少出場、卓球の福原愛選手。
「愛ちゃん」
と言った方が、判りやすいかもしれませんね。彼女が小学校に入る前から、私たちは彼女を「愛ちゃん」と呼んで、その卓球への取り組みぶりを報じてきました。その彼女ももう15歳の高校一年生。そろそろ「愛ちゃん」と「ちゃんづけ」ではなく「愛さん」と「さんづけ」で読んでもいいのか、と思った一部のテレビ番組が、
「愛さん」
と呼んでいましたが、何か違和感が・・・。
やっぱり「愛ちゃん」でいいのではないでしょうか?
「愛さん」とする年令、実力があるならなら、本来は、
「福原選手」
とするはずです。「愛ちゃん」は、ちっちゃいのによく頑張り、かわいいからマスコミは取り上げます。もし、そうでなければ単なる一卓球選手ですから「福原選手」のはずなのです。ファーストネームで呼んで取り上げるのには、その歴史と理由があるのです。
柔道の「ヤワラちゃん」が金メダル取ったからといって、
「ヤワラさん」
になったかというと、それはありません。(「田村でも金、谷でも金」というのはありましたが。そもそも「ヤワラちゃん」はニックネーム、谷(旧姓・田村)亮子選手のファーストネームではありませんね。)それと同じではないでしょうかね。
今後は、いつ「愛ちゃん」から「福原選手」に呼び名が変わるか。そのときには金メダルを獲っているかもしれませんね。北京かな?

2004/9/8



◆ことばの話1878「一生に残る思い出」

アテネオリンピック体操の個人種目別の平行棒で銀メダルを獲得した富田選手。銀メダル獲得の感想を聞かれて、こう答えていました。
「一生に残る思い出になりました」。
これを聞いて思ったのは、
「『に』は、いらないのではないか?」
ということでした。つまり、
「一生、残る思い出になりました」
でいいのではないかということです。なぜか?
「一生に残る思い出となりました」という場合の「一生」は名詞です。既にその人が一生を終えた時に他者が判断してそう言うのなら、「に」を入れてもおかしくありません。しかし「一生に」というと、まだ若い本人がそのように判断してしまうように聞こえて、なんだかヘンな感じがするんですよね。
「一生、残る思い出」
の場合の「一生」は名詞ではなく「副詞」で、「(長く記憶に)残る」ということを強調する役割を果たしているのです。そう言う意味でも「に」が入るのと入らないのでは意味が変わってきますね。
それにしても演技を終えて控え室(?)に戻ってくると、すぐにマイクを向けられてコメントを求められるというのはとっても大変な事態で、きっちりとしたコメントを言うことは大変難しいのだなということは、よくわかりました。

2004/9/8



◆ことばの話1877「・・・と。いうことが・・・」

8月4日、テレビ東京の「ワールド・ビジネス・サテライト(WBS)」を見ていたら、男性の経済コメンテーターが、
「…と。いうことが言えると思いますね。」
というふうに話していました。これ、切り方がおもしろいですね。普通は、
「ということが、言えると思いますね。」
と言うふうになるのではないかと。思いますね。あれ?
この言い方、なんだかヘンだけど、便利ではないかと。いうことが言えるかと思いますね。
でも、すごくビクビクしたものの言い方かと。いうことが言えるのではないかと。思いますね。
あーん、どんどんブツ切れになって行くうー。と思いますね。
だって、一気に言えばいいのに、途中で止めて相手の反応をチラッと見た上で、「と思います」をくっつけるんだから、臆病ですよねー。
協調型の性格の人は、もしかしたらこの言い方をよく使っているかと。いうことが想像できますね、ハイ。

2004/9/8




◆ことばの話1876「針が混入」

夜勤でニュースの準備をしていたら、Oデスクが質問に来ました。
「風速計が壊れたというニュースなんですけど、『風をはかる』と言う時の『はかる』は『計』でしょうか?それとも『測』でしょうか?」
なるほど、難しい。Oデスクが言うには、
「最近はインターネットのホームページにも載せないといけないので、漢字もおろそかにできないんですよねー」
って、今まではおろそかにしていたの?そういうわけでもないかもしれないけど・・・。
「こういう時は、『新聞用語集』を見ると、漢字の使い分けが載ってるんだよね。」
と『新聞用語集』を開いてみると、載っていました!しかも6つもの「はかる」の使い分けが!それによると、
「計る」=(計算、計画)国の将来を計る、時間を計る、タイミングを計る、計り知れない恩恵、まんまと計られる、利益を計る
「測る」=(測定、測量、推測)距離を測る、血圧を測る、真意を測る、人物の才能を測る、水深を測る、政治動向を測る
「図る」=(意図、企図)解決を図る、合理化を図る、詐欺を図る、自殺を図る、図らずも、便宜を図る
「量る」=(軽量、推量)推し量る、量り売り、目方を量る、容積を量る
「諮る」=(諮問)審議会に諮る
「謀る」=(謀議、謀略)悪事を謀る、暗殺を謀る

なーるーほ−どー。これは勉強になりました。用例がわかりやすいですね、シンプルで。
これを読んで、
「風は、風速計の『計』でいいんじゃない?」
と答えたのですが、今もう一度読み直してみると、「測定」は「測る」じゃないか?という気がしてきました。「風速計」の「計」は「計る」ではなく「計ったものを指し示すもの」というような意味かなあ。どうなんでしょうかね。

2004/9/8