◆ことばの話1810「日比谷線の車内案内」


東京の地下鉄・日比谷線に乗る機会がありました。その際の車内アナウンスの女性のテープの声が気になりました。色っぽいというか、媚びてるような感じ。
「足元にご注意ください」
の語尾の「足元」も、「上野方面」の「上野」も、「乗り換え」1音目が妙に高く2音目が上がり切らず甘えた感じ。しかも短調な響き、つまり哀愁を帯びていて、なんとも微妙に上がり切らない感があるのです。
これが、職業婦人にあるまじき・・・って一体私は何歳?いやいや、もとい(「もとい」も古いが)なにか人命を預かる乗客輸送プロとしては、こういうしゃべり方はこびているような感じがして、イヤーな感じがするのです。何を言ってるのかよくわからない独特のフシがついた車掌のおじさんのしゃべり方もイヤですが、まだマシです。
この女性車内案内のしゃべり方、実はうちのアナウンス部の東京出身2年目の女性アナウンサーも、同じようなしゃべり方をする傾向があります。とうことは、東京の若い女性のしゃべり方として広がっている?のかもしれませんね。
また、東京に行ったときには、ほかの電車でも注意して聞いてみます。
また、その女性車掌さんは「右側」のアクセントが、
「みぎがわ(LHHH)」と「中高アクセント」
でした。NHKアクセント辞典では「右側」は、
「みぎがわ(LHHH)」という「平板アクセント」
しか載っていませんでした。

2004/7/14



◆ことばの話1809「ヘドロのアクセント」


インターネットの掲示板「ことば会議室」で、Yeemarさんが疑問を呈していました。それによると、
「6月29日のNHK『プロジェクトX〜挑戦者たち〜・新羽田空港 底なし沼に建設せよ』で何度も登場した『へどろ』という単語をナレーターの田口トモロヲさんは、
『ヘ'ドロ(HLL)』
と『頭高アクセント』で発音していたが、辞書を見ると『新明解日本語アクセント辞典』、『日本語発音アクセント辞典』(初版)、『新明解国語辞典』(第2版)、『集英社国語辞典』(第2版)、『大辞林』(初版)、『日本国語大辞典』(第2版)のいずれも、
『ヘドロ(LHH)』
と『平板アクセント』としていた。」

ということなのです。さらに、Yeemarさんはこう続けています。

「頭高アクセントで『ヘドロ』という名の人形劇の登場人物はいました。NHK人形劇「プリンプリン物語」(1979〜1982)で怪人ランカーの秘書をしていた女性の名が「ヘ'ドロ」。なお、主人公は「プリ'ンプリン」という女の子でしたが、彼女の恋人を自称する怪人(声・滝口順平)だけは、この主人公を「プリンプリ'ン」と呼んでいました。」

「プリンプリン物語」、たしかにありました!でも登場人物までは覚えていないなあ・・・。これに対して私も思うところを書きました。
「子供の頃(1970年代前半)、『公害』真っ盛りでブーム(?)でした。その頃、大阪府堺市の小学生だった私、および教師・親は、頭高アクセントの『ヘドロ(HLL)』と言っておりました。だから『ジョニーへの伝言』『五番街のマリーへ』を歌った『ペドロ&カプリシャス』のイメージは、『ドロドロ』でした。ついでに『五番街』というのは、『阪急三番街』の隣ぐらいにあると思っていました。
平板アクセントで『ヘドロ(LHH)』と言うようになったのは、アナウンサーになってから(1984年以降)です。
後輩の埼玉県出身のMアナウンサー(1969年生まれ)に聞いたところ、
『子供の頃は頭高アクセントで「ヘドロ(HLL)」と言っていた。平板で言うようになったのはアナウンサーになってから。へドロンガーという怪獣がいましたよね』
とのこと。ヘドロンガーは知りませんが、ヘドラーという怪獣はいました。
西宮出身のOアナウンサー(1973年生まれ)も、『ヘドロは頭高アクセントですねー』ということでした。
ヘドロを『新明解国語辞典』で引いてみると、その冒頭に『もと、神奈川、名古屋、奈良方言。東北地方の放言「ひどろ(=溝(ドブ)や、青色に濁った水たまり)と同源。」とあります。神奈川・名古屋・奈良方言って、随分地域にばらつきがあるし、奈良あたりだと頭高アクセントのような気もします。
『屁泥』と漢字では書かないんでしょうかね?』

その後ネット検索してみたら、「2ちゃんねる」でも、このときの「プロジェクトX」での「ヘドロ」のアクセントについて触れたものがありました。
*「おお〜、トモロヲさん、ヘドロの発音おかしいぞ〜。『へ』にアクセント置かなくていいだろ別に。怪獣みたい。」
*「ヘドロってのは、もともと『腐った泥』という方言(茨城だと思うがうろ覚え)が一般名詞になったものなので、発音はその地域でそれなりにそういうもんだと・・・ 個人的には関東では『へドロ(HLL)』、関西中部では『ヘドロ(LHH)』絶対音感がないから自信が無い・・・・・・・・・ 」(Lは低く、Hは高く発音。道浦がつけました。)

また、北海道出身のSアナウンサーは、「ヘドロ(LKHH)」と「平板アクセント」、東京出身のUアナウンサーは、
「私は『頭高アクセント』の『ヘドロ(HLL)』です。そう言えば『ナオミの夢』を歌っていたのは、『ヘドロなんチャラ』って言いませんでしたっけ?」

とのこと。調べてみると「ナオミの夢」を歌っていたのは「ヘドバ&ダビデ」でした。「ヘドロ」ではありません。でも「ペドロ&カプリシャス」と言い、当時は「ヘドロ」っぽい名前のグループが多かったのでしょうか?
「ヘドロ」のアクセント、「頭高で言う!」という方、情報をお待ちしていますーす。

2004/7/14




◆ことばの話1808「あしげに言う」


参議院選挙に大阪選挙区から立候補した、執行猶予中の元・衆議院議員・辻元清美さん。その応援演説に駆けつけた、田中康夫・長野県知事が、7月9日(金)に堺市内で行なった演説の中で、自民党の安倍晋三幹事長が辻元さんのことを取り上げて「呼び捨て」にしたことに触れて、
「辻元のことを安倍さんが『あしげに』言った」
と何度も繰り返して言っていたのを、現地で生で聞いたのですが、それも言うなら、
「あしざまに言った」
ではないのでしょうか?作家として、
「なにげに」「さりげに」
みたいな「若者ことば感覚」で「あしざまに」を「あしげに」と言ったのでしょうか?
おそらく「足蹴にする」と「悪しざまに言う」が、ごっちゃになってしまったのでしょうね、おそらく。それに「なにげに」「さりげに」感覚がブレンドされて「新語」を生み出してしまったと思われます。
しかし、もしそうだとしたら、恥ずかしいよなあ・・・。「痴性」を感じちゃいますねえ。「なんとなく、おバカさん」
ですし、自分の作品のタイトルも、
「なにげにクリスタル」
というふうに変えるべきでしょう。そんなことしたら、ファン以外からも、
「足蹴に」
されるかもしれませんが、ね。
田中知事は、辻元さんの応援には長野県から「あしげに」・・・いや「足しげく」通ってくれたそうです。

2004/7/10



◆ことばの話1807「でぶしょう」

電車に乗った時、若い男の子(二十歳前後)の5,6人のグループが向き合いで乗っていて、大きな声でしゃべっていました。聞くとはなしにその話を聞いていると、こんな会話が。
「おれ、デブショウとちゃうから、太らへんと思うねん。」
「おれも絶対、いくら食べても太らへんで」

およ?もしかして彼らの間で、「デブショウ」というのは、
「デブ症」
というようなこと、つまり、
「太りやすい体質」
のことを指しているのではないか?と思ったのです。もちろん本来の「でぶしょう」は、
「出不精」
と書いて、外出したり何かの会合などに出るのをおっくうがって、あまりそういう場に出て行かない、出たがらない性格のことを言うのですが、その言葉の音を聞いて「デ・ブショウ」ではなく「デブ・ショウ」と思ってしまったのではないでしょうか。
でもたしかに、「出不精」だと「デブ症」になるよなあ・・・・と、どこかで一脈通じているような気が、しないでもないですねえ。
「デブ症」はGOOGLE検索で、534件ありました。(7月13日)

2004/7/13

(追記)

7月16日の読売新聞・国際面にこんな見出しが。
「出無精な国務長官?」
アメリカのパウエル国務長官の外遊が、過去30年の歴代長官の中でもっとも少ないことが判ったという記事でした。どうりで、パウエルさん、ちょっと肉付きがよさそう・・・。
ちなみに「デブショウ」の漢字表記は「出無精」と「出不精」、2種類あるんですね。
GOOGLE検索(7月16日)では、
「出無精」=  2600件
「出不精」=2万3000件

とネット上では「出不精」の方が10倍近く使われています。
「出無精」の方が、「出不精」でした。

2004/7/16



◆ことばの話1806「メント」

日本人って、外来語を取り入れては省略して、言いやすいように直してしまいますよね。
まあ、日本限った事ではないかもしれませんが。
で、気づいたのが、英語の語尾(?)にあって名詞化するのに使われている「メント」。これって、日本語になると気に省略されているものが、けっこうあると思いませんか?
たとえば、
「アパートメント」→「アパート」
「デパートメント・ストア」→「デパート」
「アセスメント」→「アセス」
「エンタテインメント」→「エンタ」または「エンタメ」。

でも「ガバメント」は「ガバ」とは言わないですね。言うヤツぁ「カバ」、いや「バカ」。前半(メントの前)が2文字だと短すぎるので省略できないけど、3文字以上だと「メント」を省略しているのかな。
いずれにせよ、「メント」は嫌われて切り捨てられています。「面と」向かって言えないからかな?
ラテン語かギリシャ語か忘れたけど、『仮面ライダー』で死神博士を演じた東大卒の俳優でスペインに傾倒した天本英世さんも書いていた、
「死を思え(死について考えよ)」
という哲学的な言葉、原語では、
「メメント・モリ」
でしたね。ミス・チルの曲にも同名のものがあったと思いますが。これなんか「メント」を省略したら、
「メ・モリ」
でフランス料理店の名前みたいになっちゃうなあ・・・。そう言えば、
「愛のメモリー」
というのもありました。松崎しげる。同世代の方だけ、「あった、あった」と言っていただければ、満足です・・・。

2004/7/10