◆ことばの話1765「主要国首脳会議(サミット)」


アメリカジョージア州のシーアイランドで、第30回サミットが始まりました。その新聞記事を見ると、サミットのことを、
「主要国首脳会議」
と書いてあります。昔は、
「先進国首脳会議」
だったと思うのですが、いつの間に・・・。もちろん、ソ連の崩壊によって冷戦構造が崩れてから、「G7」も「G7+1」とか「G8」とかに変わって、今までの呼び名も変わってきたことがありますが、その流れなんでしょう。
ちょっと考えてみました。「先進国」と言わなくなったのは「先進」が意味を持たなくなったからなのでしょうか。というのも、これまでは同じ価値基準、同じものさし、同じベクトルの方向で、先か後か(先進か後進か、あるいは発展途上か)という評価で名づけられていたのですが、冷戦の終結は、そういった価値基準・ものさしが必ずしも一つではないということも明らかにしたのです。
ということは、もしかしてベクトルの方向が一直線ではなく、400メートル・トラックのような周回コースだとしたら、一番後ろの国と一番前を走っている国は、結局同じ位置にいるのではないか。何週走るかに価値を見出すのであれば、早く走る国が良いのでしょうが、どの位置にいるかに価値があるとすれば、結局、早いか遅いかは関係ないことになりませんか。一番先頭だと思ったら一番後ろだった。ということは果たしてこのレースにゴールはあるのか?止まったところがゴールになるのか?
うーん、大変、哲学的な思索に朝からふけってしまって、あやうくニュースの本番に遅れるところでした。
Google検索(6月12日)してみると、
「先進国首脳会議」=1万3800件
「主要国首脳会議」=1万6000件

と、「主要国」の方が、リードしています。この過渡期?に使われたのではないかと思われる「主要先進国首脳会議」というのもついでに検索してみると、
「主要先進国首脳会議」=5730件
でした。

2004/6/12
(追記)

2009年2月16日の「情報ライブミヤネ屋」で、イタリアで開かれた「G7」の「財務相・中央銀行総裁会議」で、中川財務相が記者会見で“泥酔?”状態だったというニュースをお伝えしました。その際、原稿は、
「7か国財務大臣・中央銀行総裁会議」
として「先進」を付けなかったのですが、字幕スーパーは。
「先進7か国財務大臣・中央銀行総裁会議」
「先進」を付けてしまいました。
上にも書いたのですが、数年前から(おそらくロシアがG7に加わって実質G8になった頃からか)、「G7」の説明の日本語から「先進」は消えています。2009年版の『現代用語の基礎知識』でも、
「7カ国財務相・中央銀行総裁会議」(『現代用語』は「カ」はカタカナ)
と記されています。ちなみに「日本語訳」なので、昔は「財務相〜会議」ではなく「蔵相〜会議」でした。(2001年1月に省庁の名称が変更されてことに伴って、これも変更されたのです。)
「主要国」もいつの間にか外れていたのですね・・・。
原稿からは「先進」を外してOアナウンサーが読んでくれました。スーパーは、正午頃にチェックした時には「先進」が入ってなかったので、そのままにしておいたのですが、なぜかOAでは「先進」が入ってしまってました・・・。最終チェックが出来ませんでした。ちなみに「サミット」の日本語名でも「先進」は、いまや省かれています。また、「G7」の「G」は「Group(グループ)」の「G」です。

2009/2/16


◆ことばの話1764「強雨」

「あさイチ!」で天気予報を担当している気象予報士の米畑詩子さん。もう朝の番組の担当も5年くらい。すっかりおなじみです。ニュース担当の脇浜アナと私は、5時半をまたぐ時間の天気予報では外に出て米畑さんと一緒にお天気をお伝えするんですが、先日、台風4号の影響でお天気が崩れた時のこと。横で米畑さんが、2度こう言いました。
「キョーウにはご注意ください。」
???キョーウって何?・・・うーん、おそらくは、
「強雨」
なんでしょうが、耳慣れない。普通はこう言うときには、
「強い雨にはご注意ください。」
というふうに言い換えるよな。そう思って本番後に、
「キョーウって何?『強い雨』の専門用語?」
と米畑さんに聞いたところ、
「そうです。あ、判りにくかったですかね。すみません、次から気をつけます。」
とのことでした。
天気予報の用語には、「強雨」のほかにも「雲域(くもいき)」など、字で見ればすぐに意味がわかるんだけれど、耳で聞くと意外とわかりにくい言葉がけっこうありますから、原稿を読む時には、言い換えをするなど、気をつけなければなりませんね。

2004/6/12


◆ことばの話1763「まじりあう、まざりあう」

6月9日、お昼のニュース担当のSアナウンサーから内線電話です。
「道浦さん、『まじりあう』と『まざりあう』は、どっちが正しいんでしょうか?」
「どういう文脈?」
「和歌山県の那智勝浦町にゆかし潟という『汽水湖』があるんですが、そこでワタリガニが取れるという話題なんです。その『汽水湖』の説明で『海水と淡水がまじりあう』という原稿なんですけど、『まじりあう』でいいんでしょうか?」
「うーん、なんとなく『まざりあう』の方が自然な感じがするなあ。それと『まざりあう』はAとBの物質が対等・フィフティ・フィフティ(50:50)で混ざっている感じだけど、『まじりあう』はAという物質の中にBという物質が入っていく感じなので、7:3くらいの混ざり方という気がするねえ。」

と言っているところにHアナ登場。
「ぼくは『まざりあう』は自然とそうなる感じで、一方の『まじりあう』は、その物体に『まざろう』とい意志があるように感じるなあ。」
うだうだ言っていてもなんなので、辞書を引いてみました。『日本国語大辞典』。

「まざりあう」=互いにいりまじる。(用例)*故旧忘れ得べき(1935-36)<高見順>二「いろいろまざり合った臭気がムンムンと立ち籠めてゐる様を」*巷談本牧亭(1964)<安藤鶴夫>会いろいろ「終わると、テープの拍手と、第一生命ホールの拍手がまたまざり合った」*影法師(1968)<遠藤周作>「貴方を信じたいという欲望が、裏切られたという感情にまざりあい」

「まじりあう」=互いに入りまじる。*両足院本山谷抄(1500頃)九「人の声と車の声とがましりやうて」*桐畑(1920)<里見ク>二つの心・八「善良な、情けに脆い性分と<略>憎々しいほど気強い気性とが、へんな具合に混(マジ)り合(ア)って」*面影(1969)<芝木好子>六「彼の感情とまじり合わないばかりか、心底になにかを溜めている女なのか計れなかった」

ということで、どちらも意味の解説はまったく同じ(「いり」が漢字「入り」かひらがな「いり」かの違いだけ)ですが、どうやら「まじりあう」の方が用例が古いですね。ということは、もともとは「まじりあう」だったのが、その後に「まざりあう」という形も出てきて定着してきたということのようです。どちらも間違いではない。しかし今回は、伝統を重んじて、
「まじりあう」
を使ってみました。

2004/6/11

◆ことばの話1762「遊戯具・遊器具」

6月6日、奈良のあやめ池遊園地が閉園になりました。その遊園地で不要になった乗り物や動物を買い取る仕事をしている人を特集したニュースのナレーションを、6月7日の「ニューススクランブル」で読みました。
その放送を見ていて、社長さんが話した言葉では、
「ユウキグ」
と言っているように聞こえたのに、字幕スーパーでのフォローは、
「遊戯具」
と出ていたのに気づきました。そこでGOOGLEで検索すると(6月7日「日本語のページ」)、
「遊戯具」=  9860件
「遊器具」=1万7700件

でした。ダブルスコアで「遊器具」の方が多い。その「遊器具」は、公園などに設置されている「すべり台」や「ジャングルジム」といったものを指すようです。
一方の「遊戯具」は、大正10年の法律に「運動遊戯具」という分類があったようですが、全体的には「遊器具」と同じく「ジャングルジム」や「すべり台」を指しているようですねえ。今度は「メーカー」を付けて検索してみました。(6月7日)
「遊戯具メーカー」=15件
「遊器具メーカー」= 4件

「遊戯具」の方にはパチンコ台のメーカーも入っていました。どちらの呼び方もあるようですが、音が似ている上に意味上の区別もよくわからないだけに、難しいですね。

2004/6/11


◆ことばの話1761「私人間」

机の引き出しを整理していたら、いろんなメモが出てきました。もう捨てようかな、と思ったのですが、ちょっとおもしろそうなのもあったので、ここにメモしておきます。日付の判るものと判らないものがありますが。

*2004年3月17日、日本テレビ「ニュースダッシュ」金子キャスター
「わたくしにんげ・・・・しじんかんの」
と読んだ。原稿にはきっと、
「私人間」
と書かれていたと思う。金子君は「いい人間」だと思う。
ちなみに、この日のニュースで「萬田久子」さんが出てきたが、その際の苗字の漢字の字体は、新聞は、
「万田」=日経
「萬田」=毎日、朝日、読売、産経

テレビでは、
「万田」=TBS、テレビ朝日、日本テレビ
「萬田」=フジテレビ

でした。
「クローン胚」→「ウーロンハイ」に聞こえた。少し酔っていたのかもしれません・・・。
*東京都墨田区の、国技館(両国)があるところの地名は、
「横網」
これって、つい、
「よこづな」
と読んでしまいそうになるが、実はよく見ると
「よこあみ」。
*2004年5月6日の日経新聞・夕刊。警察庁などで作る自動車盗難防止に関する官民合同プロジェクトチームは、去年(2003年)1年間に千台以上盗難被害のあった15車種を公表した。それによると、一番盗難率が高いのはトヨタの、
「アリスト」
で、1000台に10、1台が盗難にあっているという。見出しは、
「『盗難率』のもっとも高い車は『アリスト』100台に1台」
その記事に右横が、
「8500万年前のアリの化石」
「アリ」つながり。整理部のデスクは、ウケを狙ったのか?
うーん、どうでしょう?とりあえず、この新聞記事はもう捨てます。机が少し片付きました。

2004/6/10
 
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