◆ことばの話1760「ケミストリー」

音楽デュオ「CHEMISTRY」(ケミストリー)の堂珍嘉邦さん(25)が元タレントの森田敦子さん(25)と結婚したという記事が6月9日の朝刊各紙に載りました。
ふだんケミストリーってほとんど聞いたことがなくて、名前を知っていても、じゃあどんな曲歌っているの?と聞かれてもわからない程度の知識しかないのですが、一応このグループの名前は知っていました。でもなぜ「ケミストリー」なんて名前なんだろう?と疑問に思っていました。だって「ケミストリー」って「化学」という意味でしょ?なんで音楽のバンドが「化学」なんだろうとずっと心の隅で思っていました。
ところが先日ある本を読んでいたら、
「ケミストリーには『相性』の意味がある」
と出ていたのを見て、アッと思ったのです。そういうことだったのか。
英語に強い脇浜アナウンサーに聞くと、
「たしかによく使いますね。Chemistryは相性って言うか、ウマが合うとか怪しい関係とか、そんなときに使いますね。」
へーへーへー。
そう思っていたら、今回の堂珍君の結婚のニュース。おめでとう!敦子さんとは「ケミストリー」が良かったんだね。
この話をもう少し若くてケミストリーの音楽を知っている報道のS君に言うと、
「でも、お互い知らない同士がデュオを組んで『化学反応』を起こせればいいと思って『ケミストリー』と名づけた、って言っているのを、前に聞きましたよ。」
とのこと。なあーんだ。でも「ケミストリー」の意味に広がりを感じました。今後「ケミストリー」の曲、聴くようになるかも。ハーモニー、上手だものね


2004/6/9


◆ことばの話1759「前と元2」

在職当時に有権者に線香を贈ったとして公職選挙法違反容疑(寄付行為の禁止)で書類送検されていた松浪健四郎氏について、大阪地検は6月9日、「容疑を認め、反省している」として起訴猶予処分にしました。
このニュースを報じた新聞各紙(6月9日夕刊)の松浪健四郎氏の肩書きが微妙に違います。
(読売)前衆院議員
(朝日)前衆院議員
(毎日)元衆院議員
(産経)元衆院議員
(日経)元衆院議員

ということで、読売と朝日は「前」、毎日・産経・日経は「元」だったのです。MBSは「元」で夕方のニュース(VOICE)でやっていました。
大きく言うと、「元」の範疇に「前」が含まれるのでしょうが、以前これと同じようなこと(大阪府知事選挙で太田房江さんの肩書きが「前」通産省審議官か「元」通産省審議官について)を書いた時(2000年1月・ことばの話65「前と元」)は、読売と日経が「前」で、朝日・毎日・産経が「元」でした。朝日と日経が、4年前と違う表記になっています。
また、去年8月の田中真紀子さんの肩書き(外務大臣、外相)に関しては、「前」は朝日と毎日、「元」は読売、・産経・日経は「前」「元」両方使っています。NNN系列では「前」を使うことになっています。(ことば事情1438「田中前外相か元外相か」、ことば事情577「田中前外相」)しかしこれは「外相」についてです。「衆議院議員」という肩書きに関しては、NNN系列では「元」を使うことになっています。NHKは「前」でした。
また、去年10月の「辻元清美」さんに対する肩書きについて(ことば事情1439「辻元元議員か前議員か」)は、読売・朝日・毎日・産経が「前」、日経だけが「元」を使っていました。NNNは「元」で統一。MBSは「前」でした。
その「ことば事情1439」の最後に書いたように、
「やめたポジションが『ひとつだけ』の場合(例・総理大臣、監督委員長など)は『前』、いくつもポストがあるような場合(例・議員、委員、選手)は『元』を使うと以前聞いた気がします。それで言うと『衆議院議員』は何百も議席があるのだから、『元』と表す気がしますが、小選挙区の場合は、『その選挙区においては、議席は一つ』なので、『前』を使ってもよいのか。また、全国ニュースとローカルニュースでは使い分けるべきなのかどうか?など、いろいろ問題が考えられますが、どうもはっきりとした答えは出ていないようなのです。」
と、ここから先に話が進んでいないようです。結局、読売テレビでは、
「松浪健四郎・衆議院議員」
で放送しました。


2004/6/9



◆ことばの話1758「メアドとメルアド」
消費者金融のA社のコマーシャルで、電話受付嬢がお客の若い男性に、
「なんでもお答えしますよ」
と答えたのに対して、調子に乗った男が、
「じゃあ、メルアドは?」
と聞くシーンがあります。「メルアド」は「メールアドレス」の省略形ですね。昔なら、
「電話番号は?」
と聞くシーンですが、今はメールなのです。「メールアドレス」については、「ことばの話120・コピペ」の最後の方に、
「メアド」
と略する傾向を記しましたが、今は、「メアド」「メルアド」、使われている状況はどうなのでしょうか?Googleの検索したところ(6月2日)、
「メルアド」=11万4000件
「メアド」=  7万0900件

と「メルアド」が優勢ですが、「メアド」も結構、がんばってます。「メアド」という三文字の方が関西、「メルアド」の4文字が関東に多いのではないでしょうか?理由?特にありません、直感ですが。1週間経った6月9日、今日も検索したら、
「メルアド」=11万5000件
「メアド」=  8万0100件

と、「メアド」が増えていました。この略語に「関西」「関東」を加えて検索すると、
「メルアド・関東」=1万0900件
「メルアド・関西」=1万1800件
「メアド・関東」= 1万0900件
「メアド・関西」= 1万0900件

と、驚いたことに、ほとんどピッタリ同じ数字の件数が出てきました。なんでやろか?何か、検索条件を間違えたかな?

2004/6/9



◆ことばの話1757「お客様」

会社の代表ダイヤルにかかってきた電話。「聞いたことのない会社名の聞いたことのない人」からの電話です。受付の女性が取り次ぐかどうか迷って「どうしましょうか?」と聞いてきます。おそらく取らなくてもいい電話なんでしょうけど、「一応、つないでくれますか」と言ってつないでもらいました。
「あのう、道浦様でしょうか。」
と、女性の声です。
「そうですが・・・」
「あ、○○社の△△と申します。東京の会社なんですけど・・・・」
「ご用件はなんでしょうか?営業の電話ですか?それなら、結構ですが。」
「あ、あの『あさイチ!』のホームページを拝見してお電話差し上げたんですけどね。」

私の出演番組のホームページを見てくれたのなら、仕事関係の電話かもしれないな。でも、「営業の電話ですか?」という問いには答えてないな。どうなんだろう?しかし次の瞬間、バケの皮がはがれました。
「あの当社はお客様の・・・・」
「あ、今『お客様』と言いましたね。ということは私に何かを売ろうとしている、つまり営業の電話ですね。それなら、さっきも言ったように結構です間に合ってます興味ありません。」
「いえ、そうではなくて・・・」
「そうではなくてって、今『お客様』と言ったじゃないですか。そうではないというのなら私には何も売らないのに電話してきたんですか?じゃあ、『お客様』と言う呼び方はおかしい。そもそもあなたがこれから何をしゃべったところで、私はそのものが何であっても、100%買う意思はありませんから!」
「100%ですか・・・!」

と驚いた声が、受話器から響きます。
「ええ、100%。いや、120%かな。断言できます。本人が言っているのだから間違いない。兎に角、買う意思はないのですから、ここで私を相手にしゃべっているのは時間の無駄ですよ。あなたにとっても時間の無駄だし私にとっても時間の無駄、お互いに時間の無駄です。うちのアナウンス部にもよくその手の会社からかかってくるんですが、迷惑してるんですよ。うちはまったく、そういったことに関心はありませんから、今後はかけないでくれませんか。その間にほかのお客さんに電話した方がたとえ0,1%でも可能性があるかもしれない。どうです?まだ電話続けますか?もう切っていいですよね?」
「イヤ、ソノ、ムニャムニャ・・・」

と言っているので、受話器をガチャっと置きました。私の周りの席の人は、みんなクスクス笑っています。前の席のアルバイトのIさんが、
「その○○社、不動産販売の会社でした。」
電話の話の内容を聞いてすぐさまネットで検索してくれたようです。ほれ、みたことか。おそらく、「資産運用に東京にワンルームマンションを買いませんか、絶対に損はしません」・・・・などと言う手合いでしょう。絶対に損はしないのなら、おのれが買え。
後ろの席のS君が、
「道浦さん、この前は墓地の販売の電話に『ボチボチ考えます』って言って切ったんですよね。」
「そうそう。けっこうこの手の電話切るの、得意なんだよね。以前、あんまり人の話を聞かないで一方的にしゃべる男からかかってきたことがあって、『人の話を聞かないのなら、切りますよ』と言って一方的に切ったら、もう一回かかってきて『なんで勝手に切るんですか!』って怒鳴ってたことがあったけど。そもそも電話は、相手の時間を勝手に占有する大変失礼なものだという意識をもっと持って欲しいよね。」

このホームページを読んだ人の中には、私に不動産やお墓の営業の電話をかけようなんて不届きな人は、きっといないでしょうね。せっかく「あさイチ!」のホームページまで読んだのなら、この「平成ことば事情」も読んでから、電話するかどうか考えたらよかったのにねえ・・・。

2004/6/9



◆ことばの話1756「ハンカチのアクセント」
6月7日、お昼のニュースを見ていたらテレビ朝日の山口アナウンサーが「ハンカチ」を
「ハンカチ」(HLLL)
「頭高アクセント」で読んでいました。それを聞いて、いくらなんでも頭高アクセントのハンカチはないんじゃないの?と思ってアクセント辞典を引いてみると、平板アクセントと中高アクセントの「ハンカチ」しか載っていませんでした。ほうら、頭高はないじゃない。でも、英語でハンカチーフ「handkerchief」と言う時には、「ハ」にアクセントがきて、
「ハンカチーフ(HLLLLL)」
というふうに、日本語で言う時の「頭高アクセント」と同じようになりますね。ということは、山口アナウンサーは英語的な発音で「ハンカチ」を読んだのか?でも「ハンカチ」って、もう日本語でしょ?外来語で定着してるし。いや、もしかしたら、最近あまりハンカチという言葉が使われなくなって、「新しい言葉」としての感覚で外国語として読んだ、という可能性も、なくはない・・・ないか。
もう一つ考えたのは、同じように4文字で似た「音」を持つ言葉で、
「トンカチ(HLLL)」
があります。「うすらトンカチ」というように使います。これだと「ハンカチ」と1字違いで、アクセントは「頭高アクセント」です。ということは、この「トンカチ」のアクセントにつられて「ハンカチ」も頭高アクセントで読んで』しまったという可能性も、なきにしもあらず。
でも、最終項目だったのでついあせってアクセントが狂ってしまった、というう可能性が、一番高いのではないでしょうかね。

2004/6/7


(追記)
NHK放送文化研究所の塩田さんからメールをいただきました。「ハンカチ」のアクセントの「NHK日本語発音アクセント辞典」での変遷についてです。
('はアクセントの下がり目で、何もないものは平板です。)
1943年版 ハンカチ (ハ'ンケチ)
1951年版 ハンカチ ハ'ンカチ ハンケチ ハ'ンケチ
1966年版 ハンカチ ハ'ンカチ
1985年版 ハンカチ ハ'ンカチ
1998年版 ハンカチ ハンカ'チ
なので、1985年版までは頭高型も認めていたことになります。

ということでした。つまり、古いアクセントを使った可能性もあるということですね。、また、
「秋永一枝編『新明解アクセント辞典』では、『ハンカチ ハンカ'チ ハ'ンカチ』
となっていて、現在でも頭高アクセントを認めている。」

という情報もくださいました。どうもありがとうございました。でも・・・私が頭高の「ハンカチ」を耳にしたことはほとんどない、ということは変わりません。



2004/6/10
 
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