◆ことばの話1750「サーファー」
「サーファー」
と言えば、「サーフィンをする人」のこと「波乗りをする人」のことですよね。最近(?)は、インターネットでいろんなサイトを次々と乗り継いで連続して見る人のことを、
「ネットサーファー」
呼んだりしますが。
今朝(6月4日)の日経新聞の朝刊に、波乗りの「サーファー」とは違う「サーファー」のことが載っていました。
インターネットの会社「ヤフー」が、2005年度の新卒採用を、2004年度の5倍に当たる150人に増やすという記事だったのですが、その中で、
「推薦サイトを探す『サーファー』と呼ぶ職種も募集する」
と書いてありました。おやまあ、ネットサーフィンする人もやっぱり「サーファー」なんですね。しかも「職種」として存在するとは知りませんでした。波乗りの「サーファー」もプロの選手もいることですから、ネットサーフィンのプロがいてもおかしくないといえば、おかしくないのですがねえ。
調べてみると、ヤフーは、1997年5月の時点で10人、1999年7月の時点では、10数人の「サーファー」を設けて、ホームページのカテゴライズ(種別分け作業)を行っていたようです。このほか「サーファー」はサイトの登録を審査したりメンテナンスも行うようです。波乗りのサーファーより、忙しそうですね。それにヤフーに登録するかどうかの審査をするということ、野球の審判のように大きな権限を持っていると言えるでしょう。それだけ「プロの選別の眼」が必要ですからね。そういう意味では、たしかに「サーファー」は「専門職」と言えるのではないでしょうか。このサーファーは、波乗りと違って日に焼けません。その意味では一種の、
「陸(おか)サーファー」
ですね。



2004/6/4


◆ことばの話1749「大体とおよそ」
「どっちの料理ショー」の取材から帰ってきたSアナウンサー(久々、登場!)が、悩んだ顔をしてこんな質問をしてきました。
「道浦さん、『大体』と『およそ』の使い分けはどうすればいいでしょうか?」
「え?『大体』と『おおよそ』?」

思わず、「大体、一緒」と答えかけたのをぐっと抑えて、
「どういう状況での話?」
と聞き返すと、
「この前、アスパラガスの取材でロケに行ったんです。アスパラガスはものすごく成長が早くて、早朝からその日の午後までのたった数時間で目に見えて伸びるんで、その様子を伝えるのに、アスパラガスの横にものさしを立てて、朝の段階での丈(たけ)を計ったんです。そのコメントでボクは、『大体20センチぐらいです』と言ったんですが、これって、どうなんでしょうか?」
「そりゃ、あかんやろ。わざわざ、ものさしを立てて計るんだから、キッチリ計って欲しいよね。それなのに、『大体』というのはキッチリとは計ってないということじゃない。『およそ』だと、『キッチリ計ったけど、小数点以下の細かい数字は必要ないから、そこは切り捨てて(あるいは四捨五入して)『およそ20センチ』と言えるわけで、もう基本的な姿勢が全然違うね。』

と答えると、Sアナウンサーは、しょげること、しょげること。
「そうですかあ・・・・いや、その部分の『大体』というコメントだけでもカットしてくれって、ディレクターに頼んだんですけどねえ・・・切ってくれなくって・・・」
などと未練がましいことをボソボソ言っていました。
ま、でも次からはちゃんと「大体」と「およそ」の区別を付けてくれると期待しましょう!
あ、関係ありませんが、Sアナウンサーの身長は「およそ163センチ」です。


2004/6/3
(追記)
ネットに載せる前に、Sアナ本人に身長について確認すると、
「できましたら、そこのところは『およそ』ではなく、『大体』にしておいてくれませんか。」
という要望がありましたので、最後の1行は、
「大体163センチ」
と訂正させていただきます。(笑)
2004/6/4


◆ことばの話1748「丸一日ぶり」

6月2日の午前7時過ぎ、丸太を積んで国道を走っていたトラックが事故を起こし、積荷の丸太が、真下を走るJR紀勢本線の線路に落下。そこに新快速電車が突っ込んで、乗客17人がケガをするという事故が起きました。
不通となっていた紀勢線は、翌6月3日の午前10時40分、事故発生から27時間ぶりに復旧しました。この復旧を伝えるニュースで、
「丸1日ぶり」
という表現が出ました。これについてSキャスターから「おかしくないか?」と指摘がありました。『NHKことばのハンドブック』によりますと、
「『ぶり』は時日がたって、その前の状態が再び起こるときに使われるのが普通である。」
として、例は「1か月ぶりの雨」が上げられていますが、
「ただし、『3時間』ぐらいの短い時間のときに使うのはおかしい。」
とあります。つまり「丸1日ぶり」というのも、「1日」という数字が短く感じるので、引っかかるのでしょう。そこで、これを、
「24時間ぶり」とか「27時間ぶり」
と、同じ内容でも見た目が多く見えるようにすれば「ぶり」は使えるのではないかと答えておきました。
結局その原稿は、本番では、
「丸1日かかって、復旧した」
と言い換えたとのことです。


2004/6/3



◆ことばの話1747「最愛と最悪」

(6月1日の「植村なおみのちょっとひと休み」にも出ていますが。)

問題の出来事は、昨日(5月31日)のニュース・スクランブル中に起こりました。
「ピカソの妻が相続していた作品を集めた展覧会が大阪南港で始まった」
というニュースを、いつものように淡々と読み始めたSキャスター。

「また"最悪の妻"ジャクリーヌをモデルにした作品も展示され…」

え?「サイアク」の妻?たしか、お昼のニュースでUアナウンサーが読んだ時の原稿は、
「最愛(サイアイ)の妻」
だったような。でもSキャスターがそんな間違いをするとは思えないから、俺の聞き違いだな・・・・でも、もしかしたら、Sキャスターだって人間だから間違うことも・・・・本人にメールを送って確認することにしました。
「もしかして、最悪の妻って読まなかった?」
しばらくして返ってきた返事は、
「よく見てますねー」
やっぱり!・・・・やっちゃったんだ。
続いてきたメールは、
「ピカソの奥さんは、最悪の妻だった、なんてことはないか・・・妻=悪いという意識が私の潜在意識にいつの間にかあったのでしょうか・・・。」
独身なのに、そんなことでは・・・辛いよ、ねえ。
そんなメールのやり取りをしていたら、小学1年生の息子が、「何がおもしろいの?」と聞くので、事情を説明し「さいあい」と「さいあく」はどこが違うか?と聞いたところ、一生懸命考えた末に、こう答えました。
「うーんと、『い』と『く』が違う!」
そうだよな、たしかにそうだよな、小学1年生にとっては、そうだよな。うんうん、いいよ、君はまだ、「最愛の妻」と「最悪の妻」の間に横たわる深い河のことなんて、知らなくてもサ。でもこの話、けっしてお母さんにしてはいけないよ。なんか、話がややこしくなりそうだからさ。



2004/6/3



◆ことばの話1746「ヂーゼル」
出張で山形に行ってきました。山形県に足を踏み入れたのは、高校時代の修学旅行で蔵王に行って以来のことです。
山形空港に降り立つと、なんとなくですが、時間の流れ方がゆったりしているように感じました。大阪の4分の1ぐらいのゆったりさです(道浦くらべ)。人が少なくて、あまり物や人が動いてないからかな。なんだ、日本でもこんなにゆったりしていても生きて行けるんだ、とさくらんぼの実がなり始めた木を見て思いました。なんか、ヨーロッパみたい。てなことを感じながら大阪に戻ってすぐに、こうやってまた原稿を書いているんだから、ゆったりできません・・・。
その山形空港から山形市内への空港バスの窓から見えた会社の看板に、こんなのがありました。

「(有)山形ヂーゼル」

「ディーゼル」ではなくて「ヂーゼル」です。たしかにそういうふうに発音される方は時々いらっしゃいますが、文字で「ヂ」と書いているのは、最近では珍しいのではないかなと思いました。Google検索では、
「ディーゼル」=28万9000件
「ヂーゼル」=   1710件

1000件以上あるとはいえ、「ヂーゼル」は、たった1710件。やはり圧倒的に「ディーゼル」(28万9000件)が使われていますね。「ヂーゼル」の割合は、わずか0,58%です。
もう一つ、逆のケース・・・と言っていいのでしょうか、NHKラジオを聞いていたら、あの映画「ラストサムライ」にも出演した、日本一の斬られ役俳優の福本清三さんが、
「キャメラ」
と言っていました。映画人は「カメラ」ではなく「キャメラ」と、原語に近い発音ですね。
原語に近い発音になるかどうかは、
(1)年齢(2)地方(3)職業
によって変わってくるのではないでしょうかね?どうでしょうか?



2004/6/3


(追記)
梅森浩一著『ボスと上司〜「プロ」サラリーパーソンVS「アマ」サラリーマン』(ちくま新書:2004、4)という本の中で、著者の梅森さんは、
「エヂュケート」
という言葉を使っています。「教育する」という意味の英語の「educate」です。普通は、
「エディケート」
と書くと思うのですが、この人はなぜか「デュ」ではなく「ヂ」を使っています。経歴を見ますと、著者の梅森さんは1958年生まれと私より3つ年上。青山学院大学を卒業後三井デュポン・フロロケミカルという会社に就職。これは「ヂュポン」ではなく「デュポン」と書いてあります。(著者経歴では。)その後も外資系の会社を渡り歩き。35歳の若さでケミカル銀行東京支店の人事部長を務めたそうです。
どこの地方の出身かは書いてないのですが、このぐらいの若さで、しかも外資系の企業を渡り歩いて英語もバッチリの人でも「エヂュケート」というような表記をするのかな、とちょっと不思議に思いました。

2004/6/7

(追記2)
今朝の「ズームイン!SUPER」で、辛坊キャスターが、リポビタンD発売42年、その量は、丸ビル2、7杯分という新聞記事を紹介していました。何を隠そう、この私も親父の代からの「リポD」愛飲者なのですが、このニュースで改めて気づきました。
「リポビタンD(デー)」
であって「D(ディー)」ではない!これはやはり42年前の「D」は「デー」だったのだなと思いました。ノルマンディー作戦のは「D−Day」、これも、
「デーデー」
と当時の人は呼んでいたのですかね?


2004/6/15

(追記3)
7月16日の「ズームイン!!SUPER」で読売新聞編集委員の橋本五郎さんが、「DVD」のことを、
「デー・ブイ・デー」
とおっしゃっていましたが、これはかなり違和感がありますねえ・・・。ねえ。

2004/7/16
 
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