◆ことばの話1685「竜巻とつむじ風」

4月25日、長野県松本市で少年サッカーの試合をしているグラウンドで突如竜巻が起こり、テントを巻き上げました。けが人などはなかったのですが、その竜巻のすさまじさを地元の人がビデオカメラに収めていたので、一部始終が放送されました。
当初「竜巻」と言っていたのが、その後のニュースでは「つむじ風」という表現になっていたのですが、この二つはどう違うのでしょうか?
今日(4月26日)見ていた「ニュースプラス1」に出ていた日本テレビの気象予報士の話によると、「竜巻」は上から降りてくる大規模なもので、「つむじ風」は地表付近の空気が暖まって巻き上がるもの。「竜巻」に比べて規模が小さく短時間で終わってしまうもの、という違いがあるそうです。アメリカの映画「ツイスター」に出てきたような大きなものは「竜巻」でしょうね。野茂投手の投法は「トルネード投法」。「竜巻投法」ということで、大規模に巻き上がるのですね。
これで思い出したのですが、赤胴鈴之介の「真空斬り」は「つむじ風」なんですね。え?「真空斬り」を知らない?そうですか。それでさらに思い出したのですが、「かまいたち」と言うのは、その「つむじ風」で出きるのでしょうかね?
『日本国語大辞典』によると、
「竜巻」=積乱雲の底から漏斗(ろうと)状に垂れ下がり、地上または海面に達する、雲を伴った激しい空気のうず巻き。風速は秒速100メートル以上にもなり、家屋・船・人畜などを空中に巻き上げて被害を与える。寒冷前線、台風、雷雨などに伴って起こることが多い。雲の底から下方に細長く垂れ下がったその形とその動きが架空の動物である龍に似ているところからいう。
架空の動物なのに、それに似ているというのもおもしろいですが、そういうことだったのですか。そして、「つむじ風」は・・・、
「つむじ風」=うずまくように吹き起こる強い風。渦巻状に回転して上る強い風。右回りのものとも左回りのものもある。せんぷう。つみしかぜ。つじむかぜ。つじかぜ。つむじ。まきかぜ。まいかぜ。
うーん、たしかに「竜巻」よりも規模が小さそうですね。ついでに「かまいたち」も引いてみよう!
「かまいたち」=突然皮膚が裂けて、鋭利な鎌で切ったような切り傷が出きる現象。気候の変動で空中に真空部分が生じたとき、これに触れた人体内の空気が、一時に平均を保とうとするために起こるといわれる。昔は目に見えないイタチのしわざと考えられたところからいう。越後の七不思議の一つに数えられ、信越地方に多い現象。鎌風(かまかぜ)。かまえたち。
とありました。風そのものではなく、それによって引き起こされる現象を「かまいたち」と呼ぶのですね。
英語では「竜巻」「つむじ風」「かまいたち」はどう言うのでしょうか?
「竜巻」=tornado(水上の竜巻はwaterspout)
「つむじ風」=twister((米略式))旋風、whirlwind(旋風)

「かまいたち」は、ジーニアス和英辞典には載っていませんでした。「ツイスター」は「つむじ風」だったんだ。じゃあ映画の「ツイスター」も「つむじ風」ですか。さっき「竜巻」って書いちゃった。失礼しました。そしてやはり「竜巻」は「トルネード」なんですね。
ちなみに、昨日(4月25日)はお天気もよく気温も上がったので、関東地方でも一か所、そして岡山県津山市でも「つむじ風」が見られたということです。

2004/4/26



◆ことばの話1684「起きぬけ」

春眠暁を覚えず。今朝寝坊しました・・・2度寝ならぬ3度寝。あ、と言っても「あさイチ!」担当日なので、午前3時に起きるところが、午前3時40分に起きた、という話ですが。時刻だけ見れば「超早起き」です。目覚まし、2つとも(自分で)止めていて、迎えのタクシーの運転手さんからの電話で起きました。10分で着替えて顔洗ってひげ剃って、飛び出しました。まさに「起きぬけ」。今日は前置きが長くなりましたが、この
「起きぬけ」の「ぬけ」
について考えました。「〜ぬけ」は「〜をしたばかり」「〜をするやいなや」というような意味ですよね。ほかにこういった「ぬけ」という形、考えてみました。
「だしぬけ」
がそうですね。
「吹き抜け」
は違うかな。
「底抜け」
では、そのままの意味だし。『逆引き広辞苑』で「〜ぬけ」になる語を引いてみました。「けぬ」で引くと良い訳ね。
「垢ぬけ」「灰汁ぬけ」「行(い)きぬけ」「一寸(いっすん)ぬけ」「売りぬけ」「起きぬけ」「籠ぬけ」「気ぬけ」「食らいぬけ」「位ぬけ」「尻ぬけ」「すっぽぬけ」「底ぬけ」「出しぬけ」「力ぬけ」「突きぬけ」「筒ぬけ」「手ぬけ」「天井ぬけ」「通りぬけ」「縄ぬけ」「抜けぬけ」「根ぬけ」「飲みぬけ」「歯ぬけ」「拍子ぬけ」「吹きぬけ」「腑ぬけ」「臍ぬけ」「間ぬけ」「身ぬけ」「目ぬけ」「山ぬけ」「行(ゆ)きぬけ」「夜ぬけ」「牢ぬけ」「輪ぬけ」
と37語の「ぬけ」が載っていました(「行(い)きぬけ」「行(ゆ)きぬけ」は、意味は同じ)が、この中で「起きぬけ」と同じような「ぬけ」は意外と少なくて、「起きぬけ」「出しぬけ」ぐらいですかね。
『日本国語大辞典』で「ぬけ」を引いてみました。
が。この意味での「ぬけ」は載っていないみたい。「ぬけ」ています。困ったな。『広辞苑』にも載っていない。接尾語としての「ぬけ」ですかね。『明鏡国語辞典』も・・・その意味の「ぬけ」は抜けていますね。あ、『明鏡』の「起きぬけ」を引いたら、例文が『広辞苑』と似てるぞ!
「起きぬけにコーヒーを飲む」(広辞苑)
「起きぬけにまずコーヒーを飲む」(明鏡)

「まず」が入っているだけじゃないか!・・・「まず」くないですか?
この話を2年目のAアナウンサーにしたら、
「へえー、『起きぬけ』なんて言葉があるんですか。」
というので、私が、
「あるよ!」
と答えると、
「私はそういう場合は『起きたて』って言いますね。」
とのこと。うーん、ビミョーにニュアンスが違うかも・・・。「入れたてのコーヒー」は言うけど。
「じゃあ、『起きぬけに歯を磨いた』とか言うんですか?」
「いや・・・それはなんかちょっと違うような気がするなあ。普通の手順どおりのことをしても『起きぬけ』は使わないような。たとえば『起き抜けに来客(電話)があった』とか、そういうのはいいかな。でも・・・ちょっと自信ないけど。」

てな会話がありましたが、この「〜ぬけ」、よくわかりません。どなたかご教授くださいな!!

2004/4/20



◆ことばの話1683「ジェリーバッグ」

4月23日に大阪で開かれた新聞用語懇談会の放送分科会のナカで、ある女性の委員からこんな質問が出ました。
「最近若い女性に流行しているビニールバッグのような透明のかばん、スケルトンバッグとかジュエリーバッグと店では呼んでいるようだが、一般名詞でどう呼べばいいのか?」
ところが、私を含めほとんどの委員(男性)はそのバッグというものを見たことも聞いたこともないような感じで「さあ・・・・?」と答えるしかない状況。
会議の翌日の日経新聞の土曜版(4月24日)を読んでいて「あっ!これだ!」と思いました。「はやり白書」という特集コーナーにまさにその、
「ジェリーバッグ」
というのが載っていたからです。会議では私は(耳がよくないせいか)、
「ジュエリーバッグ」
と聞こえて、「なんでビニールのバッグが宝石なんだろう?」と思ったのですが、記事を読んでみると、
「ジェリービーンズのようにカラフルな色使いのバッグ」
ということで、しかも、
「完全に透明なスケルトンバッグとは違い、一部が透けている」
とも書かれていました。
また、女性委員の中から
「エルメスのケリーバッグによく似たバッグが話題になったことがあるような・・・」
という意見が出ていたのですが、それに関しても、
「ケリーバッグに似せて作る業者も出たので訴訟になったが、エルメス側が勝訴した」
と記されていました。そして「ジェリーケリー」という名前を商標登録した「ジェリーケリー社」という会社もあるそうです。
日経の記事によると、去年の夏、ハリウッド女優やスーパーモデルたちが好んで使い始めたのが流行のきっかけで、日本では去年の秋に通販サイトでブームに火がついたそうです。高級バッグと似て非なる「なんちゃって感覚」が流行好きの遊び心に火をつけたのだとか。そんなに火がついていたとは、半年たってもちーっとも気づきませんでした。知らない間に丸焼けです・・・・。
結局、記事を読む限り、一般名詞として「ジェリーバッグ」は使えそうですね。まだ本物は見た頃がないのだけれど。
GOOGLE検索(4月25日)では、
「ジェリーバッグ」=2万3300件
ついでに、
「スケルトンバッグ」=275件
でした。今後このバッグ、気をつけて見るようにしてみます。

2004/4/25



◆ことばの話1682「たこ焼きの表記」

先日、報道のデスクが数人、顔を集めて何か悩んでいます。
「何、悩んでいるの?」
と聞くと、
「『たこ焼き』の表記をどうしようか、考えてるんです」
とのこと。はあー、なるほど、たしかに「たこ焼き」の表記はいろいろ考えられますよね。いくつか考えられるものを、GOOGLEで検索して(4月16日)件数を調べ、多い順に並べてみました。
「たこ焼」 34万6000件
「たこ焼き」 19万6000件
「たこやき」 3万6700件
「タコ焼き」 1万6500件
「タコヤキ」 7670件
「タコ焼」 3000件
「タコやき」 279件
これで見ると、「たこ焼」が圧倒的。ついで「たこ焼き」も相当多い。私の感覚では「たこやき」という全部ひらがなの店もあるような気がします。たしかに3万件くらいありますね。ということで、ひらがなと漢字の組み合わせが、一番見慣れた「たこ焼」ということのようです、少なくともインターネット上では。
ご参考になさってください。

2004/4/16



◆ことばの話1681「ハブのアクセント」

「三菱ふそうトラック・バス」の自動車のタイヤ脱落事故は、車の構造的な欠陥に原因があったことがわかり、また連日、新たな事実が登場して、会社の隠匿体質なども浮かび上がってきています。
そんな中で、事故原因に関して、耳慣れない言葉がよく登場するようになりました。
「ハブ」
です。これまで関西国際空港開港の1994年頃に、
「アジアのハブ空港」
というフレーズの中で登場して知った「ハブ」という言葉。最初は、なんでヘビが出て来るんやろか?と思っていましたが、よく考えると、自転車のスポークが放射状に出てところの名前も「ハブ」であったことを思い出しました。それで、大体部品の位置はわかってきたのですが、問題はそのアクセントです。テレビやラジオで注意して聞いていると、大体は、
「ハブ(HL)」
と頭高アクセントです。読売テレビのアナウンサーにも何人か聞きましたが、大体、頭高アクセントでした。でも、ときどき、
「ハブ(LH)」
という「平板アクセント」で言う人も聞かれます。実際に平板アクセントを使ったBアナウンサーに聞いたところ、
「だって頭高アクセントのハブ(HL)だと、ヘビと一緒になっちゃうじゃないですか!」
たしかに、ヘビの「ハブ(HL)」は頭高アクセントですが、だからと言って平板アクセントにする、という根拠にもならないのではないでしょうか?それに平板アクセントの「ハブ(LH)」では、
将棋の「羽生(LH)」さん
になってしまうじゃないですか。それはどうするつもりよ?
英語のアクセントは最初にあって、あえて高低アクセントにすれば、
「ハブ(HL)」
ですから、やはりこの場合はそれに従っていいんじゃないですかね?どうでしょうか?

2004/4/16


(追記)
2004年9月30日のお昼のニュースで、テレビ朝日の女性アナウンサーが、三菱自動車関連のニュースで、
「ハブ(LH)」
と平板アクセントで読んでいました。

2004/10/5
 
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