◆ことばの話1665「キビナゴ」

先日、近くのイタリア料理屋へ行ったところ、”春”を感じさせるメニューがありました。
「キビナゴとホタルイカのサラダ」
というメニュー。「キビナゴ」。どこかで似たような名前の魚を聞いたことがあるような。そうだ、平成ことば1075「イカナゴ」だ!見てみると、「イカナゴ」は別名「コウナゴ」とも言うと。どうなんだろ、この「ナゴ」の仲間は。
『逆引き広辞苑』で「ごな」と引いてみました。そうすると語尾が「なご」のlことばが載ってますからね。関係がありそうな盛んの「なご」を見てみましょう!
「こうなご(小女子)」「きびなご(黍魚子)」
これはいいけど、次のはなんじゃあ?
「なまおなご(生女子)」「うみおなご(海女子)」「しもおなご(下女子)」
調べます!
「なまおなご」=まだ色気の残っている女。
魚じゃあありません!
「うみおなご」=「磯姫」に同じ。「磯姫」=人の血をすうという海の妖女。海女子。海女房。濡女(ぬれおんな)。
ヒエエエー、こわっ!
「しもおなご」=召使の女。げじょ。しもおんな。
やっぱりこの3つは関係なかったか。

「いかなご(玉筋魚)」「わかなご(若魚子)」「たなご」「みやこたなご」「ぜにたなご」「うみたなご」「やりたなご」
「たなご」は魚偏に「與」みたいな字を書きます。難しい字。
こうやって見ると「なご」は「魚子」という字を当てているようですね。少し小さめの魚に、この名称「なご」は使われるのかもしれませんね。
で、それから2週間たった昨日(3月28日)、近くのスーパーに行くと、こんな張り紙が。
「生いかなごの販売を終了とさせていただきます。」
(文章のおかしさには目をつぶるとして)もう終わっちゃったのね、イカナゴの季節。
ということは、本格的な「春」の到来だぞう!!

2004/3/30

(追記)

4月1日の朝日新聞の「ひととき」という投書欄で、石川県加賀市の67歳の主婦・敷田千枝子さんが「イカナゴ過ぎて、春」という文章を寄せていました。
「『昨日でイカナゴは終わりました。好評を糧に来年もがんばります』一週間ほど前、昔の勤め先で一緒だった神戸の友人から、こんなメールが届いた。イカナゴ炊きの終了宣言だ。」
ああ、やっぱり、もうクギ煮、おしまいなんですね。敷田さんは文章を、こう結んでいます。
「イカナゴの季節が終わると、日本列島は春たけなわとなる。」
花見に、行くかあ。

2004/4/1
(追記2)
イカナゴの季節が終わったのか、と思っていたら、今日(6月4日)の朝日新聞の第2大阪面に、
「宵の武庫川一文字 待望のスルメイカ えさはキビナゴ 慎重に」
という釣り記事の見出しが。この季節のキビナゴは人間様の食べ物ではなくて、スルメイカ釣りの「えさ」になるのですね。ふーん。


2004/6/4



◆ことばの話1664「さんざめく」

子どもの保育所の卒園式の後に行われた茶話会で、出席した父母で先生方への歌のプレゼントとして、森山直太朗の「さくら」を歌いました。シンプルだけどなかなかいい曲ですね。最後のところの
「さくら さくら いざ舞い上がれ 永遠にさんざめく光を浴びて」
というフレーズがあり耳に残りました。
そして今日、先日買った夏川りみの新しいアルバムを聞いていました。その中の「満天(まんてぃん)の星(ふし)」という曲の中に、こんなフレーズが出てきました。
「さんざめく天河(てぃんがーら)」
これを聞いて「おや?」と思ったのです。森山直太朗は「さんざめく光」、ここで「さんざめく」のは「太陽の光」ですね。そして夏川りみの「さんざめく天河」、ここで「さんざめく」のは、もちろん「星の光」ですね。この「さんざめく」ってことば、はやっているのだろうか?
辞書を引いてみました。『新明解国語辞典』は、
「さんざめく」=さざめく。(例)「弦歌さんざめく」
『新潮現代国語辞典』は、「さんざめく」は載ってなくて、「さんざめき」は載っていました。
「さんざめき」=にぎやかに騒ぎたてる声や音。(例)「客を呼ぶ声もしなければ、飲めや唄へのさんざめきも響かず」(朱雀)
ほう、「さんざめき」は「音」の様子ですか。「さざめき」だとたしかに「音」ですし、それが強調されて「ン」が入った形が「さんざめき」と思われますからね。その「音」が「光」の「輝き」=「視覚」に転用されていったのですかね。
この話を坂アナウンサーに、
「最近の曲って『さんざめく』っていう言葉がはやっているのかなあ。」
と話したところ、
「『さんざめく』と言えばあれじゃないですか、やっぱり、谷村新司の・・・」
「『昴』かあ!」
「そう!『昴』より前に、ぼく『さんざめく』なんて言葉は聞いたことがなかったですよ。」

ということで、『昴』(作詞作曲・谷村新司、1981年)の歌詞を確認すると、2番の歌詞にたしかに、
「鳴呼 さんざめく 名も無き星たちよ
せめて鮮やかに その身を終われよ」

とありました。「さんざめく名も無き星」ですね。夏川りみと同じく「星」。星の輝き、瞬きって、なにやら、かすかな音が聞こえてきそうですものね。まあ、詩的!
「さんざめく」でGoogle検索したところ、1800件出てきました。(3月30日)
どんなものが「さんざめいて」いるかというと、
「光」「お嬢さん」「極彩色の巨大空間・生花市場」「中国カラオケスナックの小姐さん」「同期会の夜」「星屑」「気持ち」「お歌」「着飾ったシャンパン片手の男女」「明かり」「鳥たち」
「潮騒」「せせらぎ」「麦」「海」「星空」「青い海」「歌」「街」「日々」「声」「笑い」「海岸」「波」「弦歌」「ウィーンの社交界」「飲食外」「賑わい」「祭」「女子」「星空」「天河」「妖しいサウンド」「初雀」「初夏」

などなど。まあーいろんなものがさんざめいておりますな、世の中には。
これを見ると、もともと「ざわついた、音の広がり」のことを「さんざめく」と言っていたのが、『昴』の頃からかどうかは知りませんが、「かすかな、チラチラ揺れながら瞬く光」にまで「さんざめく」を使うように、意味が広がってきたのではないでしょうか?
たしかに満点の星は、パーティー会場でシャンペン片手に談笑する男女のように輝き、そして耳には聞こえないけれども、チカチカ・キラキラ音を立てているように思えますものね。「心の耳」には聞こえます。
最後に『日本国語大辞典』も引いておきましょう。あ!「さんざめく」はなくて「さんざめき」しかないや。「ざんざめく」はあるけど。『新潮現代国語辞典』と同じか。おや?その中に「ざんざめく」は「さんざめく」とも言うとあるぞ。じゃあ、こちらを見よう。
「ざんざめく」=(「ざざめく」の変化した語。「めく」は接尾語。「さんざめく」とも)大ぜいで声をたてて騒ぐ。にぎやかに騒ぎたてる。ざんざらめく。」
用例は17世紀の絵巻物から1946年の小説まで4つ載っていますが、いずれも「音」を表した「さんざめく」「ざんざめく」で「光」など「目」で言うところの「さんざめく」の用例はありません。
「さんざめく」は「さざめく」から来たのでしょうから、もしかしたら、「めく」という接尾語が同じ「きらめく」の意味と合体させてしまったために、『昴』のような使い方が出てきたのでしょうか?
一度、谷村さんや森山さん、夏川さんに聞いてみたいなあ。

2004/3/30

(追記)
ネットの掲示板「ことば会議室」に書き込んだところ、いつものようにいろんな方から意見をいただきました。ありがとうございます。Yeemarさんからは、

『慣用句とまでは言えないだろうが、
「弦歌さんざめく」(歓楽街で、三味の音や歌がにぎやかに響く)
などと言う。戦前の前田一「サラリマン物語」(1928)には、
「絃歌さんざめく紅灯の巷、なまめかしい三絃の音{ね}じめにつれて」
とある。ほかにも、火野葦平「黄金部落」(1947-48)に、
「弦歌さんざめく町の雑踏を抜けて」
野坂昭如「プアボーイ」には、
「さすが絃歌こそさんざめかぬが」(CD-ROM「新潮文庫の100冊」より、1968年の作品集に収録とのこと)
尾崎士郎「人生劇場〔残侠篇〕」に、
「何時の間にか酔っぱらって絃歌{げんか}のさんざめく秋の夜の色街をあるいている」(CD-ROM「新潮文庫の絶版100冊」より、発表年は?戦前だと思う)
どうも「昴」などの静かなイメージとは違うようだ。「ささめく」(ひそひそと話をする)との混同があるのだろうか。「昴」(1980年)は大ヒット曲だったので、他の作詞家に与えた影響は大きかったのだろう。谷山浩子の作詞作曲ものにその例が見られる。

夜めざめれば 窓の彼方に
さざめく 水銀の星たち(谷山浩子作詞作曲・歌「地上の星座」1982年)
いつのまにかさざめく 星たちの海原に
ぽつり浮かんだわたしの船は(同「船」1983年)
窓をあければ 暗い夜空に
いちめんの星たちが 光りさざめく(同「銀河通信」1984年)


これらは「さざめく」だが、従来は「笑いさざめく」のように使ったものだろう。』
というご意見をいただきました。「ささめく」と「さざめく」の混同、十分ありえますね。また、後藤斉さんからは、
『「さざめく/さんざめく」はにぎやかさの文脈で使われた例がやはり多いようだ。例外的な使い方にみえるのが、つかこうへい「あなたも女優になろう〜素敵な女性になるためのヒント〜」
「辺りは静かで、木立の隙間から波のさざめく音が微かに聞こえてくる程度です。」
また、開高健「新しい天体」の
「深沈とした黒の重厚な漆塗りの椀のなかにあのさんざめくような澄明のスープをみたして、香りに眼を洗われるような想いをしながら、ひとくち、ひとくち、ゆっくりとすすりたいと想いつめたくなるのは、どうしてだろうか。」
そして横光利一の『旅愁』
の、
「屏風の金色を映した舞妓の簪だけ、ひとり、さざめく水のようにひらひら黒髪の中で揺れていた。」
といったところ。』
とご指摘を頂き、また、岡島昭浩さんからは、
『 オリオン舞い立ち
  スバルはさざめく

としたのは、堀内孝雄ならぬ、堀内敬三の「冬の星座」。後藤さんがお示しの横光のように、「揺れるように光る様子」を指すことがあるようだ。平林たい子の「ある思春期」は、
「スカートも普通の制服のよりはずっとこまかい棕梠《しゅろ》の葉のような襞《ひだ》で、歩くと腰のあたりでさざめくように崩《くず》れてゆれるのが粋《いき》だった。」同じく平林の「地底の歌」は、
「細い首をしなしなと動かして、口のあたりで真向なレースのハンケチをもてあそんでいる指には、冷たいダイヤモンドがさざめくように光っていた。」
大辞林「さざめかす」で、(1)ざわざわさせる。ざわつかせる。「艦は金波銀波を―・して/不如帰(蘆花)」とする用例も、揺れるように光る様子を表していると解することもできそう。『不如帰』下・一「陰暦八月十七日の月東にさし上り、船は金波銀波をさざめかして月色の中を駛る」。「スバルはさざめく」の「冬の星座」、「しじまの中」は一番だが、二番も静かな情景の中にあるのだろう。(昭和二十二年発表。)→ 大辞林「さざめかす」』
というご意見をいただきました。どうもありがとうございました。また、『地中海都市周遊』(陣内秀信・福井憲彦、中公新書)の中に、
「獅子の噴水のさんざめき。」

という表現が出てきました。

2004/4/29

(追記2)

『市民のための国語の授業』(杉本つとむ、おうふう:2007、6、25)という本を読んでいたら、『海道記』という書物には、
「ササメキ」
という言葉に、
「私語」
という宛て字をしている例を示してありました。ぱっと見ると、「私語」に「ササメキ」とルビを振っているように見えますが。いずれにせよ、ここから「さんざめく」までの距離は近いですよね!強調で「ん」が入って濁っているだけだから。もともとはやはり「音」に関する言葉だったのですね、「ささめく」「さざめく」「さんざめく」は。ただ、星などのキラキラとした「瞬き」は、音はしないけれども何かしゃべっているように見える ので、その「比喩表現」と言えないこともないように思いますね。
「キラキラ」という輝きは、「宵の明星の金星(=惑星)」が太陽の光を反射してずっと一定で光っている様子を指すのではなく、自ら光を放つ恒星の、揺らめきのある光り方を指すように思います。つまり一定の光を常に出しているのではなく、「揺らめき」があるのです。そういう意味では音の「ざわめき」も常に一定ではなく、波のように押しては返すような感じがします。そこが「ササメキ」「ざんざめき」とも共通しているのではないでしょうか?
2007/8/12



◆ことばの話1663「満タン」

ガソリンスタンドで、店員さんに、
「レギュラー、満タンで!」
と声をかけた時に、ふと思いました。
「『満タン』って、もしかして、『満タンク』の略なんじゃなかろうか?」
考えてみれば、というか、言われれば「あたりまえやん」と思うのですが、「満タン」の語源に思いをはせたことが、ここまで42年生きてきて1回もありませんでした。
家に帰って、さっそく『広辞苑』を引くと、
「満タン」=(タンはタンクの略)燃料や水などが容器いっぱいに入っていること。満杯。
とありました!ホラ、やっぱり。「満タン」の「タン」は「タンク」の略だったんだ。でも疑問は残ります。だって、なぜたった一文字を省略せねばならないか?ということです。一文字ですよ、たった。
この「満タン」で思い出したのは「ダントツ」です。これは「断トツ」とも書きますが、もとは「断然トップ」。それの略語ですが、もうその元の言葉を意識する人は、あまりいないといっていいでしょう。だから「ダントツ・トップ」などという、「トップ」が重なった言い方や、「ダントツで最下位」などという矛盾した言い方も出てきているわけです。
これも省略した文字数は少ないですよね。
でも、ちょっと待って。「満タン」は略語なのかな。たしかに文字の上からは、たったの一文字ですが、それは「目で捉えた言葉」の場合。「満タン」を耳で捕らえると、「満タンク」と「タンク」を英語の発音で言うと最後の「ク」の部分はあまり聞こえずに「k」という音、母音の無声化みたいな感じになるのではないでしょうか?そうすると、「ク」の音は聞こえないから、「満タン」という形で書かれるようになったのではないでしょうか。
しかも「満」の「ン」の音と「タン」の「ン」の音が、韻を踏むようにリズムが良かったので、「満タンク」ではなく「マンタン」と呼ばれるようになったのではないか?というのが、たった今、思いついたことです。
さた、本当のところは、どうなんでしょうね。
2004/3/29



◆ことばの話1662「着床『前』診断」

2月4日。神戸の医師が「着床前診断」を行ったと発表したというニュースが流れました。これについてSアナウンサーから、
「どうなんでしょうか?」
と、休みで家にいた私にメールが届きました。なにが「どうなのか?」というと「着床前」の「前」の読み方は「まえ」か「ゼン」か?というものでした。私は、
「『ゼン』。以前、私がスクランブルで『出生前診断』について取材放送した時には、『「ぜん」ではわかりにくいやろう』と勝手に判断して『まえ』と読み変えたが反省しています。『着床するマエに診断する着床ゼン診断』と一回言うのも手かも。ちなみに『臨界前実験』はマエ。専門用語は理屈じゃないので、ややこしい。ことば事情で『まえか?ぜんか?』というふうなタイトルで書いたはず。検索してごらん。」
という返事を送りました。その後、「専門用語では『ゼン』」だと確認され、Sアナウンサーからも、
「着床ゼン診断でした。学会がそれで統一しているそうです。三省堂のデイリー新語辞典にも載っているようです。」
というメールが返ってきました。
表記について見ると、新聞各紙と各放送局の表現は、読売・毎日・産経の各紙、および毎日放送、朝日放送、関西テレビ、読売テレビと共同通信は、
「着床前診断」
としたのですが、朝日新聞とNHKは、
「受精卵診断」
としていました。そこで今度は、「着床前診断」か「受精卵診断」かという問題。
そもそもこの「着床前診断」あるいは「受精卵診断」とは、体外受精した受精卵が数個の細胞に分裂した段階で染色体や遺伝子を検査し、選んだ受精卵だけを子宮に着床させるので「着床前診断」と言われますが、まさに「受精」を「診断」するので「受精卵診断」とも呼ばれるわけですね。妊娠中に羊水などを採って胎児の細胞を調べる「出生前診断」と違って妊娠中絶を避けられるのですが、生命の選別が進むなどの懸念があります。欧州では限定的に実施している国があり、米国では高齢出産を成功しやすくする目的などでも実施されているそうです。
読売テレビは「『着床』は耳慣れない」とのデスク判断で、この日の夕方以降は「受精卵診断」に変更・統一の方向と、一旦はなったのですが、その後、全体の流れを見て、
「着床前診断」
にすることになりました。
今回問題となった、当の大谷徹郎院長(大谷産婦人科医院長、神戸市灘区)は、
「着床前(ぜん)診断」
と言っているようです。
既に述べたように、この「診断」そのものにも是非論があるのですが、呼び名にも苦労します。新しいものが出てくると、いろいろ大変です。Google検索(3月28日)では、
「着床前診断」=  5920件
「受精卵診断」=1万1200件

と、「受精卵診断」の方がよく使われているようでした。
なお、大谷院長は今朝(3月29日)の読売朝刊にも
「習慣性流産の染色体異常を調べるための着床前診断の実施を、近く日本産科婦人科学会に申請する」
という記事が出ていましたので、今後もこの問題は続きそうです。

2004/3/29

(追記)
5月26日のフジテレビ、21時26分頃のフラッシュ・ニュースで女性アナウンサーが、
「着床前診断」を、
「着床マエ診断」
と連呼していました。

2004/5/27



◆ことばの話1661「次女か?二女か?」

児童虐待のニュースが全国で続きます。いやなことです。その中で出てきたのが、二人目の女の子どもの表記について、
「次女か?二女か?」
という話。過去に書いてないかを調べたら、「ことばの話144 次女」で書いていました。それによると、2000年7月に奈良県天理市の病院に入院していた長女を、准看護婦の母親が毒殺しようとしたとされる事件で、数年前には長男と二女も同じような症状で亡くなっているとしています。その中で「ことばの話」で「二女」に注目し、新聞各紙を見比べると、どの新聞も「二女」となっていて、朝日新聞のみ「次女」という表記です。
普通、私たちが見慣れているのは「次女」の方だと思うのですが、日本新聞協会の「新聞用語集」によると、新聞では「二女」を使う、となっています。その部分を引用すると、
「二=ジ=」は表外音だが、戸籍法の、続き柄表示に合わせて「二女」とする。一般には「次女」も使われる。とあり、当然、「次男」→「二男」で、同じ注釈がついていたとのこと。全国五紙のうち、唯一「次女」を使っている、朝日新聞大阪本社のN校閲部長(当時)にお聞きしたところ、「"朝日新聞の用語の手引き"によると"二"の読みの"じ"は表外音(常用漢字表にない読み)なので、便宜的に"次"を充てている」
ということでしたとのことです。そしてそのまとめは、
「『二女』だと『にじょ』と読んでしまう可能性もでてきますし、戸籍法は当然『話し言葉』ではなく『書き言葉』として『二女』を使っていますから(新聞はともかく)放送では(字幕も含めて)『次女』を使った方がいいのではないか、と私は思います。」
と書いています。
そのあと、今度は2002年10月に「ことばの話864 次男か二男か」でも似たようなことを書いています。それによると、
<二男>
『新聞用語集』(1996)=二男
『読売スタイルブック2002』=二男
『共同通信記者ハンドブック新聞用字用語集第9版』(2002)=二男(次男坊は別)

<次男>
『朝日新聞の用語の手引き最新版』(2002)=次男
『NHK新用字用語辞典第2版』(2001)=次男


放送局は、新聞社に比べるとあまり文字のことにはこだわっていないからでしょうか、日本テレビとTBSの用語集には「次男か二男か」については、記載されていませんでした。唯一、放送局でこの件を載せているNHKは、「次男」を採用しています。
新聞はおおむね「二男」を採用していますが、朝日新聞だけは「次男」。
共同通信
で「二男」は、「言い換え・書き換えが困難で、表外字・表外音訓を使ってもよい特別の語」に指定されていて、(注)として
「戸籍法施行規則に合わせて『二男』とする。『次男坊』は別。」
と書いてあります。Googleの検索ですと、

次男・・・・・14万件
二男・・・・・ 2万6500件

但し「次男」は「つぐお」という個人の名前のケースもあるので、そのままの数字は、それほど当てにならないかもしれません。一般的には「次男」だと思いますし、「二」に「じ」という読み方はない(人名はありますね。「雄二=ゆうじ」とか。)ので、一般的には「次男」なのですが、戸籍や法律用語としては「二男」が使われているようです。
でも、少子化で出生率が2を切ってからもう10年は経つでしょうから、「二男」「次男」ともに、近い将来「死語」になるのではないでしょうか。その前に「いとこ」「おじ」「おば」が死語になるのかなあ・・・・。
「日本の標準」というホームページで、「二男・二女」と「次男・次女」のどちらをよく使うかと言うネット上での投票をしていました。結果は、
「二男・二女」・・・・5票
「次男・次女」・・・70票

で、圧倒的に「次男・次女」の勝利でした。

とありました。ずいぶんうつしちゃった。自分のページだからいいか。
さて今回、各放送局をオンエアーでチェックしたところ(3月17日)、
<二女>TBS,テレビ朝日、フジテレビ、日本テレビ、MBS,ABC、KTV
<次女>NHK

でした。で、読売テレビはどうか。過去1年(2003年3月18日から2004年3月17日まで)のニュース原稿で「次女」「二女」どちらがどれだけ使われているか、チェックしてみたところ、
「次女」=41件
「二女」=15件

でした。男性はどうか。
「次男」=28件
「二男」=24件

でした。拮抗していますね。で、今回はどうするか。結局日本テレビと相談した結果、日本テレビに揃えて、
「二女」
とすることにしました。
2004/3/27


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