◆ことばの話1610「UFOキャッチャーの言い換え」

休みの日に家でくつろいでいると、Uアナウンサーから電話です。
「すみませーん、『UFOキャッチャー』っていうのは、セガの登録商標みたいなんですけど、言い換えはどう言えばいいんでしょうかぁ?」
「藪から棒になんだ、ちょっとそこにおすわり」
とでも言ったら、なんだか長屋の大家さんの気分です。
「どういう文脈でUFOキャッチャーが出て来るの?」
「なんか、エッチなビデオとかDVDとかを商品にしたUFOキャッチャーのゲームを設置して、中高生を集めてた経営者が捕まったというニュースなんですけど。」
「おやまあ、世の中どうなってるのかねえ。置くほうも置くほうだけど、来るほうも来るほうだよ。ほんとに。たしか特定商品名の言い換えの本があったろう・・・そうそう、それ。どう書いてあるかな?去年の年末に新しくできたばっかりの日本テレビのが、あったろう、机のはじのところに。そう、それ。それで見てごらん。・・・ほら、あったろう。どう書いてあるんだい?」
「あ、『UFOキャッチャー』の言い換えは『クレーンゲーム』って書いてあります!」
「そうかい、それじゃあ、その『クレーンゲーム』でおいき。しかしなんだね、今回は、エロビデオを吊り上げようとした中・高生が、逆に懐からおあしを釣り上げられたけど、最終的にお上に吊り上げられたのはその業者、ということだね、クレーンゲームだけに。」
「・・・・・」
おあとがよろしいようで。
2004/2/27




◆ことばの話1609「鶏肉はトリ肉?ケイ肉?」

2月27日、山口、大分に続いて、京都府の丹波町でも、養鶏場のニワトリ1万羽が死に、鳥インフルエンザウイルスの陽性反応が出てしまいました。
山口で国内初の鳥インフルエンザが確認された後に、「あさイチ!」でニュースを担当しているWアナウンサーから質問がありました。
「『鶏肉』は『トリニク』と読むのでしょうか?それとも『ケイニク』と読めばいいのでしょうか?」
「うーん、たしかに音読みしたら『ケイニク』だけど、一般的には『トリニク』の方がわかりやすくていいんじゃない?」
「でも、もちろんこれは『鶏(ニワトリ)』の肉ですよね。『トリニク』といってしまうと漢字では『鳥肉』になってしまって『鳥、一般』を指すことになりませんか?」
「それも一理あるけど、『豚肉』は『ブタニク』としか言わないでしょ、『トンニク』とは言わんなあ。『ニク』は実は『音読み』だから、『ブタ+ニク』は『訓読み+音読み』。けど『牛肉』は『ギュウニク』としか言わないなあ。『音読み+音読み』だなあ。『鶏肉』の場合は、『トリニク』は『訓読み+音読み』、『ケイニク』は『音読み+音読み』ということかぁ。難しいなあ。『鳥インフルエンザ』はニワトリだけでなく鳥一般に感染するから、これは『鳥』という漢字を使って『トリ』と読めばいいんだけどな。『ケイニク』は、専門家の使い方のようで、どうもなじめないなあ。」
ということで、ハッキリとした決め手もないまま、その後も、
「鶏肉」=「トリニク」
と読んでいます。
日本テレビの豊田順子アナウンサーも『ズームイン!!SUPER』で「鶏肉」を「トリニク」と読んでいましたよ。でも次にも問題が控えています。
「鶏卵」
これは「ケイラン」しかないのでしょうか?少なくとも「ニワトリラン」とか「ニワトリタマゴ」とは言いません。「ニワトリのタマゴ」は言います。略して「トリのタマゴ」です。
それと同じで、つまり「トリニク」とは、「ニワトリニク」の「ニワ」を省略した呼び方と考えることができます。そういうことで、「鶏肉」=「トリニク」と。
でも「鶏卵」はどうしましょ?「ケイランまんじゅう」というのはあったな。でもやはり「ケイラン」も専門家の読み方みたいですねえ。そうすると、単に、
「タマゴ」
と言うしかないかな。ウズラとかダチョウとか、ニワトリ以外の時はその頭(タマゴの前)に「ウズラの」「ダチョウの」と付けるということでどうでしょうか。

2004/2/27
(追記)

2004年9月28日の産経新聞の外電の記事に、
「鳥インフル新たな感染」
という見出しが出ていました。「鳥インフルエンザ」を省略して「鳥インフル」ですか。下を省略したのですね。わかりやすいですけど・・・。
2005/4/1



◆ことばの話1608「硯北」

知り合いの高校の先生から、
「こないだの言葉を取り上げた番組を、もしビデオで録画していたら、ダビングして欲しいのですが・・・」
という依頼が来ました。その番組は家で録画していたのですが、ビデオテープではなく、最近購入したDVDレコーダーのハードディスクに録画していたので、
「DVDになら録画できますが。」
と伝えると、「DVDで結構ですからダビングしてください。DVDのディスクはこちらから送ります」という返事が来ました。実は、DVDへのダビングは、まだ1回もしたことがなかったのですが、いつかはするだろうから、と引き受けたのでした。
果たして数日後にDVDのディスクが届きました。
その封筒の宛名の「道浦俊彦様」という名前の横に次のような二文字が記されていました。
「硯北」
なんて読むんだろう?「硯」は「すずり」だろうけど、旁(つくり)が「見る」だから「ケン」と読むのかな。「北」は「ホク」か、「ケン」のあとだから「ポク」と半濁音になるのかな?と思いながら、
「ケンポク」
で『広辞苑』を引いてみると、載っていました!

「硯北・研北(ケンポク)」=(採光のため机を南向きに置くと、人は硯(すずり)の北にすわることから)手紙のあて名のわきに添え書きする敬語の一。机下。」

はあ、「机下」と同じかあ、「机下」は、使ったことはないけど、見たことはあるぞ。「研北」とも書くのだな。勉強になるなあ。
ちなみに「机下」は、
「机下・几下(きか)」=(「几」も机)書簡で、宛名に添えて書く語。相手の机の下まで差し出すという意で、敬意を表す。案下。おそば。おてもと。」
とあります。「案下」も引いてみましょう。
「案下(あんか)」=(1)机の下。机のそば。(2)手紙文で、宛名(あてな)の脇付(わきづけ)に用いる語。机下。
とありました。
そう言えば、本(『「ことばの雑学」放送局』PHP文庫)を出した時に、サインを求められた相手の名前の「○○○○様」という脇に書いた、
「恵存(けいそん・けいぞん)」
という言葉も、たしか「おそばに置いて下さい」という意味でした。
これは、脇浜アナウンサーが本を出して、わが社の社長のところに持って行った際に「著者が献本などする際に書き添えるのだ」と社長から教わった、という話を聞いていたので、私も知っていたのですが。
こういうふうな、手紙を書くときの決まり言葉のようなものは、学校では教わった覚えはありません。いつ、どのようにして学んでいくのでしょうか?
学校の「総合学習の時間」などで、こういったことを教えるのも良いのではないかと思います。手紙が書けなくて困っている人、多いと思いますよ。いかがでしょうか?
2004/2/24



◆ことばの話1607「明治は遠くなりにけり」

会社に向かう電車の中で山本夏彦の本を読んでいて、ふと思いました。
「今年は平成十六年、早いものだなあ。そう言えば『降る雪や 明治は遠く なりにけり』という句があったけど、あれはいつ頃詠まれたものなんだろうか?明治が終わって何年経ったときに、当時の人は明治時代が『遠く』感じたのだろうか。誰の句だっけ?河東碧悟桐だっけ?会社に着いたら調べてみよう。」
などと思っていたら、まさにその部分が、読んでいた山本夏彦の本に書かれていました。
「中村草田男のあの名高い『降る雪や明治は遠くなりにけり』という句は、昭和六年『ホトトギス』三月号に出た句だという。してみれば昭和六年にはすでに明治は遠い昔だったのである。」(「ドラマ『樋口一葉』を見る」より〜『「豆朝日新聞」始末』)

そうなのか、昭和6年(1931年)。明治は45年(1912年)に終わって、そのあと大正時代が15年まで。だから、「19年」という時の流れが「遠く」という感覚をもたらしたのですね。
一応、この句のことをインターネットで調べると、昭和11年(1936年)の草田男の第一句集『長子』に収められているとか。そうすると、あと5年プラスで24年、ということになりますが、発表はもう少し早いのでしょう。草田男は、昭和4年(1929年)から『ホトトギス』に投句していたようですので、昭和6年に掲載されたとしてもおかしくないですね。『ホトトギス』の同人になったのは昭和8年(1933年)と書いてあるものと昭和9年(1934年)と書いてあるものがありますが。
ということで、明治・大正時代とは比べ物にならないほど、時の流れが速くなった今、「平成16年」ならば、
「昭和は遠くなりにけり」 と、十分言えるのではないでしょうか。
2004/2/24



◆ことばの話1606「おたまじゃくしはカエルの子・・」

恐縮です恐縮です、また新人のAアナの話で恐縮です。梨元さんじゃないけど恐縮です。
ニュースを見ていると、早くもオタマジャクシがタマゴから孵ったという話題を放送していました。そこで、
♪おーたまじゃくしは、カエルの子・・・♪
と歌い始めると、「へ?」てな顔でAアナがこっちを見ています。
「おいおい、この歌、知らないのかい?」
「・・・・♪新宿西口、駅のまえー・・・♪の歌だけしか知りません」
・・・ほんまかいな。
じゃあ、♪権兵衛さんの赤ちゃんが風邪引いたー♪という替え歌の歌詞も知らないだろうし、この元歌が「リパブリック讃歌」で♪Glory Glory Hallelujah・・・♪と歌うことも、もちろん知らないわけで・・・。
これは教えるしかあるまい、とクイズ形式でやってみました。
「おーたまじゃくしーはカエルの子、のあと、『○○○の孫ではないわいな』という歌詞が続くんだけど、この○○○というのは、なんでしょうか!ヒントは、オタマジャクシに似ていて、オタマジャクシよりも大きい。サカナですね。」
「えー、オタマジャクシに似ているということは、黒くて、大きい・・・・」
「そう、黒くて大きい」
「水の中に住んでいる・・・」
「そう、水の中に住んでいる!」

「・・・イルカですか?」

「うーん、たしかに似ていなくもないけど、大きすぎるわな。もう少し小さいね。」
「ほら、地震と関係あるっていうのが、あるじゃない!」
と横からK部長も助け舟を出します。
「地震と関係がある・・・ああ!あれですね!!」
「そう、それだよ!」


「ウナギ!!」

ガックシ・・・
「なんでウナギが地震と関係あるんだよお!!」
「ええ・・・。」
「ホラたしか、秋篠宮様も、それの研究をされていたんとちゃうか。」
「・・・私、知ってるんですよぉ。」
「知らんやないか!」
「知ってるけど、出てこない・・・・・・・・・・・アナゴ?
「なんでサザエさんの登場人物みたいなのが出て来んねん!ウナギの次はアナゴかい!」
寿司屋のカウンターで、注文したものとは違うものばかり握られているような気分・・・。
「じゃあ、イナゴ?
「イナゴはサカナじゃないやろが!」
もう、大荒れです。
春一番どころか春二番も三番も、吹きたい放題。吹きまくり・・・。
我々が疲れ果てた頃に、ようやく正解の
「ウナギ」
じゃなかった、

「ナマズ」

が出たのでした・・・。あんまり疲れたので、こっちまでおかしくなってしまいました。
いくらなんでもという大ボケをかましたAアナに・・・
♪そこーで、みんなで説教した!♪

*平成ことば事情1602「しばかり」もお読みください。

2004/2/24


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