◆ことばの話1580「松屋とすき家」

牛丼が次々と消えています。
今月2日の「なか卯」に続いて、今日5日は「すき家(や)」でも牛丼の販売が中止されました。アメリカ産牛肉の在庫が品切れとなったためです。去年12月24日にアメリカでBSEの牛が見つかって以来、アメリカ産牛肉の輸入はストップしたままです。
ところで、こういった牛丼チェーン店の店名ですが、
「○○や」
というのが目立ちます。
「吉野家」「すき家」「松屋」。ここで問題は、その読み方のアクセントです。
たとえば、「すき家」は、
「すき家(LHL)」
という「中高アクセント」でしょうか?それとも、
「すき家(LHH)」
という「平板アクセント」なのでしょうか?
「○○や」という屋号の場合、「屋」の付くものは平板のような気がします。牛丼チェーンではありませんが、
「高島屋(LHHHH)」「松坂屋(LHHHH)」
といった百貨店も、
「高砂屋(LHHHH)」「播磨屋(LHHH)」「成駒屋(LHHHH)」
といった歌舞伎の掛け声に出てくる屋号、そして、おはぎの
「丹波屋(LHHH)」
に至るまで「平板アクセント」ですよね。
これに対して、「家」と付く「○○家(や)」は、
「吉野家(LHHL)」「すき家(LHL)」
「中高アクセント」のような気がしますが、いかがでしょうか?
ただ、「松屋」は牛丼チェーンのほかに、銀座の百貨店「松屋」があり、こちらの方は、高島屋、松坂屋のように「平板アクセント」だという話を、東
京出身者に聞いたことがあります。その一方で、牛丼チェーン店のほうは「屋」にもかかわらず「中高アクセント」というのは、同姓同名の「松屋」(百貨店)との区別をつけるためなんでしょうかね?
それにしても、牛丼がメニューから消えた牛丼店、牛丼チェーンは、なんと呼べばいいのでしょうか?
2004/2/5

(追記)

牛丼に代わる新しいメニューとして、「豚肉」を使ったものも出ています。ところがそのどんぶりの名前が、各店違います。
「すき家」=「豚丼(とんどん)」
「なか卯」=「豚(ぶた)どんぶり」
「松屋」=「豚(ぶた)めし」

ややこしい!「牛丼」のように統一してくれないかなあ。でも松屋はもともと「牛丼」ではなく「牛めし」だったのだけれども。そして「丼」は「どん」とも「どんぶり」とも読めるのだけれど、「なか卯」は「牛丼ぶり」と、送り仮名がいらないのにわざわざ「丼」に「ぶり」なんて送り仮名をつけたりしていて、いろいろややこしい。
2004/2/6

(追記2)

2月14日夜、NHKで、「松屋」も牛めしの販売を中止したというニュースをやっていました。その中で男性アナウンサーは、
「松屋(LHL)」
中高アクセントで原稿を読んでいました。
2004/2/15

(追記3)

直接は関係ないんですが、2月21日の「夕刊フジ」で、「吉野家のレトルト牛丼がネットで高値で取引されている」という記事の見出しが、
「需要と狂牛」
というもので、不覚にも少し笑ってしまいました・・・。
2004/2/26



◆ことばの話1579「ジーコ『満足』」

2月2日の読売新聞朝刊のスポーツ面、サッカー日本代表の宮崎合宿が終了したことを受けての記事です。その見出しが、
「ジーコ『満足』」
ふーん、ジーコ監督も満足するぐらい合宿はうまくいったのか、これで18日に行われる、ワールドカップ・アジア1次予選のオマーン戦も余裕で大丈夫そうだな、と思った次の瞬間、「ちょっと待てよ」という気持ちがむらむらと持ち上がってきたのです。
というのもこの見出し、「ジーコ満足」って、
「自己満足」
とも読めるではないですか!ということは、
「ジーコ監督は満足しているけれども、満足しているのはジーコだけ。客観的にみると、決して満足のいくようなものではないぞ」
という見方が、整理部の記者の目を通じて密かに現されているのかも・・・なんていう「深読み」をしてしまったのです。まあ、単なる「オヤジ・ギャグ」なのかもしれませんが。
最近、一般紙のスポーツ面は、スポーツ新聞並みに語呂合わせなどに凝るようですから、そんなに深い意味はないのかな。どう思われますか?
その結果は、18日のオマーン戦に現れる、ということですかね。

2004/2/2

(追記)
2月12日のイラクとの親善試合、日本は2対0で勝ったものの、守備の乱れなどもあって満足のいく内容ではありませんでした。翌日のスポーツ報知の見出しは、
「ジーコ不満」
でした。満足でも不満でも見出しはまず「ジーコ」と。そういうことですかね。

2004/2/15



◆ことばの話1578「ゴールデン・レトリバー」

朝のニュースで、南米最高峰・標高6962メートルのアコンカグアに、ゴールデン・レトリバー犬が登頂したというニュースがありました。このニュースの原稿には、
「ゴールデン・リトリバー」
と書いてあったのですが、私が聞きなれていたのは、
「ゴールデン・レトリバー」
です。「リ」か「レ」か。しかし『広辞苑』『現代用語の基礎知識』『知恵蔵』はもちろん、『新聞用語集』にも載っていません。
そこでいつものように、Googleでネット検索をしたところ、以下のとおりの結果でした。

「ゴールデン・レトリバー」=4万3200件
「ゴルデン・リトリバー」 =  2280件

ということで、やはり私が使っている「レトリバー」の方が圧倒的に優勢ですね。
ついでに後半の長音がちょっと違うものも調べました。

「ゴールデン・レトリーバー」=1万6400件
「ゴールデン・リトリーバー」=   653件

こちらも「レトリーバー」が圧倒的。辞書にも載せて欲しい・・・と思って『日本国語大辞典』を引くと、ちゃんと載っていました、
「ゴールデン レトリバー」
で。さすが!使用の実態をちゃんと反映させていますね。ではこれからは「レトリバー」で行きましょう。でも、最近は小さい犬が人気で、少し前に大人気だった「シベリアン・ハスキー」とかこの「ゴールデン・レトリバー」といった大型犬は、ちょっと人気が落ちているとか。なんか、かわいそうですねぇ・・・。

2004/2/2



◆ことばの話1577「昨日現在」

よく耳にして、特に普段は気にならないのに、あるとき「おや?」と思った言葉に、
「昨日現在」
があります。
「今日現在」は意味が重なっているけど「強め」としては成り立つと思いますし、日付を指定して、「1月31日現在」というふうな言い方はもちろん成立すると思います。
しかし、「昨日」というのは「今日」を基準とした日にちの指定なので、そこに「現在」をくっつけることは、
「昨日と今日がくっついてしまうような、妙な居心地の悪さ」
を覚えます。
以上、今日現在感じている気持ちです。短いな、今日現在は。

2004/2/2



◆ことばの話1576「不磨の大典」

1月19日の日経新聞の「先週の出来事」という欄に、14日の内閣記者会とのインタビューでの小泉総理大臣の発言が取り上げられていました。見出しは「タブーでなくなっている」。
その中の表現で、
「憲法は『不磨の大典』とみなされていた」
という記述があって目を引きました。大層な表現ですね。「大時代的な」という形容がピッタリの、あまり最近は目にしないような・・・。
『日本国語大辞典』を引いてみました。
「不磨(不摩)」=摩滅しないこと。すりへらないこと。不朽。
「磨かないこと」かと思ってたら、「磨(す)り減らないこと」だったのですか。「不朽の名作」という表現は、今も使われますね。
その「不磨」のあとに成句として「ふまの大典(たいてん)」も載っていました。
「ふまの大典」=(消滅することなく永久に伝えられる法典の意)「大日本帝国憲法」の美称。
え!そうなの!?「大日本帝国憲法の美称」を「日本国憲法」に使っちゃあ、まずいんじゃないの?この「不磨の大典」は大日本帝国憲法発布の勅語で使われているようですが。
この記事では、
「野党第一党の旧社会党が護憲絶対だった『五五年体制』では、憲法は『不磨の大典』と見なされていた。首相は『民主党がこれだけ積極的になるとは想像できなかった』と驚きの表情を見せた。」
とあるので、小泉首相の発言というよりは、日経の記者が使ったようにも見えます。そのあたり、どうなんでしょうか?Google検索で「不磨の大典」は1040件ありました。
2004/2/2

Copyright (C) YOMIURI TELECASTING CORPORATION. All rights reserved