◆ことばの話1455「アナウンサーの訛り」

アナウンサーといえども、それぞれ、しゃべりの癖や訛りがあります。最近耳にして気になったものをあげて見ましょう。まずはテレビ東京の女性アナウンサー。「ニュースウォッチ」という番組(10月7日)の天気予報の時に、
「雲の多い天気になるでしょう」
という原稿を読んでいましたが、この「多い」が、
「おおいい」
というふうに、「い」が一つ多い読み方をしていました。これは東京訛りなんでしょうかねえ?「おお」の部分を「おー」と長音化して、それにつられる形で「い」も長音になって、
「おーいー」
という発音になったのでないかと思われますが。
もう一つのケースはNHKの「ラジオ深夜便」担当の女性ベテランアナウンサー(10月21日午前2時前)。リクエストを下さった方の住所を紹介する時に、「東京・文京区の」というようなときの「東京」が、
「トキョ・文京区」
というふうに早口になって、長音が十分伸びない読み方になっていました。
「ト・ウ・キョ・ウ」と4拍のところが、「ト・キョ」と2拍になっているのです。また、「今回」と言う時にも
「コカイ」
と、「ン」がしっかり発音されておらず、「コ・ン・カ・イ」の4拍を「コ・カイ」と2拍のリズムで話してらっしゃいました。これは、いただけませんね。
そしてこれも「ラジオ深夜便」(9月30日(火)午前3時24分頃)なのですが、女性アナウンサー(昭和39年に高校を卒業したと話していたので、おそらく昭和20年生まれ?)が「夜明けの歌」の作詞者・作曲者名を紹介する時に、「いずみたく」さんを、
「いず・みたく(LH・HLL)」
と、「いず」で切るように話していたので、ビックリしました。知らないのか?「いずみたく」を?!普通は、
「いずみたく(HLL・HL)(LHH・HL)」
というどちらかのアクセントではないでしょうか。
他人の振り見て、わが振りなおせ。他山の石として気をつけることにいたしましょう。
2003/10/30

(追記)

「訛り」と言っていいのでしょうか?3月7日の夜の「NHKアーカイブス」で超ベテランの加賀美幸子アナウンサーの口調が、3か所、気になりました。
まずは上に出てきた「ラジオ深夜便」の女性ベテランアナウンサーと同じく、「東京」と言う時に早口になって「ト・キョ」と2拍になってしまうところ。もしかしたら、NHKではそういう訓練を受けているのかもしれません。というのは、
「東京というのは分っているので、そのあとに続く『○○区』をゆっくり読んで立てるために、その前の『東京』を早く読んでいるのではないか?」
と思われるからです。なぜそのように感じたかというと、加賀美アナはそのあと「平成13年」と言った時の「平成」も、早口で、
「ヘセ・ジューサンネン」
と言っているような感じだったからです。「平成」はもうわかっている「平成」の「何年なのか?」というのがポイントで、それをゆっくりに感じさせて立てるために、直前の「平成」を早く読んで、4拍のところが2拍になっているのではないでしょうか。
さらにさらに、
「そしてついに」
というつなぎの言葉も早口でした。こうなるとこれは、最近見につけたものではなく、長年の訓練で身に付いた読み方だと感じざるを得ません。本当のところはどうなのでしょうかね。もう少しゆったりでもいいと思ったのですが・・・。大大先輩のアナウンサーに対して失礼かとは思いますけれども。

2004/3/16

(追記2)

「追記」より数日前の3月3日。BSニュースを見ていると、ある女性アナウンサー(もしかしたらNHK職員ではなく外部の=タレントさんかも知れませんが)の読みが気になりました。彼女は大変早口で、「BSニュース」と読むのを聞くと、
「ビエスニュース」
と聞こえました。「ビー」を伸ばしていませんでした。また「20羽」を、
「にじゅうば(LHLL)」
と読んだ上、「3羽」
「さんわ」
と読んでいました。ガッカリしました。

2004/3/27

(追記3)

3月30日、お昼のNHKニュースで、大阪放送局の周山 制洋(すやまのりひろ)アナウンサーが、「大阪平野区」の「大阪」が「おさか」。「平成15年」の「平成」が「へせ」、「以上、お昼のニュースをお伝えいたしました」の「以上」が「いじょ」と、早口で短かったです。加賀美さんと同じようなしゃべり方でした。もしかしたらある年代以上のNHKアナウンサーは、そういうふうに読むように訓練されているのでしょうか?

2004/3/30

(追記4)

アナウンサーではないのですが、デル・コンピューターのCMで最後に出て来る若い女の子が、
「資料もらえますか」
と言うのですが、この「資料」が、どう聞いても、
「シロもらえますか。」
と聞こえるのです。百歩譲っても、
「シリョもらえますか」
で、「シリョー」と伸ばしていないのです。なんだかな。シリョ分別がないというか、シリョ、請求する気がなくなります。しかも今風の「もらえますか」も気に入らない。「ください」でいいじゃないですか。前のCMは「ください」だったと思うぞ。「もらえますか」は聞いてるようで聞いてない。もらえるのが当たり前、もらうのを前提としている甘えが感じられる言い方です、少なくとも私にとっては。以前、これに似た言い方ついても書きました。(平成ことば事情253「お借りしてもいいですか」)
とこんな感じで、すっかり小言幸兵衛だ。いいんだ、こんなことを感じない若い人向けの感性のCMなんだから、そういう人が気にいって買えば。

2004/6/3

(追記5)
追記4の話題は、どちらかと言うと、平成ことば事情1570「ジエタイとセフ」の方がよかったかな。

2004/6/3

(追記6)

1月2日のNHKラジオ第一、午後2時のニュースを読んでいた柴田 祐規子アナウンサーも、やはり長音が短かく「ん」が脱落していました。
「大勢」が「おぜい」、「皇居」が「こきょ」、「新年」が「しねん」
といった具合です。日本語が、そう変わり出していると考えた方がいいのでしょうか?
でもうちの新人アナウンサーの訓練では、それは認めないようにしますが。

2006/1/15




◆ことばの話1454「白い粉ある」

10月16日の日経新聞朝刊に、
「『白い粉ある』は乱用あおる〜麻薬特例法違反容疑、ネット書込み男2人書類送検」
という見出しの記事が載っていました。どういうことかと言うと、インターネットの掲示板に覚せい剤の販売を伝える書き込みをした愛媛県の男2人が、麻薬特例法違反(あおり・唆し)容疑で書類送検されたというもので、2人は6月上旬、2回にわたり、
「白い粉あります。1パケ1万円」
などとネットの掲示板に書き込んだそうです。これが、
「覚せい剤の乱用をあおった」
という疑いなんだそうです。ゲゲ!俺も前に「白い粉」って書いたな、ホームページに(平成ことば事情783「やばい」参照)。「小麦粉だったりして・・・」とも書いたけど。
まあ、この書類送検されたケースは「白い粉」と書いたものが、その前後の文脈などから明らかに「覚せい剤」であることが判断できた、ということなんでしょうね。そういうケースは、つかまることもあるということです。法の抜け穴を少しでもふさごうというのが目的でしょう。似たようなケースとしては、「バイ○グラ」と伏せ字を使っても法を逃れられなかった(平成ことば事情1143「バイ☆グラ2」参照のこと)というのもありましたね。

2003/10/30


(追記)
で、今回は悪いことをしていたヤツらを「白い粉あります」という表現でも「ダメ」と取り締まって「メデタシメデタシ」なのですが、よく考えると、ちょっとコワイ。最初に私が感じたように、「おまえも白い粉と書いていたな、怪しいヤツめ!」というふうに拡大解釈して捕まえに来られたら・・・そういうケースもないとも言えないところは、コワイですね・・・。
2003/11/5




◆ことばの話1453「ガチャポン」

新人アナウンサーのKさんが腕にキラキラ光るブレスレッドをしていました。あまりにキラキラしているので、
「・・・夜店で買ったの?」
と聞くと、
「違いますよおー、子どものガチャガチャじゃあるまいし・・・。」
とプンプン怒っています。さて、ここで出てきた「ガチャガチャ」、うちの6歳の息子は大好きで、おこずかいを溜めてはよくやっています。100円か200円を入れて昔のテレビのチャンネルのような部分をグルッと回転させると「ガチャッ」と音がして、中から球形のプラスティックの容器に入ったおもちゃが、取り出し口のところに「ポン」と出てくるものです。この自動販売機のことを、彼は、
「ガチャポン」
と呼んでいます。果たして、「ガチャガチャ」が正しいのか、それとも「ガチャポン」なのか?はたまた、呼び方に地域差があるのか?
Google検索(10月23日しらべ)によると、
「ガチャポン」= 2万2100件
「ガシャポン」= 4万0300件
「ガチャガチャ」=4万6600件

但し、「ガチャガチャ」だけだと単なる擬音語かもしれないので、「玩具」「おもちゃ」という言葉もキーワードに追加して調べてみました。(10月30日しらべ)その結果は、
「ガチャガチャ・玩具」  =3170件
「ガチャガチャ・おもちゃ」=8000件
「ガチャポン・玩具」   =2160件
「ガチャポン・おもちゃ」 =4170件
「ガシャポン・玩具」   =7490件
「ガシャポン・おもちゃ」 =9250件

調べてみると、どうも「ガシャポン」というのは、玩具メーカーの「バンダイ」が、また「ガチャ」というのは「トミー」が商標登録しているようです。
一方で「ガチャガチャ」という名前も浸透していますから、うちの息子が言う「ガチャポン」というのは「ガシャポン」と「ガチャガチャ」が混ざって合体したもののようですね。
また、セガでは「ガチャガチャマシン」(カプセル玩具自動販売機)、ユージンでは「ガチャ」と呼んでいるようです。あれ?「ガチャ」はトミーの商標登録ではなかったのかな??
そして、関西と関東で呼び方に差があるのかどうかを調べるために、それぞれの呼び方に「関西」「関東」もくっつけて検索しました。(10月22日)
「ガチャポン・おもちゃ・関西」=460件
「ガチャポン・おもちゃ・関東」=377件
「ガシャポン・おもちゃ・関西」=719件
「ガシャポン・おもちゃ・関東」=635件
「ガチャガチャ・おもちゃ・関西」=907件
「ガチャガチャ・おもちゃ・関東」=777件

うーん、思ったほど差はありませんねえ。でも「ガチャポン」も「ガシャポン」も「ガチャガチャ」も、ともに関東より関西の方が件数が上回っているという点は少し注目ですね。
また、毎日新聞の、
「あのガチャガチャ 大人の郷愁…今や260億円市場」
という記事(2003年9月8日:小国綾子記者)
も見つけました。
その記事を要約すると・・・
「ガチャガチャ」「ガチャポン」など呼び方も人それぞれだったりする身近なおもちゃ(「ガシャポン」はバンダイの商標登録)、カプセル入り玩具販売機が、今、街角を席巻していて、以前は子供相手だったのが、アイテムを充実させて20〜30代まで夢中にさせているとのこと。大人向け商品が出始めたのは5年ほど前。テレビアニメや漫画のヒーローの精巧なフィギュア、子供時代に使った道具のミニチュアなどが次々登場して人気となりました。販売機台数の増加を受けて日本玩具協会は2年前、「カプセル玩具」を新分野に設定し、新たに統計を取り始め、昨年度の市場規模は260億円。前の年度より24%も増えたそうです。
 これまでバンダイ・ユージン両社がほぼ独占してきた市場に今年7月、コナミ(ゲームソフト)・タカラ(玩具)が連合して参入。通常100〜200円だが、大人客を意識して高級感ある500円の商品も用意したそうです。
  郊外型のレジャー施設やスーパーが100台単位で並べ、かつては空きスペースを埋める「すきま商品」だったのが今や表舞台に置かれ、300台を並べる秋葉原ガチャポン会館には、サラリーマン客が目立つそうです。「子供のころは、親に『1回だけ』と我慢させられた。小遣いが自由な20〜30代の独身男性にとって『全部集めたい』は昔からの夢」なのかもしれません・・・
ということ。 
ふーん、すごい人気なんですね。うちの子どもも、はまるはずだわ。
2003/10/24
(追記)

久々の追記です。2007年6月23日の読売新聞夕刊の「子供欄」で、「カプセルおもちゃ」を特集していました。見出しは、
「ガチャガチャポン!何が出るかはお楽しみ」
「自動販売機にお金を入れて、ハンドルをぐるりと回すと出てくるカプセルおもちゃ。」
と本文にはあります。この記事では、「自動販売機のハンドルを回す時の音から、一般的に
『ガチャガチャ』と呼ばれることが多い」として、メーカーによって名称が違い、
「バンダイ=ガシャポン」「ユージン=ガシャ」
と書いてあります。さらに興味深いのは、このカプセルおもちゃ、
「アメリカで生まれ、42年前に日本に初めてやってきた」
という「起源」を、ガチャガチャの研究を趣味でしているという杉村典行さん(37)が話している点。42年前というと、1965(昭和40)年かあ。アメリカの会社から話を聞いていた日本の貿易商が、10円でおもちゃを販売する自販機を輸入したのが始まりだそうで、その時の商品は、ミニチュアの聖書や砂時計などだったそうです。その4年後(1969=昭和44年)に輸入された100円用が、当時ブームだったボウリング場などに設置されて、ピストルのミニチュアなどが商品になっていたとのこと。国産の自販機ができたのは1970年代のはじめ頃。1977(昭和52)年には、バンダイがウルトラマン関連グッズを売り出してヒット。80年代に入ると人気アニメの「キン肉マン」「ガンダム」のキャラクターを扱った商品が次々と出て「第一次ブーム」が到来したということです。ここ10年ほどは女の子や大人も買い求めるようになり、「第2次ブーム」と呼ばれているそうです。道理でうちの子も・・・。
日本玩具協会によると、2005(平成17)年度のガチャガチャ市場の総売上げは、約335億円に上ったとのこと!業界最大手のバンダイは、2006(平成18)年度に国内だけで、約1億500万個販売。ものすごいですね!海外でも13か国で販売しているそうです。うーん、大変勉強になりました!
2007/8/5
(追記2)

2008年5月21日、カプセル型玩具誤飲による男児脳障害で両親がメーカーを提訴するというニュースが新聞に載りました。その「カプセル型玩具」の呼び方が、各紙バラバラでした。
(朝日)「ガチャガチャ(などと呼ぶばれる)」、「玩具カプセル」 
(産経)「ガチャポン」  
(読売)「ガシャポン」
(毎日)「ガシャポン」
毎日新聞は、実は5月9日の朝刊では、
「パンツのガチャガチャ」
という見出しと本文で、「ガチャガチャ」を使っていたのですが、12日後の21日は「ガシャポン」になっていました。これだけ一般的になっていても、なかなか名称が統一されないものの一つですね。
2008/5/23



◆ことばの話1452「プロはだし」

10月29日朝のNHK「生活ほっとモーニング」。それまで勤めていた役所を辞めて念願のパン屋を開店したという53歳の女性の話題で、
「プロはだし」
という言葉が出てきました。え?それも言うなら、
「玄人(くろうと)はだし」
じゃないの?「玄人も裸足で逃げるくらい上手」という意味で。そう思っていました。ただ意味の上からは、「玄人」=「プロ」と置き換えることも「可能」ではありますから、そこから生まれた言葉でしょうかね。「プロはだし」は、『日本国語大辞典』『広辞苑』『新潮現代国語辞典』『三省堂国語辞典』『新明解国語辞典』には載っていません。
インターネットの検索エンジンgoogleでの検索では(10月29日)、
「プロはだし」=736件
ありました。
一方、「玄人はだし」は、
「玄人はだし」=2890件
「くろうとはだし」=75件

また、「間違い」である「素人はだし」は、
「素人はだし」=185件
「しろうとはだし」=34件

でした。
2003/10/30



◆ことばの話1451「アールと反」

10月9日、滋賀県の近江八幡市の農家の田んぼに実ったイネが、コンバインで刈り取られて盗まれるという、なんとも大胆な窃盗事件が報道されました。
そのニュースを報じた各新聞、田んぼの広さの表記が微妙に違います。
(読売)田んぼ(約十八アール)
(産経)水田約二十アール
(日経)水田、約二十アール
(朝日)約1800平方メートルの田んぼ
(毎日)水田2反(約20アール)

まあ、「水田」か「田んぼ」は置いておいて、広さの単位が「アール」「平方メートル」「反(たん)」の3つが使われているのです。メートル法でいうと、というか、普通、新聞紙面で使われるのは、「平方メートル」だと思うのですが、時々「アール」「ヘクタール」も出てきますね。ただそれは「水田やはたけ」「山林(の山火事)」のニュースに限られるような気もします。
これについては、読売テレビの報道フロアでも「どの単位にするか?」の話が出たそうです。結局「アール」を使ったのですが。
その際、Sアナウンサーの話によると面白い傾向があったそうです。というのは、
「子どもの頃にマンションで育った人は「平方メートル」を、一戸建ての家で育った人は「坪」を好むという傾向があった」
のだそうです。なんとなくうなずける、納得できる結果ですね。
それにしても、なぜ毎日新聞は「反」を使ったのか。ちょうど用語懇談会の会議があったので、毎日新聞の委員の方に質問したのですが、その方もわかりませんでした。また、わかりましたら、報告します。

2003/10/24

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