◆ことばの話1425「モツァレラチーズかモッツアレラチーズか」

「ニューススクランブル」のHアナが読んだナレーションの中に、
「モツアレラチーズ」という言葉が出てきました。それを聞いたMアナが、
「モッツアレラチーズじゃないの」
と言いました。つまり小さい「ッ」が入るかどうかという話です。
「以前は確かに小さい『ッ』が入っていましたけど、最近は入らないんじゃないですか?」
とHアナ。手元の辞書(新明解、三省堂国語)にはこの言葉は採用されていません。
読売新聞校閲部編『新聞カタカナ語事典』(中公新書ラクレ)には載っていて、
「モツアレラチーズ」
でした。小さい「ッ」は、なしです。
インターネットでGoogle検索してみました。(10月8日)結果は、
「モツアレラチーズ」・・・・・150件
「モッツアレラチーズ」・・・・3800件

で、小さい「ッ」が入った方が圧倒的に多いです。
この話をSアナにして、「どっちだと思う?」と聞いたところ、
「モッツアレラチーズでしょう。小さい『ッ』が入る。」
という答え。
「でも読売新聞のカタカナ語事典には、小さい『ッ』は入っていないんだよ。」
と言うと、
「表記には入らなくても、読む時には入れて読むんじゃないですか?他にもそういう例はあるでしょう。」
そうか、確かに表記と読みが違うケースはあるな。「シンポジウム」と書いて「シンポジューム」と読むとか、決まりではないけど、「ファストフード」と書いてるけど誰もそのとおりに言っている人はなくて、みんな「ファーストフード」と言っているとか。この「モツアレラチーズ」も同じ仲間なんでしょうか?
ピザでも食べながら考えようっと。

2003/10/8

(追記)

12月15日の午前中にNHKで放送していた「食彩浪漫」という番組に出ていた、南イタリアはナポリ出身の料理人で、現在東京でピッツアの店を開く、サルヴァトーレ・クオモさん(31=父がイタリア人、母が日本人)は、
「モッツアレラ・チーズ」
と言っていました。ちなみに彼は、
「ピザはアメリカのもの。イタリアのはピッツア。」
と言い、リポーターが「ピザ」と言ったのを訂正していました。ただ、
「ピザ生地」
は、「ピッツア生地」とは言わずに「ピザ生地」と言っていました。
2003/12/15

(追記2)

2008年3月、イタリアのカンパーニア地方の「モッツァレラチーズ」から、ダイオキシンが検出されたというニュースが流れ、3月23日から厚生労働省は輸入を一時停止しています。
このニュースを3月27日の『ニュースリアルタイム』でも伝えていましたが、表記も発音も、 「モッツァレラチーズ」
でした。女性ナレーターの読みは、何回かに1回は、
「モツァレラチーズ」
に近くなっていましたけどね。3月27日の読売新聞夕刊も、
「モッツアレラチーズ」
でした。
2008/3/27

(追記3)

3月22日の毎日新聞の電子版、CNNニュースの電子版、3月28日のテレビ朝日のお昼のニュース、同じく3月28日の朝日新聞朝刊でも、
「モッツァレラチーズ」
でした。Google検索(3月28日)では、
「モッツァレラチーズ」=68万4000件
「モツァレラチーズ」=  3万9000件

でした。
2008/3/28



◆ことばの話1424「ソリューション」

カタカナ語が溢れています。
特にパソコン・デジタル関係の用語なんて、みんなカタカナです。基本的に、そういったものとは縁遠い私は、こうやってワープロのように使うこととインターネットを使うことぐらいしか、パソコンも使いませんし、便利だとは思いますがそれ以上にもっともっと便利になって欲しいとは、それほど思いません。それよりも、
「わからんカタカナ語を使うのは、極力やめてくれ!」
という思いと、
「せっかく操作を覚えた頃に、(私にとっては)必要のないバージョン・アップなどやめてくれ!」
という思いの方が強いです。
さて、そんな今日この頃、気になる言葉があります。出来たら使って欲しくない言葉です。
「ソリューション」
この言葉を初めて聞いた時は、
「ソ連の宇宙船か?」
と思いました。あ、それはソユーズか。
英和辞典を引くと、
「解決、解明、解答、溶解(状態)、溶液、分離」
などと出ています。solveの名詞形かな。
知らないことはないけれど、カタカナになって日本語の文脈に出てくると、
「お初にお目にかかります。」
という感じで、なじまない。得意げに使う人を見ると、疎外された感じがします。
「おまえ、そんなことも知らないの?」
というふうな。
「『解決』なら『解決』と、日本語で言えよな!」
と言いたくなってハッと気づきました。この「ソリューション」の場合は、たとえば「解決」という言葉に置き換えれば、問題は"解決"するかのように見えますが、私たちが「カタカナ語」を嫌う本当の理由は、「カタカナ」が嫌いなのではなくて、そのカタカナが示すものの意味や存在が理解できないからではないか?漢字に置き換えたところで、その漢字・漢語が理解できないようなものであれば、やはり意味はわからないのですから、疎外感を覚えて嫌うのではないか。
ただ、漢字の場合は表意文字ですから、その漢語を知らなくてもここの漢字に分解することで、なんとなくイメージは湧いてくるかもしれません。しかしそれがカタカナだと表音文字ですから、イメージすら湧かずによけいイライラするのかもしれません。
という事は、例えば英語の場合に、「英語の持つ特徴」を知っておれば、漢字で意味の想像がつくように、たとえカタカナ語になっていても、意味の輪郭がつかめるのかもしれませんが、そこまではなかなか・・・。
この問題の「ソリューション」は、なかなか一筋縄では行きそうもありません・・・。

2003/10/20



◆ことばの話1423「たそがれる」

遅めの夏休みをとった9月下旬、6歳の息子と京都の城陽市にあるショッピングセンター内の映画館に行きました。お目当ての映画は、「ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス」。息子にとっては、初めて行く映画館です。道に迷って、上映時間に10分ほど送れて、「座れるかな」と心配しながら重いドアを押し開け、暗い館内に目を凝らすこと1、2分。そこで始めて、館内にある100席ほどの座席に、人が一人も座っていないことに気づきました。つまり、観客は私と息子の2人だけ。まさに貸し切り上映会です。
既に上映されていた映画は、なんだか分らないのですが、怪獣とウルトラマン一家が、ディスコのようなところでラップ音楽に合わせて踊っています。なんじゃこりゃ!たんなる怪獣お宅のコスプレ・かぶりものディスコ大会か!これは6歳児が見ても(もちろん大人が見ても)楽しいとは思えません。がっかりして、席につくと、しばらくしてそのディスコ大会は終わり、字幕のクレジットが出てました。その中におもしろいものを見つけました。
「照明・泉谷しげる」
ウッソー!!あの泉谷しげるが、ウルトラマンの映画の照明さんをやっているの?と、一瞬思いましたが、もちろんそんなはずはなく、同姓同名なんでしょうね。きっと御本人は、何度も同じ事を言われているのでしょう。
さて。そのウルトラマン・ディスコ大会は、本編の「付け合わせ」のようなものだったようです。(スタッフの楽しみの為に制作されたようにも見えましたが。)それが終わると、いよいよ本編のはじまり、はじまり!
冒頭部分、ウルトラマン・コスモスに変身する主人公のハルノムサシ隊員が、一人でボーッとしていると、先輩のフブキ隊員がやってきて、後ろから声を掛けました。

「朝っぱらから、何、たそがれてんだよ!」

この「たそがれる」という表現、これまでも時々耳にしてはいたのですが、「いまどき」の言葉ですよね。この場合、「朝っぱらから」ということに対比させて、なかなかおもしろい言い方だとも思ったのですが。
Googleで検索(10月2日)してみました。

「たそがれる」= 3200件
「たそがれてる」= 983件


本来「たそがれる」という言葉は、「たそがれ」という名詞に「る」を付けることで動詞化したもので、「徐々に黄昏時になってくる」ことを意味していたと思いますが、ここでフブキ隊員が使った「たそがれる」は、それを更に比喩的に用いて、
「一人で暗く沈んでいる(人の)状態」
を指していると思われます。とても気の利いた言葉ではないでしょうか。プラスイメージでは使われないとは思いますが、情景が目に浮かぶようです。
『日本国語大辞典』で「たそがれる」を引くと、
「(名詞「たそがれ」を動詞化したもの)夕暮れとなる。暮方になる。また、比喩的に、盛りが過ぎて衰える。」
とあります。この「比喩的に」という部分が、今回のウルトラマンコスモスの「たそがれる」に通じるのではないでしょうか。用例としては、こんなものが載っていました。
* 後藤明生「私的生活」(1968)「ややたそがれはじめたふたりの会話に区切りをつけようとしたつもりであったが」
「会話」も、たそがれるんだ!しかも今から35年も前に使われています。若者言葉ということでもないのですかね。発見した、という気がしました。

2003/10/21



◆ことばの話1422「複本」

9月30日、読売新聞朝刊の「論陣論客」という欄で「図書館と著作権」についての論説が載っていました。作家の三田誠広さんと慶応大学教授の糸賀雅児さんがそれぞれの主張を展開されています。その中で目に付いた言葉は、
「複本」
です。聞き手である読売新聞・解説部の鈴木嘉一さんが書いたリードの部分と三田さんの発言部分に「複本」という言葉が出てきます。文字どおり「複数の同じ本」ということだと思います。図書館で、人気の高いベストセラーの本などを何冊も購入することがあるようですが、複数の本を備えることを「複本」と呼ぶのではないでしょうか。
『広辞苑』を引いてみると、ちゃんと載っていました。
「複本」=(1)原本のうつし。副本。(2)一つの為替手形についてその手形上の権利を表すために発行された手形証券。
あれ?でもこの「複本」の(1)の意味と、読売新聞に出てきた「複本」、ちょっとニュアンスが違うなあ。『新明解国語辞典』では「副本」で見出しが出ていて、「複本とも書く」となっているけど、意味は「コピー、うつし」ということ。どちらかと言うと、
「複製した本」
という感じですね。『日本国語大辞典』はどうでしょうか?
「複本」=「(1)原本を書写したり、別に備えたりして、原本と同一内容の本を新たにつくること。また、その本。複製本。(2)略。」
この「別に備える」というのが、読売新聞で使っていた「複本」なんでしょうね。この前の項目に「副本」というのもあって、ここには、
「副本」=「(1)原本をうつすこと。また、原本のうつし。法律的には、ある文書の正本と同一内容のものとして作成される文書をいう。戸籍の副本、登記申請書の副本など。(2)同一図書が二部以上ある場合、予備としてとっておくほうの本。
ああ、これだ!この(2)の意味の方。これが読売新聞で使われていた「複本」の意味の「副本」だ!
でもふつう「副本」と書くと「副読本」のようなものをイメージしませんか?
辞書を見ると、読売新聞に載っているような図書館の「ふくほん」は「副本」と書くように思われますが、「複本」も、ニュアンスは伝わりそうな気がします。
Googleで検索してみると(10月21日)、
「複本」= 1万0100件
「副本」=136万 件

これだけだと、ヘンなものも混ざっていると思いますので、「図書館」というキーワードを追加して検索しました。
「複本、図書館」=1550件
「副本、図書館」=2280件

ということで、ネット上では「複本:副本」の比率は、大体「5:7」で「副本」の方が使われている、ということになりました。

2003/10/21



◆ことばの話1421「稲魂」

いよいよ日本シリーズが始まりました。9月15日に阪神の優勝が決まってから、はや1か月。意外と早かったような気がします。相手はパリーグの覇者・ダイエーホークス。ダイエーと言えば、100打点を挙げた4人の打者「カルテット打線」を始め、その打線に注目が行きますが、ピッチャーも20勝を挙げた斉藤投手のほか、新人ながら大車輪の活躍の和田投手がいます。その和田投手は早稲田大学の出身なので、後輩です。エッヘン。こちらが先輩。でも1学年1万人も学生がいるマンモス大学ですから、「出身校が一緒」というのも「それがどないしたん?」てなもんですが。
その和田投手が投げて勝った試合の福岡ドームのスタンド、ファンの人が持っていたプラカードに書かれた二文字が、
「稲魂」
でした。「イネコン」ではなく、おそらく「とうこん」と読むのでしょう。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、早稲田大学のOB会は、「早稲田」の「稲」の字を取って、大体「稲門会」
と名づけられることが多いのです。よく、
「イナモンカイですか」
と読まれて、暴力団のように思われるのですが、違います。こう書いて
「トウモンカイ」
と読むのです。だからおそらくこの「稲魂」も「トウコン」だと思います。そしてこれは、音声上は、
「闘魂」
にひっかけたシャレでもあるのでしょう。さらにもう一つ言うと、数年前の流行語大賞にも選ばれた、ジャイアンツ・上原投手の、
「雑草魂」
もイメージしたのではないでしょうか。と思っていたところ、部屋の掃除をしていて出てきた5,6年前の雑誌に、「死語になった野球用語」という特集で、
「草魂」
という言葉が出ていました。これはあの「投げたらアカン!」で一世を風靡した、近鉄の鈴木啓示投手の言葉、とのこと。そう言えばそうでした。1978年前後だったのではなかろうか。思えば野球のピッチャーに、
「○魂」
というようなキャッチフレーズは、鈴木さんから始まったということですかね。このところ、復活していますね。「○魂」。「いやいや、もっと昔にあるよ」とご存知の方、ご連絡ください。
今、「○魂」の○の中に入れて欲しい言葉は、「虎」。
タイガース、ガンバってくれよぉ・・・。

2003/10/20