◆ことばの話1400「高齢者の原宿」

9月15日の敬老の日を控えて、東京は巣鴨で、高齢者にもインターネットなどを使ってもらおうというイベントが行われ、林家ペー・パー子さん夫婦がそのイベントの顔として登場したという芸能ニュースを「あさイチ!」でお伝えしました。その際に巣鴨のことを紹介したコメントに、
「高齢者の原宿」
という表現がありました。アナウンサーはそのまま読んだのですが、反省会でKプロデューサーから、
「巣鴨は『おばあちゃんの原宿』ではないのか?」
という指摘がありました。言われてみればそうですね。「高齢者の原宿」は、表現が固いなあ。それにあそこは主に女性、つまり「おばあちゃん」が行くところではないのかなあ。
Kプロデユーサーは、
「単なる高齢の女性を、自分の祖母でもないのに『おばあちゃん』ということに対してクレームがつくケースがあるので、それに配慮して『高齢者の原宿』としたのか?」
という疑問も持っていたようですが、ディレクターは特にそこまで考えたわけではなかったようです。
Googleで「高齢者の原宿」を検索してみると、(9月15日しらべ)
「高齢者の原宿」= 10件
「高齢者の原宿・巣鴨」=8件

ということで、「なくはない」ものの、たったの10件。極めてまれな使用例と言えます。それに対して、「おばあちゃんの原宿」は、
「おばあちゃんの原宿」= 1610件
「おばあちゃんの原宿・巣鴨」=1440件

ともに1000件以上。圧倒的に「おばあちゃんの原宿」の勝ち!!ですね。さらに「おばあさんの原宿」で引いてみると、
「おばあさんの原宿」= 49件
「おばあさんの原宿・巣鴨」=42件

ちょこっと出てきます。「ちょこっと」と言っても「高齢者の原宿」の約5倍ですよ。そして「おばあちゃん」があるなら「おじいちゃん」「おじいさん」もあるのでは?と検索してみると、ありました、ありました。
「おじいちゃんの原宿」= 13件
「おじいちゃんの原宿・巣鴨」=10件
「おじいさんの原宿」= 1件
「おじいさんの原宿・巣鴨」= 1件

ということで、それぞれわずかながら出てきました。「おじいさんの原宿」たったの1件ですが、それは「巣鴨」のことではなく、な、なんと、韓国ソウルのバゴタ公園というところを指していたのでした。「バゴダ公園」ってどこ??まあ、それだけ一般的ではないということでしょうね。
今後「巣鴨」の代名詞としては、やはり「おばあちゃんの原宿」を使うようにしましょう!

2003/9/16




◆ことばの話1399「ナンパする」

報道のSキャスターから電話です。
「ストレート・ニュースの原稿で、『ナンパを目的としたナンパ族と呼ばれる若者達』という文章が出てくるんですが、なんの説明もなしに『ナンパ』って使ってもいいですかねえ?」
「うーん、『ナンパ』は俗語やろ。品がないよなあ。ストレート・ニュースでは使いにくいんじゃないかい。」
「じゃあ、なんて言えばいいですか?」

そう聞かれてハタと困りました。なかなか言い換えに適当なことばが見つからないのです。
「ガールハント・・・・とか・・・」
「それじゃまるで昔の出来事のようじゃないですか」
ごもっとも。「ガールハント」は"死語"でしょうな。関連の言葉をGoogleで検索してみました。(9月11日しらべ)
「ナンパ」=32万件
「ナンパする」=1万3500件

「ナンパ」はものすごく使われていますね、ネット上では。そういった意味では人の口に膾炙していると言えるでしょう。「する」を付けた「ナンパする」という動詞の形でも、よく使われています。そしてこの「ナンパ」の語源は当然「硬派・軟派」の「軟派」でしょうから、それも検索。
「軟派」=2万4300件
「軟派する」=191件

漢字の「軟派」も、なかなかよく使われています。でも漢字の「軟派」に「する」は、なじまないようですね。191件しかありませんでしたから。
そして、さきほど「昔の感じがする」といわれた「ガールハント」はと言うと、
「ガールハント」=2070件
でまずまず。でも「ナンパ」「ナンパする」には遠く及びません。ふと思い付いて、こんな言葉も検索しました。
「ボーイハント」=3940件
おお!「ガールハント」よりもたくさん出てきたじゃないか!今や「ハント」の対象は「ガール」ではなく「ボーイ」ということか??
結局ニュースの原稿では、
「女性目当てに集まってくる、いわゆる『ナンパ族』」
という表現に落ち着きました。

2003/9/12

(追記)

このニュースに関しては、坂アナウンサーの「坂のひと言」に詳しく書かれていますので、転載します。

9月11日(木) 【ナンパ族を撃退せよ!】

 JR和歌山駅周辺の駅前の路地。昼間、地元客で賑わいを見せる場所だ。ところが深夜になると、その姿は一変する。けたたましいエンジン音にクラクション・・・・異性との出会いを求め車で徘徊する、通称ナンパ族≠ナ埋め尽くされるのである。週末ともなると車の数は150台。数年前から、騒音や交通妨害が問題となってきた。 
 そんな状況に歯止めをかけようと、和歌山県が条例改正に乗り出した。午前0時から5時までの間、駅周辺での徘徊行為を禁止し、命令を無視する者に対して30万円以下の罰金を科すというものだ。条例改正案はこのまま可決される見通しで、12月に施行となる予定。深夜の車での徘徊を条例で禁ずるのは全国初のケースである。 
 もとより、男女の出会いに公権力が介入するのは無粋というもの。しかし、無関係の他人に迷惑をかける恋愛≠ネど成立しない。まして、ナンパ族を巡っては婦女暴行事件も続発している。警察には、冷静かつ適正な条例適用で、不逞の輩を撃退することを期待したい。

2003/9/15



◆ことばの話1398「5両目か?4両目か?」

8月19日、京阪電車の特急で脱線事故が起きました。京阪の脱線事故と言うと、1980年2月21日の、置き石による脱線事故を思い出しますが、今回は、免許を取って間もない男性が、自動車の運転操作を誤って踏み切り内に入ってしまったのが、事故の原因でした。
この事故の取材をして現場から情報を送ってくる報道の記者が、
「脱線したのは5両目です。」
と伝えてきたので、それに基づいてニュースを読みました。しかし、あとでよその局のリポートを見ていると、
「脱線したのは、4両目」
と言っているではありませんか!これはどういう事か?としばらく考えて答えが分りました。この特急電車は、「8両編成」だったのです。つまり、脱線したのは、
「前から数えると5両目、後ろから数えると4両目」
で、同じ車両のことを指していたのです。あとは
「どちらに向かって走っていたか」(どちらが前なのか)
によって5両目なのか4両目なのかは変わります。その情報が錯綜していたということでしょう。ちなみに正解は「4両目」だったということです。結果的には「誤報」を伝えてしまいました・・・。

2003/9/7


◆ことばの話1397「対面でない販売は禁止」

いわゆるドラッグストアチェーンの「ドン・キホーテ」が東京の店舗で9月2日から、夜間に薬の「配布」を始めました。これは8月1日から夜間に、テレビ電話で薬剤師が客に薬の販売を行っていたのですが、これについて厚生労働省が、「直接の対面でない薬の販売は薬事法に違反する恐れがある」として許可しなかったことを受けて、ドン・キホーテ側が「販売が駄目なら、配布する」という姿勢をとったというものなのです。
ドン・キホーテ側の、
「夜間、薬局も開いてなくて困っている病気のお客様に対応しなくてどうするんだ!」
という言い分も、もっともだと思います。実際、8月の1か月間で、夜間に6000人もの利用(薬の購入者)があったそうですから、これによって「助かる」人が多いのも事実でしょう。一方、
「直接対面しないでテレビ電話というバーチャルな方法での"対面"で薬を販売して、もし間違いがあったらどうする!」
という厚生労働省側の言い分もわかります。病気を装って薬を詐取されたり、それによる被害者が出た場合は一体誰が責任を取るのでしょうか。薬剤師の責任は問われるのでしょうか?
そういった根本的な問題はさておき、文章の解釈として、
「薬の対面でない販売は禁止」
という文章に関して言うと、これはドン・キホーテ側は分が悪い。というのもこの文章で表そうとしているのは、
「薬は微妙で危ないものだから、その販売に関しては対面でしか行なってはいけない」
ということは、当然
「薬は対面せずに、患者に渡してはならない」
ということを意味し、「販売禁止」だけではなく「配布も禁止」と解釈するのが当然だと思います。対面でなければ、「販売」しても「配布」しても、危険性は変わらないからです。
その意味では、現状の法律の精神に基づけば、厚生労働省に勝ち目が有るのではないでしょうかね。
それにしてもドン・キホーテの薬剤師の人の
「本日はいかがなさいましたか?」
という問いかけも気になったなあ。あれは、
「本日は、どうなさいましたか?」
でいいのでは?「どう」=「いかが」なのでしょうか?「いかがなさいましたか?」は、丁寧すぎませんかねえ???

2003/9/3

(追記)

実際に薬局の薬剤師の方は、どう感じているのか?薬局にリポビタンDを買いに寄ったついでに「どう思います?」と聞いてみたところ、
「要は、このリポビタンかて、以前はコンビニでは売れなかったでしょ。それが規制緩和で売れるようになっていった。薬局に置いてある薬の中でもそうやって、医薬品を医薬部外品に指定を変えることでコンビニでも置けるようにしたら、それじゃ、今まで医薬品だったのは、なんだったのか!ということになるでしょ。もちろん一分の句刷りを除いて今薬局で売っている薬は、多少分量を間違えて飲んだとしても、命にすぐ関わるようなものはほとんどないですけど。その辺がなかなか納得出来ない。もちろん、そうやって薬剤師は薬剤師にしかできないような分野のことをやるようにしていけばいいんですけどね。」というような話をすると共に、
「今、業界では、こんなビラを配れ!言われてるんですわ」
と一枚のプリントを見せてくれました。そこには、
「薬の適正な試用と皆様の安全のために」
と題された文章が記されていました。要約すると、
「薬は元来身体にとっては異物で、『毒』。薬局・薬店以外でしか開く車なしに自由で薬を売ることが出来るのは、世界でもアメリカだけ。風邪薬の大量購入や盗難が相次いでいるために一部の州では販売の制限や陳列の禁止を行っている。」
というようなことが書かれており、最後には、
「お薬は必ず専門家に相談してご使用下さい」
と結んでいます。
結局、「薬局(薬剤師)業界と規制緩和(コンビニなど)との闘い」ではあるのですが、もう一つの観点は「安全と便利さの闘い」ということも出来ます。命に関わることだけに、
「安全なくして便利さはない」
ことだけは確認して欲しいものです。安全がなければ暗然となります。しゃれてる場合ではありませんね。

2003/9/7


◆ことばの話1396「数の数え方2」

平成ことば事情1266「数の数え方」の続きです。
*8月19日、福岡放送の女性アナ:「九人」を「くにん」と読んでいた。また、同じ日の夜の野球中継で日本テレビの船越アナも「くにん」と。日本テレビ鷹西アナも「くにん」と読んでいたので、日本テレビは「くにん」派のようですね、「きゅうにん」ではなく。
*8月20日TBSの土井アナウンサー
「キリンスーパーサッカー2003(ニーマルマルサン)
これに関しては、
*6月8日:日本テレビ・鈴木健アナウンサー
「キリンカップサッカー2003」→「ニーマルマルサン」
*6月11日:テレビ朝日・角澤アナウンサー
「2006ドイツワールドカップ」→「ニーマルマルロク」
「埼玉スタジアム2002」→「ニーマルマルニー」

というふうに言っているので、サッカーのこの手の西暦の読み方は、各局のスポーツアナウンサーの間で、統一されているのかもしれません。 *8月24日深夜、テレビ朝日のスポーツニュースで、女性アナが、阪神タイガースのロード中の勝敗を、
「4勝11敗(はい)」と清音で。普通は「11ぱい」と半濁音。
*8月28日、朝日放送・堀江アナウンサー、宅間被告判決公判で。
「一番大きな201(にーまるいち)号法廷で」
*9月2日、TBS「ニュース23」草野満代キャスター
「10(ジュー)の質問」・・・世界陸上・銅メダリストの末続選手を迎えて。
*9月7日、朝日放送、阪神・横浜戦、実況アナウンサー
「8点目(ハッテンメ)」「8対0(ハチタイレイ)」
*9月14日、日本テレビ・山本真純アナウンサー
新潟の少女連れ去り事件のニュースで、リード部分を読んだ山本アナは「15歳(LHHLL)」とコンパウンドしていたが、本記を中継で伝えたテレビ新潟の鈴木えーもんアナウンサーは、「15歳(HL・HLL)」と言った。

2003/9/15

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