◆ことばの話1370「いたきも」

足裏マッサージ特集の回の「あるある大事典」を見ていると、出演者の一人が足のマッサージを受けての感想を聞かれて、
「『いたきも』ですね。」
と言っていました。これは、
「痛いけれども、気持ち良い」
という意味でしょう。「いたぎもちいい」という言い方も聞いたことがあります。でも「きもちいい」が連濁して「ぎもちいい」となると、本当に気持ち良いのかどうか、ちょっと「痛い」方が強いのではないか、「ぎもちいい」が悲鳴の様にも聞こえてきます。
いつものように、Googleで検索してみましょう。(8月27日)

「いたきも」= 215件(〜「かたはら、いたきもの」などもある)
「いたぎも」=19件(「いたぎもちいい」の部分も含まれている)

「いたぎもちいい」= 8件*
「いたぎもち良い」= 0件*
「痛ぎもちいい」= 6件*
「痛ぎもち良い」= 1件*
「いた気持ちいい」=20件
「いた気持ち良い」=48件
「痛気持ちいい」= 832件
「痛気持ち良い」= 239件
「いたきもちいい」=45件※
「いたきもち良い」= 0件※
「痛きもちいい」=48件※
「痛きもち良い」= 6件※

ということですが、「きもちいい」か「ぎもちいい」と連濁するのかですが、それは
「きもちいい」(*印の合計)=15件
「ぎもちいい」(※印の合計)=99件

で、「ぎもちいい」の方が多いですね。一方、漢字で書かれているので、連濁しているかどうかわからない「痛気持ち良い」「痛気持ちいい」はそれぞれ3ケタの件数使われています。「痛」は平仮名で「気持ち」の部分が漢字の表記も、それぞれ2ケタあります。
世はストレス社会、肩や足腰が凝る人が増えると、それに伴ってマッサージも流行り、そうすると、この
「いたぎもちいい」
という言葉を、ため息ともに吐き出す人も増えるのではないでしょうかね。ハアー。

2003/8/27


◆ことばの話1369「みっともよくない」

久米宏さん(59)が、18年続けてきた番組「ニュースステーション」を、来年の3月で降板することが決まり、昨夜(8月26日)、記者会見が行われました。その中で久米さんが使った言葉に、こういうのがありました。
「みっともよくない」
このままズルズルと番組を続けることに対する久米さんご自身の感想です。これは勿論、
「みっともない」
が元の形です。たまに耳にします。「みっともない」とストレートに言うことを、少し避けているニュアンスが感じられます。「みっともない」の「ない」の部分を「よくない」に置き換えているわけですね。これがさらに手の込んだものになると、
「みっともいいものじゃない」
という言い方もごくたまに耳にします。これは「みっともない」の反対の言葉として、
「みっともいい」
という言葉があると想定して、それを否定している、ということですね。
「とんでもございません」
というのも時々耳にしますが、これは、
「とんでもない」
が「とんでも」と否定の「ない」がくっついて出来た言葉だと勘違いして、「ない」の部分を丁寧にした「ございません」をくっつけて出来た言葉です。しかし、「とんでもない」は「とんでも」+「ない」ではなく、「とんでもない」は活用語尾が「い」なのですね。だから「とんでもな」+「い」なのだそうです。もし「とんでもない」を正しく丁寧にいうならば、
「とんでもないことでございます」
というべきなんだそうです。「みっともよくない」にはそれと似たものを感じました。
ただ久米さんの場合は、間違って使ったというのではなく、間違っているのを当然知っていて、あえてそれを使ったのだと思います。「みっともよくない」という言葉が過去に流行語的に使われたことがあったのではないでしょうか。久米さんの世代の人はよく使うとか。ないですかね。
いつものようにGoogle検索(8月27日)しました。。
「みっともない」=6万0300件
「みっともよくない」=6件
「みっともいい」=50件
「みっともいいものではない」= 5件
「みっともいいもんじゃない」=0件
「みっともいいことはない」=0件

「とんでもない」= 45万9000件
「とんでもありません」= 7680件
「とんでもございません」= 5380件

意外にも「みっともよくない」はたったの6件しかありませんでした。ほとんど使われていませんねえ。
インターネットの読売オンライン「発言小町」には、「とんでもない」に関する質問が載っていました。

「お客様と電話でやり取りをしていて、電話を切る際に『とんでもないですぅ〜』と、こちらが答えるのは正しい言葉ですか?『とんでもございません(ありません)』であればわかるのですが。」
これに対する書込みでは、
「『とんでもございません』は間違いだと聞いたことがある。正しくは『とんでもないことでございます』
「そういうのは聞いたことがあるが、現在では『とんでもございません』で十分通用するので、は使っていいではないか?」
「『とんでもございません』は、昔、女優の原節子さんがインタビューで使ったのが始まりだと聞いたことがある。『とんでもな・い』という形容詞に『ございません』は付けられないから『とんでもないです』でよい。」

というような意見が書かれていました。
なかなか難しいものですね。

2003/8/27


◆ことばの話1368「活気立っている」

8月19日の「ズームインSUPER」を見ていたら、「呪怨2」という映画に出演した酒井法子さんにインタビューしていました。そのなかで 撮影現場の雰囲気を聞かれた酒井さんは、こう応えました。
「現場は活気だっていて」
発言をフォローした字幕スーパーは、
「活気づいていて」
でした。私もそれを見て(聞いて)、
「普通、それも言うなら『活気づいていて』だろうな。『活気だっていて』と言うと『殺気だっていて』みたいだし。言い間違いだろうな。」
そう思って会社で辞書(『日本国語大辞典』)を引いてみてビックリ!なんと、
「活気立つ」
という言葉が見出しが立っているではないですか!ただし意味のところには、
「かっきづく(活気付く)に同じ」
となっていましたが。用例としては、長田幹彦『澪』(1911−12)と生方敏郎『明治大正見聞史』(1926)から載せていました。
他の辞書は?と思って『新明解国語辞典』を引くと、「活気」のところに「活気立つ」というのが載っていて、意味は、
「その場の人びとの心に張りが有り、生き生きとした雰囲気のみなぎるのが、だれの目にもうかがわれる」
と書いてありました。そのとおりですね。どうやら「活気立つ」という言葉はあるようです。
いつものようにGoogleでインターネット検索もしてみました。(8月19日しらべ)
「活気だっている」=29件
「活気だつ」=36件
「活気立つ」=78件

「活気立っている」= 9件
ついでに「殺気」の方も調べましょう。
「殺気立っている」= 1700件
「殺気立つ」= 1820件
「殺気だつ」=230件
「殺気だっている」=613件

さらに、「活気づく」なども調べました。(8月27日しらべ)
「活気づく」=7790件
「活気付く」=2490件
「殺気づく」=10件
「殺気付く」= 4件

ということで、やはり圧倒的に「活気立つ」「活気だつ」よりも、「活気づく」「活気付く」の方が使われていることが分りました。ついでに「殺気づく」「殺気付く」は、ほとんど使われていないこともわかりました。さっききづきました。

2003/8/27


◆ことばの話1367「ロゴ」

「阪神優勝」
という言葉を商標登録した千葉の男性と阪神球団の間で続いていた商標権の譲渡交渉が決裂しました。そのニュースを伝える中で出てきた言葉が、
「ロゴ」
です。この「ロゴ」のアクセント、私なんかは、「ロゴ(HL)」と頭高アクセントだと思うのですが、若い人はみんな、「ロゴ(LH)」と平板アクセントなんですよね。
『NHK発音アクセント辞典』には、「ロゴ」は載っていないんです・・・。
英語ではどうなのか?と思って英和辞典を引いてみると、「ロゴ」は、
「Logotype」
でした。「ロゴタイプ」。つまり「ロゴ」は日本語、和製英語、英語の省略形が外来語として使われているのですね。でも英語をそのまま「ロゴタイプ」と言われてもなあ・・・。かと言って「ロゴ」がどのくらい通用するのか?若い人は良いけど、年配の方はどうか?など疑問は残ります。
他の局はどうしているかな、と思ってみていると、
「ロゴマーク」
として、このアクセントの問題を避けて(?)いました。これこそまさに和製英語では?でもわかりこっちのほうがわかりやすいか。
アクセントも含め、なかなか難しい問題ですね。

2003/8/24

(追記)

10月2日のNHKお昼のニュースで、武田アナウンサーは、「ロゴ」を平板アクセントの「ロゴ(LH)」で読んでいました。字幕スーパーにも「ロゴ」という言葉を使っていました。富士通の「ロゴ」を勝手に使った人がいた、というようなニュースでした。

2003/10/2
(追記2)

2006年11月13日、日本テレビの「スッキリ!」で阿部哲子アナウンサーが、「ちば(千葉)」と「香川県」の「ロゴ」についての話題で、「ロゴ」を「頭高アクセント」で、
「ロゴ(HL)」
と話していました。

2006/11/15


◆ことばの話1366「バグる」

その日は夜勤だったので、午後3時頃、京阪電車に乗りました。途中から、近所の関西外大の女子学生と思しき2人が乗ってきました。空いた車内なので、聞くとはなしにその会話を耳にしていると、
「おっさんが、なんか勘違いしとんねん。」
「ほんで、そのおっさんがなあー・・・・」

「おっさん」を連発!若い女のこの会話に「おっさん」はやめて欲しい。いたたまれません・・・・。せめて「おじさん」と言えんか、君らは!
そう思いながら、さらに耳を傾けていると、今度はこんな話が。
「CDウォークマンが、バグって聴かれへんねん。」
この「バグる」という言葉に注目!
そもそもコンピューター用語として「バグ」というのは聞いたことがありますが、たかが(ごめん!)CDウォークマンに「バグる 」という言葉を使うとは!「バグ」の本来の意味は「虫」。「バグズライフ」というアニメ映画もありました。「虫の生活」。コンピューターのプログラムの中に"虫のように"隠れたミスを指したはずですよね。これまでは、そういった場合にはふつう、
「こわれて(壊れて)」「故障して」
と言ってきたのではないでしょうか。「バグる」という言葉を、単なる故障の意味に使ってるのを聞いたのは、もしかしたら、初めてだったかもしれません。
徳永英明の名曲「こわれかけのRADIO」なんてのも、今風にタイトルを付けたら、
「バグりかけのRADIO」
でしょうかねえ・・・。「バグルス」というグループもいたな。あれはたしか「ラジオスターの悲劇」という曲を歌っていたのでは・・・「バグ」と「ラジオ」つながり。
「外国語+る」
という形は、例えば「ネグる」「サボる」「タクる」というのがありますね。割と造語しやすいのかもしれません。

2003/8/22

 
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