◆ことばの話1355「ミドルスブラ」

イングランド・プレミアリーグ、フラム所属の稲本潤一選手が、2003−2004リーグ開幕戦で、豪快な決勝ゴールを決めました。その対戦相手のチーム名表記が、メディアによって違います。
8月17日の私が見たテレビでは、
(日本テレビ)=ミドルズブラ
(TBS) =ミドルスブラ
(テレビ朝日)=ミドルズーブラ




テレビ朝日のは、「ズ」のところにアクセントが来るから長音符号なのかなあ。英語のスペルは、
「Middlesbrough」
英語に詳しい脇浜アナウンサーに調べてもらったのですが、アクセントは「ミ」にあるみたいなんですがね。8月17日の朝刊各紙は、
(読売新聞)=ミドルスブラ
(朝日新聞)=ミドルズブラ
(毎日新聞)=ミドルズブラ
(産経新聞)=ミドルズブラ
(日経新聞)=ミドルズブラ

読売新聞だけが「ス」と濁らない清音です。また、翌日のスポーツ紙各紙は、
(スポーツ報知)=ミドルスブラ
(ニッカン)=ミドルズブラ
(スポニチ)=ミドルズブラ
(デイリー)=ミドルズブラ
(サンスポ)=ミドルズブラ

やはり読売系のスポーツ報知だけが「ス」と濁っていません。その他はみんな「ズ」と濁ります。
「フラム」か「フルハム」かという問題と言い、なんでイギリス(イングランド)のチーム名の表記は、こんなに違うんでしょうねー?疑問です。ああ、でも大リーグのチーム名の表記もバラバラだし、外来語はしょうがないのかなあ。固有名詞ぐらいなんとか統一できないものですかねえ・・・・。
2003/8/18

(追記)

8月18日のテレビ朝日「ニュースステーション」では、
「ミドルズブラ」
となっていました。とすると、8月17日の夕方のテレビ朝日のニュースだけ違う(ミドルズーブラ)ということになりますが、何ででしょうかね。イングランドのプレミアリーグのことはあまりよく知らない、テレビ朝日の外報部の記者か誰かが訳したチーム名を、カタカナ表示してしまったのかも知れませんね。

2003/8/19


◆ことばの話1354「患者等搬送車」

報道局のフロアを歩いていて、乱雑な机の上にさりげなく置かれたバンソウコウを見つけました。もらい物らしく、その容器(といっても紙製ですが)には、スポンサーの広告が記されていました。その名前を見て、ホォと思ったのです。そこには、
「大阪市患者等搬送事業者協会」
と書かれていたのです!なんじゃ、その「大阪市患者等搬送事業者協会」って!初めて聞きました。
さっそくインターネットで調べてみると、ホームページがありました。それによると、この協会は、
「救急車を呼ぶほどでもないが、ベッドや車椅子を必要とし、タクシーや自家用車では無理がある。そんなとき、入・退院、転院、歩けない方の移動などにご利用ください。」
と記されていました。大阪市消防局が定める安全基準を満たした事業者の団体なんだそうです。設立は平成6(1994)年11月1日。そして、どういったところが加盟しているのかというと、
「新大阪タクシー」「公益社」「ダイヤ交通」「朝日自動車」「新南都交通」「民間救急サービス」「大生交通」「南和タクシー」
といったところ。ああ、なるほど。なんとなく、わかってきました。有料のサービスということですね。でも値段も出来たら書いておいて欲しかったな。ホームページで、値段表が見つかりませんでした。
こういったサービスの需要が増えてきている世の中だということですね。勉強になりました。
でも、「患者」という「人」に、「搬送」という言葉を使うのはいかがなものか?というような話が、以前、用語懇談会で出たことがあったな。「搬送」というと、何か「物」のようで。でも医療現場では、普通に使われているんですよねえ。
2003/8/17
(追記)
2004年3月5日の毎日新聞に「どこが違う?どう頼めばいい?民間救急車」という見出しの記事が出ていました。「東京救急協会」を例にとって「有料で病院間の転送などを引き受ける民間救急車」を特集しています。
それによると「患者等搬送事業者」の認定は1989年に始まったそうで、東京都内で37事業者、全国で232事業者(2003年2月末現在)あるそうだ。「基本的な応急処置講習を24時間以上受けた乗務員が、容体変化の恐れの少ない患者を自宅や病院からほかの場所に搬送できるという制度」と記されています。高齢化社会、これから需要は高まりそうですね。
2004/3/5
(追記2)
4月8日の日経新聞に、
「増える119番救急車不足〜救急隊員、消防車で現場に」
という見出しの下で、
「機能合体『消救車』も」
とありました。「消救車」というのは初めて知りました。これは、
「普通ポンプ車の機能を持つ一方で、患者用の救急ベッド(ストレッチャー)を設置できるスペースがあり酸素吸入装置も積んだもの」
「消救車」と呼ぶそうです。GOOGLE検索では、
「消救車」=6万1100件
もあって、ちょっとビックリでした。(5月6日しらべ)
2004/5/6
(追記3)
2004年10月22日の産経新聞に、
「民間救急車がお助け!」
という見出しが出ていました。活躍の場が広がりつつあり、料金(今は1時間1万円くらい)が普及のカギとのこと。全国の認定事業者数は、平成15年(2003年)3月時点で232(事業所数は241)ということです。あれ?これって「追記」の所に書いた毎日新聞の記事の2003年2月から1か月しか違わないから、認定業者数は、まったく一緒だ。
平成15年の救急車の出動件数は、全国で約483万件だそうです。すごい回数だ!
GOOGLE検索では(10月22日)
「民間救急車」=1万5900件
でした。
2004/10/22
(追記4)
2004年11月5日の朝日新聞に、
「消救車出動 1月に第1号」
という見出しが。
「1台2役 大阪モリタ発売」
とサブ見出しも。千葉県松戸市に第1号は納入されるんだそうです。写真を見ると見た目は、車体の「上が白で下が赤」の救急車のようです。小型のテレビ中継車のようにも見えます。
2005/1/15
(追記5)
久しぶりの追記です。2008年6月4日の朝日新聞朝刊に、
「『消救車』新モデル」
という見出しが。久しぶりに見ました、「消救車」。消防ポンプ車と救急車の機能を併せ持つ車です。何でもこれまでは車体の側面が開くタイプだったらしいですが、新型は、後部が開くモデルで、これだと狭い道路や交通量の多い場所でも安全なんだそうです。6月5日から開かれる「東京国際消防防災展2008」に出展されるそうで、発売元は、大阪のモリタ。1台4000万円ということです。なおGoogle検索(6月4日)では、
「消救車」=6470件
でした。ありゃ?2004年5月6日に検索した時は、
「消救車」=6万1100件
もあったのに、4年で「10分の1」に減ってるぞ。なんでやろ?
2008/6/4


◆ことばの話1353「不育症」

8月14日の日経新聞朝刊。
「流産繰り返す『不育症』 専門外来7病院に1つ」
という見出しが。この「不育症」という言葉、初めて目にしました。「不育症」とは、
「妊娠しても流産を繰り返し子どもを産むことができない」
という症状なんだそうです。妊娠できない「不妊症」については9割の病院に外来があるのに、この「不育症」は、新聞の見出しの通り、7病院に1つしか外来の受付がないというのです。この「不育症」、Googole検索(8月14日)してみると、なんと
18万5000件!!
驚きました!それだけこの症状に悩んでらっしゃる方が多いということでしょうね。
このところ少子化が進む中で、産みたいのに産めない夫婦も増えていて、「不妊治療」は、ずいぶん身近なものになってきました。晩婚による高齢化も、その原因の一つかもしれませんが、働く女性が増えた中で、社会的なしくみも女性が働くのは当たり前、に変わりつつあるのですが、それに伴う制度や設備の対応は、必ずしも変化のスピードについていっていません。安心して子どもを産める世の中を作らなくては、少子化に歯止めはかからないでしょう。もっとも、そういった環境が出来たからといって、急に出産数が激増するとも思えないのですが。

2003/8/17


◆ことばの話1352「颯爽」

『週刊文春』の2003年8月14日&21日号の高島俊男さんの連載「お言葉ですが・・・」は、「六甲おろしに颯爽と」でした。「六甲おろし」は「阪神タイガースの歌」(元は「大阪タイガースの歌」)、この歌が出来たのは昭和11年、球団創設と同じ年で、作曲古関裕而、作詞は佐藤惣之助で、高島さんによると、
「昭和十一年ごろというのは、この『さっそう』ということばがはやり出した時期であった。佐藤惣之助はその新鮮な語を、いちはやくタイガースの歌に取り入れたのである。」
へーそうだったのか。その少し前の昭和ひとけたのころには、
「溌剌(ハツラツ)」
ということばが流行ったそうです。高島さんは確か昭和12年のお生まれなのに、よくご存知ですね。
そしてこの「颯爽」という言葉に、歌人の斎藤茂吉が噛み付いて「ここ数年来、非常な流行を来し、軽薄でけしからん」というようなことを『童馬山房夜話』というところに書いているのだそうです。
ところが一方で「ライバル」(?)の土岐善麿は、
「颯爽と われは去りゆくと おもへども 老いほけたりと 人は見るらむか」
という歌を作って「颯爽と」を使っているのですね。そして、そもそもこの「颯爽」という語は、あの杜甫が作ったのだそうです。1200年ほど前。もちろん当時は阪神タイガースはありません。そして高島さんは、
「『颯爽』と『溌剌』、こういうことばが大いにはやったというのは、やはりあの時代(注・昭和十年代)が、こういう元気のいいことばを要求していたからでありましょう。」
と結んでいます。
今シーズンのタイガースは確かに「溌剌と」そして「颯爽と」戦ってきたわけですが、8月半ば、マジックあと20あまりという所で、ちょっと失速。冷夏だと力が出ないのかな。夏バテを乗り越えて、早く「颯爽と」した野球を見せて欲しいものです。なお『広辞苑』によると「颯爽と」は、
「人の態度・行動などが、勇ましくさわやかに感ぜられるさま」
とあります。

2003/8/17


◆ことばの話1351「こしょい」

5歳の長男と遊んでいると、タンクトップを着ている相手を、つい、くすぐりたくなって、コショコショコショ
と、くすぐります。ケラケラ笑いながら息子が口にする言葉は、
「コショイから、やめて〜!」
と言うのです。くすぐったいことを「こそばい」「こそばゆい」あるいは「こしょばい」とは言いますが、「コショイ」というのは、聞いたことがありません。保育所で流行っているのでしょうか。
ネットGoogle検索です。
「こしょい」=7件
「コショイ」=1件

ということで、 ごくごく一部では、大人(インターネットに書込みが出きるくらいの年齢を大人として)は使っているものの、本当に「ごくごく一部」ということですね。では、「こそばい」などはどうでしょうか。
「こそばい」= 1540件
「こそばゆい」= 7240件
「こしょばい」= 142件
「こしょばゆい」= 49件

という感じ。「こそばゆい」が一番よく使われ、次に「こそばい」。「こしょばい」は関西限定ですかねえ。
『大阪ことば事典』(牧村史陽)には、「こそばい」は見出しで載っています。意味として、「こそばゆい。くすぐったい。」
とあります。「くすぐる」ことを関西では「こそばす」「こしょばす」とも言いますからね。こっちの方が実感が出ていると思いますが。
また『辞典・新しい日本語』(井上史雄、鑓水兼貴編著:東洋書林)には、
「コショバイ」=神戸・姫路間の若年。和歌山市の言葉
として載っていました。また、
「コショバス」=福知山線沿線で10代に散在、
と甲南大学の都染先生のリポート(1997)を載せています。そしてさらに、
「コショバル」=大阪・和歌山間の若年層。コソバス、コチョバスも増えている。形容詞はコチョバイだけが増えている(岸江他1999)
「コショボル」=大阪府で発生

「コソバス」=徳島ではコソバカスに代わってコソバスが普及中(友定1994)。大阪側は全世代コソバスなので、大阪弁の影響と考えられる。
としています。いずれも「こしょい」は載っていません。最新の形ですね。こういうのは流行語ではなく、ジワーッと広がっていくでしょうから、気づいたら周りがみんな、
「コショイ」
といっているかも。良い悪いは別にして、「気持ち悪い」の意味の「キモイ」が全国区になってしまったのですから、この「こしょい」がまた全国に広がる日がこないとも限りませんね。
2003/8/17

(追記)

私が教えに行っているアナウンス学校の生徒(20歳前後)達11人に、「こしょい」という言葉を知っているか?と聞いたところ、誰も知りませんでした。ということは、保育所では使われているということですから、「超若者言葉」かもしれません。
2003/8/19


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